【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

 空蝉花火

2006年08月01日 03時17分53秒 | 異次元世界 


  

夜目にも河口の上の鉄橋 随分と古びて視えます

ときおり暗闇を 打ち上げ花火が瞬き照らす光の中
花火見物の人ごみに紛れて 海の潮風匂う鉄橋から 暗い川原を見下ろすと

貴方が肩を抱いているのを見つけました
わたくしよりも 若い方の肩を 

逞しく優しそうに 周りの人々から守ってやっている様に

 まさか・・・・! って



冷たい無骨な鉄の欄干 わたくしは両手で握り締めていました
手にしていた団扇 ひらひら揺れて花火映す川面にっと 落ちていきました
思わず窄めた肩 首が減り込むかと 
汗ばむうなじ 浴衣の奥襟生地が引っ掻きます

降って来た弾ける音に釣られ 黒色な夜の空を見上げると 光花が綺麗でした 
暫く見上げていました 湧いてきた涙で 水の底から見上げている様でした

 目尻から 堪えきれずに 零れ涙



 耳たぶから涙の雫 

喉元堪え切れぬ嗚咽と共に 落ちました 肩に 
目蓋をきつく瞑ると 脳裏に光の残像 淡く記します
昨日あの人と 二人で逢っていた時の自分
っと 今夜の自分との違いも 淡くでした

 わたくしの逢瀬は 
夜の陰で咲く花なんでしょうか



暑く蒸せる夏の夜の空気 生きてる液体の様に爆発衝撃で震え 
わたくしの躯に音を伝へ 想いの底に幻覚じゃぁ無いと 染み込ませます 

 光花咲く音 嫉妬の焔燃やす心に注がれました



海辺の鉄橋の上 花火見物の人で溢れています
夜空に 花火見物の歓声も 満ちていました
わたくしの 藍染浴衣の帯下肌 冷たく汗ばみます    
暑さじゃぁなく 醒めた冷たい感覚汗で っでした

欄干握っていた手を 胸元衿から胸奥に 膨らみ包む自分の掌
小さな硬くなった冷たさ 感じられ 哀しかった
強く掌に力を入れ 痛いほど握り締めました

 なにかが萎む様な
  なにかが 



赤い京絞り柄の巾着袋 京組紐で手首に結わえ 吊るし提げていました
手首からはずし 紐を緩めて中からハンカチをと
中を探ろうとして 突っ込んだ指の先に  ぁ! っと   
おもわず引きかけた手 其の儘にして中を
覗き観えました 花火の瞬き光で

貴方がわたくしにと 仏蘭西土産のクリスタル硝子の香水小瓶
透明小瓶の中で 琥珀色の香り液揺れ 光反射で綺麗でした

掌で包んで取り出し 川原を覗き見ます 
貴方の顔 此方を向いてました
顔 想わぬ驚きで 醜く歪んでいました 


此の世の 今夜の此処は 空蝉幻想世界になりました
鉄橋を見上げる貴方と 見下ろすわたくしだけの世界になりました

花火の音も 光花の輝きも 
人込みの音も 漂う火薬の燃える刺激臭も

 消えました 悉く

其れは 夜の闇の向こうまで視える 
 黒色透明空気の世界

静かさが、静かさがでした
無音の世界 が でした



橋の上から身を 投げました
耳元で 風切る音 微かな蝉の声
刹那で 直ぐに冷たき水の中
 
   


薄目を開けると 白い天井の蛍光灯が 眩しかった
あの人の顔が現れて 消えました
何処かでブザーの音が しています
暫くして白い帽子の女の人が わたくしの顔を覗きます
また暫くして 男の人が覗きます

何かを言ってる様に 口が動いてました

目蓋を閉じました 幾つもの光花の残像
瞬き輝いていました 幾つも
眠りは わたくしに安らぎを でした

  
次に目覚めた時 開いた窓が観えました 
窓の外の何処かっから 蝉の鳴き声が聴こえて来ていました
大勢の子供たちの声 もでした


 蝉の声 今を盛りにと 
  益々の様 でした



花火 綺麗だったかなぁ   っと





  


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