横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama

位置情報、地理情報に関するサービス、その他日常生活から思ったことを気ままに記す不定期のんびり日記

設立満10年にあたり

2012年03月17日 14時08分12秒 | ビジネスetc
 先週、3月13日に、オークニーは設立満10年を迎えた。10年は長いか短いか、という点では、10年分の数々のドラマが詰まっているため、短いとは感じられない。ともあれ、節目とされる10年になったということだ。この間、オークニーを支援していたただいた、お客様、そして広い意味でのサポーターの方達に心よりお礼を申し上げると共に、仕事を通じて日々貢献をしてくれた社員の皆さんにも大変感謝している。

 10年前、2月末で勤務先が閉鎖され突然失職し、その理不尽さ故にサラリーマンをやる気は失せてしまっていた。さりとて、起業の準備など全くしておらず、ともかく何か稼がないと・・という状態から始まった。ただ、仮にもう一回サラリーマンをやるにせよ、自分で事業を興すにせよ、当時閉塞的に感じた地理情報の業界を変える側に回りたいと思っていたのは確かだ。そんな中で、会社だけは設立しておこうと、資本金300万円で有限会社オークニーを作ったのが、2002年3月13日だった。

 地理情報システムの導入支援の仕事を細々と行っている中で、オープンソースの地理情報ソフトウェア(今はFOSS4Gと呼ばれる領域)の可能性に気がついたのは、それから1年少々が経った頃だった。日本国内で、それをツールとして使っている事例はごくわずかに存在していたが、事業テーマとして取り組んでいる企業は見あたらなかった。だが、私には、事業テーマとして、理屈抜きにとても魅力的に感じた。理屈抜きだったので、オープンソースを事業とする際のビジネスモデルを見出すまでに1年以上かかり、それを専業にするまでにさらに1年以後の2005年も終わりの頃だった。それまでの間は、国内での導入支援に留まらず、タイ、マレーシアでのカーナビ事業立ち上げなどのプロジェクトの支援をするなど、食べるためには好き嫌いを言わずに飛び回っていた。

 B2Bの地理情報分野は、ここ10年、一貫して逆風である。民間分野ではドットコムバブル崩壊とデフレの継続、そして公共分野では財政赤字による歳出削減の三重苦が続いている。今思えば、そんな分野を選んでしまったな(苦笑)とふと思わないでもないが、でも私はこの分野にやりがいを強く感じているのだから、仕方ない。そういう厳しい中にあっても、事業テーマのFOSS4Gは、じわじわとお客様の支持を集め、オークニーも売上を少しずつ増やすことができた。何よりも嬉しいのは、日本という国を、世界でもFOSS4Gの利用が大変活発な状態にすることに大きく貢献できたことだ。

 もし、FOSS4Gに出会っていなかったらどうだったか? 間違いなく、組織をここまで大きくできなかっただろうし、それ以上に、社会に対する影響力もほとんど持ち得なかっただろう。どこかのベンダーの製品を使ったカスタマイズを行うだけでは、何ら差別化できないため、収益的にも大変厳しいものになっていただろう。

 経済全体のパイが縮小するような時代においては、皆がやることに合わせる、というのは新参者には「死」を意味する。差別化こそが適切解だ。例示すれば、「他が皆Oracleをやっているから、うちもOracle」ではダメで、「他がOracleをやっているから、うちはPostgreSQL」とならないとダメだ。さらに、オープンソースは、最大の貢献者が最大の受益者になる。結果論として言えるが、「他がESRIをやっているから、オークニーはFOSS4G」で、「コミュニティに貢献し続けるから、事業が継続できる」のだ。

 事業戦略としては、振り返ってみれば間違ってはいなかった。ただ、組織作り、人作りという点では、それはそれは大変苦労をしてきた。それなりのサラリーマン経験の蓄積があったからといって、「経営者」として会社の組織を作るということは、私には未知の領域だった。最初の5~6年は失敗ばかりしてきた。手痛い体験もしたし、悔しくて夜も眠られない体験もいっぱいある。そう、この「夜も眠られない」という体験は、経営者になってからというもの、ほとんど数日に1回の割合でするようになる。あれほど身体は疲れているのに、どうして眠られないのか、それは、この立場にならないとなかなかわからないだろう。ともかく、経営者は孤独なのだ。

 ただ、私にとって、本当に幸せだったのは、そんな私を様々な面から辛抱強く支えてくれた妻がいたことだ。一方、私のペースで彼女の人生を引きずり回してしまったことを反省している。そして、私の夢に共感してくれる社員が育ち、大きな力に成長してくれたことも、かけがえのない財産となった。残念なことに私は、自分の感謝の気持ちを素直に表現することができない損な(罪な)性格なのだが、そこまで見抜いてサポートしてくれるメンバーがいてくれることに、心から感謝していると同時に、それに安住するのではなく、具体的な行動において、私も社員に報いていきたい。

 また新しい10年が始まった。ITの世界では、90年代から続いてきた基盤が大きく変化してきている。FOSS4Gもそれだけで永遠の存在ではない。大切なことは、変化に速やかに対応することだ。それは、これまでの蓄積を一部においては否定することにもなり得る。オークニーという会社が、これからの時代にも、社会から必要とされる存在になり続けるよう、いっそう努力をしていきたい。

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