・・・・nostalgie・・・・♠
棄てゝ来たはずで、嫌いになっていても想い出してしまいます。
おまえの国は何処か、っと訊かれて、何処もっと。
言いたくもないし想い出したくも。だから許してほしい。
幾年も忘れようとして諦めきれずに、再びぃ徒然に。
幾度も胸の奥の闇の其処で、幾度も。
だからあの日から、想いで煉獄。
「なんやねん!それがどないしたゆぅねん、アホかッ! 」
「ァッアホってッ!・・・・ぁ~!そぅもぉぅわかった、もぉぇぇッ! 」
後姿に怒りを載せ、遠ざかって逝った今朝までの二人の歴史の片割れが。
今更でした、今更帰れるもんか故郷(クニ)ぅ!
口から出る言葉は、意地と知らずの何かがと。
たぶん思い上がりがのとゞのつまりの畢竟。
胸の中は存分な啼き声悲鳴が、満々とでした。
「なぁあんたぁ、踊ってた時ナァ、ウチぃどんなん? 」
「どんなんって ? 」
「ぇ? ぅん! 」
知りたかったけど、聞けず終い。
スポットライトに照らされた、舞台の上のお前はぁ、ホンマニ肌が綺麗やった。
華やかにぃ映されてなぁ、輝いてたわぁ !
「あんたぁ観ててくれたんかぁ 」
「ぁぁ綺麗でなぁ、巧かった(踊りがぁ)でぇ! 」
「ぅん、おぉきにぃ、ぁんたの為になぁ踊ったんやぁ 」
「ぅんっ! 」
「あんたぁ捨てたらあかんよぉ、うちのこと大事にしてなぁ 」
「なんやッアホか、ほかすぅ想うてたんかぁ、ァホッかぁ! 」
「泣くなッ!大丈夫や、捨てへんッずぅっと一緒や、ずっとなっ 」
この時はたぶん、先の事をです、感じ取っていたのかも。
「ウチの生まれたとこ大きな波止場があってね、近くに魚河岸があるねん。
店ぇしたらなぁ、仕入れが今みたいに早ぁにぃ出んでもえぇさかいにな
ぁんたも楽になるわぁ 」
「そっそぉかぁ、ぅん 」
「どないしたん?あかんのん? 」
「ぇッあかんことないよぉ、わいのこと想ってくれるんやなぁ 」
「そぉやぁ、いっつもあんたのこと想ってる、いっつもなぁ 」
「ぉおきになぁ 」
「なにぃミズクサイやんかぁ 」
此の時ぃ自分の故郷(クニ)を、想い描いていました。
心の中が、其の想い描く懐かしいぃ風景で、イッパイにぃ為っていました。
自分でも、想いもよらないことでした。
だから返事が、巧いことぅ出来ずに、でした。
上の空やったんですよ。
たぶん此の時期からでしょぉ。
自分とあいつとのです、何かが入りかけてたんやろなぁ、っと。
二人の間には溝とかぁ、隔たりとかぁ、意見の相違とかぁ、
性格の不一致っとかぁ、ッがあるとかぁじゃぁない。
他の何かゞです。視えないなにかゞやった。
「今日なぁ、言われたぁ 」
「なんおやっ?」
「スキぃやって 」
「ハァ?・・・・誰がや?」
「マネ~ジャァにぃ 」
「ぇッ!木元にかぁ?」
「ぅん、そぉ 」
「ッ! 」
「なに?なんもぉ言うてくれへんのん? 」
「なっなにぃ言うねん 」
「ワテのことぉ、好きとちがうんかぁ、愛しるんとちゃうんねぇ? 」
「ァホッかぁ、なにお今更ぁ言うねん、ッタクゥ! 」
「ぇッ!・・・・ソォ 」
この時も突然ッ!胸の心の中が郷愁でイッパイにぃ!
小さな子供の自分が、胸の暗さの其処で暴れていました。
心臓を止めそうでした。
「あんたの心な、おかしいねんッ! 絶対ぃおかしいわッ!」
「ぁあ~ケッコウや、おかしぃってケッコウやッ!・・・・ッヶ! 」
「ぁんたぁ可哀そぉやなぁ!」
「ぇッ! 」
泣いてたあいつ、こっちを見つめて泣いてた。
涙がポロポロ堕ちてた、古畳の上めがけて。
「なにぃ泣くねんっ!ァホかッ 」
「ぅん、ウチぃアホやったなぁ、ウチぃ・・・・ 」
「ぁんたぁ、近くまできたらなぁ、寄ってくれるんかぁ 」
って、出て行くときゆうてた。そして子供が出来たら、
オシメ入れにしようって造っていた、キルティングの布袋、
ワイに差し出しもって、ゆうた。
「此れぇ、とっといてんかぁ 」
たぶんアイツ、顔ぉ伏せてたと想う。
「なんや? 」
ワイ、顔ぉそむけもって聞いた。
「ぁんたが一番気に入ってゝくれたもんやぁ 」
「ぁ~そぅか、はよぉいかんかいッ!」
横向いて受け取りぃ、背中で言いましたわぁ
「ぅん 」
背中で、いっつも閉まり難かったドア、静かに閉まりよった。
外の鉄の階段をぉ、降りる足音がぁ、遠のいて逝ったぁ。
自分、あの時もぉこんなんやたなぁ っと。
暫くぅ ぼぉ~ っとしてたと想う。
狭い台所の窓から、晩い西陽が照らしてた。
だからね、奥の部屋が茜色してた。
クリーニング屋の針金のハンガーがイッパイ、部屋の中に渡した物干し竿に並んでた。
あいつぅ、ギョウサン服っもってたんやなぁ ッテ。
キルティングの袋の口ぃ開けて覗いた。
逆さにして中身を落とすと、畳の上に落ちた。
其れに、夕日が反射して眩しかった。
綺羅綺羅ッ!ッテ、スパンコールの、金色ラメが輝いてた。
小さな下着の様な、賑やか華やか舞台衣装ぅ。
扇情的な程の、小さな踊り衣装。
夕陽が沈むまで照らしていました。
畳の上が、自分が観た最後の舞台でした。
もぉねッ、わぁ~!やった。
膝を揃えて座り、太腿ぉ何回も叩いた。
両手でぇ何回もッ! 拳骨でぇ何回もッ!
ごめんなぁ 堪忍なぁ ごめんなぁ あほやぁ~!
アホやぁ!! アカンネンっ! 堪忍やでぇ !
もぉ堪えてぇなぁ ! ごめんやでぇ!
甲斐性がぁのぉてぇ かんにんやでぇ !
ず~ぅとぉ、こない言うてぇ叩いてた。
部屋がだんだん暗くなってきてた。
上着の両袖も、ズボンも、濡れてました。
涙ぁゆうたらなぁ、あんがい出るもんねんなぁ!って。
随分後になってアイツかて、ワイと一緒になるよりわぁ。
もっとあいつぅ幸せになるで~
っと、無理やり納得させました。
心をぅ 自分の心を