よくよく眺めてみると、「読めるけど書けない」シンドロームのまわりには、仲間たちがたくさんいました。みんな、それぞれの悩みを抱えているらしいです。さっそく見てみましょう。
・読んだつもりで読んでない
症状:読んでいるつもりで、読めてない。文章が意図することを、文章が本当に言いたいことを、その切実さを、感じ取れていない。文章の技を見切れていない。だから、頭に残らない。同じように書け、といわれても、一面の雪景色(つまりまっしろ)しか頭に浮かんでこない。何を読んだのか、と訊かれても答えられない。
処方箋:しょうがありません。読書なるもの、元をとってやろうなんてやましい気持ちで読んではいけません。右から左に「読み流す」。楽しければいいのではないでしょうか。だからどんどん読みましょう。浴びるほどに。そうしたら、ものすごく面白い本や、いつまでも忘れられない言葉に、運がよければ出会えるかもしれません。
・読みたいけど読めない
症状:時間がなくて本が読めません。あるいは、時間があっても本が読めません。
処方箋:本なんぞ読まなくても結構。無理しなくてもよろしい。読みたいものを、読みたいときに読めばよいのです。しかし、本当に読みたいのなら、読めるはず。読みたいけど読めないというのは、エクスキューズなのでは?(自分へのコメント)。ブック●×通いをもう少し減らしましょう。
・書けるけど読めない
症状:仕事に追われて本が読めません。書いてばっかりでインプットができません。
処方箋:なかなかよい兆候であるともいえます。なぜなら、自らが枯渇するほどに言葉を発することで、他人が書いた言葉を読むことへの飢えへとつながる可能性を秘めているからです。きっと今なら、読書をすれば乾いた砂漠に水がしみこむように多くを吸収できることでしょう。忙しさのチョモランマに登頂したら、ゆっくりと下山しながら読書を楽しめる時間がきっと訪れるはずです。仕事が追いかけてきたら、かまわず逃げましょう。それから、この症状の問題は、一生アウトプットに偏ったままで事足りてしまうようになってしまうことです。それは、ある意味言葉の使い手としての死にほかなりません。インプットが足りないと、言葉が先細りする可能性があります。気をつけましょう。
・書いたつもりで書けてない
症状:自分では文章がそこそこ上手だと思っていたのですが、よくみるとそうでもないようです。
処方箋:答えがあったらわたしが教えて欲しいです。さて、どうしましょう。たくさん読み書きすること。しかも雑にではなく心をこめて読み書きすること。きちんと生きること。恥ずかしいことをたくさん体験すること。早寝早起きすること。夜更かしてグダグダすること。ほかにもたくさんあるような気がします...。
・読めるし書ける
症状:読書もたくさんしていますし、翻訳も上手ですが何か?
処方箋:いや、じっさいこういうお方はたくさんいらっしゃると思います。翻訳のプロ足るもの、本当はそうでなくちゃいけないのですよね。人の何倍も言葉に敏感で、大量の文章に触れ、翻訳の技も絶えず研鑽している。だからこそプロであるわけで…。そう、わたしはこのプロとしての当たり前のことができていないのでした。お恥ずかしい限りです。すみません。
・読めないし書けない
症状:思うように読めないし、書けません。いっそ、誰かを雇って自分をこの世から消し去ってしまいたい。そんな誘惑にかられる今日この頃です。
処方箋:こういう風に悩んでみんな大人になるのであり、あるいは大人にはなれないかもしれないのであり、これは一人ひとりが日々抱えている問題なのであり、それぞれが自らの手で解消しなければならないわけでありまして、そしてこの苦しみがあるからこそ、光もあるというわけなのです。
最終回といいつつ、これでは収まらないので明日も続けます。
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朝、柿の皮を剥こうとして包丁でかなり思い切り左の親指を切る。瞬間、グサリと刃が刺さった。0.1秒くらいの瞬間で包丁を持つ手を引っ込める。危ない。本当に危ない。血が大量にでる。こういうとき、自分がどうなるかわかった。泣き笑い状態――痛みに顔をゆがめるのでもなく、冷静に問題に対処するのでもなく――ただひたすらに、すすり泣き、笑っている自分を発見。まるで、どこかのシーンでみたデニーロみたいに。なんなんだ?オレって?
荻窪店で15冊。買いすぎた。
『火車』宮部みゆき
『龍は眠る』宮部みゆき
『堪忍箱』宮部みゆき
『返事はいらない』宮部みゆき
『忍ぶ川』三浦哲郎
『阿修羅のごとく』向田邦子
『LOVE GO! GO!』室井佑月
『アジアの路上で溜息ひとつ』前川健一
『いくたびか、アジアの街を通りすぎ』前川健一
『笹まくら』丸谷才一
『CLOSED CIRCLE』Robert Goddard
『EVITA』W.A.Harbison
『TICKTOCK』Dean Koontz
『Sophie’s World』Jostein Gaarder
『Dave Barry’s Greatest Hits』Dave Barry