≪ 其の弐 ≫
サテぇ、はるか彼方の天界でなにやら、おかしな出来事なんかが勃起しております。
ぁッ!・・・ェ~わたくし只今、出だし早々お間違いなんかいたしました。
スイマセン。 ≪勃起≫じゃぁなくって≪勃発≫です。 ごめんなさい。
「ぁれッ! 爺さんや爺さんッ 今なぁ天の川でなんかぁ光りましたよッ!」
「ハぁあぁ?・・・・婆ぁさんや今なッな、なんて?」
「おッ!じッいぃいさんッ! 天でなんか光りましたんですよッ!」
「ぅわッ!聴こえてるがなッもぅ!アホッ!そないにぃ大ッきぃ声ださんかてッ!ッタクゥ・・・」
只今、爺姥(ジジババ)が会話しております此処はね
絵宙事の天界からは随分とかけ離れております、地面の上。
モノホンの正真正銘の、湿った土の香りがする、地面の上。
ッデお二人は、憧れの(爺様が勝手になんですよ)今ハヤリの自給自足的、田舎生活者です。
一応っでんな、ここん家の主人格、爺様のお名前は ≪次作≫サン。
っで、嫌だ嫌だって何回も言ったけど、次作爺さんに無理にとひっぱられて
いつのまにか数十年も田舎暮らししている、可也なお歳を召されてて
皆からは通称≪トメババ≫って呼ばれております、少々古ぼけた正妻の≪止め婆様≫。
ぁッ!・・・・・まッえっかぁ? トメなんやけど、えっかぁ・・・・
チョット汗ばむ夜に、藁葺き屋根の軒下で、仲睦まじい老夫婦がね
二人仲良く床机に座って風流にも、夜空の星見をと小洒落ています。
ッデこの ≪爺姥:ジジババ≫ なお二方ね、何を隠そうッ!・・・・?
かの有名な ≪かぐや姫≫ さんの育ての親ですねん。
「なにがや、なにが光ったって?」
「爺さんや、天の川の真ん中辺りで、ピカって光りましたんやッ!」
「またぁ、ッチ!婆さん眼ぇが悪いのになぁ、なにが観えるんやッ!この嘘つきがッ!」
「なぁ、なんやってぇ! 」
「ばばぁ!見えもせんもん見てからに、眼ぇがどないかしとるんやろッ!」
「なに言うかッ!惚けたあんたに星見る嬉しさ、叶えてあげようとしてぇック、クソジジィ!」
「ぬかせッ!要らん世話じゃ、どアホッ!酒じゃ、酒が切れたんや持ってこんかいッ!」 ヨッ!春団治ッ!
まぁ元々このお二方、仲はたいそう良かったんですけどなぁ。
ばぁさんが少し誤解しておりますねん。
ホレ、例の、義理娘の≪かぐや姫さん≫のコトで。
婆さんと爺さんの間にはね、お子が居らんかったんですよ。
まぁ、この時代、≪子供は神様からの授かりもの≫って
例えがあるくらいですからね、いつかは授かるかなぁ・・・・って。
ッデも、何時まで経っても授からずに、お互い歳ばかり喰っちゃッテねぇ!
ところが或る日、爺さんがどうしたことか、赤子を連れて帰ってきました。
山の麓の一軒家みたいな所ですからね、そんなに人さんが訪れるはずも無い。
それじゃぁ、何処の何方がこの赤子を捨てはったんかなぁ・・・・?
ッデ姥様、モシカシテ、嘘やろぉ?ぁ、そぉかッ!
確かぁじい様、去年の秋口からナンヤカンヤと理由をつけては
ナにやらメカシコンデふもとの里へと、イソイソト用もないのに何回もッ!
ッケ!・・・・じじぃ色気ついたかッ!
(誤解の無いように言っときますけどなぁ、この時爺様まだまだ壮年期。
場合によったら、「わしゃぁ未だに現役やんかぁ!」ッナお年ごろでした。)
ッデ、隠し子。爺様のぅ!隠し子ッ!っと。姥ぁ様邪推いたしました。
「あんたッ!この赤ちゃん何処の子なんやッ!」
「知るかッ、竹を切ったらな出てきおった 」
「アホかッ!痔ぃさん、どこぞの世界に青竹切ったら赤子が出るちゅうねんッ!」
ッデこの時、婆さんこぉう考えハッタ。≪爺ぃ、惚けハッタかッ!≫ ット。
【ェットぅ、只今、不適切な漢字表示がありました。
≪痔ぃさん≫やのうて、≪爺ぃさん≫ですねん。
不愉快な想いさせてもて、御免やっしゃでぇ!】
「お前さん、もっとましなことが言えませんかぁ?」
「なにがや?」
「・・・・・・あんた、これなんや?」
「指やがな 」
「ホナこれ? 」
「チョキッ 」
「どや? 」
「パー 」
「・・・・ハァ~ッ」 ッテ、固めた手ぇに息カケデすねん。
「ぐぅ~ヤンカ、舐めとんかぁワレ? わッ!なに振りかぶってるんやッ!ギヨャッ! 」
爺さん、☆ボクッ!★ッテ頭ぁのテッペン怒突かれたッ!
ババァの握り締めハッタ骨ばった拳骨で、続けてもう片方の拳骨ッ!
今度は、爺さんの反対側の薄毛な側頭部ぅ~!
かんッ!ッテ、可也な硬い塊叩いた音したで~!
「グゥゲッ!・・・・痛ぅ~ぅぅぅイッ痛かばいッ!ナンバすっとかぁ!」
ッテ爺さん頭抱えて蹲り、思わず子供時分に育ったお国訛りが出ますねんッ!
「ぁれ!おかしいなぁ?痛さをお感じしますんかぁ!ホナ、大丈夫なんかぁォ・・・ッカシイナァ? 」
「なにが大丈夫ぅ!ってかぁ?なにさらすんやッ!」
ットここで、頭にきたじぃさん、猛烈痛みを堪え反撃ッってかぁ!
っが、ババァ御見事なる、カウンターパァ~ンチッ!
「げはッ!」ッテもぉぅ!言葉で言い表せないような「げはッ!」ッテ声。
「げほッ!」ッテ方が、ちかい表現かもなぁ・・・・?
「なんばすっとかぁ!ぇ?ぁ!わッ~半紙、半紙やッ!ティッシュやぁ!」
じぃちゃんもぉぅ!鼻から赤い血ぃ垂ら垂らぁ~!
「おじいさんや、もぅチョットお詰めハッタ方が、えぇんとちがいますぅ?」
「ぉッおぉぅ!ほぉかぁ・・・・ 」
鼻の穴に半紙をチッコク丸めたのを、突っ込んでますねん。
鼻血どめになぁ。
まぁぁ、夫婦喧嘩なんてのはなぁ、アンガイこないなもんかなぁって。
何も娯楽がないトッテモ平和な田舎の生活、毎日の暮らしの変化って
たまぁに起こる、夫婦のカァワイイぃ口喧嘩くらいのもんです。
まぁチョット普通の喧嘩からは、逸脱モンやけどなぁ!
じぃさん、夜空指差して
「はれぁ!あなかぁあぁるぅあぁわあ・・・・」
ぇ~いッ!じゃまくさいわッ!次作爺さん鼻声やし
おまけになに想うてか口ぃ開けっぱなしで喋るやろぉ!
マッタク、意味解らんッ!
お後の話の流れの都合上、キッチリ翻訳しときます。惚けッ!
「ぁれぇ!なんかぁ明るくなってるでぇ」 ですねんッ!ッタクゥ。
ッデ、二人揃って夜空を見上げました。
「じぃさんや天の川ですよ、ホレわたしがサッキ言いました、光がッ!」
「へッぇ~! ぇッ、ありゃぁ光とチャウでッ、火の玉やんかぁ!」
「サッキはもっと、チッコカッタんですよ・・・・ぁ!また光ったッ!」
観れば、宙の中で次々と光が現れています。
「なんやッ!イッパイ光ってるなぁ?」
二人とも、まぁこの怪奇現象にぃ魅せられてますよぅ・・・・
ッデここで爺様 タブン? ッテお気づいてきます。
「チョット≪とめ≫なんかぁ、あの光ってるんなぁ、だんだん大きゅうなってコッチにぃ・・・」
「ジッじぃさん、こっちにぃ 」
「バッばぁさん、逃げたほぉがッ!ぁ 」
えぇでッて言葉を吐く前に、まぁアンサン二人とも、歳とは想えん敏捷さッ!
速い早いッ!可也な俊足ッ! これが老い惚゛れ老人の身のこなしかッ!
二人キッチリ背筋を伸ばし、無駄口叩かずひたすらサッサト眼の前の
青いススキの原をどこまでもッとね、突っ切ってゆきますねん。
先ズ眼も眩む閃光ですッ!背後からッ!
ッデ、何の光かと想う間もなく襲ってきました。
今まで二人が生きてきた人生で、体験験したことも無い
耳を劈く爆発音ット衝撃波ッ!
ドッカノ男と牛が吹っ飛んだのと同じようにぃデッセ
吹っ飛んでいきますがなッ! 爺姥(ジジババ)がッ!
飛んだものは、いつかは落ちます。
それがタマタマ萱の原やったんです。
爺姥様、剥き出しの手、腕、脚、顔、首、ッの全部ね
鋭い萱の細い葉っぱで、切りまくられながらね
激しくゴロゴロって転がりましたとさ。
まぁこれで二人とも、仲良く≪おじゃんッ!≫かな?
≪おじゃん:ウットコら地方の可也な丁寧語:お終いっとかぁ:済んだッテかぁ:最後≫
暗い夜のしじまの中で、藁葺き屋根の家が激しく燃え上がる音
今はもぅ・・・爺姥がズダみたいに為って横たわるススキの原や
毎日朝早くから耕していた、猫ノ額ほどの田畑ねぇ・・・・!
燃え上がる炎に照らされて、暗闇とおして辺りに聴こえます。
心よりのお悔やみを添え、合掌ぉ・・・・
ッデ、ここで突然ッ!≪とめ婆ぁ様≫声挙げたッ!
「じぃちゃん!家が突き刺さってるッ! 」
「ぁほッ!なんかが家に突き刺さってるッ!やろッボケッ!」
爺姥ッ!
二人とも生きてるやぁ~んッ!
中編、此処まで。
≪其の三≫にへと、つづく。