ゆっくりかえろう

散歩と料理

ブログ中の画像・文章の無断使用を禁じます。

匂い8

2015-12-02 | フィクション

「この並んだ自動車達はお客様の預かりものです 上得意様は 自動車を沢山お持ちです」

「盗難が心配な自動車は 此方でお預かりしております」

「盗難防止にもなりますから、此方も安心です」

律儀なガレージの保安員が 説明してくれた。

見ればガレージの出口は 柵や杭や鎧戸で守られて居るようだ。

「車庫内は赤外線センサーが張りめぐらしてあります 勿論監視カメラも」

「まるでどこかの宝石店だね」

「お客様の大事なお預かりものですから」

一番端の列に 薄い水色の洒落た小型のオープンカーが停めて有る。

ドイツ車 イタリア車ともフランス車とも違う のんびりした印象の中型のオープンカーだった。

これが1964年式フェアレディです。

「華岡さん、何か感じますか?」

「気配は薄いけど まだ何かいるね」

 何らかの(思い)だろうか。

 俺はクルマの隅々まで見た。 気配は穏やだ。

「このクルマがどうだというの」 

「管理人さんの話では 夜中 時々居なくなるんです」

ふーん、夜遊び好きな子猫ちゃんか………

きっと大騒ぎだろう

俺は運転席側(左ハンドル)のドアミラーの辺りを優しく撫でて「ご苦労さん」と呟いた。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。