【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

夏祭りの夜の幻想世界

2007年08月15日 00時12分14秒 | 異次元世界 
  



むかしは、その時代のせいか、今、祭りの夜に見られる夜店のように

派手な電飾を灯し、色々と趣向を凝らした露店はあまり見掛けませんでした。

売られてる色んな品々、奇妙に光ったりしたり、彩色した樹脂で作られた玩具類。

お菓子なんかも豊富な種類で、幼い子なら目移りしそうなほど。

昔はそんなに沢山な種類はなかったように、記憶がわたしに話しています。


普段は人気もない鎮守の森の神社、その表参道から境内までの石畳の道

道の両側に並ぶは、簡単なテント拵えの露天、その軒先から吊り下げられた祭り堤燈。

それは祭りの夜だけの、なんとなく心が騒ぐ賑わい世界。


売り物は自然が育てた色々なもの それをあれこれと工夫して

見た目も食をそゝるようにとやって、祭り見物の客が興味を抱く様にと

露天商のテキヤは、それを口上で売ろうとします。

今宵だけのと、夜店の雰囲気お楽しみ客

それを聞きながら、本意で買おうといたします。


夜に燈す灯かりもです。

今の時代みたいな、発電機廻しての明るいものじゃぁなかった。

暗い参道の両側に並んでる、蝋燭燈す行灯や提灯。

露天の店先には、良くてトーチランプか灯油のランタン。

稀に、ポツンっと立ってる電信柱の、暗めの裸電球外灯。


だからね、祭りの夜の朧気世界は、仄かな人の影姿が集まり溢れて

何処かにへと、そゞろで流れて往きましたよぉぅ。


祭りの夜だけだよ、っと、親は我が幼子に棒の先に吊るした空き缶で

小さな蝋燭を灯す簡単なランプをね、作ってあげます。

子はそれで、この夜だけにと許されし火遊びに耽ります。


黄昏の夕立奔った後、茜色の夕陽と共に、大人も子供もゝ待ちどうしい

今夜限りのと、想いとともに宵祭がやって来ます。

子らは、近所の遊び仲間と連れ添い、互いの親が作った缶詰ランプを見せ合います。

それから限り有る本数の最初の蝋燭に、マッチがもどかしく擦られて灯されます。

儚げな、黄色い蝋燭の炎がです、子の顔と心を照らします。

嬉しげに、小さな瞳が炎を見詰めます。

頬を緩めます。 無心なほころびで。


棒の先に吊り下げた灯かり。

子供には、足元を小さく照らす明かりが、凡てな世界でした。

祭りのですよ。


闇は一際に、祭事が執り行われる境内の周り、暗くいたします。

そこに続く、踏み磨り減った石敷き道の両側に、朱塗りの柱の行灯が並んでいます。


巨木の朱色が剥げ掛けた、闇に佇む大鳥居。

二人で潜って抜けると、暗闇の向こうがわに光の賑わい広場が。

わたしは無言で何かゞと、淡き微かな物、胸に抱いてました。

君は此の時、なにを想うていましたのでしょう。

心の想いを確かめたくても、暗さな夜の雰囲気、何故にと聞かせませぬ。


賑わい境内広場に近づくと、人の蠢く影ばかり。

蒸し暑さがと、溢るゝばかりの人息れ。

人の声、竹やぶ笹が風になびくよな、ザワザワザワの集積。


いまだ青二才の若者は、周りのそれに意識負けして酔いました。




歩きながら夢想に耽ります。

おもわずに、傍らの柔らかい手の甲触れ合いました。

勇気をふるって握り締めます。 すると、強さが返って来ました。


人ごみをかわす振りして、顔を横向きに。

祭りの明かりに照らされし、輝き映した瞳がこちらを。


わたしは想いが眩しくて、視線を逸らしました。


祭りの夜は更けます 何もしなくても夜は深まって往きます。

想いだけが 今夜は何処にも往けずに、濃密に積もります。

歯痒さが心で軋みます。


想いの彼女の浴衣が、闇に紛れます。

追います、手を繋いだままで。 逸れまいとして。


境内をめぐる生垣を抜けますると、闇だけど、祭り灯りで薄暗な河原が。

さらさら流るゝ天の星映して光る川面の両側。

薄暗な河原では、祭りの夜風に吹かれて、背高い草の影が揺らめいてました。


河原に下りました、川と岸の境目にいきました。

下駄が、河原の砂利を踏みます音、水の流れ音切ります。

水に下駄ごと足首まで。

手を繋いだまま更に、流れに踏み込みました、

わたしは手を強く引かれて、斜めにたたらを。

躯は仰け反り横向きに、手が離れて空を摑みました。


背中から水に。


貴女の笑い声、空に向かってけたたましく。

わたしも、釣られて笑いました。

水の中から仰ぎ見る、星の明かりが綺麗でした。


土手の堤の上で 誰かが花火を。

鮮やかな閃光が 瞬いていました。



もお一度、無理を承知で、出来る事ならばと

あの時にぃ戻れたら良いなぁって。


想うん、あかんかなぁ ?