日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、NHK「ファミリーヒストリー」について書きました。
自分という存在自体は
さまざまな偶然で成り立っている
さまざまな偶然で成り立っている
俳優やタレントの家族の歴史をさかのぼるドキュメンタリー番組「ファミリーヒストリー」。昨年の「浅野忠信編」などが評判を呼んだこともあり、この秋、レギュラー(金曜夜10時)となった。
先週は今田耕司編だ。母方と父方、それぞれの曾祖父までリサーチが行われていく。軸となっているのは今田の母・良子さんのヒストリーだ。パラオで育ち、戦争で引き揚げてきた経験をもつ。では、なぜ祖父母はパラオにいたのか。それを探っていくと、戦前の庶民の生き方が見えてきた。
戦況の悪化でパラオから引き揚げることになった幼い良子さん。母親と2人で乗るはずだった貨客船は米軍の攻撃で沈没。自分たちの船は奇跡的に横浜へたどり着く。後年、必死で自分を守ってくれた母親が、実は「育ての母」だったことを知る。
今田の父方の曾祖父は大阪で炭屋を営んでいた。だが、その息子である祖父は東京で僧侶となる。ここにもまた今田本人が驚くようなエピソードがあった。自分の存在自体が、人の意思だけでなくさまざまな偶然で成り立っていることがわかる。
思えば、私たちは自分の両親の生い立ちや子ども時代のことを知らなかったりする。ましてや祖父母となると・・。この番組をきっかけに、家族の話に耳を傾けてみるのもいいかもしれない。それは自分自身を知ることにつながるからだ。
(日刊ゲンダイ 2013.10.08)