俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

10月23日(水)

2013-10-23 02:16:04 | Weblog
★呼んでみるかなたの空の雲の秋  正子
どこまでも澄む秋の空、遠くにさらっと掃いたような雲が流れています。その雲を見ればどこか懐かしいような切ないような気持ちになり、そっとその雲に呼びかけてみます。秋の晴れた空なればこその情感です。(多田有花)

○今日の俳句
栗の毬数多落ちたる尾根の道/多田有花
尾根伝い自体楽しいものだが、それに栗の毬が落ちていたりすると、深まる秋を感じさせられ、特に拾うわけでもないのに楽しい気持ちになる。(高橋正子)

○蜜柑

[蜜柑/横浜日吉本町]             [蜜柑の花/横浜日吉本町]

★蜜柑を焼いて喰ふ小供と二人で居る/尾崎放哉
★み佛に剥きたる蜜柑供へあり/皆川盤水
★仲直りしてをり蜜柑剥いてをり/小澤克己
★山は如何に日向の卓に蜜柑照り/林翔
★蜜柑山ふもとに布団たたく音/大串章
★手に蜜柑故郷日和授かれり/村越化石
  
  西日本で生まれ、育ったものにとっては、蜜柑は普段の普通の果物。わざわざ「果物」と呼ぶのも違和感を感じるほど。蜜柑は蜜柑。9月中ごろから出回る青蜜柑に始まり、2月立春過ぎに酸味と甘みが抜けるころまでが蜜柑のシーズン。蜜柑は冬の季語。10年ぐらい前までは、正月用に箱で買う家庭が多かった。今は少人数で、一箱の分量も少ない。昔は蜜柑箱と言えば木であったから、それを勉強机にした話もよくあった。蜜柑を炬燵において、一つ二つと手を伸ばし結構な数を平らげて、手指が黄色にになることもあった。剥きやすく食べやすい。蜜柑を盛った籠が食卓や炬燵にあれば、部屋が明るくなる。
 40年以上も住んだ愛媛は、蜜柑の日本一の産地。おいしい蜜柑のなかでも、またおいしい蜜柑はどこの産かということもよく知っている。5月ごろ辺りから蜜柑の花の匂いが漂ってくるのが普通の生活だった。秋になれば、一盛りいくら、バケツ1杯がいくらというような売り方もされる。ジュース工場に蜜柑を運ぶトラックが目の前をよく通る。一度は子供たちと近くに蜜柑狩りに出かける。瀬戸内海の素晴らしい景色と温暖な気候に育まれ、蜜柑が照るように熟れるのだ。10年ほど前だったろう。花冠の大会が松山であって、全国から同人が集まった。盛岡から参加された方が、松山城の二の丸庭園に蜜柑や伊予柑が生っているのを、しげしげと離れ難そうに見ておられた。初めて見たとのこと。もし、逆に私が盛岡を訪ねたならば、林檎が生っている木を離れ難くしげしげ眺めることだろうと思った。

 生家には蜜柑の木が二本と八朔の木一本が庭先にあった。八朔は申し分なく立派な木でおいしい実をたわわにつけた。蜜柑は、皮が厚く、酸っぱく、秋の終わりがきそうなのに、なかなか熟れない。子どもは、待ちきれなくて、まだ青いのを採って食べる。だからよけい酸っぱく、爪も痛くなる。改良される前の蜜柑だったのだろう。そんな記憶が蘇る。
 思い出したが、子供のころは、焚火をよくしていた。もちろん大人がするのだけれど、大人が去ったあとくすぶるような火に蜜柑の皮を剥いて、木切れに挿して焚火にかざして焼いた。火鉢で餅網の上で焼いたこともある。なんのために焼いたのかよくわからないが、焚火や炭火からぷうんと蜜柑の匂いが立って、蜜柑の渋皮が少し焦げて焼きあがる。温かい蜜柑だ。あまりに寒すぎて、蜜柑が冷たすぎるので、焼いていたのかも知れない。

 昨年イギリスに行ったときも、地上に降りて初めてスーパーで買ったのが、蜜柑に近いオーストラリア産のマンダリンオレンジと、林檎。これを夕食後に部屋で毎日のように食べた。これが旅行中の体調管理に結構よかったのである。蜜柑様々だ。

 ウンシュウミカン(温州蜜柑、学名:Citrus unshiu 英名:satsuma)は、ミカン科の常緑低木。またはその果実のこと。様々な栽培品種があり、食用として利用される。日本の代表的な果物で、バナナのように、素手で容易に果皮をむいて食べることができるため、冬になれば炬燵の上にミカンという光景が一般家庭に多く見られる。「冬ミカン」または単に「ミカン」と言う場合も、普通はウンシュウミカンを指す。甘い柑橘ということから漢字では「蜜柑」と表記される。古くは「みっかん」と読まれたが、最初の音節が短くなった。「ウンシュウ」は、柑橘の名産地であった中国浙江省の温州のことであるが、イメージから名産地にあやかって付けられたもので関係はないとされる。欧米では「Satsuma」「Mikan」などの名称が一般的である。 タンジェリン(Tangerine )・マンダリンオレンジ(Mandarin orange) (学名は共にCitrus reticulata)と近縁であり、そこから派生した栽培種である。
 中国の温州にちなんでウンシュウミカンと命名されたが、温州原産ではなく日本の鹿児島県(不知火海沿岸)原産と推定される。農学博士の田中長三郎は文献調査および現地調査から鹿児島県長島(現鹿児島県出水郡長島町)がウンシュウミカンの原生地との説を唱えた。鹿児島県長島は小ミカンが伝来した八代にも近く、戦国期以前は八代と同じく肥後国であったこと、1936年に当地で推定樹齢300年の古木(太平洋戦争中に枯死)が発見されたことから、この説で疑いないとされるようになった。発見された木は接ぎ木されており、最初の原木は400 - 500年前に発生したと推察される。中国から伝わった柑橘の中から突然変異して生まれたとされ、親は明らかではないが、近年のゲノム解析の結果クネンボと構造が似ているとの研究がある。
 ウンシュウミカンは主に関東以南の暖地で栽培される。温暖な気候を好むが、柑橘類の中では比較的寒さに強い。5月の上・中旬頃に3cm程の白い5花弁の花を咲かせ、日本で一般的に使われているカラタチ台では2-4mの高さに成長する。果実の成熟期は9月から12月と品種によって様々で、5 - 7.5cm程の扁球形の実は熟すにしたがって緑色から橙黄色に変色する。日本では通常は接ぎ木によって繁殖を行う。台木としては多くはカラタチが用いられるが、ユズなど他の柑橘を用いることもある。


◇生活する花たち「秋の野芥子・銀木犀・金木犀」(横浜日吉本町)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする