俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

8月16日(土)

2014-08-16 05:42:31 | 日記
★いつよりか燕無き空青澄める  正子
ツバメは群れを成したり隊形を整えたりして渡ることをしないようですから、春が来て何羽もが街を飛び交っているのを見つけたり、また秋には、いつの間にか一羽もいなくなってしまっていることにふと気が付くというようなことがよくあります。
「燕無き空青澄める」という表現には、しみじみと秋到来を思う深い詩情が込められており、「いつよりか」にはまた、小さな喪失への感慨が届けられて来ます。(小西 宏)

○今日の俳句
露ころぶキャベツ外葉の濃き緑/小西 宏
キャベツの濃い緑の外葉にころがる露に、力がある。丸く、収れんした露の力と輝きは秋の朝のすがすがしさ。(高橋正子)

○木槿(むくげ)

[木槿/横浜日吉本町]            [木槿/東京・新宿御苑]

★花むくげはだか童のかざし哉 芭蕉
★道のべの木槿は馬にくはれけり 芭蕉
★修理寮の雨にくれゆく木槿哉 蕪村
★花木槿里留主がちに見ゆる哉 一茶
★馬ひとり木槿にそふて曲りけり 子規
★縄簾裏をのぞけば木槿かな 漱石
★墓多き小寺の垣や花木槿 碧梧桐
★いつまでも吠えゐる犬や木槿垣 虚子
★お遍路木槿の花をほめる杖つく 放哉
★みちのくの木槿の花の白かりし 青邨
★路草にむかひて萎む木槿かな 耕衣
★日の出待つや木槿いつせいに吹かる中 林火
★避暑町の少しさびれぬ花木槿 たかし
★道すがらうかぶ木槿や徒労ばかり 波郷
★白木槿ごみを出すにも蝶むすび/片山由美子
★ふっくらと巻きて落花の木槿かな/野村洋子

 木槿は、朝咲いて夕方にはしぼむ。お茶席の花としてよく活けられもする。先日千駄木の骨董屋の女主人が亜浪先生の句について信之先生に聞いて来られた折に、骨董の竹籠に槿と縞萱を活けた写真を送ってこられ、だれかをお茶にお招きしたい気分だと書き添えてあった。お茶の花ともなるが、どこにでも咲いている。
 
 ★白槿十年たちまち過ぎていし/高橋正子
 
 この句は、砥部の田舎で学生が来たり、ドイツ語の先生が来たり、子どもの友達がわっさわっさと来たり、句会の人たちが出入りしたり、掃除、洗濯、庭の手入れなどなど、雑多なことに明け暮れて、ある朝、白い槿を見て、十年なんてすぐ終わってしまうと思ったとき出来た句だ。
 今朝、自分の以前作ったこの白槿の句を読んで、今はもうこういう句を作る気持ちではないと知った。あれから十年が何回過ぎたことか。
 
 ★底紅の紅が澄みたる白槿/高橋正子

 ムクゲ(木槿、別名:ハチス、Hibiscus syriacus; 英語: rose of Sharon)はアオイ科の落葉低木。 庭木として広く植栽されるほか、夏の茶花としても欠かせない花である。インドや中国が原産で、中近東にも自生している。日本へは奈良時代に中国から渡来し、和歌山県や山口県に野生のムクゲがあったとされる。 夏から秋にかけて白、紫、赤などの美しい花をつける。薬用のほか、鑑賞用に多くの品種がある。俳句では秋の季語である。根が横に広がらないため、比較的狭い場所に植えることができる。 刈り込みにもよく耐え、新しい枝が次々と分岐する。そのため、庭の垣根に利用されることもある。 自然樹形は箒を逆さにしたようになる(下記の樹形の例参照)。 栽培されているものはよく剪定されてしまうため、高さは3-4mくらいのものが多く、灌木であると誤解されるが、放置すると10m以上の樹高になり、桜の木よりすこし小さいくらいの大きさになる。花期は7-10月。花の大きさは10-18cmほど。花芽はその年の春から秋にかけて伸長した枝に次々と形成される。 白居易(白楽天)の詩の誤訳から一日花との誤解があるが、朝花が開き、夕方にはしぼんで、また翌朝開き、一重のもので2-3日。八重の長く咲くもので2週間くらい、一輪の花を楽しめる。中国名の木槿(もくきん)を音読みし、木槿(むくげ)、木槿花(もくきんか)と呼ばれるようになった。また、「類聚名義抄」には「木波知須(キハチス)」と記載されており、木波知須(キハチス)や、単に波知須(ハチス)とも呼ばれる。白の一重花に中心が赤い底紅種は、千利休の孫である千宗旦(せんそうたん)が好んだことから、「宗丹木槿(ソウタンムクゲ)」とも呼ばれる。中国語では木槿/木槿(ムーチン)、朝鮮語では무궁화(無窮花; ムグンファ)という。英語の慣用名称のrose of Sharonはヘブライ語で書かれた旧約聖書の雅歌にある「シャロンのばら」に相当する英語から取られている。


◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)
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8月15日(金)/月遅れ盆(旧盆)・終戦の日

2014-08-15 05:29:19 | 日記
★追分の芒はみんな金色に/高橋正子
追分は街道の分かれ道で、右へ行けば江戸、左へ行けば京というような碑をよく見かける。そんな碑を囲むように茂る芒。金色というからには芒も開花している。その穂芒の向こうへ今日の陽が落ちる、そんなとき芒の穂はすべてが金色になる。(古田敬二)

○今日の俳句
信濃路へ入るコスモスを揺らしつつ/古田敬二
信濃は今の長野県のことであるから、けいじさんの住んでいる名古屋から信濃へ車で向かっているとき、コスモスも咲いて、ここからは「信濃路」だと思うと、目的地への期待が膨らむ。レベルの高い句。(高橋正子)

○露草

[露草/横浜日吉本町]             [露草/東京白金台・自然教育園]

★露草や飯噴くまでの門歩き 久女
ご飯が噴くまで家の庭を少し歩く。見れば露草がみずみずしく咲き、早朝の涼しい時間が心地よい。(高橋正子)

★月草の花に離れてうてなかな 虚子
★露草の花みづみづし野分晴 泊雲
★つゆけくも露草の花の 山頭火
★一叢の露草映すや小矢部川 普羅
★千万の露草の眼の礼をうく 風生
★ことごとくつゆくさ咲きてきつねあめ 蛇笏
★露草に祭の玩具落しけり かな女
★朝の日の母を訪はばや蛍草 耕衣
★露草や室の海路を一望に 汀女
★蝶とりし網を伏せおく蛍草 立子

春はおおいぬのふぐり、秋は露草。どちらも小さい青い花だ。野辺に咲くと、春が来たと思い、秋が来たと思う。そして、野辺にごとごとく咲く。露草の青い花が露を宿していると、涼しさそのものに思える。摘み取って花瓶に活けてもほんの朝のうち。俳句の話などで、朝の来客のみを喜ばせた。昼過ぎ、あの青い花はどこへ行ったか。凋んだといっても凋んだ花を見たことがない。耳学問によると、あおの青い花は、昼には苞の中に溶けてしまうのだと。ありそうなことである。

 ツユクサ(露草、Commelina communis)は、ツユクサ科ツユクサ属の一年生植物。日本全土、アジア全域、アメリカ東北部など世界中に広く分布する、畑の隅や道端で見かけることの多い雑草である。高さは15~50cmで直立することはなく、茎は地面を這う。6~9月にかけて1.5~2cmほどの青い花をつける。花弁は3枚あり、上部の2枚は特徴的で青く大きいが、下部の1枚は白くて小さく目立たない。雌しべが1本、雄しべが6本で成り立っている。アサガオなどと同様、早朝に咲いた花は午後にはしぼんでしまう。朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説がある。英名のDayflowerも「その日のうちにしぼむ花」という意味を持つ。また「鴨跖草(つゆくさ、おうせきそう)」の字があてられることもある。ツユクサは古くはつきくさと呼ばれており、上述した説以外に、この「つきくさ」が転じてツユクサになったという説もある。「つきくさ」は月草とも着草とも表され、元々は花弁の青い色が「着」きやすいことから「着き草」と呼ばれていたものと言われているが、万葉集などの和歌集では「月草」の表記が多い。この他、その特徴的な花の形から、蛍草(ほたるぐさ)や帽子花(ぼうしばな)、花の鮮やかな青色から青花(あおばな)などの別名がある。 また鴨跖草(おうせきそう)という生薬名でも呼ばれる。花の青い色素はアントシアニン系の化合物で、着いても容易に退色するという性質を持つ。この性質を利用して、染め物の下絵を描くための絵具として用いられた。ただしツユクサの花は小さいため、この用途には栽培変種である大型のオオボウシバナ(アオバナ)が用いられた。オオボウシバナは観賞用としても栽培されることがある。花の季節に全草を採って乾燥させたものは鴨跖草(おうせきそう)と呼ばれ、下痢止め、解熱などに用いる。
 万葉集には月草(ツユクサの別名)を詠ったものが9種存在し、古くから日本人に親しまれていた花の一つであると言える。朝咲いた花が昼しぼむことから、儚さの象徴として詠まれたものも多い。また俳句においては、露草、月草、蛍草などの名で、秋の季語とされる。


◇生活する花たち「山萩・鬼灯・蓮の花托」(横浜・四季の森公園)
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8月14日(木)

2014-08-14 06:35:18 | 日記
★おみなえし一朶の白き雲を連れ  正子
おみなえしの黄色い花と雲の白さが目に浮かぶようです。(多田有花)

○今日の俳句
緑陰に昼の草刈機が休む/多田有花
朝涼しいうちに使われた草刈機は、昼の暑い時間は、緑陰で休む。草刈機も人のようだ。(高橋正子)

○溝萩(みそはぎ)・禊萩(みそはぎ)

[溝萩/東京・向島百花園]          [溝萩/横浜・四季の森公園]

★みそ萩や水につければ風の吹/小林一茶
★溝萩の咲けば偲べる人のあり/稲畑汀子
★溝萩咲く父母の仲人たりし家/松崎鉄之介
★みぞ萩や旅からもどりすぐ旅に/山田六甲
★千屈菜に澄みし水あり休耕田/小浦遊月
★溝萩や束ねて丈の定まりぬ/上月智子

 溝萩は、水辺や湿地に育ち、淡紅紫色の小さい花が穂のように咲く。私が生まれた備後南部では、これを「盆花(ぼにばな)と呼んでいた。盆のことを「ぼに」と呼んで「ぼにがくるけん、草を刈らにゃあ。」というように使っていた。瀬戸内海沿岸は、夏、雨が少ないので、讃岐のため池ほどではなくても、多くの田に野井戸があった。稲田の水が池から放流される灌漑用水では足りないときは、この野井戸が役に立っている。この野井戸のほとりや、田んぼの隅に溝萩が、それこそお盆用に植えられていた。お盆が近づくと、溝萩の束を持って、道を戻ってくる人を良く見かけた。その淡紅紫色の花穂が故郷のお盆の色である。

★みそ萩を束ね抱えし人に遇う/高橋正子

 ミソハギ(禊萩、学名:Lythrum anceps)はミソハギ科の多年草。湿地や田の畔などに生え、また栽培される。日本および朝鮮半島に分布。茎の断面は四角い。葉は長さ数センチで細長く、対生で交互に直角の方向に出る。お盆のころ紅紫色6弁の小さい花を先端部の葉腋に多数つける。盆花としてよく使われ、ボンバナ、ショウリョウバナ(精霊花)などの名もある。ミソハギの和名の由来はハギに似て禊(みそぎ)に使ったことから禊萩、または溝に生えることから溝萩によるといわれる。
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8月13日(水)

2014-08-13 06:16:13 | 日記
★尾も鰭も澄みたる色に下り鮎   正子
秋ともなると川の水は冷ややかに澄んで、秋空を水面に映し、すがすがしい気候のなかに、清冽な川の上流で生活した鮎が尾や鰭をはっきりと見せて卵を産むために下流に下っている素敵な景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
畦草を刈りて定かや稲の花/小口泰與
稲の花が咲くころは、畦草も伸びてくる。それを刈ると畦がさっぱりとして、稲の花の存在が定かになる。取り合わせの句ではないので、稲の花が生き生きとしている。(高橋正子)

○藤袴

[藤袴/東京・向島百花園]

★枯れ果てしものの中なる藤袴 虚子
★藤袴白したそがれ野を出づる/三橋鷹女
★藤袴手に満ちたれど友来ずも/三橋鷹女
★藤ばかま触れてくる眸の容赦なき/稲垣きくの
★たまゆらをつつむ風呂敷藤袴/平井照敏

藤袴について、高校の古文の先生からまつわる話を聞いた。戦のとき、武士が兜の下に入れたという。頭の蒸れた匂いをその芳香で消すためと聞いた。そのときは、野原の藤袴を折り取ってそれを兜の下に入れたのだと思ったが、そのままの藤袴は匂わない。匂うのは、乾燥したものだそうだ。乾燥させると、なにか芳香の成分ができるらしい。乾燥したものを兜の下に入れたのだろう。淡い紫紅色の散房状の花は武士の花といってもいいだろう。花の形がよく似ていて、立秋ころ咲く白い花がある。これを、早合点の私は、もしや藤袴と思うことがある。そして、その花を写真にとったりして、何度も確かめて、やはり、違うようだと結論付ける。まれにしか見ない藤袴見たさのことであろう。伊勢神宮の外宮の観月祭には、きっちりと秋の七草が揃えられているそうだ。秋の七草は、ハギ、キキョウ、クズ、ナデシコ、オバナ(ススキのこと)、オミナエシ、フジバカマの七草で、山上憶良の歌に「萩の花尾花葛花なでしこが花をみなへしまた藤袴朝顔が花」 (万葉集 巻八) がある。

★藤袴山野の空の曇り来し/高橋正子
★清貧の背筋ますぐや藤袴/高橋正子

フジバカマ(藤袴、Eupatorium japonicum)とはキク科ヒヨドリバナ属の多年生植物。秋の七草の1つ。本州・四国・九州、朝鮮、中国に分布している。原産は中国ともいわれるが、万葉の昔から日本人に親しまれてきた。8-10月、散房状に淡い紫紅色の小さな花をつける。また、生草のままでは無香のフジバカマであるが、乾燥するとその茎や葉に含有されている、クマリン配糖体が加水分解されて、オルト・クマリン酸が生じるため、桜餅の葉のような芳香を放つ。中国名は蘭草、香草。英名はJoe-Pye weed;Thoroughwort;Boneset;Agueweed(ヒヨドリバナ属の花)。かつては日本各地の河原などに群生していたが、今は数を減らし、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)種に指定されている。また「フジバカマ」と称する植物が、観賞用として園芸店で入手でき庭にも好んで植えられる。しかし、ほとんどの場合は本種でなく、同属他種または本種との雑種である。


◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)
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8月12日(火)

2014-08-12 05:22:43 | 日記
★西瓜切ってみなの心に故郷(くに)ありぬ  正子
私の家では、お盆で親戚が集まった時たいてい西瓜が切られる。伯父や伯母が集まると、今は亡き祖父母のことや、故郷の思い出話がつきない。そうした賑やかなお盆のひとときは、みずみずしい西瓜の色や食感と重なって思い出される。(安藤智久)

○今日の俳句
鬼やんま飛びゆく路地の風軽し/安藤智久
「やんま」は秋の季語。鬼やんまが路地をすいっと飛んで行く路地は、風が軽やかに感じられる。風が軽いのは、路地のある暮らしが穏やかでからっとしているからであろう。(高橋正子)

○撫子

[撫子/横浜日吉本町]           [河原撫子/横浜日吉本町]

★秋霧や河原なでしこりんとして/小林一茶
★撫子や海の夜明の草の原/河東碧梧桐
★航海日誌に我もかきそへた瓶の撫子/河東碧梧桐
★撫子や堤ともなく草の原/高浜虚子
★撫子や濡れて小さき墓の膝/中村草田男
★岬角や撫子は風強ひられて/秋元不死男
★四五本の撫子植ゑてながめかな/原石鼎
★我が摘みて撫子既に無き堤/永田耕衣
★撫子や腹をいためて胤をつぎ/平畑静塔 

 土手を歩いていて、河原撫子を見つけることがる。折り取って帰りたいが、草の中に、ようやく咲いた撫子を摘む気にはならない。我が家に一株の河原撫子がある。日吉商店街の花屋に何気なく立ち寄って、この花を見つけて、すぐに買った。値段も80円でかわいそうなくらい安い値段だったが、花びらが鷺草のように繊細に切れ込んで、淡いピンクの色と姿が素晴らしい。その後その店をときどき覗くが、あくまでも私の感覚においてのことだが、これより素晴らしい撫子を見てはいない。ますます大事に育てている。第一花が終わって今二度目の花がついている。肥料がいるかどうか、思案中である。
 撫子といえば、「なでしこジャパン」である。女子サッカー、ワールドカップで優勝し、ロンドンオリンピックで銀メダル。けなげなほどだ。日本だけでなく世界中がたたえる。「なでしこ」の花をもって称えるのにふさわしい彼女たちではないか。

★台風裡河原撫子折れもせず 高橋正子

 ナデシコ(なでしこ、撫子、瞿麦)はナデシコ科ナデシコ属の植物、カワラナデシコ(学名:Dianthus superbus L. var. longicalycinus)の異名。またナデシコ属の植物の総称。蘧麦(きょばく)。 秋の七草の一つである。歌などで、「撫でし子」を掛詞にすることが多い。ナデシコ属 (Dianthus) は、北半球の温帯域を中心に約300種が分布する。このうち、ヒメハマナデシコとシナノナデシコは日本固有種(日本にのみ自生)であり、他に日本にはカワラナデシコとハマナデシコが分布する。
 カワラナデシコ (D. superbus L. var. longicalycinus (Maxim.) Williams)には、ナデシコ、ヤマトナデシコの異名もある。これはセキチク (D. chinensis L.) を古くは唐撫子(カラナデシコ)といったことに対する。ナデシコは古くは常夏(とこなつ)ともいった。これは花期が夏から秋に渡ることにちなむ。花の色は紅から淡いピンク色が多いが、園芸品種などでは白色や紅白に咲き分けるものなどもある。ナデシコ属の園芸品種をダイアンサス (Dianthus) ということがあるが、本来はナデシコ属の学名である。また、カーネーション (D. caryophyllus L.) もナデシコ属である。
 「撫でし子」と語意が通じることから、しばしば子どもや女性にたとえられ、和歌などに多く参照される。古く『万葉集』から詠まれる。季の景物としては秋に取り扱う。『枕草子』では、「草の花はなでしこ、唐のはさらなり やまともめでたし」とあり、当時の貴族に愛玩されたことがうかがえる。また異名である常夏は『源氏物語』の巻名のひとつとなっており、前栽に色とりどりのトコナツを彩りよく植えていた様子が描かれている。ナデシコ属は古くから園芸品種として栽培され、また種間交雑による園芸種が多く作られている。中国では早くからセキチクが園芸化され、平安時代の日本に渡来し、四季咲きの性格を持つことから「常夏」と呼ばれた。ナデシコの花言葉は純愛・無邪気・純粋な愛・いつも愛して・思慕・貞節・お見舞・女性の美・など女性的なイメージが強いが、才能・大胆・快活なども。ヤマトナデシコ(カワラナデシコ)の花言葉は、可憐・貞節である。


◇生活する花たち「朝顔・芙蓉・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

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8月11日(月)

2014-08-11 05:47:11 | 日記
★ひとつぶのつめたさうましぶどう食ぶ  正子
店頭にぶどうが並んでいます。よく冷えた一粒を口に入れ噛んだ瞬間がとらえられ、美味しさが伝わります。 (祝恵子)

○今日の俳句
樹にもたれ絵描く数人夏帽子/祝恵子
絵を描くのに、必ずしも座って描くとは限らない。木陰を作る木の幹に持たれ、夏帽子を冠り、スケッチをしているグループなのであろう。暑苦しくなく、軽やかな光景だ。(高橋正子)

○桔梗

[桔梗/横浜北八朔町]             [桔梗/横浜日吉本町]

★桔梗の花咲時ポンと言そうな 千代女
★きちかうも見ゆる花屋が持仏堂 蕪村
★きりきりしやんとしてさく桔梗哉 一茶
★桔梗活けてしばらく仮の書斎哉 子規
★佛性は白き桔梗にこそあらめ 漱石
★人遠し明る間早き山桔梗 龍之介
★芝青き中に咲き立つ桔梗かな 碧梧桐
★桔梗の紫めきし思ひかな 虚子
★桔梗や一群過ぎし手長蝦 普羅
★桔梗を咲かしむるまで熔岩老いぬ 風生
★桔梗や雨またかへす峠口 蛇笏
★桔梗や忌日忘れず妹の来る 月二郎
★大江山降り出す雨に桔梗濃し 青邨
★みちのくの雨そそぎゐる桔梗かな 秋櫻子
★桔梗の花の中よりくもの絲 素十
★桔梗の露きびきびとありにけり 茅舎
★旅の子の第一信や花桔梗 汀女
★露晒し日晒しの石桔梗咲く 多佳子
★莟より花の桔梗はさびしけれ 鷹女
★桔梗を引き寄せて体空しけれ 耕衣
★桔梗や褥干すまの日南ぼこ 不器男
★白桔梗売るわらんべの一位笠 林火
★乳の如き白き池あり山桔梗 たかし

桔梗は秋の七草のひとつであるが、私は野山に自生している桔梗をみたことがない。ほどんど庭に植えられたものである。切り花用に6,70センチのものと、矮性と思える鉢植えの桔梗だけれど、一度自生の桔梗を見てみたいと思う。絶滅危惧種とのこと。風船のような蕾が緑色から、徐々に青紫色に染まって、やがて開いてくる。咲きかけの桔梗というのも見たことがない。身近だけれど、そんな具合だ。小さいころに桔梗の形の小鉢があって、それには金時豆を甘く煮たのがいつも入れらえていた。

キキョウ(桔梗、Platycodon grandiflorus)はキキョウ科の多年性草本植物。山野の日当たりの良い所に育つ。日本全土、朝鮮半島、中国、東シベリアに分布する。万葉集のなかで秋の七草と歌われている「朝貌の花」は本種であると言われている。絶滅危惧種である。根は太く、黄白色。高さは40-100cm程度。葉は互生で長卵形、ふちには鋸歯がある。下面はやや白みがかっている。つぼみの状態では花びら同士が風船のようにぴたりとつながっている。そのため "balloon flower" という英名を持つ。つぼみが徐々に緑から青紫にかわり裂けて6-9月に星型の花を咲かせる。雌雄同花だが雄性先熟で、雄しべから花粉が出ているが雌しべの柱頭が閉じた雄花期、花粉が失活して柱頭が開き他の花の花粉を待ち受ける雌花期がある。花冠は広鐘形で五裂、径4-5cm、雄しべ・雌しべ・花びらはそれぞれ5本である。なお、園芸品種には白や桃色の花をつけるものや、鉢植え向きの草丈が低いもの、二重咲きになる品種やつぼみの状態のままほとんど開かないものなどがある。


◇生活する花たち「山萩・鬼灯・蓮の花托」(横浜・四季の森公園)

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8月10日(日)

2014-08-10 05:46:21 | 日記
★朝顔の紺一輪を水に挿し  正子
朝、切り取られた紺の朝顔をすぐに水に挿された。朝顔の紺色の一輪で有るからこその涼やかさと清楚さが美しく浮かび上がって参ります。活けられているお部屋全体まで清々しさを感じます。(佃 康水)

○今日の俳句
潮の香の港にたてば銀河濃し/佃 康水
漁港を詠んで、句材が整っています。潮の香がする夜の港は、港の明かりも家々の明かりも落されて、銀河の限りない星がはっきりと見えます。無窮の空の銀河なのです。(高橋正子)

○葛の花

[葛の花/横浜・四季の森公園]

★葛の葉の吹きしづまりて葛の花 子規
★むづかしき禅門でれば葛の花 虚子
★葛の花が落ち出して土掻く箒持つ 碧梧桐
★山桑をきりきり纏きて葛咲けり 風生
★車窓ふと暗きは葛の花垂るる 風生
★葛の花見て深吉野もしのばゆれ 石鼎
★花葛の谿より走る筧かな 久女
★這ひかかる温泉けむり濃さや葛の花 久女
★葛の花こぼれて石にとどまれり 青邨
★奥つ瀬のこだまかよふや葛の花 秋櫻子
★朝霧浄土夕霧浄土葛咲ける 秋櫻子
★わが行けば露とびかかる葛の花 多佳子
★花葛の濃きむらさきも簾をへだつ 多佳子
★いちりんの花葛影を見失ふ 鷹女
★白露にないがしろなり葛の花 青畝
★葛の花流人時忠ただ哀れ 誓子
★今落ちしばかりの葛は赤きかな 立子
★細道は鬼より伝受葛の花 静塔
★葛咲や嬬恋村字いくつ 波郷
★葛咲や父母は見ずて征果てむ 波郷
  
   久万・三坂峠
★わさわさと葛の垂れいる峠越え/高橋正子

 葛の花は秋の七草のひとつ。野にも、河原にも、山にも、葛を見かける。木に覆いかぶさり、崖などに垂れさがり、河原の草を覆う。葛の蔓を一つ引けば、そこら中の木や草が動く。それほどに蔓が長い。葛の葉はよく見るのだが、花を見るのは意識していないと時期を過ごしてしまう。昨日、8月9日に四季の森公園に出かけた。もしや、葛の花が咲いてはいまいかと。その感は的中し、葛の最初の一花が咲いたところだった。葛の花の盛りとなれば、咲き盛る花の下の方にはすでに咲き終わって枯れた花が一つ二つある。枯れ花の一切ない葛を見るのはまれだ。まさに初秋。赤紫の花には芳香がある。根は山芋以上に太く長いそうだが、実際見たことはない。葛といえば葛粉を思うが、これが値段もいい。心配性の私は葛の根が少なくて、葛粉がこの世からなくなるのではないかとふっと思うことがある。本当の葛餅は、さつま芋などのでんぷんでは味わえない、水のようなすっきりとした喉越しがある。これが本もの葛餅を食べるときの幸せなのだ。
 葛については、去年もこの日記に書いたかもしれないが、「葛の葉」物語がある。助けられた白狐の恩返しの話だが、「つるの恩返し」とはまた違って、こちらのほうが日本的文学性があると思う。白狐の化身の名は「葛の葉」。葛の葉をかき分けるような山のどこかでの話である。山の奥では不思議な世界が繰り広げられる。葛にまつわる話ではないが、「山姥」もわが身に代えてみれば共感の話である。葛も葛の花も繁茂しすぎているにも関わらず憎めぬ花である。
  ※葛の葉狐(青空文庫より)

 クズは、マメ科のつる性の多年草。根を用いて食品の葛粉や漢方薬が作られる。万葉の昔から秋の七草の一つに数えられる。漢字は葛を当てる。葉は3出複葉、小葉は草質で幅広く、とても大きい。葉の裏面は白い毛を密生して白色を帯びている。地面を這うつるは他のものに巻きついて10メートル以上にも伸び、全体に褐色の細かい毛が生えている。根もとは木質化し、地下では肥大した長芋状の塊根となり、長さは1.5メートル、径は20センチにも達する。花は8~9月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、濃紺紫色の甘い芳香を発する花を咲かせる。花後に剛毛に被われた枝豆に似ている扁平な果実を結ぶ。花色には変異がみられ、白いものをシロバナクズ、淡桃色のものをトキイロクズと呼ぶ。和名は、かつて大和国(現:奈良県)の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。温帯および暖帯に分布し、北海道~九州までの日本各地のほか、中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに分布している。
 クズは、荒れ地に多く、人手の入った薮によく繁茂する。雑草としては、これほどやっかいなものはない。蔓性で草地を這い回り、あちこちで根を下ろす。地上部の蔓を刈り取っても、地下に栄養を蓄えた太い根が残り、すぐに蔓が再生するので、駆除するのはほとんど不可能に近い。世界の侵略的外来種ワースト100選定種の一つである。他方で、その蔓は有用であった。かつての農村では、田畑周辺の薮に育つクズのつるを作業に用いた。そのため、クズは定期的に切り取られ、それほど繁茂しなかった。しかし、刈り取りを行わない場合、クズの生長はすさまじいものがあり、ちょっとした低木林ならば、その上を覆い尽くす。木から新しい枝が上に伸びると、それに巻き付いてねじ曲げてしまうこともある。そのため、人工林に於いては、若木の生長を妨げる有害植物と見なされている。クズは根茎により増殖するため根絶やしにすることが困難である。
 北アメリカでは1876年にフィラデルフィアの独立百年祭博覧会の際に日本から運ばれて飼料作物および庭園装飾用として展示されたのがきっかけとして、東屋やポーチの飾りとして使われるようになった。さらに緑化・土壌流失防止用として政府によって推奨され、20世紀前半は持てはやされたが、原産地の中国や日本以上に北アメリカの南部は生育に適していたためか、あるいは天敵の欠如から想像以上の繁茂・拡散をとげた。そのため有害植物及びに侵略的外来種として指定されたが、駆除ははかどっていない。現在ではクズの成育する面積は3万km2と推定されている。近年ではアメリカ南部の象徴的存在にまでなっている。クズの英語名は日本語からkudzu(「クズー」あるいは「カァズー」と発音される)である。


◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)
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8月9日(土)

2014-08-09 13:41:27 | 日記
★おみなえし山の葛垂る庭先に  正子
おみなえし、葛の花など、秋の七草が調和よく咲く、和の庭なのでしょう。野の花をその咲きように生かして手入れされている風情が目にうかぶようです。(小川和子)

○今日の俳句
白粉花暮れゆく空に咲き揃う/小川和子
白粉花は夕方から咲く花。暮れゆく空に咲く花は、かすかな良い香りがあり、抒情的。(高橋正子)

○萩

[萩/東京・向島百花園]

★白露もこぼさぬ萩のうねりかな 芭蕉
★一家に遊女もねたり萩と月 芭蕉
★行々てたふれ伏すとも萩の原 曽良
★小狐の何にむせけむ小萩はら 蕪村
★萩散りぬ祭も過ぬ立仏 一茶
★白萩のしきりに露をこぼしけり/正岡子規
★暁深く萩おのづからみだれけり/臼田亜浪
★白萩の雨をこぼして束ねけり/杉田久女
★紅萩の根付きし証ほど咲きぬ/稲畑汀子
★外遊の友を送らん萩の風/稲畑汀子
★大波のあとのさざ波萩月夜/小澤克己
★大風に折れたる萩もなかりけり/長谷川櫂

 萩と言えば、まず紅萩を思うだろう。私もそうなのだが、紅萩を思うすぐさま砥部の庭にあった白萩を思い出す。この白萩は俳句の師である川本臥風先生のお庭から引っ越してきた萩なのだ。初秋には道路に面した塀から垂れるように咲き、道行く人に大いに楽しんでもらった。中には立ち止まってしばらく見てゆく人もいた。ちょうど娘の句美子の誕生日の9月3日ごろ、枝先に白い花が咲き始める。
★女児誕生白萩の白咲ける日に/信之
暑い夏であっても、自然のサイクルは狂わず、必ずそのころ咲いた。ちょうど台風のシーズンでもあって、台風というより、野分の吹き分けられる様は窓から見ていてもなかなかの圧巻であった。句美子も五歳ごろだったか
★はぎのはなゆうびんぽすとでさいている/句美子(5歳)
という句を作ったほどだ。句美子は、このころまでに俳句を50句ほど作っている。読売新聞愛媛支局に花冠(当時は水煙)を送っていたが、俳句好きの記者が読んでくださって、読売新聞に写真付きで紹介されたことがある。
秋の終わり枯れるころの萩紅葉がまたいいのだ。その後その葉は散り、枝だけが残るが、これを刈り取ってさっぱりさせて、冬を迎える。するとまた株から新芽が立ってさわさわとした萩の葉を茂らせるのだ。花の季節だけでなく、年中楽しめる花である。

★白萩のこぼれし花を掃く朝な/正子

 ハギ(萩)とは、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。秋ハギと牡鹿のペアの歌が多い。別名:芽子・生芽(ハギ)。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。

◇生活する花たち「朝顔・芙蓉・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)
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8月8日(金)

2014-08-08 13:03:46 | 日記
★おみなえし山の葛垂る庭先に  正子
共に万葉の昔から親しまれてきた2つの秋の七草を優美に詠い上げげられた御句かと思います。
山の葛垂る庭先」の措辞がこれらの植物の枕詞を兼ねた、生態描写のように感じられ、実に素晴らしいと思いました。(河野啓一)

○今日の俳句
黒光りして児の掌にかぶと虫/河野啓一
子ども、特に男の子は、虫の中ではかぶと虫がとりわけ好きだ。黒光りする胴体、たくましい角、決して敏速には動かない堂々とした様子。そのかぶと虫を掌に乗せて、王者の気分だ。(高橋正子)

○尾花(おばな・すすき)

[薄(すすき)/横浜日吉本町]

★何ごともまねき果たるすすき哉 芭蕉
★おもしろさ急には見えぬ薄かな 鬼貫
★山は暮れて野は黄昏の薄かな 蕪村
★夕闇を静まりかへるすゝき哉 暁台
★猪追ふや芒を走る夜の声 一茶
★古郷や近よる人を切る芒 一茶
★箱根山薄八里と申さばや/正岡子規
★一株の芒動くや鉢の中/夏目漱石
★金芒ひとかたまり銀芒ひとかたまり/高浜虚子
★穂芒のほぐれ初めの艶なりし/能村登四郎
★穂を上げし芒に風の触れはじむ/稲畑汀子
★薄野を来て一山の夕日浴ぶ/小澤克己
★今日を尋めゆく落日の川すすき/千代田葛彦

 薄について書こうと思えばありすぎる。いたるところにあるけれど、夏の青い薄が風になびくのもよい。城ケ島に4年ぐらい前だったか行ったときに、はるか大島の影が見える崖に青薄が靡いていた。月があがればどんなに素敵だろうかと思った。その青薄も真夏の暑さに鍛えられ、青々とした色が幾分か抜けると紅むらさきのつややかな穂が出る。出始めの穂の色、はらりとほどける穂の具合は、初秋の風情としては一品。秋も深くなると穂が白くほおけて、銀色金色に輝く。小諸の花冠フェスに出かけた折、追分のあたりから景色はぐっと高原らしくなるが、薄は金色だった。それから、鎌倉の二階堂の虚子記念館を訪ねたときに、薄原があった。虚子がこの薄原を詠んだのではないかと思わせる雰囲気があった。
薄について風情の良さばかりを言ってはおれないのだ。薄は、別な呼称で萱なのだ。生家には家の前に広い畑がある。両親がいたころは、いろんな農作物がよく育っていた。父が亡くなり40年がたち、母がこの5月に亡くなったが、畑の隅に徐々に萱が生え始めた。畑の手入れが行き届かない。おそらくこの萱が広がって、何年か経つうちに荒れた野に戻るだろうと、寂寥とした思いにもなる。

★追分の芒はみんな金色に/高橋正子

 ススキ(芒、薄)とは、イネ科ススキ属の植物。萱(かや)、尾花ともいう。野原に生息し、ごく普通に見られる多年生草本である。高さは1から2m。地下には短いがしっかりした地下茎がある。そこから多数の花茎を立てる。葉は細長く、根出葉と稈からの葉が多数つく。また、堅く、縁は鋭い鉤状になっているため、皮膚が傷つくことがある。夏から秋にかけて茎の先端に長さ20から30cm程度の十数本に分かれた花穂をつける。花穂は赤っぽい色をしているが、種子(正しくは穎果・えいか)には白い毛が生えて、穂全体が白っぽくなる。種子は風によって飛ぶことができる。日本には全国に分布し、日当たりの良い山野に生息している。夏緑性で、地上部は冬には枯れるのが普通であるが、沖縄などでは常緑になり、高さは5mに達する。その形ゆえに、たまにサトウキビと勘違いする観光客がいる。国外では朝鮮半島・中国・台湾に分布するほか、北米では侵略的外来種として猛威をふるっている(日本にセイタカアワダチソウが侵入したのと逆の経路で伝播)。植物遷移の上から見れば、ススキ草原は草原としてはほぼ最後の段階に当たる。ススキは株が大きくなるには時間がかかるので、初期の草原では姿が見られないが、次第に背が高くなり、全体を覆うようになる。ススキ草原を放置すれば、アカマツなどの先駆者(パイオニア)的な樹木が侵入して、次第に森林へと変化していく。後述の茅場の場合、草刈りや火入れを定期的に行うことで、ススキ草原の状態を維持していたものである。


◇生活する花たち「山萩・鬼灯・蓮の花托」(横浜・四季の森公園)

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8月7日(木)/立秋

2014-08-07 13:02:42 | 日記
★胡麻の花稲の花咲くその続き  正子
優しく淡い色合いの可憐な胡麻の花と、小さいながらも白く清楚な稲の花。夏から秋へ向かう田の、清々しい季節感あふれる情景です。いずれも収穫の期待を高めてくれる胡麻の花と稲の花に、やがて訪れる実りの秋の喜びを感じさせていただきました。(藤田洋子)

○今日の俳句
新刊の一書机上に秋初め/藤田洋子
秋が来たと思う爽やかさに、さっぱりと片付いた机上に一冊の新刊書が読まれんとして置いてある。生活が新鮮に詠まれている。(高橋正子)

○女郎花(おみなえし)

[女郎花/横浜・四季の森公園]       [女郎花/横浜・都筑中央公園]

★ひよろひよろと猶露けしや女郎花/松尾芭蕉
★とかくして一把になりぬをみなへし/与謝野蕪村
★女郎花あつけらこんと立てりけり/小林一茶
★裾山や小松が中の女郎花/正岡子規
★遣水の音たのもしや女郎花/夏目漱石
★女郎花の中に休らふ峠かな/高浜虚子
★山蟻の雨にもゐるや女郎花 蛇笏
★女郎花ぬらす雨ふり来りけり 万太郎
★馬育つ日高の国のをみなへし 青邨
★波立てて霧来る湖や女郎花 秋櫻子
★杖となるやがて麓のをみなへし 鷹女
★をみなへし信濃青嶺をまのあたり 林火
★村の岐路又行けば岐路女郎花/網野茂子
★女郎花そこより消えてゐる径/稲畑汀子
★女郎花二の丸跡に群るるあり/阿部ひろし
★とおくからとおくへゆくと女郎花/阿部完市
★夜に入りて瀬音たかまる女郎花/小澤克己

 秋の七草のひとつに数えられる女郎花。萩、桔梗、葛、尾花、撫子、藤袴、女郎花とあげてくれば、どれも日本の文化と切り離すわけにはいかない草々だ。どれも風情がいいと思う。藤袴、女郎花については、名前にはよくなじんでいるものの、実物を見るようになったのは、20代を過ぎて、30代になってからと思う。藤袴、女郎花はどのあたりに生えているかも知らなかった。故郷の瀬戸内の低い山裾などでは見ることはなかった。女郎花は、生け花にも使われるが、粟粒状の澄んだ黄色い花が魅力だ。栽培しているものをよく見かけるようになったが、決してしなやかな花ではない。むしろ強靭な花の印象だ。葛だってそうだし。

★おみなえし雲を行かせたあと独り/高橋正子
★女郎花山の葛垂る庭先に/〃

 オミナエシ(女郎花 Patrinia scabiosifolia)は、合弁花類オミナエシ科オミナエシ属 の多年生植物。秋の七草の一つ。敗醤(はいしょう)ともいう。沖縄をのぞく日本全土および中国から東シベリアにかけて分布している。夏までは根出葉だけを伸ばし、その後花茎を立てる。葉はやや固くてしわがある。草の丈は60-100 cm程度で、8-10月に黄色い花を咲かせる。日当たりの良い草地に生える。手入れの行き届いたため池の土手などは好適な生育地であったが、現在では放棄された場所が多く、そのために自生地は非常に減少している。 日本では万葉の昔から愛されて、前栽、切花などに用いられてきた。漢方にも用いられる。全草を乾燥させて煎じたもの(敗醤)には、解熱・解毒作用があるとされる。また、花のみを集めたものを黄屈花(おうくつか)という。これらは生薬として単味で利用されることが多く、あまり漢方薬(漢方方剤)としては使われない(漢方薬としてはヨク苡仁、附子と共に調合したヨク苡附子敗醤散が知られる)。花言葉:約束を守る。名前の由来:異説有り。へしは(圧し)であり美女を圧倒するという説、へしは飯であり花が粟粒に見えるのが女の飯であるという説、など。


◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)
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8月6日(水)/原爆忌(広島忌)

2014-08-06 13:01:23 | 日記
★大朝焼車一台ずつ染まる  正子
真夏の日の出は大変早く、まだ涼やかな空気の満ちた時間です。朝焼けの中、荘厳な太陽の光りが駐車場の車を一台づつ照らし、今日も良く晴れて暑い夏の一日の始まりです。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
献水の竹筒青き原爆忌/桑本栄太郎
「竹筒青き」でこの句が生きた。汲みたての清水を青竹を筒に入れて持参した参拝者。「水を!」と言って亡くなった多くに人がいたことを思えば、清水は鎮魂の意味が大きい。(高橋正子)

○鬼灯(ほおずき)

[鬼灯/横浜・四季の森公園]

★鬼灯の少し赤らむぞなつかしき/正岡子規
★鬼灯の実の大小はまだ見せず/稲畑汀子
★鬼灯を摘む袖口と襟元と/高橋将夫
★結ひ上げし髪に鬼灯さす乙女/水原春郎
★自画像に鬼灯赤く描き添へし/宮津昭彦

 生家には、築山といって庭石や灯籠や小さい池に、松、椿、紅葉といった木を配しているところがあって、そこに先祖を祀る小さい碑のようなものがあるのだが、そのわきにほおずきが植えてあった。お盆のころちょうど熟れるので、植えられたのであろうが、このほおずきは、きれいに熟れかけたと思うと、袋が虫にくわれて網目状になってしまうのが、ほどんど。中の実の皮と破らないように種を出して口に含めば、鳴るというもの。しかし、これがうまくいったことはなかった。かなりの技がいるのであろう。浅草のほおずき市に売られるような完璧なほおずきを見てみたいものと思っていた。
 東京・下町の夏の風物詩「ほおずき市」が7月9日、東京都台東区の浅草寺で始まった。本堂周辺に並んだ露店は約220軒。朱色が鮮やかな丹波ホオズキが売れ筋で、1鉢2500円。かつて薬効があるとして用いられた、緑色の千成ホオズキも人気という。9、10日は参拝すると4万6千日分の御利益があるとされる浅草寺の功徳日。ほおずき市は10日夜まで開かれ、浅草観光連盟は約60万人の人出を見込んだ。

★ほおずきの玲瓏と熟れ原爆忌/高橋正子


◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)
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8月5日(火)

2014-08-05 06:34:24 | 日記
★胸うちに今日の夏野を棲まわせる  正子

○今日の俳句
うす紅も編まれし母の夏帽子/川名ますみ
母にまだある若さと可愛さをほほえましく、ある意味母親的まなざしで思う娘である。明るいうす紅が涼しさを呼んでくれる。(高橋正子)

○藻の花

[藻の花/鎌倉・宝戒寺]

★藻の花やこれも金銀瑠璃の水 重頼
★藻の花や金魚にかかる伊予簾 其角
★藻の花をはなれよ鷺は鷺の白 北枝
★渡りかけて藻の花のぞく流れかな 凡兆
★藻の花のとぎれとぎれや渦の上 桃隣
★藻の花や雲しののめの水やそら   蕪村
★川越えし女の脛に花藻かな 几董
★藻の花や引つかけて行く濡れ鐙 暁台
★引き汐やうき藻の花のさわぎ立つ 蝶夢
★藻の花の重なりあうて咲きにけり 正岡子規
★藻の花の揺れゐる風のつぶやきに/大橋敦子
★急流に凛と花藻の五弁かな/岸本久栄
★川底へ日矢突き抜けて花藻かな/中島玉五郎
★藻の花の咲くや寺苑の昼しんと/高橋信之

 鎌倉の宝戒寺を信之先生と訪ねた。本堂にお参りしようとすると、左手の水鉢に睡蓮が数花、空や寺の梁を映す水に涼しそうに咲いている。右手も睡蓮かと思いきや、思いかげずも藻の花が数花咲いている。金魚藻の花であるが、これは年数を経ないと咲かないということであった。その鉢にはメダカが泳いでいる。「水はどのように管理されていますか」と尋ねると、雨の水と、水が少なくなると注ぎ足すだけだそうだ。藻の花は咲きだすとどんどん咲くそうである。

 ★藻の花の咲くや寺苑の昼しんと/高橋信之
★藻の花の白さ浮き立つ仏の前/高橋正子

 藻の花は、花藻とも言い、湖沼や小川などに生えるさまざまな藻類、金魚藻、フサ藻、柳藻、松藻などの花。一般に小さく、白や黄緑色で目立たないものが多い。また海藻が赤・黄・緑など原色の美しい色をして花のようであるために、この美称として用いられることもある。海草と海藻の違いは、前者は根・茎・葉などが区別できるが、後者は区別できない特徴がある。俳句歳時記では夏の季語。


◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)
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8月4日(月)

2014-08-04 06:33:32 | 日記
★野に出でて日傘の内を風が吹き  正子
夏の暑い日ざしをさえぎるために用いる日傘は開くと綺麗な色彩の草花などが描かれたり、優美な紫紺や黒などの無地な日傘等があり、その日傘を高原の強い日差しの中で差すと日傘の中を高原の涼しい風が吹きぬけ、とても爽快な気分になれます。清涼感たっぷりの素敵な句ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
枝ごとにあふるるほどの百日紅/小口泰與
百日紅は炎暑にも負けず盛んに花を咲かせる。枝先に「あふるるほど」の花だ。「あふるるほど」の花が百日紅の花の特徴を言いえている。(高橋正子)

○稲の花咲く

[稲の花咲く/横浜市緑区北八朔町(2013年7月31日)]

★いくばくの人の油よ稲の花 一茶
★南無大師石手の寺よ稲の花 子規
★稲の花今出の海の光りけり 子規
★湯槽から四方を見るや稲の花 漱石
★雨に出しが行手の晴れて稲の花 碧梧桐
★軽き荷を酔うてかつぐや稲の花 虚子
★酒折の宮はかしこや稲の花 虚子
★八十路楽し稲の花ひろびろと見る/高橋信之
★稲の花見つつ電車の駅までを/高橋正子
★稲の花雲なく晴れし朝のこと/高橋正子

 イネ(稲、稻、禾)は、イネ科 イネ属の植物である。稲禾(とうか)や禾稲(かとう)ともいう。 収穫物は米と呼ばれ、世界三大穀物の1つとなっている。本来は多年生植物であるが、食用作物化の過程で、一年生植物となったものがある。また、多年型でも2年目以降は収穫量が激減するので、年を越えての栽培は行わないのが普通である。よって栽培上は一年生植物として扱う。属名 Oryza は古代ギリシア語由来のラテン語で「米」または「イネ」の意。種小名 sativa は「栽培されている」といった意味。用水量が少ない土壌で栽培可能なイネを陸稲(りくとう、おかぼ)と呼ぶ。日本国内に稲の祖先型野生種が存在した形跡はなく、海外において栽培作物として確立してから、栽培技術や食文化、信仰などと共に伝播したものと考えられている。稲を異常なまでに神聖視してきたという歴史的な自覚から、しばしば稲作の伝播経路に日本民族の出自が重ねられ、重要な関心事となってきた。一般に日本列島への伝播は、概ね3つの経路によると考えられている。南方の照葉樹林文化圏から黒潮にのってやってきた「海上の道」、朝鮮半島経由の道、長江流域から直接の道である。3つの経路はそれぞれ日本文化形成に重層的に寄与していると考えられている。現在日本で栽培されるイネは、ほぼ全てが温帯ジャポニカに属する品種であるが、過去には熱帯ジャポニカ(ジャバニカ)も伝播し栽培されていた形跡がある。

 多くの節をもつ管状の稈を多数分岐させ、節ごとに1枚の細長い肉薄の葉をもつ。稈は、生殖成長期になると徒長して穂を1つつける。他殖性の風媒花であるが、栽培稲では98%程度が自家受粉する。開花時間は午前中から昼ごろまでの2-3時間と短い。花は、頴花(えいか)と呼ばれ、開花前後の外観は緑色をした籾(もみ)そのものである。籾の先端には、しなやかな芒(ぼう)が発達する。芒は元々は種子を拡散するための器官であるが、栽培上不要なため近代品種では退化している。農業上、種子として使われる籾は、生物学上の果実である玄米を穎(=籾殻:もみがら)が包んでいるもの。白米は、玄米から糠(ぬか)層、胚など取り除いた、胚乳の一部である。生態型によるジャポニカ種 (日本型、島嶼型)とインディカ種 (インド型、大陸型)という分類が広く知られている。

 稲の食用部分の主 成分であるでんぷんは、分子構造の違いからアミロースとアミロペクチンに別けられる。お米の食感は、両者の含有配分によって大きく異なる。すなわちアミロース含量が少ないお米は加熱時にやわらかくモチモチした食感になり、アミロース含量が多いとパサパサした食感になる。日本人の食文化では、低アミロースのお米を「美味しい」と感じる。この好みは、世界的には少数派となっている。通常の米は20%程度のアミロースを含んでいるが、遺伝的欠損によりアミロース含量が0%の品種もあり、これがモチ性品種で、モチ性品種が栽培されている地域は東南アジア山岳部の照葉樹林帯に限定されている。その特異性から、その地域を「モチ食文化圏」と呼称されることがある。日本列島自体が西半分を「モチ食文化圏」と同じ照葉樹林に覆われており、またハレの日にもち米を食べる習慣がある(オコワ、赤飯、お餅)ことから、日本文化のルーツの一つとして注目された。


◇生活する花たち「蓮の花・のうぜんかずら・ブラックベリー」(横浜市港北区箕輪町)
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8月3日(日)

2014-08-03 06:32:35 | 日記
★夏蒲団糊の匂いて身に添えり  正子
寝苦しい夏の夜ですが、ほどよく糊のきいたシーツに包まれた夏蒲団に横たわれば、ほんのりと漂ってくる糊の匂いとともに、さっぱりとした肌触りが伝わり、静かに眠りを誘ってくれます。「身に添えり」に安らぎが感じられます。(小西 宏)

○今日の俳句
金蚊の仰向いて脚生きんとす/小西 宏
金蚊が何かにぶち当たってひっくり返った。起き上がろうとしてか、必死に脚を動かしている。作者はその様子を「生きんとす」と捉えた。金蚊の命を直視しているのがよい。(高橋正子)

○ささげの花

[ささげ花/横浜市緑区北八朔町]

★アフリカの太古の色やささげ咲く/照れまん
★紫にささげの花や土用東風/憧里夢
★高架駅下りればすぐに花ささげ/高橋正子
★大畑を区切って三筋の花ささげ/高橋正子

 ささげは、小豆の大ぶりなもので、小豆より品位が低いものと子供時代は思っていた。小豆も結構よい値であるが、ささげのほうがもっと値が高い。上等な赤飯にはささげが使われている、と大人の私はこのようにささげを見ている。ささげの餡というのがあるかどうか知らないが、餡にもするようだ。畑の一画にそんなにたくさんではないが、ささげが植えられていた。さやが幾分長い。祖母がささげ、ささげとよく言っていた。秋になると鞘が熟れて、それを筵に広げ乾燥させ、木槌でたたいて豆を出した。

 ササゲ(豇豆、大角豆、学名 Vigna unguiculata)はマメ科の一年草。つる性の種類とつるなしの種類とがある。アフリカ原産。主に旧世界の温暖な地方で栽培される。南米では繁栄と幸運を呼ぶ食物と考えられ、正月に食べる風習がある。樹木の形状は低木であり、直立ないし匍匐する。枝を張ったり、からみついたりと、成育の特性は多彩。語源は、莢が上を向いてつき物をささげる手つきに似ているからという説[1]、莢を牙に見立てて「細々牙」と言ったという説、豆の端が少々角張っていることからついたという説など諸説ある。藤色、紫、ピンクなど様々な色の花をつける。花の形は蝶形花である。穀物用種は、さやが10-30cmで固く、豆は1cm程度の腎臓形で、白・黒・赤褐色・紫色など様々な色の斑紋をもつ。白い豆には一部に色素が集中して黒い目のような姿になるため、ブラック・アイ・ピー(黒いあざのある目を持つ豆)と呼ばれる。つる性種は草丈が2mから4mになるのにたいし、つるなし種の草丈は30cmから40cm。ナガササゲと呼ばれる品種は100cmに達する。耐寒性は低いが、反面暑さには非常に強い。日本では、平安時代に「大角豆」として記録が残されている。江戸時代の『農業全書』には「豇豆」という名前で多くの品種や栽培法の記述がある。また、アズキは煮ると皮が破れやすい(腹が切れる=切腹に通じる)のに対し、ササゲは煮ても皮が破れないことから、江戸(東京)の武士の間では赤飯にアズキの代わりに使われるようになった。


◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

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8月2日(土)

2014-08-02 06:29:55 | 日記
★這いはじめし子に展げ敷く花茣蓙  正子
子が成長していくのは親の喜びです。這い這いしはじめの子へ花茣蓙を敷き見守られている姿が、喜びが、伝わってまいります。(祝恵子)

○今日の俳句
家裏に立てかけられてゴムプール/祝恵子
カラフルなゴムプールが、ひっそりとした家裏に立てかけられて、目に楽しく映る。家裏が涼しそうである。(高橋正子)

○落花生の花

[落花生の花/横浜市緑区北八朔町]

★落花生の花咲き遥かなる空よ/高橋信之
★ピーナッツの花咲かせ空ひろびろと/高橋信之
★落花生の花はバス道をはずれ/高橋正子

 生家の前はすぐ畑となって、胡麻を植えていたことを既に書いたが、その胡麻畑の隣に落花生を植え、同じ時期に花を咲かせていたので、夏休みの記憶に残っている。当時、生家では、南京豆といっていたが、南米原産で東アジアを経由して、江戸時代(1706)に日本に渡来したと言われている。落花生は、7・8月の早朝に黄色の花が咲いて、昼にはしぼんでしまう。数日経つと子房柄(子房と花托との間の部分)が伸びて地中に潜り込み、子房の部分が膨らんで結実する。地中で実を作ることから落花生(ラッカセイ)の名前が付けられた。
 ラッカセイ(落花生、学名:Arachis hypogaea)は、マメ科ラッカセイ属の一年草。別名はナンキンマメ(南京豆)、方言名は地豆(ぢまめ、ジーマーミ)、唐人豆(とうじんまめ)、異人豆(いじんまめ)など。中国語は花生。福建語・台湾語は土豆。英語名のピーナッツ、peanutは日本では食用とする種子を指す場合が多い。ground nutともいう。南米原産で東アジアを経由して、江戸時代に日本に持ち込まれたと言われている。日本では主に食用として栽培されている。草丈は25-50cm。夏に黄色の花を咲かせる。受粉後、数日経つと子房柄(子房と花托との間の部分)が伸びて地中に潜り込み、子房の部分が膨らんで結実する。地中で実を作ることからラッカセイの名前が付けられた。ラッカセイの原産地が南アメリカ大陸であることは確実である。最も古い出土品は、紀元前850年ころのペルー、リマ近郊の遺跡から見つかっている。その後、メキシコには紀元前3世紀までに伝わっていた。南アメリカ以外の世界にラッカセイの栽培が広がったのは16世紀である。日本で最初に栽培されたのは神奈川県の大磯町である。西アフリカ-ブラジル間の奴隷貿易を維持するためにラッカセイが用いられ、そのまま西アフリカ、南アフリカに栽培地が広がっていく。ほぼ同時期にスペインへ伝わったラッカセイは南ヨーロッパ、北アフリカへと渡っていく。さらにインドネシア、フィリピンへの持ち込みもほぼ同時期である。現在の大栽培地インドへは19世紀と比較的導入が遅かった。日本には東アジア経由で1706年にラッカセイが伝来し、南京豆と呼ばれた。現在の栽培種はこの南京豆ではなく、明治維新以降に導入された品種である。

 千葉市の小仲台に住んだ詩人白鳥省吾が1958年、八街市内の豊かな落花生畑を見て、即興で詠んだ自筆の詩碑が千葉県立八街高校の校庭に建立されている。
落花生讃碑[千葉県立八街高校]

  落花生賛
 いつ知らず
 葉は繁り
 花咲きて
 人知れず
 土に稔りぬ
    白鳥省吾


◇生活する花たち「月見草・大賀蓮・のうぜんかずら」(横浜・四季の森公園)
コメント (1)
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