【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

 雨情 

2008年06月24日 01時51分40秒 | 幻想世界(お伽噺) 
  



小糠な雨は、夜を湿らせながら幽かにも、音なく降り続けています。


夜の不思議さを想わせる雨は、見せたくて結いし黒き髪を優しさで重たく濡らします。

はたくしは気落ちな情けなさで俯き歩き、髪の雫が肩にかゝれば

容赦なく心をいつまでもと濡らさせていました。



静謐な夜の中を漫ろ歩きいたしますれば いつの間にか辿りきました。

其処は忸怩たる想いで、限りにと忘れ去りたい場所でした。

だけど、忘却など決して出来ぬ事なれどと、此のごろ漸くにと決心いたしました。

そして、あの時に忘却したはずな若きころに住まいし世界にへと、往きあたりました。



驟雨は、夜を優しげに包むかと突然に降りだし、雨に煙られゝば我にと返り


 此処はぁ!ッ


ッテ想わずに雨雫滴る顎を上向け、見上げまするは古き瓦斯燈。


高き頭上にて燃焼いたしまする、雨に煙りし瓦斯の黄色き灯りにて

裸足で踏み浸かりし水溜まり道を、仄かさで照らされておりましょう。



夜だからで、なにかおさせましょうな夜の色は、星の明かりで煌めき輝きし黒曜石色。

其の色は、はたくしの想いの如くに深きな黒色で染まり、夜の帳の観へぬ向こう側にて、
 
幾度もと見つけにくゝと叶わずな、若きあの頃の思慕の念の色彩。


深き想いしことは幾らもと伝はらず、真逆に為されては囚われて求められず。

其れは堪えて限りになんでしょうかと、はたくしの胸の深き其処の方では

視えぬ激しきものにて、滅多と繰り返し打ちのめされ続けていました。



雨の夜は、重たき深海の冷たさな静かな暗さで満たされつゞけています。

必死さで幾ら見つめても、観えぬほどな遠き向こうから流れきます。

叶わぬと想い知らされし、嘆きな悲しみが誘いし緩やかな風が。


はたくしは夜に迷いし彷徨い、其の風を慰めで吹かれて一心に浴びました。
 
幾度もと望むことは裏切られて叶はず、想いな勿忘草は枯れ続け。

忘れさなくし限りにと儚く望みますれば、優しさに吹く風が、

はたくしの耳元にて、そぉっと囁きました。


 終わりにしましょぉ




雨は、静かさな降り方なれども、はたくしには静かさが思いのほか身に積まされ
     
降る雨は、耳朶に当たりて音を発し弾け散りては、頬を濡らしまする。

夜の中での雨音は、はたくしの言訳調子な音に聞こえてきました。


!ッ ぁの時のぉ・・・・・嗚呼


っと夜の真黒な暗さな幕の手前に降る、雨の暖簾を透かし観ればぁ。

忘れたはずのあの場所にぃ、赤煉瓦造りの喫茶店がぁお見えです。

之も妖しげな、物の怪さんらの悪戯なんでしょうかぁ?


でもね、またね、耳元で囁き声がぁ。 優しさイッパイのね。


ホレお前様の懐かしぃお人サンがぁ、あの店で珈琲なんかを啜り随分とお待ちかねだよぉ。


はたくしは、囁きに自堕落にも溺れそぅになりました。

そしていいんですよと、自分の胸に言い聞かせました。


一夜の幻な現実ならば、想いと共に此の我が身もですねぇ

幻想な、限りある世界に沈んでもいぃんですよぉ ット。



雨は、はたくしの躯を透り抜け、何処までもと下に向かって降っていました。





にほんブログ村 小説ブログへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
あらら (callcharlie)
2008-06-24 09:07:17
この色の菖蒲は素敵ですね。菖蒲は濃い色が多いのですが。写真も綺麗です。
返信する
不思議な気持ちです (たけかな)
2008-06-27 14:02:28
不思議な気持ちになりました。寂しい中にもしっかりと温かさが残るような小説でした。
ありがとうございます。
返信する