いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

18歳の「少年」が国会議員を選ぶ?・・・川崎の事件と選挙権との矛盾を考えます。

2016年02月03日 17時39分50秒 | 日記

 昨年、川崎市で、中学生が、年上の仲間に、河原で首をカッターナイ
フで刺され、殺されるという事件がありました。2月3日には、その公判
があり、被告は、おおむね、罪状を認めました。
 ここで、いつもながら、おかしな話があります。死んだ少年は、名前も
明らかにされ、顔写真も出ています。
 しかし、複数の被告(犯人)は、少年A,少年Bとなっていて、名前も
分かりません。主犯とされる少年は19歳で、犯行のあった去年は18歳
でした。被告は、犯行当時、みな、20歳未満で、「少年」だったのです。

 ところが、昨年、公職選挙法の改正で、選挙権を持つ年齢が、長年
の20歳以上から、「18歳以上」に引き下げられ、今年夏の参院選から、
18歳以上の人たちが、参院選に投票します。

 これは、どう考えても変です。

 少年法では、18歳、19歳は、「少年」とされます。
 一方、選挙は、18歳から投票できす。
 なるほど、国会議員は、「少年」が選ぶことになるわけですか。
 そのことを、国会議員のみなさんは、おかしいと思わなかったのでしょ
うか。
 国会議員を、「少年A」や「少女B」が選ぶわけです。
 国会は、何を考えているのでしょうか。

 国会議員は、我々国民の代表です。国民の代表だからこそ、国民が、
自らの投票で選ぶわけです。
国民の代表を、たとえば、幼稚園児や小学生が、選ぶことができるか
というと、それは無理でしょう。

国民の代表を選ぶのですから、選ぶ側にも、それなりの資格が必要
です。国政のことを考えることのできる知識や知恵、経験があると思
われる人に、投票権は、付与されます。
簡単にいえば、「大人」です。大人が、国政選挙に投票できるのです。

では、大人とは何か。
日本では、20歳を成人とします。20歳で成人式をするのが、まさに、
それです。
ですから、選挙できる権利、選挙権は、戦後長い間、20歳以上とさ
れていたのです。

18歳、19歳で事故を起こしても、それは、「少年の犯罪」とされてき
ました。「少年」だから、善悪もまだ判断できないかもしれない。だか
ら、事件を起こしても、それを勘案しよう、というのです。
それを具体的に定めたのが、少年法です。
少年法は、よく言及されますが、実際には読んだことはないという方
が多いでしょう。そこで、少年法を、ちょっと引用してみましょう。
           
第一条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対
して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の
刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。
第二条  この法律で「少年」とは、二十歳に満たない者をいい、
「成人」とは、満二十歳以上の者をいう。
      

   ご覧のように、少年法は、第二条で、20歳未満を「少年」とし、
20歳から「成人」とすると、はっきり定めています。

  少年法は、少年が事件を起こしたときの措置も定めています。
          
第三条  次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
一  罪を犯した少年
          

第三条において、20歳未満で罪を犯した「少年」は、通常の裁判ではなく、
まず、家庭裁判所で審判することと、定めています。

次に、第二十条を見てみましょう。
          
第二十条  家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について
、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは
、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致し
なければならない。
         
第二十条によると、家庭裁判所が、この少年は刑事事件としての処分が
必要だと認めて、そこで初めて、検察庁に送るのです。

 簡単にまとめると、18歳、19歳で事件を起こしても、「少年」なので、
まずは、家庭裁判所に行く。家庭裁判所で、これは悪質だと認定され
て、初めて、検察庁に送られるのです。

 川崎の事件は、まさにこのケースです。
 事件当時、犯人は18歳だったので、「少年」とされたのです。

 しかも、事件当時、少年だと、量刑も軽くなります。

第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、
死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。

2  罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、
無期刑をもつて処断すべきときであつても、有期の懲役又は禁錮を
科することができる。
 この場合において、その刑は、十年以上二十年以下において言い渡す。

 この条文によると、「少年」といっても、18歳未満の若い少年
には、死刑は、適用されないということになっています。
 これがときに論争を引き起こすのですが、少年といっても、
18歳、19歳であれば、死刑も適用されるよ読めます。

 また、18歳未満の少年には、無期懲役もなく、10年から20年
の刑と定めています。
 重い犯罪を犯して刑務所に入っても、必ず出所してくるわけです。
 
 
 少年法は、少年だから、罪を犯しても、厳しくは罰しない。少年だから、
まだ判断ができず、罪を犯すこともあるだろうという前提に立っています。
 ただ、18歳、19歳は、同じ少年でも、少々、大人に近い扱いをされ
ていることになります。

 18歳というのは、法的には、微妙な年齢になることがわかります。
 しかし、大枠では、18歳、19歳も、「少年」です。
 
 その「少年」が、夏の参院選から、国会議員を選ぶようになるのです。
 
 これは、どう考えてもおかしいでしょう。

 選挙権を付与するということは、「大人」と認めるということです。
 ところが、少年法では、18歳、19歳は、「少年」なのです。
 自分では判断のつかない少年なのです。
 その自分では判断のつかない少年が、国民の代表である国会議員を
選ぶ選挙で投票するのです。
 
 こんなおかしなことはありません。

 選挙権を与えるのは、大人と認めるからでしょう。
 それなら、18歳、19歳は、大人です。
 少年法も改正して、第二条を、「18歳未満を少年とする」
とするのが、当然でしょう。

 いや、少年法の改正は慎重にするべきだというのであれば、同じように、
公職選挙法の改正も慎重にするべきだったでしょう。

 川崎の事件、初公判のニュースを見ながら、改めて、国会と国会議員は、
いったい何を考えているのかと、疑問を抱かざるをえませんでした。