いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

東京ゲームショウにおける失敗の研究・・・日本はなぜスマートフォンでおくれを取ったのでしょう。

2011年09月20日 12時16分54秒 | 日記

 日本はスマートフォンで、世界のメーカーにおくれを
取ってしまいました。
東京ゲームショウが開かれても、スマートフォンは、
アイフォンとアンドロイド対応機が中心です。

 しかし、実はもう10年以上も前に、日本の電機メー
カーは、スマートフォンを作り、製品として出していま
した。アイフォンが出る前から、日本はスマートフォン
を作っていて、世界を、一歩どころか、一周以上、引き
離していたのです。
 ご存じなかったでしょう?
 きょうは、そのことを書きます。

 1997年のことです。
 東芝が、GENIO「ジェニオ」というスマートフォ
ンを出しました。私はその時にジェニオを買い、いまで
も、手元にあります。
 同じころに、松下電器(いまはパナソニック)は、「ピ
ノキオ」というスマートフォンを出しています。
 そして、シャープは、電子辞書から発展した「ザウス」
という通信のできるモバイルパソコンをだしていまし
た。
 いずれも、当時は、世界の水準を抜く製品でした。

 どんな製品だったか、東芝の「ジェニオ」を例にして
見ていきましょう。

 ジェニオは、携帯電話としては、PHSを搭載してい
ました。PHSと聞くと、懐かしいという方もいらっし
ゃるかもしれません。番号が、090ではなく、070
で始まる電話です。
 ジェニオのサイズは、いまのスマートフォンより一回
り大きいサイズで、ちょっと大きかったのですが、カッ
ターシャツのポケットにはちょうど入りました。
 大きいサイズなので、大きな液晶画面がついていて、
見やすかったです。

 この画面に、記憶させている電話番号のリストが一覧
となって表示されるのです。専用のタッチペンを使えば、
画面上のリストをどんどん動かすことができます。そし
て、表示された電話番号をタッチペンでタッチすれば、
そのまま電話が発信されるのです。
 さらには、メモ帳もついていて、メモを入力すること
もできました。
入力は、画面上にキーボードが表示され、キーボード
入力ができました。

 どうですか?
 いまのスマートフォンと、基本的には同じでしょう?

 もう売っていないようですが、いまでも、東芝のHP
上で見ることが出来ます。アドレスを掲げておきますの
で、興味のある方は、アクセスしてご覧になってみてください。
 http://www.toshiba.co.jp/pda/

 松下電器の「ピノキオ」も、よく似た製品でした。
 ジェニオを買ったあと、ピノキオが出ているのに気が
つきました。両方とも、4万円から5万円ぐらいの値段
だったように記憶しています。
 97年のことですから、もう14年前です。
 当時は、アイフォンなど、まだ影も形もありません。
 グーグルなど、まだ会社さえ設立されていないのです。
 そう思うと、東芝や松下が、いかに先進的な製品を作
っていたか、よくわかります。

 先進的ということでいえば、シャープの
  ザウルス「ZARUS」
 は、さらに先進的でした。
 シャープは、もともと電子手帳を熱心に作っており、
1980年代から、「シャープの電子手帳」は有名でし
た。
 シャープの電子手帳は、早い時期から折りたたみのタ
イプを採用しており、手前がフルキーボード、開けたフ
タの内側が液晶画面となっていて、モバイルパソコンと
いう趣でした。すでに80年代から、設計的には、最先
端を行っていました。

 1990年代末に出た「ザウルス」は、それを発展させ
たもので、サイズは、いまのスマートフォンを一回り大
きくしたぐらいで、やはり、ちょうどカッターシャツのポ
ケットに入りました。

 機能としては、パソコンそのものでした。
 シャツの胸ポケットに入るパソコンという感じです。
もちろん通信ができて、インターネットに接続して使いま
した。
 ただし、電話機能はついていなかったので、通話はでき
ませんでした。その意味ではスマート「フォン」ではなく、
むしろ、通信のできる超小型パソコンでした。

 そうそう、なによりも、MP3で録音ができたので、
デジタルオーディオプレーヤーの先駆けでもありました。

 東芝のジェニオ、松下のピノキオ、シャープのザウス
は、いずれも、アップルのアイポッドが発売される何年
も前に出た製品です。
 すべて、その当時、世界水準をはるかに抜いていま
した。現在の水準から見ても、遜色のない製品たちでし
た。

 あのまま伸びていれば、いまごろ、こうした日本の製
品が、世界のスマートフォンの市場を制覇していたはず
なのにと思うと、まことに残念です。
 
 それが、どうして、こんなことになってしまったので
しょうか。

 まず、このブログを読んでいただいているみなさんに
お尋ねしますが、ここに挙げた東芝のジェニオって、ご
存じないでしょう? 松下のピノキオになると、聞いた
こともないわ、という方が多いでしょう。
 シャープのザウスは、そういえば、そういうのがあっ
たなあーーと思いだす方がいらっしゃるかもしれませ
んね。

 当時、それほど世界水準をはるかに抜き、世
界の最先端を行っていた製品、というより、日本の電機
メーカーが、いったい、どうしちゃったのでしょう。
 たかただ、この10年ちょっとのことです。
 ひとつには、それだけの製品が、ほとんど知られずに
終わったというところに大きな問題があります。 

 それが「失敗の研究」です。
 今回は、その前段階として、「失敗の実際」を書きま
した。
 次回は、「失敗の研究」です。