いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

政治家と口利き・・・口利きが違法というわけではありませんが、甘利氏はゆるすぎました。

2016年02月04日 18時07分36秒 | 日記


 千葉県の建設会社が、再生機構(UR)への口利きを、甘利経
済相とその秘書に依頼し、秘書にお金を渡していたという疑惑が
報じられ、甘利経済相は、辞任しました。

 ここで、問題になるのは、「口利き」です。

 普通の市民が、市や県、警察、あるいは、公的組織に、何かし
てもらいたい。しかし、普通の市民は、市や県に働きかけるすべ
もない。市や県に足を運んでも、何課に行けばいいのかわからな
いでしょう。行ったところで、門前払いされるかもしれません。

 そういうとき、どうするか。

 そういうときは、よくあるのは、地元の市会議員、県会議員、
国会議員に頼みに行くことです。
 どうやって頼むかといえば、いくらなんでも、議員に直接頼み
に行くことは難しい。議員は、議会のあるときは、議会にいて地
元にいません。
 しかし、地元には、議員の事務所があります。
 その事務所には、秘書がいて、市民からの依頼や陳情、クレー
ムを受け付けています。

 市議、県議、国会議員、いずれを問わず、もし、有権者がその
事務所に来て、何か相談事を持ち込んだら、決して、門前払いに
したりはしません。だいたい、秘書なり、事務スタッフなりが、
話を聞いてくれるのではないでしょうか。
 相談事とか、陳情とか、なんでも、話を聞いてくれます。

 知り合いの議員に話を聞くと、とにかく、いろんな相談が持ち
込まれるそうです。
 地域のゴミ出しの曜日や方法を再調整してほしいとか、小学校
の通学路の安全を確保してほしいとか、そういう相談にまじって、
駐車違反で切符を切られたがもみ消してもらえないだろうかとか、
就職や資格試験でなんとかならないだろうかとか、いわゆる
「便宜を図ってほしい」という相談もよく来るそうです。

 小泉首相の秘書だった飯島勲氏が、今週号の週刊文春に、政治
家と口利きについて、おもしろいことを書いています。もちろん、
首相になる前のことです。
 引用します。

 「国家試験絡みの陳情も多くてさ。政治家に頼めば、合否の結
果まで変えられると信じている受験者もいてね。冗談じゃないよ。
合格者の発表まで20分を切ったら、その結果の連絡だけは許す、
ってルールで仕切ったけどね」
 「悪質な議員事務所は、陳情を受けても何もせず、ごうかくお
めでとうって連絡だけ早くてさ。口利きのおかげと思い込んじゃ
う受験者から、体よくお礼を巻き上げるんだから。
 はっきり言っとくけど、そんな裏口合格、ありえないぜ」
 
 ――というのです。
 
 これで分かるのは、まず、いまでも、試験絡みで議員にお願い
する人がいるということです。
 しかし、議員が合否に影響を与えることは、さすがに無理です。
 そうはいっても、合否の正式な発表の前に、合否の連絡
を受ける程度の影響力を持った議員もいるということです。
 そしてまた、合否が早く分かることを悪用する秘書もいるらしい
ということですね。

 実は、与党ではなく、むしろ、野党の議員、議員事務所のほう
が、まじめに、きちんと、陳情や相談を受け付けてくれたりしま
す。次の選挙のことを考えると、野党こそ、陳情をたくさん受け
付けて、支持を増やしたいからです。

 陳情や相談を受けた議員や議員事務所、秘書は、市や県、国に、
働きかけます。
 これは、議員にしてみれば、日常的な活動です。
 これを「口利き」といえば、間違いなく、「口利き」です。
 口利きという言葉のイメージが良くないのですが、有権者の陳
情や相談を、行政、まあ、具体的にいえば、役所につなげるのは、
議員の日々の仕事のひとつでしょう。
 市会議員の選挙公約を見ると、必ずといっていいほど、
 「地域のみなさんのために働きます」
 という意味の言葉が掲げてあります。
 これは、まさしく、そういうことです。

 口利きは、与野党の議員を問いません。
 甘利前経済相の「口利き」で、民主党をはじめとする野党が国
会で追及していますが、有権者からの陳情を受けるのは、与野党
問わず、議員ならだれでもやっています。
 議員なら、口利きの問題は、いつ、自分の所にブーメランのよ
うに回ってくるか、という心配があると思います。

 もちろん、口利き自体は、違法ではありません。
 問題は、口利きに対し、有権者からお金を受け取ることです。
 お金を受け取って口利きをすれば、汚職になりかねません。
 ただ、普段から、正式な政治献金をしている有権者がいるとし
ます。このお金は、ちゃんと、政治献金として書類に記載し、届
けているとします。
 その人が陳情してきて、その陳情に応じた場合は、さて、どう
なるかというと、献金は献金、陳情は陳情ですから、別に法に触
れるわけではありません。

 口利きとお金は、どうしたって、微妙な関係になってしまいま
す。
 野党は、この問題、うまく追及しないと、なかなか追及しきれ
ないでしょう。

 ただし、甘利氏は、口利きとお金の問題について、いかにもゆ
るすぎたとしか、言いようがありません。