いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

参院選を終えて(3)・・・旧社会党は阪神タイガースのようなものでした。民主党は?

2013年07月25日 17時29分10秒 | 日記

 民主党は、なぜ、かくも無残に砕け散ったのでしょう。

逆に、1990年代半ばまで、日本の「革新」を一手に担って
いた社会党は、なぜ、長い間、政党として機能することが出来
たのでしょうか。
 民主党が砕け散ったこと原因を考える手がかりとして、社会党
が長い間、存在した原因を考えてみましょう。
 
 社会党は、総選挙で、いつも絶妙な議席数を取っていました。
 いいときで140議席とか150議席、悪いときで120議席
というところでした。
 佐藤政権のときに、一度、90議席まで減らしたことがありま
すが、そこまで議席が減ると、有権者も、次の選挙で社会党を勝
たせるのです。


 140議席とか150議席だと、まず、間違っても政権は取れ
ない。
 どうがんばっても、野党第一党です。
 しかし、絶対に野党第二党までは落ちず、必ず野党第一党とし
て、自民党の対抗勢力であり続けました。
 絶対に政権は取れない。
 そんなことは、みんなが分かっている。
 振り返ってみれば、ですから、有権者は、安心して、社会党に
投票していました。

 社会党も、政権に就く可能性はないから、ひたすら、自民党と
対立し、対決していました。
 無理難題をふっかけて、もし万一、自分たちが政権に就いてし
まったりしたら、政権党として、その無理難題を自ら実行しなけ
ればなりません。
 しかし、絶対にそんなことはないから、社会党は、いつも野党
第一党として、与党・自民党に、無理難題をふっかけて、対立し
てきたのです。

 当時、国民・有権者も、それは、分かっていた。
 しかし、それでも、多くの有権者が、夢を求めて、社会党に投
票してきたのです。
 
 誤解を恐れずにいえば、当時の社会党は、弱いころの阪神タイ
ガースみたいなものでした。
 巨人という絶対の存在がいるから、まず、優勝はできない。
だいたい2位とか3位にいる。
ときには5位とか6位ということもあるけれど、巨人戦だけは
一生懸命にがんばり、そこそこの成績を残す。
だから、巨人に「権威・権力」を見るファンには、阪神は愛さ
れる。
阪神は、アンチ巨人のシンボルです。
場合によっては、巨人をしのぐ人気を誇りました。
同じように、自民党はまさに「権威・権力」でした。
ですから、阪神がアンチ巨人のシンボルであるように、社会党
も、反自民のシンボルだったのです。

阪神の球団フロントも、実際のところ、ほどほどの強さがいち
ばんいいと思っていました。球団フロントが、「阪神は優勝しな
いほうがいい」と、たびたび失言をして、スポーツ紙をにぎわ
せていました。たぶん、それは本音だったのでしょう。
これも誤解を恐れずにいえば、社会党も、政権を取るより、野
党第一党でいることが、快適だったのだと思います。

さて、そこで、民主党です。
社会党が社民党に衣替えし、福島瑞穂さんが党首となって小さ
な小さな党になったあと、事実上、社会党のあとをついだのが、
民主党でした。
民主党は、「革新」と、「反自民」の、ほとんどそれだけで、人
を集めました。
民主党政権で農水相をした赤松氏など、もとはといえば社会党
の書記長です。一方で、民主党の党首を務めた小沢一郎氏は、
自民党の田中派のエースでした。それがただ「反自民」で同じ
党に入ったわけです。

そういう民主党も、野党第一党である限りは、夢を語れて、よ
かったのです。
ひたすら自民党を攻撃し、衆参のねじれを作り、ねじれを利用
して、また自民党を攻撃する。
それは、野党として、実に気持ちのいいことでした。

ところが、自民党が、弱くなっていました。
かつて、旧社会党が対立したころの自民党は、実に強かった。
強かったからこそ、社会党も、安心して、無理難題をふっかけ
ることができました。
しかし、1990年以降、自民党は、急速に弱体化しました。
もう、かつての自民党ではありません。巨人も、弱くなった
ときがありました。
だから、大きくなった野党・民主党が、その時々の政策案件、
経済案件、政治案件で自民党を攻撃すると、自民党は、ちょうど
弱体化していた巨人が大量失点したときのように、次々に投手
をつぎ込むしかありませんでした。投手と党首が、趣味の悪い
だじゃれのように一致します。
そうやって、実際、福田首相、安倍首相、麻生首相と、1年ご
とに首相が交代ました。

そして2009年8月、とうとう、自民党は持ちこたえること
が出来なくなり、総選挙で政権が交代し、民主党が政権に就い
たのです。


これこそ、民主党と社会党との、最大の違いです。
民主党は、結党の早い時期から、政権交代を実現するという考
えが現れていました。
自民党の政治に飽きた国民も、政権交代を望んでいました。

そして、とうとう、政権交代が起きました。
とうとう、民主党が、政権を取ったのです。
野党が、政権を取る日が来ました。

 ところが、日本では、野党は、政権与党を攻撃するのが最大の
使命でした。
 だから、自分たちが政権を取った瞬間に、攻撃する相手がいな
くなってしまったのです。
 もっと簡単にいえば、自民党を倒した瞬間に、野党・民主党は、
ゴールに入ってしまったのです。自民党を倒すことが、ゴールだ
ったのです。

 ところが実際は、ゴールに見えたものは、スタートラインだっ
たのです。
 民主党は、ゴールに入ったつもりになって、祝杯を挙げてしま
ったのです。
 ところが、本当は、そこから仕事が始まるべきだったのです。
 それが、民主党の悲劇でした。

 民主党は、というより、日本の野党は、戦後初めて、政権に就
くということはどういうことかを、身を持って知りました。
 よくいえば「準備不足」でした。
 なにも準備をしないまま、政権に就いてしまったのです。

 よくいえば、民主党は、次に政権を取るときに、この経験が生
きてくるのです。
 できれば、民主党に、いつかまた2回目をさせてみたいところ
です。
 しかし、問題は、「2回目」があるだろうかということです。
 もしかすると、民主党は、それまでに、分裂して消滅しているか
もしれません。

 社会党、民主党と続く、「革新」「野党」を引き継ぐ政党が生ま
れるかどうか。自民党の独走を防ぐには、その勢力がどうしても
必要になってきます。
 巨人軍が永遠だとすれば、阪神タイガースだって永遠でなけれ
ばならないでしょう。 
 阪神あっての巨人なのです。




参院選が終わって(2)・・・どの政党に投票すればいいのだろう?「革新」が消えた影響が大きい。

2013年07月25日 02時11分37秒 | 日記

 今回の参院選は、どの政党、どの候補者に投票するか、
迷った方が多いのではないでしょうか。
 
 もちろん、自民党を支持する人は、すんなり自民党に投
票したでしょう。
 公明党もそうでしょう。
 共産党もそうだと思います。

 残りの有権者は、迷いました。
 前回触れた「反自民」の人々です。
 2009年夏の総選挙では、その人々は、多くが民主党
に投票しました。民主党が「反自民」のシンボルだったの
です。その結果、歴史に残る政権交代が実現しました。

 ところが、民主党は、政権を座にあった3年半の間、無
様な姿をさらし続け、国民の期待をひどく裏切ってしまい
ました。
 ですから、2009年に民主党に投票した有権者も、今
回は、多くが、民主党には投票する気にはなれなかったで
しょう。
もちろん、民主党員などコアな支持者は別ですが、20
09年に「反自民」の票を民主党に投じた有権者は、もう
がっかりしてしまって、たとえ「反自民」でも、今回は民
主党に投票する気にはならなかったでしょう。

 ここで大きな問題が起きます。
 「反自民」という点では変わらない有権者が大勢います。
 では、自民党以外に投票するとして、民主党は、もう、
こりごりだ。
 公明党、共産党は、パスしたい。
 そうなると、残るのは、
 既存の政党では、社民党です。
 新しい政党では、みんなの党、維新の会、生活の党、み
どりの風ーーというところです。

 社民党は、血筋からいえば旧社会党の流れをくむ正当派
の革新政党ですが、いかんせん、小さすぎる。
 生活の党は、民主党から分裂し、小沢一郎氏が率いる政
党です。いかにも小沢色が強すぎて、小沢一郎ファンでな
ければ、ちょっと敬遠したい。
 みどりの風は、爽やかな雰囲気があるけれども、できた
ばっかりで、さて、いったい、どんな政党なんだろう。
 
 残るのは、みんなの党と、維新の会です。

 みんなの党と維新の会は、そこそこの議員を持ち、似た
ような規模の政党です。
 しかし、反自民の受け皿になるかというと、ちょっと違
うだろうというところがある。
 なによりもまず、どちらも、憲法改定に賛成している。
 日本における「革新」あるいは「反自民」は、憲法9条
を守る「護憲」がひとつのキーワードでした。
 いろんな勢力が、「護憲」の一点で集まるのが革新とい
うイメージがあった。
 ところが、みんなの党も維新の会も、「護憲」ではない。
むしろ、憲法改定を念頭に置いている。
 とくに維新の会は、石原慎太郎氏が共同代表になって、
タカ派のイメージが出来てしまった。自民党より右よりと
いう感じさえある。
 そんな状況では、長年の「反自民」の人が、みんなの党
や維新の会に投票するかというと、正直、ちょっと投票し
にくい。

 さて、そうなると、ずっと「反自民」だったという有権
者、「革新」を支持したいという有権者は、票を投じるべ
き政党がなくなってしまうのです。

 「反自民」だから、自民党には投票したくない。
 本来なら民主党に投票したいが、いまの民主党にはもう
がっかりしてしまい、とても、民主党に投票する気にはな
らない。
 そこで受け皿になるべきなのは、みんなの党と維新の会
だが、どちらも「革新」というにはちょっとタカ派のイメ
ージがある。「反自民」だからといって、みんなの党や維
新の会に投票しようという気にはならない。

 今回の参院選は、こういう状況になってしまい、結局の
ところ、どの党に投票すればいいのか分からない。うーむ。
投票すべき政党がなくなってしまったら、投票する意味は
ないのではないか。
 そう考えた有権者が、多かったのではないでしょうか。

 今回の参院選は、歴史的にはかなり重要な意味を持つ国
政選挙でした。 
 本来なら、もっと投票率が上がるべきだったのに、むし
ろ、ワーストに近いような低い投票率でした。
 それは、
 「どの党に投票したらいいのか分からない」
 「投票すべき党がない」
 「反自民で、いったい、どこに投票すればいいんだ」
 という有権者が多かったからではないかと思います。

有権者にこんな行動を取らせてしまった民主党の責任
は、本当に大きいと思います。
 これほどの事態を引き起こした民主党は、一度、解党し
て出直すしかないのではないでしょうか。