ドイツ人が、どの国を信頼しているかという調査結果が発表さ
れました。見出しだけ見ると、アメリカに対する信頼が急落し
た。最下位は中国――というのです。
最下位は中国という見出しに興味を持ち、本文を読んでみると、
日本人としては、問題はむしろ別のところにありーーという感じ
がします。簡単にいえば、調査の対象に、そもそも日本が入って
いないのです。
この調査は、ドイツ公共放送が7月1日から3日にかけて実施
したもので、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5
か国について、「信頼できるパートナーかどうか」を聞きました。
それによると、アメリカは信頼できると答えた人は49%でし
た。前回2011年12月の調査では65%だったので、16ポ
イントも低下したことになります。
原因は、アメリカの情報機関が、各国の通信を大規模に監視し
ていたことです。これで、アメリカへの信頼がかなり落ちたわけ
です。
では、中国はというと、中国を信頼できると答えた人は22%
で、5か国中、いちばん低かったというのです。
中国への信頼となると、まあ、こんなものでしょう。なにしろ、
ドイツにとって、中国は遠い。信頼とかなんとかいう以前に、関
心がないということでしょう。
さて、問題は、対象となった5か国です。
もう一度掲げると、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、
中国の5か国です。
残念ながら、日本が入っていないのです。
5か国に、調査をしたドイツを加えると6か国です。
主要先進国が集まった会議をサミット、先進国首脳会議といい
ます。いわゆるG8です。
このG8は、日本、アメリカ、カナダ、ドイツ、イギリス、フ
ランス、イタリアの7か国に、ロシアを加えた8か国です。
先進国首脳会議は、1975年に始まりました。
このときは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、それに
日本の5か国です。
当時、中東の産油国が、原油を外交交渉の武器に使い始め、原
油価格が高騰しました。それに対処するために、欧州とアメリカ
が会議をしようということになり、日本にも声がかかったのです。
日本は、アジア代表というイメージがありました。
これがG5のサミットです。
当時は、アジア代表といえば、日本でした。
日本抜きで、国際的な会議はできなという空気さえありました。
この5か国に、やがてすぐ、イタリアとカナダが加わって、G
7となりました。
そこへ、ソ連の崩壊でロシアという国ができ、もう、共産主義
じゃないということで、サミットに加わって、8か国、G8と
なったわけです。
こういう歴史を振り返ると、欧州でなにか調査をするとき、
日本が抜け落ちるというのは、これまでなら、ないことでした。
まして、日本ではなく、中国が入るというのは、ありえないこ
とでした。
考えてもみてください。
もし、いま、2013年というこのときに、初めて、先進国首
脳会議をしましょうという動きが出たとします。
そのとき、アジアでは、日本ではなく、中国に声がかかるとい
うことです。
いま、初めて、G7サミットを創設するとしたら、アメリカ、
カナダ、ドイツ、イギリス、フランス、イタリアの6か国に、ア
ジアから中国が入る。
そういうことになります。
日本でバブルが崩壊したのは1990年です。
それから日本は長いデフレに沈み、「失われた10年」、あるい
いは、「失われた20年」という時期を過ごしました。
日本の経済力は落ちました。
このブログでも何度か指摘しましたが、日本は、「経済力」だけ
が評価されて、欧米諸国と肩を並べる存在になったのです。
決して、日本の政治や外国が評価されたわけではないのです。
悲しいかな、その経済力が落ちると、日本に対する国際的な評
価も、一気に落ちました。
神は細部に宿るといいます。
細部、つまりちょっとしたことに、ものごとのありようは現れ
るということです。
今回のドイツでの調査もそうです。
調査をしたドイツ公共放送は、5か国を選ぶのに、別に、そう
意識したわけではないでしょう。しかし、ドイツにとって影響力
のある5か国を選ぶときに、ドイツ公共放送は、アメリカ、イギ
リス、フランス、ロシアに次いで、何気なしに、日本ではなく、
中国を選んだのです。
神は細部に宿るというのは、こういうことを指します。
20年前とはいいません。
10年前なら、ドイツの調査でも、対象国は日本だったでしょ
う。
私たちの日本は、いま、国際的に見て、そういう状態にあると
いうことです。
そうした厳しい事実を、冷静に、客観的に受け止めて、そこか
らが、新たなスタートになります。
その際、まずなにより、経済を立て直すことが重要です。
しかし、経済とは別に、日本が国際的に評価される分野を探る
ことも重要になります。
それはまた、別なストーリー、別な原稿になりますので、いま
ここでは触れませんが、日本は経済も強いが、しかし、経済だけ
ではない。経済以外でも日本は素晴らしいと、国際的に、そうい
う評価を得ることが大事になってきます。