わたしのおかあさんは
こどもは生んだけれど
おかあさんにはなれなかった
そんなひとです
こどものころになくした
自分の幸せを探して
そればかり探しているうちに
ほんとうの幸せを
置いてけぼりにして
ひとりぼっちで死んでしまった
そういうひとです
イクナッチャ サヤサヤ
イクナッチャ サヤサヤ
あの日
うちのそばにあった竹やぶが
必死にあなたをとめていたのに
どうして行ってしまったのですか
人はなぜ
時に
行ってはならない暗がりの道に
どうしようもなく
迷いこんでしまうのですか
イクナッチャ サヤサヤ
イクナッチャ サヤサヤ
あのとき 泣き叫んでいた竹やぶは
新しい道ができて
今はもうないと聞いています
(花詩集・14、2004年7月)