いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

太平洋を米中二国で・・・習近平主席の発言に見る中国の覇権主義。ほとんど帝国主義です。

2013年07月01日 00時34分37秒 | 日記

 少し前のことになりますが、中国の習近平主席がアメリ
カを訪問し、オバマ大統領と8時間にわたって会談しまし
た。
 その会談で、非常に気になる発言がありました。
習近平主席が、オバマ大統領に対し、
 「太平洋は、中国とアメリカの二国が活動するのに、十
分な広さがある」
 と言ったのです。

 会談での発言内容は、少しずつメディアに漏れて出てき
て、これは、その中にあった発言です。

 この発言は、簡単にいえば、
 太平洋を、中国とアメリカで分けて統治しましょうとい
うことです。

 この発言には、現代の中国の拡張主義が、みごとに表現
されています。

 太平洋は、公海です。
 それを、中国とアメリカとで分け合いましょうとは、よ
く言ったものです。
これを、領土的野心といいます。
 あるいは、領土拡張主義ともいいます。

 もし、日本が、こんなことを言ったら、大変です。
 安倍首相が、オバマ大統領に
 「太平洋は、日本とアメリカの二国が活動するのに、十
分な広さがあります」 
 と言ったとしましょう。

 どうなるか。

 中国と韓国で、
 「日本の軍国主義が完全に復活した」
 「日本が領土的野心をむき出しにする」 
 という非難、批判が、ごうごうとわき起こるでしょう。

 当然、次には、
 「日本は歴史に学べ」
 「日本は歴史と向き合え」
 という批判が出てきます。

 ところが、中国がその発言をしても、韓国は何もいいま
せん。
 日本も、なにか、反応が鈍い。

 この発言には、いくつか、重要なポイントがあります。

 ひとつは、同じ発言をしても、日本が言うと、中国や韓
国は過剰に反応するだろうということです。

 二つめは、実は、日本は絶対にこういう言い方はしませ
ん。日本は、なにをするにしても、常に控えめです。
 
 三つめは、しかし、中国は、平気でそういう発言をする
ということです。
 
 この発言は、領土拡張主義そのものですが、中国は、そ
のことを隠そうともしません。
 平気で、堂々と、そうした発言をします。

 だから、四つめは、中国がいかに自己中心的な性質を持
った国かが分かるということです。

 五つめは、こうした発言に、日本政府は、はっきりと抗
議をしないといけません。
 日本政府という場合、具体的には、外務省です。もっと
具体的には、外務省の官僚です。
 外務省の官僚は、習近平主席のこの発言に、はっきりと
抗議をしないといけません。
 しかし、官僚というのは、なにかコトを構えるのを嫌が
ります。なにもしないでいられるのなら、できるだけ、何
もしたくない。
 だから、こうした発言にも、
 「とくに抗議するような内容でもありません」
 というような言い方をして、知らんぷりを決め込みます。
 何もしないというのは、一見、波風が立たないように見
えますが、実は、何もしないことで、相手の立場を認めた
ことになってしまいます。
 それを「不作為の罪」といいます。
 日本政府、霞が関の官僚は、そうやって、「不作為の罪」
を重ねてきました。

 だから、習近平主席のとんでもない発言にも、日本政府、
外務省の官僚は、何も抗議をせず、結果的に、習近平主席
の発言を認めてしまうのです。

 少なくとも、習近平主席は「日本から何も抗議が来なかっ
たから、あの発言は、してもいいんだな」と思ったでしょう。

 六つめは、繰り返しになりますが、中国の拡張主義、覇
権主義です。
 これほど露骨な拡張主義、覇権主義は、前にも一度書き
ましたが、なにやら、古典的な帝国主義です。
 19世紀から20世紀初めにかけは、欧州列強が植民地
競争をした帝国主義の時代です。
 いまの中国は、遅れてやってきた帝国主義国家です。
 21世紀の現代は、すでに、植民地の時代は終わり、民
主主義が広く定着した時代です。
 その時代にあって、中国は、ただひとり、遅れてやって
きた帝国主義国家だとしか言いようがありません。

 七つめは、社会主義、共産主義の終焉です。
 マルクスが理論的な体系を提示した共産主義は、虐げら
れた者、弱い者を開放する社会として、多くの支持を集め
ました。

 共産主義、社会主義は、弱者のためにあるというイメー
ジが長い間、あったのです。

 中国は、共産主義国家です。
 弱者のためにという共産主義を標榜する国家が、皮肉な
ことに、これ以上ないというような帝国主義国家になって
いる。
 これほどの歴史の皮肉はありません。

 日本政府は、じっと黙って見ていては、いけません。