【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

幻想夜話

2007年08月04日 00時43分07秒 | 幻想世界(お伽噺) 




初夏の なに想う寝苦しい宵

慰めは蛍です


床机に座っています 貴方と少し離れて 

想いとは裏腹でした 傍にです


闇に輝く小さな赤い点 蚊遣りが匂います

想いが 視えない夜の向こうにと漂います 


闇の壁 透き通るかと 静かに眺めました貴方と 


暗闇に 流れる音だけ聴こえる小川の向こう

瞬く黄色い点々 いっぱいです

蛍です 無数の蛍です

闇で見えぬ川面に点々 映っています

数え切れません



あなたの 浴衣の袖をたくし上げた左手 キリコ硝子の冷酒の徳利

二人の間の 氷水を満たした木桶から 氷を鳴らして取り上げます

右手に竹骨の団扇 藍染の浴衣の裾からのわたしの足元 扇ぎます

薮蚊だから


ほれこれぇ、気ぃつけやぁ

蚊ぁがぁ好きやぁ~ってぇ刺しよりますよぉ って

扇ぐ風が裾から忍び込みます ぬるい想いの風

わたし 溢れる想いの溜め息 潜めます

吐息も


夜の黒色な向こうから 貴方がわたしに掲げます キリコ硝子徳利

キリコの刻み溝 映す星明りが仄かに 仄かにこちらにと 

粋ぶってわたしが差し出す硝子の猪口 そぉっと 注いでくれます 

満たされます あなたの想いの丈が


少し溢れました 


溢れた雫がです 玉になって星明りをです

映しながら ゆっくりとです 私の膝に落ちました

闇の感覚が そう魅せました


冷たさが またぁ吐息を誘います

吐けば 尾を引いて 静かに流れ出ました

察した蛍 刹那に尾っぽの黄色き光 消し去り

透明黒色な闇に 逃げ込んだのかと 


噛み締めた唇 開いて含みます

熱い冷たさを  限りにと含みましょうかと

貴方に解からぬ様に 舌で味わいます 

貴方のわたしをの 思慕を

細くゆったりと 想いを心で語りながら 嚥下しました


闇の向こうに ご返杯 

硝子に映す星明りが 向こうに

闇に一度 潜めた様な硝子と硝子が触れ合う音 


注ぎました 見えませんが 呷られます 

飲み込む音だけが 聴こえます

貴方からご返杯 映す星明りが 直ぐに注がれます


暗闇に 秘めたる酒宴 盛ります

お肴は 蛍

蛍の 仄かに耽るように瞬く光 想いの瞬き


朝は来ません様にと 念じます


酔いが 浴衣の裾を乱れさせます

氷が溶けた木桶 地面に落ちました 

地面が 濡れました 


星空が 広がりながら映ります 


闇夜に硝子が割れる音 小川の向こうに響ます

吐息が闇に浮かびます 虫達が黙りました




わたしの片足の下駄が抜けて カランって鳴りました


音 闇に響きました