いせ九条の会

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日米首脳会議が合意した共同文書「新世紀の日米同盟」を考える/山崎孝

2006-06-30 | ご投稿
日米首脳会議が6月29日に合意した共同文書「新世紀の日米同盟」が朝日新聞で報道されています。

その中に【世界の中の日米同盟】として、共通の価値観と利益が、地域及び世界における日米協力の基盤を形成する、としています。その共通の価値観とは、自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配の推進を挙げています。

両首脳の考えている市場経済は新自由主義といわれる、強者が弱者を淘汰して行く市場原理主義です。故都留重人さんが著書で紹介した、「市場には心がない。だが、市場の行き過ぎを制御するレフリーがいれば、極めて効率的な調整機能を発揮する(ポール・サムエルソン)」ではありません。レフリー役の政府の役割は不要とした市場経済主義で、社会が国民の間で格差が拡大されてゆく政策です。この市場経済主義を導入した南米諸国において、自らの経験に基いて国民はこれを拒否して政権党を交代させています。

これまで両首脳は、法の支配の推進をしてきたでしょうか。否です。

国際法を解説した本には、イラク戦争を行った基本となった考え方、先制的自衛権を次のように解説しています。先制的自衛権とは簡単にいえば、「やられる前に相手をつぶす」という理由で行われる武力行使になります。

 たとえば、隣国が国境周辺に武装した軍隊を結集させており、今にも攻め込んで来そうな状況があるとします。攻め込まれる脅威を感じている国が、攻め込まれることを防止するために武力を行使した場合、それは先制的自衛権の行使だといえます。確かに、攻め込まれてからでは遅いということはあります。攻め込まれる前になんとか回避したいと思うのも無理ありません。

先制的自衛権は自衛権として認められていない

 しかしながら、現実的には先制的自衛権は自衛権として認められていません。なぜならば、まだ事実として攻撃を受けていないからです。たとえ、明日にでも攻め込まれそうだとしても本当に相手国が攻めてくるかどうかはわかりません。客観的に相手国の心理や意図を事前に知ることができないのですから、明白な根拠もなく先に攻撃する先制的自衛権は認められていません。

 もし、これを認めてしまえば、世界中で先制的自衛権が発動され武力紛争だらけになってしまいます。特に核兵器の存在は先制的自衛権を発動する理由として十分なものだといえるでしょう。

 しかし、いくら相手が自国に核弾頭ミサイルの照準を合わせたからといって、相手国に先制的自衛権を発動すれば大変なことになってしまうでしょう。こうしたことから、先制的自衛権は認められていないのです。(以上)

ついでに付言すれば、国家の要件として領域とそこに住む住民が居て、この二つを有効に支配する政府が存在することです。この国家の主権を脅かしてはなりません。この国家の形態や政府の性格は、君主制、共和制、立憲君主国、民主主義国家、逆の軍事独裁国家だろうが関係ありません。

米国のように軍事独裁政権だから、自由と民主主義の政府を作るのだといって、他国に軍事力を行使して政権を崩壊させれば国際法違反となります。民族の自決が原則です。

イラクのフセイン政権は、核兵器は保有せず、米国に届く核弾頭ミサイルも持ってはいませんでした。そして国際テロ組織との関係もありませんでした。全くの空想に過ぎませんでした。ブッシュ大統領の気のいらない政権を打倒するための武力行使であったことを世界は知っています。小泉首相がわからないだけです。

「新世紀の日米同盟」の合意文書は、私たちの思っている共通の価値観の、自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配の推進ではありません。

本土が沖縄化されてゆく/山崎孝

2006-06-29 | ご投稿
2006年6月26日付け朝日新聞コラム欄『風考計』若宮啓文論説主幹の文集より抜粋

(前略)沖縄では地元の沖縄タイムスも琉球新報も、今年はことのほか「憲法」の特集記事が目立っている。憲法に寄せる沖縄の熱い思いは健在だ。

そもそも、かつて沖縄が渇望した祖国復帰は「平和憲法の国」への復帰だった。基地が引き起こした人権揉欄の数々やベトナム戦争への出撃など、沖縄の現実が憲法の対極にあったからだろう。屋良朝苗・琉球政府主席(後の県知事)は復帰を目前にして「沖縄を憲法普及の原点に」と訴えたし、平良良松・那覇市長は「憲法の心を沖縄の心にしよう」と語った。那覇市は85年、憲法9条を刻み込んだ「平和祈念碑」を建てている。

 だが、願いは報われなかった。

 戦後の日本は平和憲法の一方で日米安保条約をもち、ふたつの微妙なバランスの上に生きてきた国である。そんななか、沖縄は復帰の後も自ら望んだ「憲法」ではなく、ひたすら「安保」の方を請け負わされてきた。それがこの島の悲しさであり憤りではないか。辺野古で見られる基地反対の情念は、そう考えないと理解できまい。

 いや、自分たちが平和憲法の下に入ることなど、もとから幻想だったのだと言うのは、反骨の言論人として知られるの基地にあぐらをかいてきたのではないか――。新川明さん(75)だ。沖縄があればこそ本土は平和憲法を享受してこられたのだ。9条を守れという本土の運動すら、沖縄の基地にあぐらをかいてきたのではないか――。

 この5月、日米の外交・防衛閣僚による「2プラス2」の協議で、新たな「在日米軍再編案」が合意された。

普天間基地の移転とともに沖縄海兵隊の一部をグァム島に移し、米軍用地も若干返される。嘉手納基地の戦闘機の一部を本土の自衛隊6基地に分散し、訓練は日米共同に。一方、米国から陸軍の中枢機能(第 1軍団司令部)を神奈川県の座間基地に移し、アジアから中東までにらむことになる。

沖縄の負担を本土が分かち合うのはいいとして、これは日米同盟の中身を一気に深めることでもある。少しオーバーに言えば、「本土の沖縄化」を進め、日本全体を「安保の列島」にするということか。沖縄が熱望した憲法そのものも改正論議に揺れている。

 間もなく訪米する小泉首相は、民主主義という「共通の価値観」による同盟の強化をブッシュ大統領とうたい上げるという。だが、国際世論の反対を押し切ってイラク戦争に突入した米国の反省も、中国などとの関係を損なった小泉外交の反省もないまま、米国の軍事戦略にどんどん組み込まれていくのが本当によいことだろうか。(後略)

2006年6月27日付け朝日新聞「論壇時評」で政治学者の杉田敦さんは、次のように指摘しています。

 国民不在の場で国策が定義されるという手法は、本土の「沖縄化」というべき、最近の米軍再編にまで受け継がれている。そして、国家の無謬神話を維持するために、個人の運命や名誉など一顧だにしないという酷薄さは、ドミニカ「棄民」たちが半世紀にわたって味わわされ続けてきたものである。(以上)

本土の沖縄化の一番の特徴は、米陸軍の中枢機能(第1軍団司令部)を神奈川県の座間基地に移し、アジアから中東までにらむことになることにあらわれ、次に基地周辺の住民の生活環境悪化が更に進んでしまうことだと思います。

在日米軍の再編は、日米の軍事司令部を隣接、密接に連携させ、専守防衛ために持つとした自衛隊が海外活動に大きく比重を移して変質してゆきます。その変質する過程において自衛隊の海外活動に障害となる平和憲法を変えることが、自民党政府の政治課題となってきています。

同じ価値観の共有でも/山崎孝

2006-06-28 | ご投稿
【米国にモノ言う欧州】6月28日の朝日新聞記事抜粋

(前略)冷戦での共産主義、そして第2次世界大戦での全体主義、欧州を舞台にした二つの戦いの勝利に米国は大きく頁献した。イラク戦争終了後の3年間、ブッシュ大統領が訪欧するたびに力を入れたのが、この歴史的記憶を呼び覚ますことだった。

 「民主主義と自由という価値観を共有する米欧同盟」というレトリックがしばしば使われた。(中略)

 今回の訪欧で欧米間の傷を癒し、大西洋の両岸の友好と連帯をうたい上げたい。そんなブッシュ氏の期待は、他の欧州メディアによって冷や水を浴びせられてもいる。

 「欧州世論はイランやイラクよりも米国を世界への脅威と受け止めている」。英フィナンシヤル・タイムズ紙が19日、こんな世論調査結果を伝えた。5カ国のうち英仏、スペインなどではイラク戦争によって生まれた嫌米感情は好転するどころか、より深く大衆に根を広げていた。

 21日、他の主要紙が掲載した欧州連合(EU)欧州委員会のバローゾ委員長のインタビュー記事も痛烈だ。バローゾ氏は、世界貿易機関(WT0)交渉での米国の一層の譲歩を要求。さらにキューバ・グァンタナモ基地に設けた取り調べ施設で自殺者が出たり、拷問疑惑が浮かんだりする問題を批判した。

 そもそも欧州と米国の価値観、理念はどこまで重なり合うのか。EU議長国オーストリアのシュッセル首相は、ウィーンでの米・EU首脳会議後の会見で、「我々の共通する価値観を損なわない時にのみ、テロとの戦いに勝利できる」と基地収容者の扱いに行き過ぎがないよう米国にくぎを刺した。ここでは欧米がともに掲げる人権理念から批判の失が放たれている。

 一方仏ルモンド紙は23日の社説で、「米欧はテロ撲滅という目標では一致していても手法などで違いがある」と指摘、基地収容者を戦争捕虜と認めないなど、米国は国際法順守の姿勢に欠けると非難した。

 アフガニスタンヘの欧州部隊の増派、対中武器禁輸解除の先送りなど、この間、欧州は米国の戦略的要請を受け入れてきた。その見返りに欧州が求めてきたのは、単独行動主義に陥った米外交を国際協調主義の方向に一歩でも引き寄せることだった。

 核開発疑惑を持たれるイランと米国との対話の可能性を開いた5月末の米政権の決定は、この欧州の努力が実りをもたらした例だ。米ワシントン・ポスト紙の4日付社説は「経済制裁の前に平和的な方法を尽くすよう、ライス国務長官とメルケル首相ら欧州勢が大統領を説得することに成功した」とした。(後略)

EU議長国オーストリアのシュッセル首相「我々の共通する価値観を損なわない時にのみ」に協調という原則が大切です。

自民党政府は無原則に「共通する価値観の共有」するとして、米国と一体という姿勢でアジアなどに顔を向けています。この態度を改めない限り真の「国際協調」はありえません。


中日新聞の社説【憲法をポケットに】/山崎孝

2006-06-27 | ご投稿
私は朝日新聞を購読しているので、弟が中日新聞の社説を読んで見てと、中日新聞を届けてくれました。

2006年6月25日 中日新聞の社説は、憲法は、飾っておくだけでは役立たず。いつも持ち歩いて、絶えず意識し、現実と照合する、それが憲法を生かすことが出来ると主張しています。

日本の政治動向を「憲法改正の国民投票法案、教育基本法改正案、防衛庁を省に昇格する法案…日本の将来を暗示する宿題を残して通常国会が閉会した。ポスト小泉レースの結果によっては、三法案の先にある「憲法改正」が一層現実味を帯びてくる」と政治情勢を述べています。

そして、憲法をいつも自分の国の憲法をポケットに入れて持ち歩き、絶えず意識し現実と照合している、二人の人物を紹介しています。一人は、イラク戦争に反対したリベラリストの米連邦議会の重鎮ロバート・バード上院議員(民主党)は、合衆国憲法の写しをいつもポケットに携帯している。

「憲法の重さを身をもって知り、大切にしていた世代が次々引退している日本の現状と、つい照らし合わせてしまいます」と述べた後、宮沢喜一元首相を次のように紹介しています。  国会を離れてからも尻ポケットの手帳に日本国憲法が印刷された紙を挟んでいます。時々、取り出して読みます。宮沢さんの番組をつくったテレビプロデューサーが「新・調査情報」59号誌上で披露したエピソードです。「この憲法についてはあまりよく知らないからです」「明治憲法は学校でさんざん習ったのです。でも、新憲法は学校で習ったことがないのでいつも持ち歩いています」この言い方はシャイな宮沢さんらしい謙遜で、本当は「常に憲法を意識する」姿勢の表れでしょう。

社説は、「宮沢さんの覚悟を知ると小泉純一郎首相をすぐ連想します」と述べて、憲法解釈は「常識で考えろ」で押し通し、「どこが非戦闘地域で、どこが戦闘地域か、私に分かるわけがない」と開き直ってイラクに自衛隊を送り出しました。戦争指導者も祭られている靖国神社に首相が参拝することで心に痛みを感じる人には目もくれません、こんな首相が日常的に憲法を読み返しているとは思えない、と批判しています。

社説は、自民党の総裁候補についても、「国際的なタカ派路線が評価されている安倍晋三内閣官房長官、中国や朝鮮半島の日本支配を肯定するかのような発言をした麻生太郎外相など、小泉後継の候補といわれる人たちの周辺からも“平和憲法の香り”は漂ってきません」と、残念な思いを述べています。

社説は、若い世代の政治家たちを「戦前からのエリートの血筋を受け継いだり、選挙地盤や財産を祖父、父から譲り受けた二世、三世の政治家、そうでなければ政治家養成学校で観念的な政治教育を受け、下積みの苦労を知らない若手議員たち…この国の政治権力は与野党を問わずこんな人たちの手中にある」と述べて、共通点は「戦場に送られるかもしれない」という被統治者の不安に対する想像力の欠如です。「自分は死なない」という気楽さからか、国際政治や軍事をゲーム感覚で語ったりします、と危惧を表明。国民についても、「意識の裏に、流血や人の死と無関係な軍事力があるかのような錯覚がないでしょうか」と述べて、その錯覚の背景を、テポドン、中韓両国との対立、石油を中心とする資源争奪戦などの現実を前にして、平和だけでは日本人の生活を守れない、平和を支える軍事力が必要、との意識が国民の間に育ちつつあることを挙げています。

そして、六十年余も戦争に巻き込まれず戦死者ゼロという事実が、軍事力頼りに対する警戒感を弱めた、日本では反戦平和論の多くが「悲惨な体験を繰り返したくない」と被害者の視点と文脈で語られます。その積み重ねが、「自分たちは負けない」「悲惨さが見えない」戦争、つまり日本から遠い地域での武力衝突に対する感受性を、いつの間にか鈍らせたようにも思えた、と指摘しています。

社説は、改憲派の考え方を述べた後、中日新聞社の憲法について明確な立場を表明して次のように述べています。

改憲に積極的な論者はそこをついて一国平和主義と批判し、国際平和維持のために軍事的に貢献する必要性を強調します。でも、その人たちが、ともすれば犠牲者の出ることの想定抜きで軍事や戦争を語りがちなのも事実です。

日本国憲法を読めば、決して一国平和主義ではなく、非軍事的貢献で世界平和を構築することが日本の責務であると理解できます。

その責任を果たせずにいるのは、日本人が憲法を棚に飾るだけで、使いこなせなかったからでしょう。自民党政治による憲法棚上げを防げなかったのも同じ理由です。

米国の一極支配をサポートし、自衛隊と米軍の事実上の一体化をこのまま進めるのか、それとも憲法の原点に戻って自立、自律の国際協調路線を目指すのか。これから秋にかけて小泉政治を総括し、ポスト小泉を大きな転機にしたいものです。

憲法をポケットに入れて肌身離さず携帯し、折に触れ読み返せば総括のリトマス試験紙になります。(以上)

自民党新憲法草案に対する対抗軸は、中日新聞の社説が述べるように「非軍事的貢献で世界平和を構築することが日本の責務」であり、侵略戦争の反省から手にした、平和憲法の優れた理念であります。この理念が世界に通用する根拠を、国際情勢の情報を収集して、論理化して宣伝しなければならないと思います。

社説が述べた「自立、自律の国際協調路線」は、独立不羈の精神や箕輪登さんの碑文「常に腰の坐った背筋のシャンとした人間になろう」と共通する考えです。日本外交で大きく欠けていて、外国から批判されている事柄です。

参考 中日新聞のサイトで社説は読むことが出来ます。

再び平和構築委員会について/山崎孝

2006-06-26 | ご投稿
平和構築委員会の構成国が判明しました。5月18日の朝日新聞の記事を読み返してみると、「平和構築委員会の常設機関となる組織委員会として、日本など31カ国を確定させた」とありますから、31カ国が組織委員会ということで、私が読み間違いをしていました。申し訳ありません。この平和構築委員会に関する朝日新聞記事は、最初の5月18日の記事は一段19行の小さなスペースの記事でしたが、2回目、3回目は、団抜きの見出しで行数も大きい扱いになり、3回目では6月23日に、初の会合を開いたこと、アナン国連事務総長は「国連にとって重要な日」と述べ、エリアソン総会議長は「(19日)の人権理事会の初会合に続き国連改革の歴史的な収穫」だと述べたことなどを伝えています。

2006年6月25日「しんぶん赤旗」電子版より

【国連平和構築委が初会合】

 国連に新たに設置された「平和構築委員会」の初会合が二十三日、ニューヨークの国連本部で開かれました。

 平和構築委員会は昨年九月の国連首脳会議で設置が確認され、十二月に総会と安全保障理事会がそれぞれ設置決議を採択しました。紛争を克服した国がふたたび混乱に陥らないよう、復興に携わる関係当事者間の合意を取りまとめ、平和構築・復興戦略を提言する政府間諮問機関です。

 構成は、(1)安保理から五常任理事国とデンマーク、タンザニアの七カ国(2)経済社会理事会からアンゴラ、ベルギー、ブラジル、ギニアビサウ、インドネシア、ポーランド、スリランカの七カ国(3)国連への財政貢献度の高いドイツ、イタリア、日本、オランダ、ノルウェーの五カ国(4)軍事要員、民生警察要員の拠出で貢献度の高いバングラデシュ、ガーナ、インド、ナイジェリア、パキスタンの五カ国(5)国連総会で選出されたブルンジ、チリ、クロアチア、エジプト、エルサルバドル、フィジー、ジャマイカの七カ国―の計三十一カ国となっています。

 初会合では、国連のアナン事務総長が開会あいさつし、「この委員会が象徴しているのは、希望とともに忍耐だ。自分たちの社会が平和に向かう壊れやすい道からはずれないよう努力している世界中の数百万の人たちにとっては希望であり、忍耐とは、みなさんが相当の困難を乗り越えて、この新しく、重要な試みを実現し、実行しているからだ」と歓迎しました。

 委員会は委員長にアンゴラのガスパル・マルティン国連大使を選出。次回の会合から、ブルンジ、シエラレオネ両国の情勢について協議を求めた安保理の要請について検討する予定です。(以上)

国連のアナン事務総長は、平和構築委員会の象徴は「希望とともに忍耐」と述べています。「忍耐」は、米国などがよく使おうとする、対立したときに武力で手っ取り早く解決をはかろうとする精神とは正反対です。イラク戦争も開戦前に、バチカンから派遣された特使に対して、米国の軍人は心配しないでください素早く片付けると述べましたが、そのようにはなりませんでした。

「忍耐」は、理想を持ち、その理想を実現する手段として非暴力主義や人道主義をしっかりと持っていなければ、忍耐は出来ません。真の紛争解決には非暴力で人道主義が一番合理的な手段です。

自民党は国連事務総長や総会議長が述べていたことでも明らかなように、国連が今日、重要な課題とは位置付けていない、武力の伴う国際貢献を考えず、憲法前文の「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」の精神を生かして、平和構築委員会で役に立つよう日本政府は努力すべきだと思います。平和構築委員会で頑張ることは、正真正銘の人道復興支援になると思います。

陸自撤退で鮮明化した米軍支援/山崎孝

2006-06-25 | ご投稿
初めに訂正をさせていただきます。「『平和構築委員会』の常設機関である組織委員会のメンバー31カ国の中に」とお伝えしていますが、平和構築委員会が31カ国でした。組織委員会の構成数はそれより少なくなりますが、その数字は私はまだわかりません。お詫びして訂正します。

以下は、2006年6月24日付け朝日新聞「声」欄掲載文です。もう、みなさんは十分理解しておられますが、現在の政府の態度が憲法改定とどう結びついているかを、新聞に投稿して首尾よく掲載していただきました。(投稿文から編集者が紙面の関係で少し省略した部分、編集者が少し手直しした掲載文から、私が少しまた補筆しています)

【撤退で鮮明化 米軍の支援】

 政府はイラク南部のサマワに派遣している陸上自衛隊を撤退させることを決めた。

撤退を判断した状況として、イラクのマリキ首相が、サマワを含むムサンナ州の治安権限を多国籍軍から、イラク正式政府に移譲させることをあげていた。

 私は政府が人道と最も矛盾する戦争を支持しておいて、人道復興支援を行なうことをけげんに思っていた。政府が自衛隊を派遣する地域が非戦闘地域という建前から言えば、治安権限の所在とは無関係のはずである。

 陸自の活動は人道復興支援と言われたが、「占領地慰撫工作」の性格を持っていた。

米軍などの兵士や物資を運んでいる航空自衛隊の活動が活動を、地域を広げて継続することから見ても、自衛隊のイラク派遣は米軍支援であることが鮮明になった。

 この政府の態度は、防衛庁の省昇格法案や自民党新憲法草案を考える上でも重要な意味を持つ。

戦争の協力を含む自衛隊の海外活動が本土防衛と同格の任務となる。

自衛隊を持つ本来の目的であった専守防衛がないがしろにされた。次は改憲して集団的自衛権行使が可能な憲法の制定で、米国の戦争に参戦する扉が開かれるだろう。

心と体が向き合わない/山崎孝

2006-06-24 | ご投稿
沖縄タイムズ 2006年6月23日朝刊 同社ホームページより

【非戦の誓い胸に刻み きょう慰霊の日】

終戦から六十一回目の夏。沖縄は二十三日、慰霊の日を迎える。戦争で犠牲となった二十万人余の冥福を祈り、非戦の誓いを胸に刻む日。激しい地上戦が繰り広げられた沖縄戦最後の地、糸満市摩文仁では全戦没者追悼式が開かれるほか、各地の慰霊祭で逮族らが失った家族や友人をしのぶ。激戦の記憶が風化の波にさらされる中で、悲劇を繰り返さないための祈りが、島を包む。

同市摩文仁の平和祈念堂で二十二日夜、追悼式前夜祭が行われ、戦没者を慰める琉球踊、古典音楽などが奉納された。

今年は、憲法改正手続きを定める国民投票法案が、一九四七年の日本国憲法施行後、初めて国会手続きに入った。継続審議となったものの、改憲への流れが加速されそうだ。また、かつての治安維持法をほうふつとさせる「共謀罪」の新設や、愛国心を盛り込んだ教育基本法改正の動きが懸念されるなど、戦後日本の行方を危ぶむ声が強まっている。

琉球新報 2006年6月23日夕刊 同社ホームページより

【命の尊さ心に刻む 慰霊の日、恒久平和を誓う】

沖縄戦で亡くなった犠牲者のみ霊を慰める「沖縄全戦没者追悼式」(県主催)が23日、糸満市摩文仁の平和祈念公薗で行われた。日米同盟が強化された米軍再編協議では普天間飛行場の県内移設が再度決まり、基地の固定化が危惧される状況だ。憲法改正に向けた国民投票法案も国会で初めて審議されるなど、平和憲法が揺らぐ中で迎えた「慰霊の日」。参列者約4500人が犠牲者に祈りをささげた。

稲嶺恵一知事は平和宣言で「世界の恒久平和の実現に向かって、県民の英知と情熱を結集し、力強くまい進する」と決意を述べた。

小泉純一郎首相は「戦争の惨禍を繰り返してはならないとの不戦の誓いを堅持し、国際社会の一員として世界平和の確立に全力を尽くしたい」と誓いを込めた。(以下略)

沖縄タイムズと琉球新報が述べた政治動向は、小泉政権の政策です。これを見れば、小泉純一郎首相が、慰霊の日に述べた「不戦の誓い」の言葉と整合性は無く逆方向の政策です。「不戦の誓い」が本当の心としたら、客体としての体の向き(政策・行動)が合わないのです。自分の思っていることを実践した結果が「不戦の誓い」と逆の事実となってしまう。その事実に当人は気がつかないか、気がつかないふりをしています。

このことは靖国神社参拝でも言えます。ボール・ジアラ元米国防総省日本部長は「A級戦犯合祀されている靖国は、日本が戦争責任を認めたがらないことの表明になってきた」と、6月24日の朝日新聞紙上で指摘しています。正にその通りです。

二度と戦争を起こさない心で参拝する人が、かつての戦争指導者が祭神として祀られている神社に拝礼する行為との矛盾を気がつかない? のです。このような小泉首相の矛盾をまた認識しない選挙民にも残念な思いがします。

6月23日、最高裁は靖国訴訟に対して、憲法に定めた政教分離に違反しているかどうかの判断は示さず、首相の参拝は原告の利益や権利を侵していないとして上告を棄却しました。国民が裁判所に付託した違憲審査権を放棄した最高裁。最高裁自らが持つ権利と義務を放棄して、国民の利益や権利を審査し判定を下す資格はもうありません。

もう一人、心と体が向き合わないことを批判されている政治指導者がいます。2006年6月22日の朝日新聞の記事を紹介します。

「イランや北朝鮮の核問題はあっても、欧州人の大半は、世界の安定に最大の脅威は米国だと思っています」―。ブッシュ米大統領は21日、ウィーンでの欧州連合(EU)との首脳会議後、記者会見で、こんな質問を浴びせられた。大統領は「馬鹿げている」と反論したが、同様の質問が相次ぎ、防戦に懸命だった。

「我々は自分たちの身は自分で守るが、協力相手の国々と積極的に平和と民主主義を広めている。誰が言ったか知らないが、馬鹿げた説だ」。最初の質問を、ブッシュ氏はこう切って捨てた。

ところが、別の記者から「ここオーストリアでは、米国の行為が平和のためになるというのは14%で、64%は平和に反するとみている。英国では、米国はイランよりも世界を不安定にしているという人が多い」と、数字を挙げた上で「なぜ欧州人を説得できないのだと思いますか」と聞かれた。

大統領は、苦笑いを浮かべながら、「我々は透明性のある民主主義だ。議論は表にしている」と指摘。「私の決定に合意しない人がいるのは分かっている」としつつも、「私は世論調査によって動かされる政治はしない」と主張。「必要な時には厳しくなり、同時に思いやりがある」というのが、米国の外交政策の特徴だと訴えた。(以上)

ブッシュ大統領のいう「透明性のある民主主義」であったなら、シンディシーハンさんたちの母親の声を、何故、遮るのでしょうか。人間への思いやりがあったら、何故、イラクの罪の無い人たちを、4万人以上も犠牲にしてしまったのに戦争を止めないのでしょうか。心と体が向き合いません。

バグダッド飛行場周辺は非戦闘地域に当たると答弁/山崎孝

2006-06-23 | ご投稿
私が見ていた22日午後3時のNHKニュースは、額賀防衛庁長官が国会で、航空自衛隊による輸送活動の範囲を現在のイラク南部から首都バグダッドや北部のアルビルに拡大することについて「バグダッドの飛行場の周辺は治安が確保されており、非戦闘地域にあたると考えている。ただ、多国籍軍やイラク政府とも緊密に連携を取り、安全を十分確保したうえで活動させたい」と答弁している姿を放映していました。

この答弁は、地域ではなく極めて狭い場所を限定して非戦闘地域だと強弁しています。バグダッド近郊では英軍のC130輸送機が撃墜されたこともあります。輸送機は広い範囲の地域を飛んできて飛行場に着陸します。額賀防衛庁長官の国会答弁は「多国籍軍やイラク政府とも緊密に連携を取り、安全を十分確保」と述べています。この言葉が裏付けるものは、戦闘地域だから「多国籍軍やイラク政府とも緊密に連携を取り安全を十分確保」しなければならないのです。戦闘地域でなかったら、このような措置は必要がありません。

非戦闘地域の解釈は、結局は政府の都合の良いように解釈されています。これを見れば、自民党新憲法草案で述べてある、自衛軍の武力を伴う国際的協調活動の解釈は、政府に都合よく解釈されるようになるのが明白で、専守防衛といって自衛隊の存在を国民に認めさせてきた自衛隊は、既に戦地で米軍の手足となって動いています。

「しんぶん赤旗」6月22日電子版に次のような指摘があります。自衛隊先崎統合幕僚長は、バクダッド周辺は、現在でも一番脅威が高いと述べている。

空自はこれまで、イラク南部のタリルやバスラといった比較的平穏な地域に活動範囲を限定していて、バグダッドなどへの空輸は、安全確保の見通しがないことから見合わせてきたが、昨年12月のイラク派兵基本計画変更の際、実施要項で空自の活動対象となる空港を13から24に拡大。今年3月には、バグダッド西方の米海兵隊部隊の拠点アサド空軍基地に空自隊員7人が調査に入り、「もし命令が下れば、われわれはここに飛ぶ準備が整っている」などとのべた。(米海兵隊ニュース3月25日号)。

米軍は、膨大な予算を投じて航空基地の増強を進め、空からの攻撃力や空輸能力を高めようとしている。イラク駐留米軍高官は昨年5月、今後拠点となる航空基地として、バラド、アルビル、アサド、タリルを挙げている。空自の活動範囲の拡大は、このような米軍の戦略に沿ったもの。空自の活動範囲が拡大されれば、米軍の掃討作戦の中枢部で輸送活動を展開することになる。(記事以上)

先日、私は空自の活動範囲拡大の理由に挙げていた国連要請は刺身のツマに過ぎないと言いましたが、この経過からも言えます。自民党新憲法草案の「武力の伴う海外での自衛軍の国際的に協調して行う活動」は、所詮、直に色が剥がれ落ちる看板です。

同じ国会答弁で、麻生外務大臣は、今後のイラクヘの復興支援策について「イラクでは電力や道路などのインフラがめちゃめちゃに壊れたままになっている。インフラが整わなければ復興は進まないので、すでに表明している35億円の円借款を使って、こうした分野を重点的に支援していきたい」と述べました。

「イラクの電力や道路などのインフラがめちゃめちゃに壊れた」のは、フセイン政権下で壊れたのではありません。米英が戦争を起こしたから、激しく壊れたのです。イラク市民は停電で、自家発電をして見ようにも費用が高くて多くの人は大好きなサッカーワールドカップが見られない、フセイン政権下では国営テレビで誰でも見られた、と伝える新聞記事もあります。

と言っても、私はフセイン独裁政権を擁護するわけではありません。日本が米国の乱暴狼藉の尻拭いをさせられていることを言いたかったのです。故箕輪登さんの碑文「常に腰の坐った背筋のシャンとした人間になろう」という姿勢が、日本政府にほしいのです。

6月23日の朝日新聞にサマワに駐留して帰還した1佐の自衛官二人に取材した記事があります。一部を抜粋します。「砲声はやまず不安が渦巻く異郷で、文化の違う人々と交渉し、事業を完成させていく。国連の指示で活動するPKOとは違う経験だったという」、近寄ってくる不審な相手を「どのタイミングで撃つかは、文書や資料だけではわからなかった。全国から部隊が派遣され、訓練の過程でスタンダードが出来上がったのは財産だった」、「イラク派遣は自衛隊の新たな扉を開いた。この実績は組織にとっても自信になる」と語っています。

自衛官が語った「国連の指示で活動するPKOとは違う経験」と、小泉首相は20日の記者会見で「国際社会が開戦時の意見の違いを克服して、支援、協力活動を展開している」という言葉と照らし合わすと明らかに違いがわかります。

今日、23日は沖縄の「慰霊の日」です。沖縄戦は80日余りの戦いで20万人の犠牲者を出してしまいました。沖縄戦でも戦争は兵士よりも住民の犠牲者を多く出します。しかし、沖縄戦から61年後の日本は「砲声はやまず不安が渦巻く異郷」で、国からの命令で、命を奪い、奪われる可能性のある境遇に身においている日本人がいます。

自衛官は「イラク派遣は自衛隊の新たな扉を開いた。この実績は組織にとっても自信になる」と語っています。これは、イラクで4万人以上の民間人が犠牲になった戦争中のイラクの中に身を置いた認識としては、危険な方向の認識です。組織の外側から客観的に自分の立っている位置を見定めるのは難しいことですが、このままの認識であれば、日本の政治情勢は自衛隊員をより危険な立場に立たす運命が待ち構えています。

憲法を守らなければ、更なる新しいステップの扉、米軍の起こす戦争で、日本の武力行使の扉を開くことになります。私たちは沖縄戦の惨劇を改めて思い起こして、絶対に戦争への道を歩んではなりません。故箕輪登さんが述べたように、重装備の自衛隊を海外に派遣してはなりません。

平和構築委員会と自民党新憲法草案/山崎孝

2006-06-22 | ご投稿
2006年5月16日の国連総会は、紛争後の復興を支えるために新設する「平和構築委員会」の常設機関である組織委員会のメンバー31カ国の中に、日本の財政的貢献を評価して日本を選んだことを紹介しています。その時の新聞記事では「平和構築委員会」の役割は簡単にしか報道されていませんでしたが、6月21日の朝日新聞はもう少し詳しく報道した記事がありました。以下、記事です。

 国連安全保障理事会は19日、国連改革の目玉の一つとして創設され、23日に初会合が開かれる平和構築委員会について、最初に取り組む復興支援の対象としてアフリカのシエラレオネとブルンジの2カ国を推す方針を固めた。近くアナン事務総長あてに書簡を出す。委員会創設の構想段階から有力候補とされてきた東ティモールの復興支援は、治安状況の悪化から当面見送られる方向だ。

 ロイ安保理議長(デンマーク)や欧州の国連外交筋などによると、19日の安保理非公式会合で合意した。シエラレオネはダイヤモンド利権などをめぐる10年以上の内戦で死者5万人を出し、ブルンジでは民族対立に端を発した12年に及ぶ内戦で30万人が死亡している。

 最初の支援対象は2カ国とされたが、地域配分を考えて、中南米やアジア太平洋諸国からも対象を選ぶよう求める声も強かったという。

 平和構築委員会は2005年3月にアナン事務総長が提唱、国連はこれまで紛争の予防や解決に力を注ぎ、平和維持部隊などを派遣してきたが、同委員会は部隊が去った後も現地での国づくりをになう機関として構想され、その創設は昨年の国連創設60周年の総会特別首脳会議で人権理事会創設とともに最優先課題とされた。

 戦争や内戦を経験し、1990年代に和平合意に達した国の約半数が5年以内に再び暴力や混乱に逆戻りしたとも指摘される。

 委員会は、世界銀行や国際通貨基金(IMF)とも協力、多国間と2国間の経済支援など必要な支援を長期的に管理する。

 2002年に国連の協力で独立を達成した東ティモールは支援先の有力候補だったが、政府軍の内紛をきっかけに先月下旬から

首都デイリの騒乱が激化。「平和構築以前の段階に戻ってしまった」(国連外交筋)として対象から外されることになった。(記事以上)

平和構築委員会は、昨年の国連創設60周年の総会特別首脳会議で人権理事会創設とともに最優先課題と指摘されています。国連の最優先課題は、平和維持活動部隊の強化という警察と軍事を担う組織の強化の問題ではありませんでした。

イラク駐留米軍ナンバー2のカレリ中将さえ「治安の要は経済復興だ」と述べています。この言葉は、平和構築委員会の役割「経済支援など必要な支援を長期的に管理する」とも共通するものがあります。

そして、国連事務総長特使補佐官を務めた小野京子さんの「紛争国の復興で、心のケアや双方の対話を充実させる必要がある」も大切です。

以上から見ても、国連が日本に期待しているの非軍事部門の人的貢献と経済的貢献と思われます。自民党新憲法草案で提起した「自衛軍による武力が伴う国際協調活動」ではありません。日本が海外で武力行動が出来ることを望んでいるのは、国連が求めていることではなく米国なのです。

善意に考えれば「自衛軍による武力が伴う国際協調活動」を行いたいは、自民党の片想いで、国連との相思相愛ではありません。この片想いは悲劇を伴います。


国連要請は刺身のツマに過ぎない/山崎孝

2006-06-21 | ご投稿
2006年6月21日共同通信電子版より

額賀福志郎防衛庁長官は6月20日午後、防衛庁で紀者会見し、イラク南部サマワの陸上自衛隊撤退後の支援について、現在はサマワ近郊のタリル空港とクウェート間の輸送業務に当たっている航空自術隊の活動範囲を拡大した上、国連や米国など多国籍軍の輸送支援に乗り出すことを表明した。

額賀氏は「国連、米国などの支援要請に応えていく。バグダッドや北部アルビルヘの輸送が可能と考えている」と協調。活動範囲拡大に伴い、多国簿軍などとの連絡調整、情報収集に当たる空自の「バグダッド連絡班」を編成し、クウェートを拠点とする空自要員も約10人増員する方向だ。(以上)

 国連と多国籍軍と言っていますが、国連の要請は本年4月か5月頃からの要請です。国連は付け足しで刺身のツマに過ぎません。

なぜなら2005年秋、アメリカは、サマワでの活動について意見交換した日米英豪四カ国会議以来、陸自の撤退は理解を示しながら、空自の活動継続とサマワに近いタリル空港などに限っている輸送先をバグダッドや北部にも広げるよう要求しています。

 小泉首相は、2005年12月にイラク特措法にもとづく基本計画を変更した際、輸送先拡大問題について「日本で独自に判断していきたい」と肯定的姿勢を示していました。

 国連の要請を受けた部分があるにしても、今までも行なってきた空自の輸送支援で米軍の作戦を支えることは、客観的には罪のないイラク国民の殺りくに手を貸すことにつながる性格は変わらず、さらにこの状況が拡大されてゆくことになります。

国連の担ぎ出しに私たちは騙されてはなりません。小泉首相は20日の記者会見で「国連決議に基いてイラクに行った様々な措置は正しかった。国際社会が開戦時の意見の違いを克服して、支援、協力活動を展開している。日米同盟の重要性を認識しつつ、国際社会で責任を果たしていくのが今回のイラク支援。将来、イラク政府、イラク国民から評価されるだろう」と述べています。

イラク特別措置法は、イラク特別事態を、国際連合安全保障理事会決議678、687号、1441号に基づいて、国際連合加盟国によりイラクに対して行われた武力行使、としていますが、この言い分は多くの国連加盟国には通用しない言い分です。

 イラク特別措置法は1483決議を踏まえとなっています。国連は1483決議でイラクの復興支援を行うことを決めていますが、この決議は米国を国連と協調させるための決議でした。しかし、この決議に基いて有志連合から移行した多国籍軍に参加した国以外で多国籍軍に参加した国はありません。

小泉首相は「国際社会が開戦時の意見の違いを克服して」と述べていますが、国連加盟国と国際世論の多くは、「開戦時の意見の違い」すなわち、イラク戦争が不当な戦争という考えを捨ててはいません。むしろ、米国を支持し、有志連合に参加した政権でスペインとイタリアはイラクから撤退を掲げた政党が、その国の国民に支持されて政権を任される状況となり、参戦した英国のブレア政権は大きく支持を失い、ブッシュ政権の支持も急落しています。イラク戦争を支持して支援した日本には大義はありません。

日本国民は小泉マジックに騙され、小泉首相の意に適う人物でそれ以上のタカ派を後継者に選べば、日本の軍事化を推進する法律が目白押しに控えており(省昇格法案・自衛隊海外派遣恒久法)、終着駅は改憲です。