いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

トランプ氏と国際情勢への無知・・・駐留米軍はアメリカのためにあります。

2016年02月27日 23時11分17秒 | 日記

アメリカの大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ氏の勢い
が止まりません。
 その発言を聞いていると、ほとんど、暴走といっていいほどです。
 トランプ氏は、事実を誤認して、発言しています。あるいは、時
事実を表面だけなぞって、発言しています。
 それが、一番やっかいです。

 2月25日にテキサスで開かれた討論会では、在日米軍をめぐっ
て、こんなやりとりがありました。

 トランプ氏「アメリカは、いつまでも、日本や韓国を守ることは
出来ない」
 マルコ・ルビオ候補(上院議員)「いや、日本は、駐留米軍の費
用を一部負担している」
 「駐留米軍がいなくなれば、日本も韓国も、核保有国になるだろ
う」
 トランプ氏「駐留米軍がいなくなるなんて言ってない。日本にも
っと金を払わせたいんだ」
 
 ここで問題になるのは、「アメリカは、いつまでも、日本を守る
ことは出来ない」という部分です。
 この認識だと、米軍は、日本を守るために、日本、具体的には、
沖縄や岩国、横須賀、佐世保、厚木などに駐留しているということ
になります。

 これは、根本的に間違っています。
なぜか。
 米軍が日本にいるのは、実際のところ、その最も大きな理由は、
それがアメリカに必要だからです。
 もちろん、日米安保条約で、アメリカは有事には、日本を守ると
いうことになっています。
 
 しかし、根本的には、米軍が日本に駐留するのは、日本を守るた
めではなく、日本に駐留するのが、アメリカにとって必要だからです。
 米軍が日本に駐留しているのは、根本的には、アメリカ自身のため
です。

 第二次大戦が終わって、東西冷戦が始まりました。
 そのとき、ソ連が太平洋に進出してくるのを抑えるには、日本が
必要だったのです。
 日本は、ユーラシア大陸から見ると東の端に当たりますし、太平
洋から見ると西の端に当たります。
 もし、日本がソ連の陣営に属していれば、ソ連は、何の抵抗も受
けず、太平洋に出てくることが出来ました。
 かつて、中曽根首相が、アメリカのレーガン大統領に「日本を不
沈空母と考えてほしい」と言ったのは、まさしく、その認識に基づ
いたものでした。不沈空母として、ソ連の太平洋進出を阻むという
わけです。

 ソ連が崩壊し、東西冷戦はひとまず解消しました。
 ところが、その代わり、突然、中国が海に進出してきました。
 中国は、いま、西沙諸島、南沙諸島を埋め立て、南シナ海を自国
の領海にしようとしています。
 これは、中国の南方の海です。
 しかし、東方の海、太平洋に進出しようとしても、中国から見て、
まさに太平洋への出口に、日本があります。
 日本が中国の同盟国なら、中国は、いくらでも太平洋に出て行け
るでしょう。
 実際は、日本がアメリカの同盟国で、米軍が駐留しているからこ
そ、中国は、南シナ海には出ていっても、太平洋にはなかなか出て
いけないのです。

 ですから、米軍に日本に駐留するのは、まさしく、アメリカが自
国の利益だと考えるからなのです。

 もちろん、同盟国である日本を守るという意味があることも間違
いないでしょう。
 しかし、それはあくまで二番目の理由、サブの理由です。
 一番目の理由、メインの理由は、アメリカの利益のためです。
 
 尖閣諸島を中国が占拠しようとしたら、アメリカは尖閣諸島を防
衛するかどうか、という問いを、日本側が、何度かアメリカに投げ
かけたことがあります。
 アメリカの答えは、大変あいまいでした。
 アメリカの答えがあいまいだったというのが、米軍が日本に駐留
する意味をよく示しています。
 アメリカにとって、尖閣諸島の存在は、そう重要な問題ではない
のです。
 日本にとっては重要な問題であっても、アメリカからすれば、も
し尖閣を中国が占拠しても、それほど、死活的な問題ではない。
 尖閣が太平洋側にあれば、アメリカは間違いなく、尖閣を防衛し
ようとするでしょう。尖閣が太平洋側にあれば、それは、アメリカ
にとって非常に重要な存在になるからです。

 さて。
 こうやって見てくると、トランプ氏が、「アメリカは、もう、あ
まり、日本を守ることが出来ない」というのは、そもそもおかしい
のです。
 というのは、アメリカは、自国の利益のために日本に米軍を置い
ているからです。日本を守るという意味ももちろんありますが、そ
れは、二義的な目的です。一義的な目的は、アメリカを守るためで
す。

 もちろん、アメリカは、決して、駐留米軍はアメリカを守るため
に置いてあるなどとは、決して言いません。
 言わないのが、外交というものでしょう。

 日本も、それを知りつつ、駐留米軍に日本を守ってもらうよう、
持っていくわけです。
 それが外交というものです。

 トランプ氏は、簡単に言って、そういう事情を知らないで発言し
ています。
 ひとことで言えば、国際情勢、国際関係を何も知らないというこ
とです。

 国際情勢を知らない人が、アメリカの大統領になるというのは、
ほとんど悪夢でしょう。

 ワシントン・ポストが、25日の社説で、トランプ氏を強く批判
し、トランプ氏の大統領就任は「考えるだけでも恐ろしい。止めな
くてはならない」と主張しました。
 そして、「共和党は、このまま何もせつに堕落していくのか」と、
共和党に対しても、激しく批判しました。

 まったくその通りだと思います。
 本当に、アメリカは大丈夫かと心配します。