いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

「日本」を世界に広めるには・・・ウルトラマンがヒントです。

2013年07月17日 13時08分20秒 | 日記

 「日本的」なものをこれでもかと強調した映画「天と地と」が
失敗したとすれば、では、何をアピールしていけばいいのでしょ
うか。

 大きなヒントは、ウルトラマンにあります。
 「シュワッチ」のウルトラマンです。

 ウルトラマンは、1960年代末、初代ウルトラマン
が登場して大人気となり、二代目のウルトラセブンに引き継がれ
ました。
 その後、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウなどなど、
後継者が続々と出たのですが、さすがに人気も落ち、いったん打
ち切りという感じになります。
 
 ところが、そのウルトラマンが、海外で人気が出たのです。
 アメリカのテレビで、ウルトラマンのことを「銀色の巨人」と
いうような言い方で取り上げるようになり、ウルトラマンシリー
ズが話題になりました。
 そのうち、アメリカバージョンのウルトラマンや、オーストラ
リアバージョンのウルトラマンが登場するほどになりました。

 ウルトラマンは、日本人が日本国内で放送するために作ったも
ので、海外のことなど、まったく考えていませんでした。
 ところが、それに、海外の人が飛びついたのです。

 同じようなものは、ほかにも、いくつか挙げることが出来ます。
 同じ特撮ものでいえば、ゴジラがそうでしょう。
 ゴジラは、これも、日本の映画会社が、あくまで日本国内で上
映するために制作したのです。どこまでも、相手は、日本人でし
た。
 ところが、ゴジラシリーズが何度も制作されるにつれて、アメ
リカ人が注目し始め、アメリカで人気が出たのです。
 1990年代には、ハリウッドで映画「ゴジラ」が制作され、
人気俳優のジャン・レノが出演しています。これは、大変丁寧に
作られてあって、よくできた映画でした。
 
 巨人からニューヨーク・ヤンキースに移籍した松井選手など、
アメリカでも、「ゴジラ」というニックネームで愛されていました。

 漫画では、サッカーの「キャプテン翼」がそうです。
 これも、日本の子供たちを読者に想定して描かれ始めた漫画で、
作者も出版社も、当初、これを海外で読んでもらおうなどとは考
えもしなかったと思います。
 ところが、いまや、この漫画は世界中で読まれ、フランスのジ
ダンなど、サッカーを始めたのはキャプテン翼を読んだからと、
話していました。

 テレビ番組でいえば、NHKの朝の連続ドラマ「おしん」もそ
うでしょう。
 「おしん」は、丁稚奉公で耐え忍ぶおしんの姿に、日本人が共
感し、日本で大人気となりました。
 ところが、その姿が、アジア、アフリカの途上国の人々の心を
とらえ、おしんが人気だという報道がいまでも伝えられたりしま
す。

 ウルトラマンやゴジラ、キャプテン翼、おしんという作品群に
共通するのは、何でしょうか。
 それは、
日本人が日本人のために作ったもの
ということです。

 ウルトラマンも翼もおしんも、そもそも、海外のことなど、考
えてもいなかったのです。
 ただひたすら、日本と日本人のことを考えて制作する。
 実は、それが、海外の人から
 「日本的なもの」
 「日本」
 として注目され、評価されたのです。

 ウルトラマンを作るとき、アメリカを意識して、妙に英語を使
ったり、アメリカっぽい背景を使ったりしたら、アメリカ人には
すぐ分かります。
 考えてもみてください。アメリカ映画で、妙にサムライふうの
アジア人が出てきて、妙な日本語を話し、妙に日本的なことをす
ると、私たち日本人は、すぐ「あ、これはニセモノだ」と分かり
ます。なによりも、安っぽい映画だと思ってしまいます。

 パソコンのゲームに「シムシティ」という街づくりを楽しむ
人気作品があります。アメリカのゲーム会社が作ったゲームで、
私は、英語版で遊んでいました。
 すると、英語版なのに、ゲームにゴジラが出てくるのです。
 せっかく作った街を、ゴジラが破壊します。
 そうすると、ゲームの画面にこんなセリフが、なんと、日本語
で表示されるのです。
 「ウルトラ警備隊に頼むしかない」。
 アメリカのゲームなのに、こういう日本語が表示されるのです。

 ゴジラとかウルトラマンとか、好きになったら、海外にいても、
日本語まで勉強しようとするのです。
 海外に売り込もうと、日本でセリフを英語にしたりせずとも、
海外の人が、日本語を勉強してくれるのです。
 それが、文化の力です。

 逆にいえば、ジョン・ウエインの西部劇「駅馬車」や「黄色い
リボン」は、日本で、いまも人気があります。
 私たちが「駅馬車」を好きなのは、そこに、見るからに開拓
時代のアメリカ、見るからにアメリカの西部という空気が立ち
込めるからです。
 同列に比較はできませんが、しかし、「おしん」がアジアやアフ
リカで受けるのは、見るからに、耐え忍ぶ日本人、働き者の日
本人という空気があるからでしょう。

 そうです。
 日本を海外に売り込むには、どこまでも「普通の日本」である
ことが大事なのだと思います。
私たちの身の回りにある普通の日本こそが、海外で評価される
のです。

 人為的に作った日本や、技巧に走った日本、海外の人が好き
そうな日本、海外の人に見せるために作った日本は、海外では、
実は、たいして評価されません。

「日本」、あるいは、日本の文化的な側面といってもいいかもし
れませんが、「日本」を海外にもっと知ってもらおう、あるいは、
日本を海外に売り込もうというとき、もっとも大事なのは、
「ありのままの日本」を見せるということだと思います。

 そして、それには、まず私たちが、身の回りの日本に自信と
誇りを持つことです。