いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

プロ野球と「統一球」・・・今年、日本のプロ野球がつまらなくなりました。このままでは心配です。

2011年09月09日 11時07分49秒 | 日記

 プロ野球が、つまらなくなりました。
 ボールが飛ばないのです。
 原因は、今年から導入された「統一球」です。
 去年までのボールに比べて、大きく、重くなったということ
です。 
 この統一球が、プロ野球をおもしろくなくしてしまいました。
 なにしろ、ホームランが出ません。
 シングルヒットの積み重ねで点を取るという感じになってい
ますが、そのシングルヒットも出にくくなっています。
 先日、東京ドームに巨人戦を見に行きました。ネットの向こ
う、グラウンドとの境に何もなくて、ボールがいつ飛び込んで
くるか分からない「エキサイト・シート」です。
 エキサイトという名前の通り、本来なら、いつボールが来る
のかはらはらしながら野球を観戦するシートなのですが、ボー
ルが飛んできません。
 9回裏まで見て、ボールが来たのは、たった1回でした。
 バッターの打ったボールが、外野フェンスまで飛ばないので
す。
 ランナーもなかなか出ません。
 試合は2-1でした。
 正直、6回、7回あたりでは、つまらなくて、思わず、うと
うとしてしまう有様でした。
 
 本当に、つまらない。
 野球がおもしろくなくなりました。

 去年までは、2、3点負けていても、ランナーが出ればホー
ムランで一発逆転という場面がよくありました。
 統一球になった今年は、まず、そういうことがありません。
 2、3点負けていたら、もう、逆転は難しいのではないでし
ょうか。
 試合そのものが1対0とか、2対1とか、ロースコアになっ
ています。きょう8日の巨人ー中日戦など、0-0で引き分け
でした。
 プロ野球を見に行って、0-0の引き分けというのは、本当
におもしろくないですよ。

 いや、0-0とか、1-0、2-1という試合こそ醍醐味が
あるーーという人もいるでしょう。
 もちろん、そういう考え方もあります。
 しかし、これは、プロ野球です。
 私たちは、日常の仕事や生活を離れ、どきどきわくわくする
ものを求めて、球場に行くのです。
 毎日の仕事や生活にはない華やかなものを求めて野球を見る
のです。
 1-0とか0-0であれば、毎日の仕事の厳しさと、ぜんぜ
ん変わらないではありませんか。
 そんな辛気くさい、地味なものを見るために球場に足を運び、
あるいは、テレビをつけるのではないのです。
 
 アメリカで4大スポーツというのは、野球、アメリカンフッ
トボール、バスケットボール、アイスホッケーです。
 日本でバスケットボールの試合を見ていると、55点対65
点とか、60点対70点というぐらいの点数の試合が普通です。
 ところが、アメリカのプロのバスケットボールを見ていると、
105点対102点とか、120点対108点とか、だいたい、
平気で両チームとも100点を超えています。
 なぜこうなるのか、不思議でした。
 ある日、大学でバスケットをやっていたというアメリカ人の
友人に理由を聞いてみました。
 すると、彼の返事は
 「ああ、それはね、50点ぐらいまでは、両チームとも、あ
んまり激しいディフェンスをしないで、相手のシュートを入れ
されるからなんだよ。シュートの技を見せて、観客を喜ばせる
んだ」
 ということでした。

 なるほど。そういうことか。
 よく分かりました。
 それは、決して八百長なんかではなく、試合に影響のない5
0点ぐらいまでは、お互い、華麗なシュートを入れ合って、「シ
ョー」を見せるのです。初めの50点ぐらいまではショーの要
素を取り入れ、そこから先は、ショーの要素を排除してシリア
スに試合をし、勝負に徹する。
 なるほど、それは間違いなく「プロ」の試合ですね。 

 プロ野球もまったく同じです。
 8回裏、9回裏で、5-2で負けていても、ランナーが二人
出れば、ホームラン一発で同点にすることができる。そういう
インフラを用意しておけば、観客は、はらはらどきどきします。
それは、八百長なんかではありません。ホームラン一発で同点
あるいは逆転することができるというのは、両チームとも同じ
条件なのですから。

 あるいは、序盤の1回、2回でも、打者の打ったボールが快
音を発して、外野に飛んでいく。あるいは、内野にするどいゴ
ロが行く。そういう光景に、観客はカタルシスを感じるのです。
 それが、外野にボールが飛ばない。飛んでも鋭いライナーに
はならない。それでは、観客はおもしろいはずがありません。

 統一球は、そうした「プロ」としての華やかな要素を、きれ
いにつんでしまいました。

 なぜ、こんなものを導入したのでしょう。
 統一球は、「国際球」と呼ばれます。
 去年までの日本のボールは、アメリカのボールに比べて少し
小さかったのです。

 日米のボールの大きさが少し違うということは、昔から指摘
されていました。野球のボールは、大きさにもちゃんと基準が
あるのですが、基準には少し幅があります。日米とも基準に合
致しているのですが、大リーグのボールはその幅の中で大きい
ほうで、日本のボールは小さいほうで、それぞれ作られている
というのです。
 しかし、実際に、ボールの大きさの違いが日本でも身近なも
のになってきたのは、90年代半ば、野茂英雄投手が日本人大
リーガーとして海を渡ってからでしょう。野茂選手の活躍で、
NHKが野茂投手の登板する試合の中継をするようになり、大
リーグの試合が日本でも身近になったのです。
 バッターでは、イチローと松井秀樹です。
 イチローはもともと長距離ヒッターではないのでボールの大
きさの違いはあまり注目されませんでした。
しかし、松井選手の場合は日本を代表するホームランバッタ
ーとしてヤンキースに入団したのに、アメリカではホームラン
がせいぜい30本ぐらいにとどまり、素晴らしいバッターだが、
タイプとしては中距離打者というイメージになりました。
 そうした経緯があり、私たちも、日本のボールがアメリカの
ボールより少し小さいということを、よく知るようになりまし
た。
 そこで、日本のボールをアメリカのボールに合わせたほうが
いいのではないかという議論が出始めます。

次のきっかけは、ワールド・ベースボール・クラシック(W
BC)や、五輪で、野球が国際化してきたことです。
国際大会は国際球という名前のアメリカ基準のボールを使う
ので、日本人のバッターは、ボールが飛ばずに、初めは苦労さ
せられます。
とくに、WBCです。
WBCは、国際球のため、ホームランどころか長打が出ず、
ロースコアで1点を争う接戦が続きました。
幸い、WBCは日本が二連覇したのですが、2回のWBCを
終えて、この際、日本のボールも国際球に合わせたほうがいい
のではないかという議論が強まります。

そうして、今年、とうとう、これまでよりも少し大きな国際
球が導入され、「統一球」と呼ばれるようになったわけです。

しかし、これは、間違っています。
WBCで長打が出ず、日本人選手が対応に苦心していたのは
事実ですが、しかし、なによりも、その国際球であっても、日
本はWBCで二連覇したのです。
国際大会のWBCに出て行って、ちょっと大きな国際球を使
ったから日本が勝てなかったというのであれば、日本でも国際
球をという考えになっても、ある程度はしようがないかもしれ
ません。しかし、日本が二連覇しているのですから、日本人選
手は、国際球にもちゃんと対応できているのです。
それなのに、なにもわざわざ、日本のボールを国際球に変え
る必要はないでしょう。

大リーグのこともそうです。
日本人選手が、大リーグに移籍し、ボールの違いに戸惑うの
は事実でしょう。
しかし、彼らは、アメリカの地で、よく対応し、ちゃんと成
績を残しています。
別に、大リーグとボールが違っても、選手はちゃんと対応し
ているのです。
もし万一、日本人選手が大リーグに行くときのことを考えて、
日本でも国際球という名のアメリカ基準のボールを使っておこ
うーーというのであれば、それは本末転倒でしょう。

結論をいえば、これまで、日本のボールが少し小さくても、
日本の野球は国際大会で何の遜色もない非常に素晴らしい成
績を残してきたのです。
大リーグでも、日本人選手は活躍しているのです。

なにもわざわざ日本の野球で国際球を使う必要はまったくな
かったのです。

9月8日、名古屋球場で行われた巨人―中日戦は、冒頭でも
書いたように、0-0の引き分けでした。素晴らしい投手戦だ
ったといえば、その通りなのですが、ヒットの数は、巨人が5
本、中日が2本です。
ランナーが出ません。

もちろん、緊迫した投手戦は、独特の魅力があります。
それがペナントレースの優勝のかかった試合や、日本シリー
ズであれば、私たちは息を殺して見るでしょう。
しかし、8日の巨人ー中日戦は、そうではありません。
今年は、こういう試合が多すぎるのです。
これは、茶の間のテレビで見ていて、おもしろくないですよ。

毎日の仕事から帰ってきて、0-0や2-1、1-0という
スコアのしんどい試合を見たいとは、なかなか、思わないので
はないでしょうか。

 「統一球」の採用は、意味がありませんでした。
統一球を採用した理由がよくわかりません。
 このボールは、日本のプロ野球の魅力をそいでしまったので
はないでしょうか。
プロ野球は、「ショーアップ」という要素が絶対不可欠です。

 コミッショナーは、どうして、「国際基準」を日本に持ち込む
必要があったのでしょうか。
 日本の独自路線では、なぜいけなかったのでしょう。


今月、また東京ドームに巨人戦を見にいきますが、また眠く
なるような試合になってしまうのではないでしょうか。
本当に、プロ野球が心配です。