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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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日刊ゲンダイで、「ほこ×たて」ヤラセ問題について解説

2013年10月26日 | メディアでのコメント・論評

「ほこ×たて」ヤラセ告発の大波紋
視聴者の信用を踏みにじった
フジテレビの大罪

27日放送は「自粛」

「これはひとつのバラエティー番組のヤラセ問題で終わる話ではありません」

厳しい口調でこういうのは上智大学の碓井広義教授(メディア論)だ。


23日に発覚したフジテレビの人気番組「ほこ×たて」のヤラセ問題。20日に放送された特番に出演したラジコンカー世界王者の広坂正美氏(43)が、「偽造された対戦の編集内容が余りにひどかった」と憤慨し、声を上げたものだ。

広坂氏は過去の対戦についても鷹や猿が相手のときにラジコンをゆっくり走らせたり、猿が逃げないように首に釣り糸を巻き付けてラジコンで引っ張るように細工があったことなどを暴露。

同番組はバラエティーだが、愚直なまでのガチンコ勝負が最大のウリ。「絶対に穴が開かない金属」対「絶対に穴を開けるドリル」などは職人同士がプライドをかけて激突する姿が感動を呼んだ。批評家筋の評価も高く、優れたテレビ番組に贈られるギャラクシー賞も受賞している。

「低迷するフジテレビの中では数少ない“見るべきバラエティー”でした」と、碓井教授がこう続ける。

「小学生から大人まで、親子で楽しめる素晴らしい番組でした。これまでスポットライトが当たらなかった町工場の職人芸など『モノづくり日本』の底力をバラエティーの形で見せてくれた。

それが、本来なら対戦が成立しなかった段階でボツにすべき内容を、自己都合でねじ曲げた。言語道断です。

もっと罪深いのは、ひとつのヤラセが原因で、これまでの真剣対決までが同じ目で見られてしまうこと。ひいては、テレビ全体がそう見られ、視聴者からの信用を失う結果になることです」


ヤラセは今回だけでなく、他にも告発が相次いでいる。この問題は24日のNHK「ニュース9」でも詳報された。

フジテレビは27日の放送を自粛することを発表したが、打ち切り程度で済まされる話ではない。

(日刊ゲンダイ 2013年10月25日)

中日スポーツに、「ほこ×たて」問題についてのコメント掲載

2013年10月26日 | メディアでのコメント・論評

「ほこ×たて」対決捏造で放送中止 
出演者が暴露

フジテレビのバラエティー「ほこ×たて」(日曜午後7時)の20日放送の2時間特番で、不適切な演出があったとして、同局は24日、27日以降の放送を取りやめると発表した。「スナイパー軍団VSラジコン軍団」と題したコーナーで捏造(ねつぞう)があったことを、ラジコンカー操縦者の広坂正美さんが23日に勤務先のラジコン模型メーカー「ヨコモ」公式サイトで告発していた。

10年に単発特番でスタートし、11年1月からレギュラー化した同番組は「風力マシンVSどんな強風でも絶対に壊れない傘」など、企業や個人が実名で登場し「最強対決」を繰り広げる。

問題になったのは、逃げるラジコンをスナイパーが撃つという対決で、米国ロケだった。広坂さんの告発によると、最初にボートで3連勝し勝利が決まったのに、放送ではヘリコプターとカーの後にボートで大逆転したことになっていた。また、対戦相手は女性スナイパーだったのに、別の男性にされていた。広坂さんは「偽造された編集内容」「余りにもひどいやらせ番組」と怒りをあらわにしている。

同局は「ブログの内容はおおむね事実。対戦相手と順番を入れ替えていた」と捏造を認めた。広坂さんは、過去の出演時の猿との対決では、ラジコンカーを追う猿が逃げないよう、首に釣り糸を巻き付ける細工があったと、動物虐待とも受け取れる演出も暴露している。同局は初回放送分から、あらためて不適切な演出がなかったか調査するという。27日は代わりに旅番組を放送する。翌週以降は未定。

◆非情に残念…弁解の余地ない

 碓井広義・上智大教授(メディア論)の話
 

日本の地道な物づくりにスポットを当て、視聴者やテレビ関係者からも評価されていた良質な番組だったので、非常に残念。“ガチンコ対決”を掲げながら、その部分が違うとなると弁解の余地がない。フジテレビにとっては、ただ人気番組を失うだけでなく、テレビ局としての価値を損なうような大きな問題だ。


(中日スポーツ 2013年10月25日)