酒類問屋の二代目若大将が言うたとうり シャッター 可也の重さでした。
奥歯を噛み締め、オモイッキリ息ぃ詰めて、やっとの力で引き上げ開いた。
此処ら辺りでは可也ぃ名の通った 老舗の某酒問屋のです。
戦前から一度も建替えなしの、いかにも古色蒼然とした赤煉瓦壁造り倉庫
其の両開きの鉄扉っの前に、後から防犯を増す為に取り付けられた
今では古いタイプになってしまった 電動シャッター
電源が入っていない為に、動きが渋く此れでもかと重たいシャッター
っを引き上げる時っ、今頃になって酔いが ドッカン!っと追いついて来た。
其れでも!、ヤット!っ の思いで引き上げる。
っと、赤い錆色が表面を覆った、古い鉄の扉が現れた。
倉庫の敷地の外から照らす街灯を背に 肩で大きく息継ぎしながら
闇を透かして手元を覗き視ると、現れた鉄扉の 鉄製の太い横棒閂にぶら下がる
時代劇の牢屋のシーンに使う小道具みたいな 昔風の大きな錠前っが。
動悸も激しく乱れた息なんとか殺しながら 手探りで掴んだ錠前に
預かっていた此れも可也な古さの鍵を 指先で鍵穴見つけて差し込みました。
鉄扉。シャッターみたいに駄々コネナイデ錆び付きの軋み音も無く
素直に開きました。 人一人がなんとか抜けられる位に。
酒屋倉庫の独特の、色々な酒精と黴臭さ、それに埃っぽさが混ざった匂い
っが、倉庫の中に突っ込んだ 自分の顔を舐める様に襲ってきました。
両開きの鉄扉 大きく開け放つと、斜めに差し込む銀白色月明かり
倉庫のコンクリ土間に降り注ぎ、土間を白く浮き上がらせます。
壁際に、大瓶ビールの木箱ケースや、空の日本酒の一升瓶が詰まった木枠箱
何段にも積み上げられ、その空瓶から酒精の匂いぃ益々とぉ
自分っ奥の方で、舶来ウイスキーが詰まってるだろうっな木箱を見つけて、座りました。
息を何とか整えもって 暗闇から表を見詰めます。
此処まで来るのに おかぁはんに借りて飛ばして乗って来た、
可也な年季の入った、荷台のデッカイ仕入れ用の綺麗に良く磨き込まれた
黒色自転車 表にスタンド立てて置いています。
その自転車の二つのタイヤの影ぇ、コンクリ土間に映っています
なにやら此方に向けた 楕円形の形にデフォルメされた影で。
自分、煙草を三本続けて吸いました。暇つぶしに。
吸殻、指先で弾いて表に飛ばしました。
赤く輝く小さな点 クルクル回りながら飛んでゆき 落ちました。
地面で弾むと 線香花火みたいにぃ 火花がぁ ・・・・ !っ
瞬間輝き火花を観ていた自分 喉ぉ 強烈にぃ乾き続けていました。
煙草のイガラッポイ味ぃ 口の中で暴れていました。
乾いた喉の粘膜には、何かが絡み着いてる様やった。
無性にぃ堪え切れないほど 何かが飲みたかった。
出来る事なら、カリカリに冷えた生のビールがぁ・・・・っと。
自分アホな事をぉ・・・こんなんやったら、小便も絞り出んなぁ・・・・っと。
突然っ聴こえてきました、外の暗さの中から囁く様な声が
「こぉじっ 何処や? 」 って
夜の暗さの向こうは闇雲に 暗さだけじゃぁないねん。
黒色が中身を隠しているだけで 闇の中でしか見えない事もあるねん。
「こぉじぃっ どこやねん!っ 」
土間に ユックリと影が伸び出てきた。
自分っ返事の代わりに 闇の奥にまでも微かに聴こえる様に
口の上顎粘膜を舌で打つ音 微かにぃ。其の舌打ち音が目印合図でした。
真二、街灯の明かりを背に、窺っているようでした。
その合図に向かって 酒屋の倉庫の暗闇に入るの
躊躇しました。
思わず何かに縋りたい気持ちがっ やろかぁ真二 肩越しに後ろを振り返ると
背後の街灯 電球の芯切れかけ、点滅してた。
消えかけ街灯 電燈の笠斜めに傾いで錆びが浮き 蜘蛛の巣に覆われていました
此の時期にしては気の早い夜虫ぃ 纏いつき飛んでいるん 見えた。
自分、こないなぁ時期に虫かぁ っと 想いました。
視線をぉ倉庫の入り口に戻すと 真二の立っている影 動いた。
「こぉじっ 気ぃ使わせてわるかったな 」
「ぇえよっ 気にすななぁ 」
真二が上着の懐から 煙草の箱ぉ取り出すとき、
左の手首に嵌められた手錠、月明かりを金属輪っかで冷たく反射し
ぶらぶら揺れて 吊り下がっていた。
影の中に白い歯が見え 煙草が銜えられた
「 ・・・・えぇかぁ そぉかぁ 」
「 ぅんっ えぇ 」
「 こぉじぃ ・・・・喉っ乾かへんかぁ? 」
「 ぁあ、乾いたなぁ ・・・ 此処やったら呑み放題やでっ 」
「 そやなっ 呑もかぁ 」
っで、二人で手探りもって倉庫の中を探検
暫く探して木蓋が開いてる 洋酒の木箱からでした。
見えないけど銘柄は、化粧箱の感じと箱から取り出した瓶の形から
たぶんスコッチの スイングかと。
土間に瓶を そぉぅっと置いて首を摘んで傾け 手を離すと瓶
暫く揺れ動き続け 中の琥珀色液体 青白色の月明かりをぉ・・・やった。
「この酒ぇ あんまし旨いことないなぁ 」
何度か、二人の間を瓶が行き来してから、自分が言いました。
「うんっ女ぁ口説く時にぃ面白がらせるんやったらえぇ そんな酒やでぇ 」
「 そぉやなぁ 」
自分ら 立て続けに煙草を何本も吸いました。酒の肴にする為に。
酒瓶っ幾度も二人の間で手渡しあいました。喉の渇きを癒せるとぉ・・・。
酔い、なかなか巡ってはきてくれませんぅ ・・・。
お互いにぃ無言でぇ ・・・やった。
本題に入るのが どうかなぁ? って
遠く近くで パトカーの甲高い悲鳴がぁ
タイヤが転がる音がした 二人顔を表の暗闇に向けると
エンジンを切って、惰性で走ってきた明かり消した車が 停まった
ブレーキの赤ランプ 辺りを赤色に染めた
ドアが開くと 室内灯が点いた。
見覚えのある髪型が見え 直ぐに天井に手が伸び明かりが消された。
「なんであいつがくるんやっ! 」 真二
「知らんっ ? 」 自分
此れじゃぁ夜が益々 ヤヤッコシクなってくるなぁ ・・・っと。
自分っ酒精ボケした水銀頭でぇ そぉぅね想いました。