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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

NHKの「ニュース」が、なぜ映画の「宣伝」をするのか?

2013年10月19日 | テレビ・ラジオ・メディア

まずは、昨日18日(金)のNHK「あさイチ」。

ゲストが「嵐」の松本潤でした。

その主演映画『陽だまりの彼女』が、先週末から公開されているので、まあ、民放でもよくある宣伝がらみのゲスト出演なんだろうと、思って見ていました。

それはそれで構わないし、女性視聴者の多い「あさイチ」だし、有働アナも嬉しそうだったし(笑)。


ところが、同じ18日の夜。

なんと、「ニュースウオッチ9」にも松本潤が登場したのです。

しかも大越健介キャスターじきじきのインタビュー。

さらに、「あさイチ」とは違い、松本潤がスタジオに来たわけではなく、ホテルのような場所を設定しての収録でした。





話は、「アイドル」「俳優」といった本業のことだけでなく、30代を代表する日本人に聞くかのような、なかなか真面目な内容でした。

松本潤も、きちんと自分の言葉で語っており、その印象は好感のもてるものでした。


ただ、どうしても違和感がありました。

なぜ、NHKの「ニュース番組」で松本潤のインタビューなのか。

今、このタイミングで、NHKの「ニュース番組」が松本潤を取り上げる意味はどこにあるのか。

「ニュースとしての価値をもった何か」をしたのか。

いや、それはインタビューの中では出てこなかった。

それに、松本潤の側から考えても、今、露出するなら、映画がらみしかないでしょう。

実際、このインタビューには、映画本編の映像だけでなく、メイキング映像まで出てきました。





これはもう、十分すぎるほどの大宣伝です。

でも本来なら、これは「スタジオパーク」あたりでやるべき企画だったのではないでしょうか。

宣伝がらみなら、普段はなかなかキャスティングできない俳優やタレントも、出てきてくれるわけで、映画本編でもメイキングでも流せばいい。

しかし、公共放送NHKの、報道の主軸となるニュース番組で、キャスターが出向いて、直接インタビューまでして、せんじ詰めれば映画の宣伝だったというのは、やはり、どーにも違和感があります。

百歩譲って、この『陽だまりの彼女』という映画が、とてつもなく優れた作品で、評価も高く、かつ大評判にでもなっているのだろうか。

そんな話も聞かない。

たとえば「あまちゃん」や「半沢直樹」のような、一種の社会現象を巻き起こしているならともかく、公開から1週間の時点におけるこの扱いは、単に宣伝に加担しているとしか見えません。

じゃあ、なぜNHKの「ニュース」が、映画の「宣伝」をするのか?

松本潤ファンの取り込み?

それによる番組の好感度アップ?

まさかの視聴率狙い?

事務所対策?

なにかのバーター?

いやいや、NHKたるもの、そんなことをするはずはないでしょう(笑)。

ならばこの時期、NHKの看板ニュース番組のメインキャスターが、直接向き合って、そのインタビュー術のすべてを駆使し、とことん話を聞くべき相手は、他にもいるのではないか、ということです。




ドラマ『相棒』が支持される「理由」を解説

2013年10月19日 | メディアでのコメント・論評

日刊ゲンダイの記事で、テレビ朝日「相棒」について解説しました。

貫禄の刑事ドラマ「相棒」は、 なぜ視聴者に飽きられない?

相棒
シリーズ歴代2位の好スタート
「老舗の和菓子屋」の強み

これが定番の強みというやつか。「相棒」(テレビ朝日、水曜21時~)の新シリーズが好スタートを切った。2時間スペシャルだった初回の平均視聴率は19.7&(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。右京ファンをお茶の間にクギ付けにした格好だ。

“40%男”の堺雅人が主演の「リーガルハイ」(フジ、水曜22時~)でさえ、2話目は16.8%に落としている。それだけに20%近くを叩き出したのは立派だが、いったいなぜ、これほど支持されるのか。

上智大学の碓井広義氏(メディア論)が言う。

「相棒はひとつのシリーズが終わっても、放送自体は終わりません。再放送をやっているからです。そうやって常にエンジンを温めているから、新シリーズが始まったときに、ポーンと高い数字が出るのでしょう」

期待を裏切らないパターン化された作りも、人気につながっているという。

「制作している東映のテレビ映画の魅力でもありますが、主人公の杉下右京は、回り道をしながらも持てる能力を使って真相に迫り、事件を解決します。奇をてららわず、刑事ドラマの王道を歩んでいる。

それが60代以上の視聴者に受け入れられる秘けつでしょう。老舗の和菓子屋さんのような感じです。飽きずにやり続けることで、同じ味を作り続けている。

その中心がピンク映画出身の和泉聖治監督。シリーズの初回は必ず担当しているし、脚本も輿水(こしみず)泰弘氏が多い。このコンビが変わらないテイストを生み出しているのです」(碓井氏)


夕方の再放送でさえ、10%超の視聴率を叩き出すオバケ番組。放送時間に合わせて、ゲートボール場から引き揚げる高齢者は少なくないという。しばらくは水曜の夜も出歩けなくなりそうだ。

(日刊ゲンダイ 2013.10.18)