俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

5月14日(土)

2022-05-14 12:34:32 | 日記

●私の「俳句添削教室」に「昆布」を使った俳句が投句された。

 「おにぎりの昆布に磯のかほりかな」

一読して、おにぎりの昆布は佃煮だから、昆布に季節を感じない。あるいは逆に昆布を夏の季語と知って無理やり夏の景色に封じ込めれば、それなりの季節感がないでもないような気分になる。

角川歳時記では夏の季語としての「昆布」はなく、「昆布刈る」「昆布干す」が夏の季語として載っている。「昆布」は夏の季語ではなく、「昆布刈る」「昆布干す」となってはじめて季語として成立するのではと思うが、どうなのか。ちなみに「海苔」は春の季語として角川歳時記に載っている。例句は海苔の採取にまつわる諸事の句が掲載されいている。昆布、海苔を季語としてよい場合は、季節を感じるようでなければ季語の効果はない。

ネット上には、「昆布」は夏の季語として載っている。ネット上の記事を挙げると、①のようにひどいものから、②から④までは何の意味があるのかわからないようなものがある。⑤の「筆まかせ」の例句はまともで参考にできる。

思うに、実際、海で昆布や海苔を見たことのある人が今は少ないので、こんなことが起こっているのだろう。もう一つには、歳時記をお題で経験もないのに想像して俳句を作る作り方に問題があるのだろう。

①夏の季語「昆布(こんぶ)」を使った俳句一覧 | 俳句の作り方 - 俳句入門 「お~いお茶新俳句」入選を目指して 俳句大学 (jhaiku.com)
  • 達磨忌の口とりは昆布に山椒かな / 加舎白雄
  • 滝行者今あつあつの昆布茶飲む / 川端茅舍
  • 掛け昆布や霜の名残の三棹程 / 河東碧梧桐
  • 竿昆布に秋夕浪のしぶきかな / 河東碧梧桐
②きごさい季語歳時記
例句無し
昆布(こんぶ)晩夏
【子季語】
ひろめ
【解説】
岩礁に着生する褐色の大きな海草。夏に船で沖まで出て刈り取っ たり、浅瀬で引いたりする。浜辺で乾燥させ、食料や調味料に利 用する。
【科学的見解】
昆布類は、コンブ科コンブ属の褐藻類であり、複数種が含まれている。マコンブは、北海道函館を中心に分布し、調味料や菓子などに利用されている。その変種としては、リシリコンブが挙げられ、北海道利尻島を中心に分布し、高級昆布として知られている。その他、ミツイシコンブ(別名:日高昆布)やオニコンブ(別名:羅臼昆布)など、北海道周辺に有用昆布類が分布している。(藤吉正明記)

③こども歳時記(長谷川櫂監修)
例句無し

④きごさい
昆布刈(こんぶかり) 三夏
【子季語】
昆布刈る/昆布採る/昆布干す/昆布舟
【解説】
夏に大きく成長した昆布を解禁日を待ち沖に出て刈り採ること。北海道や東北など冷たい海で採れる昆布は上質で珍重される。

⑤筆まかせ
昆布刈る
昆布刈る の例句(←ここをクリック)
http://fudemaka57.exblog.jp/22818741/
昆布刈る 補遺
さいはてや夏も荒れつぎ流れ昆布 鈴木真砂女 夏帯
たわたわと乳房揺るるや昆布干し 加藤秋邨
ときをりに昆布干し女の光りとなる 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
アイヌ部落沖に昆布の一扁舟 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
トラック唸る朝過剰に白い昆布積み 赤尾兜子 蛇
一心に見つむ寄せくる波の昆布 山口青邨
一木もなくて祠や昆布の浜 富安風生
三伏の幾野を越えて昆布の地 飯田龍太
児は遊ぶ昆布干場に何かして 山口誓子
入学や昆布ほしたる学びの舎 山口誓子
夏汐や磯に突き出し昆布小屋 高浜年尾
大浪の寄せては昆布もたらせる 山口青邨
子も犬も早起昆布漁の浜 津田清子
岬の日の一日分の昆布たたむ 岡本眸
岬の道昆布あふれて蝦夷桜 角川源義
帯のごとかがやかしては昆布とる 山口青邨
干昆布塩吹く日南笹鳴いて 村山故郷
引上ぐる昆布に波が蹤いてくる 津田清子
或る時は和布ばかりや昆布干場 阿波野青畝
放牧の馬と昏れゆく昆布小屋 松村蒼石 雪
昆布の村寒暁マッチ明りほど 鷹羽狩行
昆布の貨車と客車二輛の根室線 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
昆布ほす陽の青々と燃えにけり 西島麦南 人音
昆布干すや日高山系海に尽き 鈴木真砂女 夏帯
昆布干すソーラン節の記念碑に 阿波野青畝
昆布干す炎天海の紫紺なす 松崎鉄之介
昆布干す道の辺たまる女声 角川源義
昆布干す陰ゆ泳ぎ子をどり出づ 松崎鉄之介
昆布揚ぐ体も舟も傾きて 津田清子
曇り来し昆布干場の野菊かな 橋本多佳子
朝日が呼ぶ海の青さと昆布馬車 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
棹前昆布の舟いさましと岬に佇つ 角川源義
民宿が昆布干場を占めにけり 阿波野青畝
汐泡の段をなしては昆布育つ 阿波野青畝
波打つて昆布干されぬ尻屋岬 大野林火 雪華 昭和三十九年
海にうねられ激しく歩く昆布屋の前 永田耕衣
海猫群れ昆布生成の潮温るむ 飯田蛇笏 山響集
白波のレースふちどる昆布の浜 山口青邨
知床を楯として昆布揺れゐなり 阿波野青畝
短夜の念々昆布に執着す 水原秋櫻子 晩華
秋潮に必死の糧の昆布ひろふ 能村登四郎
竿昆布に秋夕浪のしぶきなき 河東碧梧桐
船鍛冶の谺と知りぬ昆布干場 阿波野青畝
花冷えや国訛りの駅に昆布くれぬ 角川源義
雨気こめて襟裳はるけき昆布拾ひ 飯田龍太
風筋に七輪炎立つ昆布浜 角川源義
鮫汁に昆布なめらかな凝りやう 河東碧梧桐
鶺鴒のいざなひ昆布の納沙布岬 角川源義
以上


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする