雨は、薄墨の雨は、夜を通して降る雨なんですけど、
雨音が、寝床のボクを慰めてくれてるようで聴き飽きないんです。
眠るまでのひと時、ジット静かに耳を澄まし聴いてゝも、飽きないんです。
静か雨の音、纏まれば、耳の奥に溜まります。
静か濁音で、ボクの俗な世間で、妖しくまみれた意識を澄ませます。
夜の道、小雨なら、薄墨に棲まいし物の怪どもと歩きたい。
水溜り、小さき波紋で模様する粒な雨なら、紺色鼻緒の下駄で歩きたい。
油紙貼りし番傘なんぞを、竹林のザワメキのなかで差し、寂しさ抱いて歩きたい。
薄墨で造られし酒を呑みたいなぁ。
酒蔵並ぶ町並みには、軒に新酒の杉玉吊られているのかなぁ。
緩き風にソボ降る雨が舞う通りから、ひとつ路地奥に在りし地元の者が常連な飲み屋。
薄墨訛りの喋り飛び交う、行燈灯せし薄暗きが心癒しな店の内。
ポツリと、独り手酌で呑んでたら、仲間に入れと呼びかけてくれるかなぁ。
そぉなればボクはキット、恥ずかしいけど嬉しくて、微笑みながら目に涙。
何故ッ泣く?
ット、誘いしお方に問われゝば、ボクは、チョット格好つけながら言いましょう。
此処が、幻かと気づかさない優しさが、ボクを泣かすのさ。 ッテ
外は、雨上がり、夜の雲の割れ目から シャクレタような月が覗きます。
水溜り鏡に、瓦斯燈が逆さで映って揺れてます。
ボクが、懐かし心で迷い込み、何方と想われ心で創る薄墨の町。
ぇッ 何処に在るかッテ? 問われてもぉ・・・・・・ぅ
ボクが夜中に迷い子になったとき、優しいナニかに導かれ、辿りついた処です。
薄墨の町を覗けば、真珠の如き言葉が溢れ、言葉に酔わされてしまいます。
ボクは真珠の霊(タマ)に付き添われて歩きながら、迷いこんだのを嬉しがります。
其処に住まいし方々は、親戚ならばいぃのになぁ。ッテ
古き階段板を踏めば、後ろの廊下の奥まで聞こえそうな軋み音。
静かに踏みしめ登れば、薄暗き上から、雨垂れ音みたいな豆撒く音がする。
観れば、真珠輝きの小さき玉が一粒、階段跳ねながら。
身を、階段壁に寄せました。
ボクの素足の甲を優しげに打ち、下にと。
目覚めることなく、いつまでも、いつまでも、居りたいなぁ。
わたしのような者にくださった ≪一遍≫ へのお礼です。
ありがとうございます。