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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

映画「そして父になる」トリオの興味深いトーク

2013年10月02日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、フジテレビ「ボクらの時代」を取り上げました。


中身のある人間の話には誰もが耳を傾ける

映画「そして父になる」の是枝裕和監督と主演の福山雅治、そして共演のリリー・フランキーが、フジテレビのトーク番組「ボクらの時代」(日曜朝7時)に登場した。

映画の公開前後に、出演者や監督がメディアに露出するのは当たり前になっている。

しかし、視聴者はゲストと称する彼らを見ても、「ああ、またか」としか思わない。それは「宣伝だから出てやった」という傲慢さや、「観客動員につながる」というソロバン勘定が透けて見えるからだ。

その意味で今回の番組は異色だった。PRうんぬんを超えて彼らの話が興味深かったのだ。まず、無類の清潔・整理好きの福山が可笑しい。

居酒屋では飲みながらテーブルをおしぼりで拭いている。自分の部屋ではテレビのリモコンの定位置も守る。仕事以外でストレスを溜めないための努力だが、神経質に聞こえないところが実に福山らしい。

また、是枝監督の少年時代。働く母親の姿を見て、「グレてなんかいられない」と思ったという話も、リリー言うところの「おだやかな映画監督」らしいエピソードだった。

この番組の良さは、あえて司会者を置かずに、出演者たちの自然な会話を大事にしていることだ。それに、うるさい「話し言葉のテロップ表示」もない。

トーク番組のキモはテーマとキャスティング。中身のある人間の話には誰もが耳を傾ける。

(日刊ゲンダイ 2013.10.01)


産経新聞で、「山崎豊子さん」についてコメント

2013年10月02日 | メディアでのコメント・論評

山崎豊子さん死去
不条理許さず「命がけ」
社会派ドラマ 続々と映像化

「白い巨塔」「大地の子」などスケールの大きな社会派小説を数多く著した人気作家の山崎豊子(やまさき・とよこ、本名・杉本豊子=すぎもと・とよこ)さんが9月29日未明、心不全のため死去した。88歳。大阪市出身。葬儀・告別式は近親者のみで行う。
 

 「命がけの作品」

新聞記者出身らしく、地面をはいずり回るような徹底した現場取材で作品を描き続けた。不条理を許さず、世間が目を背ける対象に鋭く切り込んだ「命がけの作品」は多くが映像化されて人気を博し、日本に社会派ドラマを根付かせる上でも大きな役割を果たした。

大阪の豪商が集まる一角「船場(せんば)」にある老舗昆布屋の長女に生まれた。船場生まれで船場育ちの女の子は、通常「嬢(いと)はん」と呼ばれるが、幼い山崎さんはわんぱくな男の子を意味する「こぼんちゃん」で通っていた。小学生時代は女子をいじめる男子を見ると黙っておられず、ほうきや棒きれで男子の頭や背中をたたき「堪忍」と謝って逃げ出すまで容赦しなかった。

小学生のときから読書が一番の趣味だったが、京都女子専門学校(現京都女子大)を卒業後、毎日新聞大阪本社に就職する前は作家になろうと考えたことは一度もなかった、と明かす。「人は自分の身近なことを美化せず、真実を書けば、誰でも一編の小説が書ける」。背中を押してくれたのは、学芸部勤務時代に直属の上司だった作家、井上靖さん(1907~91年)にかけられた、そんな言葉だった。

 「不条理許せない」

創作の原点には戦時中の体験がある。学徒動員のため軍需工場で砲弾磨きに従事。19世紀の仏作家、バルザックの小説を持っていたのが将校に見つかり殴打された記憶が心の傷として残る。「戦争の不条理、暴力性が私たちの世代の心と体にはしみついている」。その思いが重厚な社会派作品へとつながっていく。

中国残留孤児の激動の半生を描いた「大地の子」や、腐敗した航空会社に翻弄されながら生き抜く一社員の生き方を描く「沈まぬ太陽」、政界に挑むジャーナリズムのあり方を問う「運命の人」など、社会問題や実際の事件をモデルにした作品はスケールが大きく、軒並み映像化された。1966年公開の映画「白い巨塔」(山本薩夫監督)では野心家の財前五郎医師を田宮二郎さんが好演。2003年に放送されたドラマでは唐沢寿明さんが財前を熱演し、高視聴率を記録した。

上智大文学部新聞学科(メディア論)の碓井広義教授(58)は「組織の中で生きる人が多い現代を反映した原作で、人間の本質に迫る普遍的な魅力があった。社会派ドラマをテレビに定着させる上で果たした功績は松本清張さんと並ぶもので、大功労者だ」と話す。

「白い巨塔」を契機に「社会派作家」という肩書が定着したが、本人は不本意だったようで、後にこう語っている。「弱い立場の人を見過ごさせない、不条理を許せないという元来の性格が、たまたま社会的テーマに広がっただけ」。大阪商人らしい気骨と激しさ。幼い頃に育まれた「こぼんちゃん」の心持ちそのままに、現実社会と原稿に向かい続けた作家だった。

(産経新聞 2013.10.01)


秋学期の授業、始まる

2013年10月02日 | 大学

先週末から秋学期が始まり、キャンパスがまた賑やかになりました。

4年生の卒論、院生の学位論文も佳境。

また10~11月は、シンポジウムなど学内でのイベントが続きます。

怒涛のオータムフェアの始まりです(笑)。