いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

安倍首相の所信表明演説を考える/山崎孝

2006-09-30 | ご投稿
安倍首相は就任後初めての所信表明演説集団的自衛権行使に関係して次のように述べました。大量破壊兵器やミサイルの拡散、テロとの闘いといった国際情勢の変化や、武器技術の進歩、我が国の国際貢献に対する期待の高まりなどを踏まえ、具体的な例に即し、よく研究してまいります。(以下略)

内閣法制局の見解は明確です。「わが国が直接攻撃を受けていない場合以外は、集団的自衛権は行使できない」です。日本が自衛権を行使できる条件を明確に規定しています。

「大量破壊兵器やミサイルの拡散」の変化で、仮に核兵器を搭載したミサイルで日本が直接攻撃されれば、現行憲法の下でも自衛権は発動できます。もっともこのような事態に陥らない外交が大切です。

「テロとの闘いといった国際情勢の変化」はあります。しかし、日本の同盟国米国のテロとの闘いの結果は次のようなものです。

米国のイラク戦争とテロとの関係を評価した機密報告書「国家情報評価」の結論部分が機密を解除されて明らかになっています。イラクでの紛争が「イスラム世界への米国の干渉に対する深い恨みを生み、地球規模のイスラム過激派運動への支持を拡大させた」と分析しました。この情勢は、今後5年間は続くだろうと予測しています。この分析は、先に紹介したアナン国連事務総長の「基本的人権をないがしろにしたテロとのたたかい」がテロ行為を生み出す結果となっているとの指摘と符合します。

「日米同盟が効果的に機能」することと、世界の「平和が維持される」こととは必ずしも整合性を持ちません。このことは日米同盟により、攻撃の発信基地、補給基地などの役割を果たした戦争を見れば明らかです。ベトナム戦争は、著しくアジア地域の平和と安定を脅かし、イラク戦争は、著しく中東地域の平和と安定を脅かしました。

日本が戦争に巻き込まれないためにも、現行憲法の解釈を変えてはなりません。

誰に対して、”優しさが満ち溢れた”ものか/山崎孝

2006-09-29 | ご投稿
【自民党と安倍政権の財政政策の姿勢を見る】

★日本政府、グアムで米兵の住宅建設費全額負担の方向

在沖縄米海兵隊のグアム移転計画として日本国民の税金を投じてグアムに建設される米軍家族住宅や単身用隊舎が、沖縄からの移転部隊のためだけではなく、グアムに一万人規模の「海兵旅団」を新設するためであることが、9月27日に分かりました。米太平洋軍が今月下旬に公表した「グアム統合軍事開発計画」で示されています。

 日米両政府の在日米軍再編合意では、在沖縄海兵隊の一部とその家族をグアムに移転するとしています。そのために家族住宅約三千五百戸の建設が必要とし、費用(二十五・五億ドル=約三千億円)は全額日本負担としています。移転対象部隊として例示されているのは、第三海兵遠征軍司令部や地上・航空・後方支援部隊の各司令部で、実戦部隊は含まれていません。

 ところが米太平洋軍の計画によると、グアムには、沖縄から移転する司令部に加えて、地上・航空・後方支援の実戦部隊からなる「海兵旅団」(九千七百人)を新設します。全体で家族住宅が必要な兵士は三千六百二十五人で、日米が示している「約三千五百戸」とほぼ一致します。

 同計画では、地上・航空部隊などを「さまざまな場所から(グアムに)移転する」としており、「沖縄からの移転」にはまったく言及していません。しかも計画が移転で最優先しているのは、司令部ではなく、UDP(部隊展開計画)に基づいて米本土やハワイから交代配備される地上戦闘部隊(歩兵大隊)です。これらの部隊の兵士は単身ですが、単身用隊舎も約四千五百人分を日本の負担で建設します。

 在日米軍再編合意では、沖縄にも一万人規模の海兵旅団が残ることになっています。沖縄とグアムに二つの旅団を設け、太平洋地域での米海兵隊の殴り込み能力を強化するため、日本国民の税金投入が狙われており、「沖縄の負担軽減」のためでないことは明白です。

★内政面では

 安倍首相は、法人税の「減価償却」の限度額を拡大することによって、初年度で六千億円規模に上回る大企業減税を来年から実施する意向だといいます。

会計上の「減価償却」は、毎年の企業の損益を平準化するために、建物や設備・機械にかかった費用を、耐用年数に応じて毎年一定の割合で費用として計上するやり方です。

 毎年の利益から差し引けるため、現実に設備に支出した年の翌年からは、税額を減らして企業の手元資金を増やす効果があります。日本の法定耐用年数は実際の耐用年数より大幅に短く、膨大な設備を持つ大企業には有利な減税策となっています。

 この「減価償却」をさらに拡充せよというのです。

 日銀の統計から推計すると、大もうけと減税で、大企業を中心に企業には百兆円を超える余剰資金が滞留しています。ため込んだ資金が投資額よりもはるかに大きくなっているのであり、減税は実際の経済効果を考えてもまったくの無駄です。

 いま大企業はバブル景気の時の一・五倍という空前の利益を上げています。ところが至れり尽くせりの大企業減税を続けた結果、大幅に増えた利益とは逆に法人税収は19兆円から13兆円に減っています。政府の税制調査会でさえ大企業・大銀行向け減税の縮小を求める声が上がっています。政府税調の委員からは「政府は大赤字、個人はやっとトントン、黒字になっているのは企業だけ」と、いっそうの大企業減税への疑問も出ています。

 他方で安倍首相は、来年の参院選後には消費税増税の議論を始めると語っています。

 小泉「構造改革」は不安定雇用を大幅に増やし、大企業と大資産家に減税する一方、庶民には増税と福祉削減で犠牲を押し付けてきました。異常な大企業中心主義の政治が、働いても働いても生活保護の水準以下の収入しか得られない生活を多くの若者に強いています。住民税や健康保険料が何倍にも膨れ上がり、多数の高齢者を直撃しています。障害者や母子家庭など社会的に弱い立場に置かれた国民にしわ寄せする「改革」は、格差と貧困を大きく広げてきました。

 尾身財務相は自民党の税制調査会の副会長として大企業減税の旗振り役を務めてきました。中川秀直幹事長は9月26日のテレビ番組で、大企業減税の効果を強調し、減税は企業にとっては財政を出動する「補助金」と同じだと断言しました。

安倍首相は首相就任後の記者会見で「活力とチャンスと優しさに満ち溢れた国にしていく」として、発足させた内閣の名前を「美しい内閣づくり内閣」と名付けました。従来からの自民党政府の財政政策の姿勢を引き継ぐ安倍政権の姿勢を見れば、誰に対して、”チャンスと活力を与え”、誰に対して、”優しさが満ち溢れた” ものであるかは明瞭です。

本田由紀東京大学助教授は、「安倍新政権を問う」という朝日新聞コラム欄で「自由な競争や効率を至上価値とする今の社会は、すでに多くのきしみを生んでいる。少なからぬ人が安い賃金、不安定な雇用、長い労働に耐えながら、生活や生存の展望を確保できない状態にある。この国は教育や雇用・労働の面では美しくない。…」と述べています。安倍氏は小泉政権の要職にいました。小泉政権は美しくない側面を加速させた政権です。安倍氏もその責任があります。それでいて小泉政権の政策を土台にし、少し色付けした政策を実行しても「美しい国」になるはずがありません。

(しんぶん「赤旗」電子版複数の記事情報、朝日新聞記事情報を参考にしています)

政権人事に表れた安倍首相の歴史観と国家観/山崎孝

2006-09-28 | ご投稿
政権人事に表れた安倍首相の歴史観と国家観/山崎孝

戦後50年の1995年8月15日に当時の村山内閣が閣議決定した「村山談話」は、アジアに対する「植民地支配と侵略」を反省した内容で、歴代政権は「同じような認識」などと説明してきた。安倍晋三氏は、「精神を引き継ぐ」としながらも「植民地支配と侵略」がアジアに損害を与えた部分について「基本的に歴史家に任せるべきだ」と記者会見で述べています。安倍晋三氏はこのように歴史認識をあいまいにしています。

しかし、安倍晋三氏は、「党内基盤を安定させるため、自民党総裁選で功績のあった派閥やグループに配慮しながら、首相の政治信条に近い保守色の強いメンバーを積極的に起用した人事となった」また、「…国家観や憲法観、家族観で、日本の伝統を重んじる保守的な人物が目に付く、首相の意向も相まって、新内閣の政策はより保守色を強める可能性がある」と9月27日付け朝日新聞は報道しました。

以前から派手に出していた「自虐史観を批判する」歴史観を最近は出さないように努めているようですが、人事には色濃く反映しました。問題はこのような歴史観の人材布陣で隣国や世界との信頼関係を築ける外交が展開できるかどうかにあります。

朝日新聞の複数の記事や社説を参考にしながら幾つかの例を拾ってみます。

麻生外務大臣 総裁選で安倍氏と似た憲法観や歴史観の主張を展開した。ダブルAで安保理決議外交で対中国封じ込めを念頭に置いた強硬路線を走り挫折した。解釈改憲を主張。

久間章生防衛庁長官 9月26日の就任記者会見で、集団的自衛権行使をめぐる解釈について「今のところ従来の解釈を踏襲しながらやっていく」としながらも「現実に即した場合、そういう解釈で乗り切ることが出来るかどうか、具体的に検討する余地があるのではないか」と述べた。

中川昭一政調会長 1997年「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」会長になっている。同会は扶桑社の歴史教科書をバックアップした。同会で活動した高市早苗氏が沖縄・北方相に就任、同会事務局次長だった下村博文氏が官房副長官に就任。同会所属であった山谷えり子氏が教育再生担当の首相補佐官に就任した。

下村博文氏は最近、教育再生会議のテーマのひとつに「自虐史観の歴史教科書をやめさせる」と述べている。山谷えり子氏は「いまだにレーニンの言葉を守っているんでしょうか、自虐的な内容の教科書をつくっている」と述べている。扶桑社の歴史教科書を自民党が強力な採択運動を行ったが、極めて低率の採択の成果が上がらなかった。しかも採択権が教師から教育委員の手に渡った状況のもとでの低率採択率でした。このことは扶桑社の歴史教科書が他社に比較して偏向していることの証左です。両氏の発言は、歴史を一応正視する教科書を作るな、扶桑社の教科書みたいな記述にしろと教科書会社に言っていることと同じです。このようなイデオロギーを子どもたちに教育をしろと言っていることと同じです。世界の物笑いになる子どもを育てよと言っていることと同じです。これと関連してワシントン・ポストの社説の一部を後で紹介します。

安倍氏は自らの歴史観をあからさまにしなくても、仲間を政権内に入れて代弁させるような奥の手を使うのかも知れません。そして国民に自らの歴史観を広めていこうとしていると考えられます。

再度述べますが、最大の問題はこのような布陣で、隣国や世界との信頼関係を築ける外交を展開できるかどうかにあります。

9月25日、米紙のワシントン・ポストは「新しい首相は歴史に誠実でなければならない」と題した社説で「現在の政策は、過去への率直な誠実さに裏打ちされていなければならないことを認識する必要がある」と苦言を述べています。社説は、安倍氏の東京裁判の正当性への疑問、村山談話を踏襲しないことを挙げて「安倍氏は過去を美化することでは、小泉首相を上回る」と懸念して「安倍氏は日本のプライドを主張することに政治的な利点を見出している」と述べています。

安倍首相は「美しい国づくり内閣」と名付けました。だが、就任早々、米有力紙にこのような痛烈な批判を受ける日本は「美しい国」と言えるでしょうか。


改憲に反対する概括的な私の意見/山崎孝

2006-09-27 | ご投稿
今まで私が述べてきたことをまじえておおまかに再度の意見をのべてみます。

日本は敗戦の時点で、本土に兵士が4百万人以上、本土以外に3百万人以上いました。海外での戦死者は日中戦争が拡大する1937年以降からでも2百万人以上出しました。アジアの人たちに2千万人を超える犠牲者を出す侵略戦争を起こしてしまいました。

この歴史を背景に日本国憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こらないようにする、と決意を記しました。そして憲法の決意を政府が守るように、海外では武力行使をしてはならないと定めました。この定めによって、戦後61年間、日本は戦争で人を殺すことも殺されることもなく、明治からの戦争が続いた歴史を一変させました。

この憲法の決めごとは、2006年1月18日の日米防衛首脳会談で役に立ちました。米国からイラクの治安維持活動に自衛隊が参加をしてほしいと言われましたが、日本は「現行法では困難」と断ることが出来ました。英国は国連事務総長から国際法違反と言われたイラク戦争に参戦し、イラク占領後は、反米武装勢力との戦闘や治安維持活動で103人以上もの戦死者を出しています。

現在の自衛隊の海外活動は、米空軍の公式ホームページ6月28日付に「航空自衛隊は初めて、積極的に戦闘地域へ配備される」と書かれ、また防衛庁関係者が「空港という点と飛行経路という線だけを『非戦闘地域』とするのはフィクションだ」と考える状況にまでになったイラクバクダッド空港などで米軍の支援を行っています。これはイラク特別措置法と憲法に違反しています。

改憲を支持する人たちの中には、憲法に自衛隊の存在を明記したいと考える人たちもいますが、内閣法制局は日本が直接的な形で攻撃を受けた場合は、個別的自衛権は行使できるとして、自衛隊の存在を認めています。ただし、日本の領海外での武力行使や日本が攻められていないのに同盟軍を戦闘行動で支援する集団的自衛権行使は認めていません。

2005年10月に公表された「自民党新憲法草案」は、現行憲法の第9条第1項「戦争放棄」の条項は残していますが、第2項で戦争放棄の精神とはかけ離れた「自衛軍」という軍隊を持ち、海外での武力行使が出来るとなっています。

 世界の流れは、ヨーロッパはかつて戦争を何度もした国同士がもう戦争はしないとして、多国間による安全保障体制の欧州連合(EU)が出来ています。アジアでは厳しく対立していた米国とロシア・米国と中国・中国と韓国が合同協議を行う6カ国協議で東アジアの平和と安定を図ろうとしています。北朝鮮のミサイル発射後もこの枠組みを維持する努力を重ねています。なぜなら、この協議で北朝鮮は、米国が安全を保障するなら、軍事的核の放棄を行うと約束しているからです。2005年12月には東アジア首脳会議で、東アジア共同体構想も話し合われています。

これら多国間による安全保障体制の確立を図ろうとする動きは、憲法を変えて日本が軍事的双務の責務を負ってまで、日米軍事同盟を強化していく方向とは違います。

しかし、安倍晋三氏は、集団的自衛権行使を「数量的概念」にして行使する範囲を限定、解釈改憲で集団的自衛権の行使を可能にする。解釈改憲よりも集団的自衛権行使の範囲を拡大した改憲は5年を目途に行いたいという意向を示しております。

首相に就任したときの記者会見でも、解釈改憲による集団的自衛権行使については、日米同盟の双務性を高めることが重要、日米同盟は「外交・安全保障の基盤」と述べています。

2006年6月、日米首脳会議で合意した共同文書「新世紀の日米同盟」には、「共通の価値観と利益が、地域及び世界における日米協力の基盤を形成する」とうたっています。その共通の価値観に、自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配の推進を挙げています。しかし、共通の価値観の推進を実践した結果は大きな挫折をしています。

2006年9月に出した国連イラク支援派遣団の報告書は、イラク中央政府が「法に基づく統治」に向けた努力をしているにもかかわらず事態が悪化していると指摘。市場、モスク(イスラム教礼拝所)、巡礼者に対するテロ攻撃が頻発し、宗派抗争や報復攻撃が続いていると強調。民兵集団や組織犯罪が増大し、市民が無差別に殺りくされているとしています。

2006年年9月、アナン国連事務総長は、「基本的人権をないがしろにしたテロとのたたかい」がテロ行為を生み出す結果となっていると指摘。アナン氏は安保理に提出した報告書でも「イラクはいま、世界で最も暴力の激しい地域だ」「暴力が続けば、国の分裂の危険、内戦の可能性さえある」と厳しく警告しています。

このように武力よる日米共通の価値観の推進という大義は、米国の言動によって崩壊に瀕しています。従って日本が軍事的な双務の責任を負い、そのために集団的自衛権行使を必要とする根拠もまた失っています。

私は、戦争をしない平和な国で暮らし続けるために、憲法を守り生かしたいと考えています。

法律の規定と法の精神を守ったのは教師と裁判官/山崎孝

2006-09-26 | ご投稿
9月26日付け朝日新聞「声」欄に次のような意見がありました。

【不快に感じた君が代の判決】男性(65歳)

入学式や卒業式に国旗を掲げ、起立して国歌を歌うのは、少数者の思想・良心の自由を侵害するとして「強制できない」という判決が東京地裁で出された。

 「法律上はそうかもしれない」と思いながらも、小泉首相が言うように法律以前の問題として、この判決に不快感を覚えるのは私だけだろうか?

 日本人であることを強制するな、と言うなら自分の好きな国の国籍を取得するのは自由だろう。しかし、日本人であり続け、日本人としてのアイデンティティーを大切にしたいなら別だ。教師という立場で生徒を日本人として教育したいなら、国歌・国旗の下に「日本」を教えるのは当然ではないか。

 様々な報道でも、「国歌・国旗」を排除するのか「君が代・日の丸」が嫌なのか、もう一つはっきりしない。後者なら個人の心情として分からぬでもない。

 ただし、現時点では日の丸が国旗、君が代が国歌と決められているのだから、個人の心情は別にして、教師の立場では国歌・国旗を尊重して教育・行事にあたるべきだ。それが多数決を重んじる民主国家の人民の取るべき道ではないか。この問題を訴訟に持ち込むことは不快である。(以上)

投稿者の意見「日本人であることを強制するな、と言うなら自分の好きな国の国籍を取得するのは自由だろう」は、異なる意見の者を排除したい気持ちを感じます。「日本人であり続け、日本人としてのアイデンティティーを大切にしたいなら別だ」という言葉について考えて見ます。基本的な考えとして、日本人としてのアイデンティティーとして何を求めるかは個人によって違うということを投稿者は理解しなければと思います。

私は日本人としてのアイデンティティーのひとつに日本国憲法の理念に求めています。だから憲法を大切にしたいと思っています。様々な価値観を抱き、お互いを尊重する社会です。教育界に国家や行政組織の支配や思惑が及ばない日本です。そして世界の平和を求める日本です。私のアイデンティティーと東京都の教育行政は相容れません。投稿者は日本人でありたいのであれば一様に近いアイデンティティーであるべきだと考えておられるようです。日本人の国旗・国歌に対する思いは、国旗・国歌のどのように歴史的に扱われたかを考えれば一様の思いとならない筈です。

「多数決を重んじる民主国家の人民の取るべき道ではないか」の意見ですが、国旗・国歌に関する法律は、国会議員の多数で決められましたが、強制しないとそのときの総理大臣は言明しています。民主主義社会とってとても大切なことは、少数者の意見を尊重しなければならないということです。

国家や行政組織は不当に教育に介入してはならないという教育基本法の規定、日の丸、君が代は強制するものではないとした法の精神を守ろうとしたのは、訴訟を起こした教師たちであり、法律を正当に理解して法律を守る判決を下したのが裁判官です。

「新世紀の日米同盟」が根拠とした大義の崩壊/山崎孝

2006-09-25 | ご投稿
【イラク人死者6600人 7―8月 テロ頻発、米軍作戦下で】9月24日「しんぶん赤旗」電子版より

 国連イラク支援派遣団(UNAMI)は二十日、イラクで七―八月の二カ月に六千五百九十九人の民間人が殺され、五―六月の死者を約七百人上回ったとする報告書を発表し、イラク情勢が過去最悪の事態に至っていると警告しました。9・11米同時テロ五周年を前後して、ブッシュ米大統領が繰り返し強調してきた「イラクでの自由と民主主義の成果」は、現実によって否定されています。(居波保夫)

 特に月間としては七月の民間人の死者が三千五百九十人に上り、過去最悪を記録しました。その大部分は首都バグダッドに集中。七月には同市で米軍が「掃討作戦」と称する大規模な軍事作戦を強行していました。

 UNAMIの報告書は、イラク中央政府が「法に基づく統治」に向けた努力をしているにもかかわらず事態が悪化していると指摘。市場、モスク(イスラム教礼拝所)、巡礼者に対するテロ攻撃が頻発し、宗派抗争や報復攻撃が続いていると強調。民兵集団や組織犯罪が増大し、市民が無差別に殺りくされているとしています。

 ひどい拷問の跡のある遺体や処刑されたとみられる遺体が全国各地で何百と発見されていると述べています。その対象は軍・治安部隊要員のほか、判事や弁護士、ジャーナリストや出版関係者に及んでいます。

 特に女性の場合、社会進出はおろか、自由な外出、保健サービスや教育を受けることさえ困難です。治安の悪化に加え、「戦闘的集団」の不寛容さによって女性の権利がますます制限されていると報告書は指摘しています。

 報告書はさらに、米国主導の多国籍軍が過度の武力行使に出ており、市民の移動を制限している事例がいくつも聞かれると明記。また、イラク司法機関の能力不足もあって、何千人もの被拘束者が既存の法の枠外で拘束され続けていることにも注意を喚起しています。

 ブッシュ大統領は十九日の国連総会での演説で、「イラクは国民の願望を体現する民主的政府を持つに至った」とイラク戦争・占領の成果を改めて誇示し、「イラクで民主主義が成功を収めるよう援助し、イスラム世界の希望のかがり火にしたい」と述べました。

 しかし、その直前に演壇に立ったアナン国連事務総長は、「基本的人権をないがしろにしたテロとのたたかい」がテロ行為を生み出す結果となっていると指摘し、暗にブッシュ政権を批判しました。同氏は十一日に安保理に提出した報告書でも「イラクはいま、世界で最も暴力の激しい地域だ」「暴力が続けば、国の分裂の危険、内戦の可能性さえある」と厳しく警告しています。

★国連イラク支援派遣団(UNAMI)イラクで人道復興支援活動を実施する国連の各組織を統合する機関として、二〇〇三年八月十四日採択の安保理決議一五〇〇で創設されました。任期は一年。これまで毎年更新され、今日に至っています。復興と人道支援で国連の役割を拡大するものとして期待される一方、米軍主導の占領下で活動が制約されている面もあると指摘されています。(以上)

国連イラク支援派遣団は、《特に月間としては七月の民間人の死者が三千五百九十人に上り、過去最悪を記録しました。その大部分は首都バグダッドに集中。七月には同市で米軍が「掃討作戦」と称する大規模な軍事作戦を強行していました。》と報告しています。現在、バクダッドで米軍の兵士や物資を空輸活動をしている航空自衛隊はこの作戦と関係していないのでしょうか。

国連イラク支援派遣団報告は「戦闘的集団」の不寛容を指摘しています。日本の社会は、猛々しい心の政治家や闘う政治家を目指す指導者の言動に煽られ、寛容の心や宥和の心を失っていく気配を感じます。この気配が強くなると容易に戦争体制は築かれてしまいます。

《ブッシュ大統領は十九日の国連総会での演説で、「イラクは国民の願望を体現する民主的政府を持つに至った」とイラク戦争・占領の成果を改めて誇示し、「イラクで民主主義が成功を収めるよう援助し、イスラム世界の希望のかがり火にしたい」と述べました》しかし、イラクの現状は、戦争を起こすと必然的に消失する人間性や、暴力や武力の応酬で掻き立てられた憎悪心が引き起こす地獄絵です。

2006年6月、日米首脳会議で合意した共同文書「新世紀の日米同盟」は、共通の価値観と利益が、地域及び世界における日米協力の基盤を形成する、とうたっています。その共通の価値観に、自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配の推進を挙げています。

国連イラク支援派遣団の報告書を見れば、この日米共同の価値観のなかの人権=人間の尊厳を守ることや法の支配が根底から崩れていることがわかります。従って「共通の価値観と利益が、地域及び世界における日米協力の基盤を形成」するとした日米協力の根拠や大義は、米国が起こしたイラク戦争とその後の中東における民主化のモデルにしようとしたイラクの占領政策の破綻によってとうに崩壊しているのです。9月19日の国連総会の演説で、アナン国連事務総長は、「基本的人権をないがしろにしたテロとのたたかい」がテロ行為を生み出す結果となっていると指摘したことでも、そのことは明確です。米国の主張する「世界の民主化」に日本が軍事的な双務の責任を負うため集団的自衛権行使を必要とする根拠もまた崩壊しています。

9月24日午後に「志摩九条の会」の発会式がありました。そこに集まった人の中には、広島で原爆投下後の地獄絵を見た人、「満蒙開拓団」に参加していて、敗戦前後に起きた地獄絵を見た人がいました。その方たちは、戦争は二度としてはいけない、そのために「志摩九条の会」に参加して、少しでも力になりたいと話されました。

24日の午前「いせ九条の会」の賛同署名運動に参加して、私は戦争体験者の話をお聞きしました。以前にも賛同署名運動に参加して何人もの方たちから戦争の話をお聞きしています。そして戦争はしてはならないという思いを「いせ九条の会」の賛同署名に込めて下さいました。私は戦争体験者の話を聞くと何かしら粛然とした気持ちになります。

周知のように、日本国憲法前文は、戦争を体験した幾百万の日本人の思いが込められて、再び政府の行為によって戦争の惨禍を起こさないように決意をしています。この憲法を守り生かさなければと改めて思います。

集団的自衛権の行使が「量的概念」となった場合/山崎孝

2006-09-24 | ご投稿
朝日新聞9月23日の記事より 《 》が引用部分

《安倍氏は新政権で、解釈変更のための「検討の場」置く考えを示唆している。前のめりの姿勢の背景には、小泉政権で強化された日米同盟を、自らの政権でさらに揺ぎないものにしたい、との思いがあるようだ。》

安倍氏は9月11日の自民党総裁選の討論会で《「日本が憲法上禁止している集団的自衛権行使は『絶対概念』としての行使ではない。いわば『量的概念』として、必要最小限を超える集団的自衛権の行使はできない」と表現した。ただ憲法は①日本への急迫不正の侵害がある。②他の適当な手段がない③必要最低限の実力行使にとどめる――の3条件が必要としている。》(抜粋以上)

私たちは「日本への急迫不正の侵害」が、米国の他国への介入で、もたされた事態かも知れないことを十二分に考慮に入れなければなりません。

安倍氏の主張する集団的自衛権の行使が「量的概念」となった場合、“量的概念”であった個別的自衛権で、いかに自衛隊の軍事力や活動が拡大して行ったかを見てみる必要があります。

日本政府は日本には自衛権があるとして、最小限度の防衛力を持つと説明して自衛隊を発足させました。その時(1954年)は国民には戦争の記憶が強くあり、国民を安心させるために自衛隊は海外に出勤させないとする参議院の決議も行いました。

ところが現在は、世界有数の軍事力を保有し、海外にも出勤し、しかも、戦闘中の米軍に軍事支援を行っています。

自衛隊の装備は、高速輸送艦の導入や大型高性能の空中給油機を導入、特化した部隊も編成します。また、陸上自衛隊に「中央即応連隊」(仮称)を新設することを来年度予算案に盛り込みました。同連隊は2006年度末までに新設される陸自中央即応集団の中核部隊で、自衛隊初の海外派遣専門の実戦部隊となります。

これらを見れば、集団的自衛権行使を“量的概念”にすれば、集団的自衛権行使のレベルは、政府の意のままに拡大する危険があります。既成事実に弱い国民性に付け込み、抵抗を弱くして集団的自衛権を全面的に可能にする改憲を行うことを狙うのでしょう。内閣法制局の、「わが国への武力攻撃の発生がない以上、自衛権は行使できない」を守るべきです。

自民党新総裁の思考パターン/山崎孝

2006-09-23 | ご投稿
朝日新聞9月21日の記事に「歴史観はどこへ向かう」という見出しの記事がありました。抜粋して紹介します。

歴史認識をめぐる焦点の一つは、戦後50年の1995年8月15日に当時の村山内閣が閣議決定した「村山談話」だ。アジアに対する「植民地支配と侵略」を反省した内容で、歴代政権は「同じような認識」などと説明してきた。安倍氏は「精神を引き継ぐ」としながらも「植民地支配と侵略」がアジアに損害を与えた部分について「基本的に歴史家に任せるべきだ」と記者会見で述べた。

村山内閣で総務庁長官だった江藤隆美・元自民党衆院議員は「アジア各地に迷惑をかけたから、談話の精神を引き継ぐのはわかる」一方、植民地の朝鮮半島でも学校や病院をつくったなどとして「談話の中身は勉強不足で軽率だった」と振返る。「日本と相手国がお互いに同じ歴史観を持つことはあり得ない。歴史家が判断すべきだという安倍氏に賛成だ」。

安倍氏の思考パターンを考えてみます。紹介済みですが、北朝鮮のミサイル発射実験に関連した安保理決議について、安倍氏と歴史観の一致すると思われる「産経新聞」は、「第7章削除」受け入れについて、「『日本の国家としての意思を問われている。中国の拒否権行使もいとわない』と考える麻生、安倍両氏にとり『制裁』の根拠となる7章の削除は苦渋の決断だった」と述べる。「こちらが突っ張ったから、中露は議長声明から非難決議に譲歩したんだろ」の麻生発言や「こちらはすでに第7章40条(暫定措置)に限定するところまで譲歩しているではないか」という安倍長官の“不快感”の発言も伝えています。

このような外交経緯であったにもかかわらず、安倍氏は7月の自民党総裁選挙に関連するパネルディスカッションで、北朝鮮をめぐる「国連決議は私と麻生外相の『ダブルA』で原則を決め、初めて国連安全保障理事会の主役となった。国益を守るため、時には主導権を握る外交を展開するべきだ」とほらを吹いています。

「村山談話」の精神を「精神は引き継ぐ」としながらも「植民地支配と侵略」がアジアに損害を与えた部分について「基本的に歴史家に任せるべきだ」とする考えは、安倍氏の考え方を代弁したと思える江藤隆美氏の考え方を見れば“全体像から乖離した部分的側面を強調して、自らの考えや行動の正当性を見出したいとする思考パターン”です。要するに事柄の全体像から物事を捉えない精神構造です。日本が『ダブルA』で突っ張ったから「中露は議長声明から非難決議に譲歩したんだろ」ではなくて、この問題で国連安保理が課題としたことは、「一致して北朝鮮に国連のメッセージを伝えること」が、最重要と考えた英仏が国連憲章第7章を前提としない妥協案を示したから、中国とロシアも「一致して北朝鮮に国連のメッセージを伝えること」が良いと考えて歩み寄ったのです。

『ダブルA』の外交がリードしたのはごく論議のスタートの段階だけで、英仏の妥協案が出されたら、北朝鮮のミサイル発射実験を直接的脅威と思っていなかった米国は妥協案の方に傾きました。日本の外務省に国連憲章第7章の前提の立場を貫けと発破をかけていた『ダブルA』の指示ですが、経緯を見れば安保理の論議の主役から転がり落ちていたのです。主役を退いてからは米国の説得もありしぶしぶと安保理の方向に従いました。それなのに安倍氏は「初めて国連安全保障理事会の主役となった」と、最初の部分的局面だけを強調して全体を評価しました。

江藤隆美氏の述べた日本が植民地の朝鮮に学校を作ったとしてもその目的は、朝鮮民族の独自性を奪い、日本への同化を図ることが目的でした。朝鮮総督府編纂の「初等科国語」教科書は「ああ、かがやく日章旗、ぼくらは興亜の少国民だ」と書いてあります。このように日本語の教科書で朝鮮の子供たちに皇民化教育を行っています。この成果が日本の兵隊となり、特攻隊員にさえなる朝鮮の若者が現れました。そして、映画「ホタル」の話のような悲話が生まれました。NHK放送の韓国ドラマ「クッキー」に、主人公が1945年8月15日に、これで日本語の教科書や看板が無くなると喜ぶ場面がありました。植民地政策において、民族の同化政策をとったのは日本だけだと言われています。

「日本と相手国がお互いに同じ歴史観を持つことはあり得ない」としても、歴史の重要な事実(主要な側面)は認めなければなりません。これでなければアジアにおいて日本は孤立します。

参考資料 7月16日の朝日新聞電子版(抜粋)

北朝鮮のミサイル発射問題をめぐる国連安全保障理事会の制裁決議案をめぐる協議は15日、日米両政府が修正案で示した「国連憲章第7章40条」に基づく措置との表現をめぐって、共同提案国の英仏がこの表現を削除する提案を示し、中国は受け入れる考えを表明。米政府も「7章」の文言にはこだわらず、「十分な拘束力を持つ明確なメッセージを送ること」(ボルトン国連大使)を重視し、全会一致を求める姿勢を強め、歩み寄りを示している。日本も「7章の表記にはこだわらない」(外務省幹部)としており、日米は「7章」の表記を抜いた決議案の採決を同日午後の安保理で行いたい意向だ。

ボルトン米大使は15日午前(日本時間同日夜)、「7章の効力を持つ決義であれば、米政府は支持する」と述べ、「7章」の文言にはこだわらない姿勢を示した。(中略)

中国の王光亜国連大使は、英仏提案について「まだ抵抗している国が1.5カ国ある」と述べ、米国が姿勢を軟化させていることを示唆。「日本だけが7章にこだわった場合は、協議は終わる」と日本を牽制した。(以下略)。このように中国を追い詰めようとした外交を行いましたが、最終局面では逆の立場に立たされるはめになっています。

第40条〔暫定措置〕

事態の悪化を防ぐため、第39条の規定により勧告をし、又は措置を決定する前に、安全保障理事会は、必要又は望ましいと認める暫定措置に従うように関係当事者に要請することができる。この暫定措置は、関係当事者の権利、請求権又は地位を害するものではない。安全保障理事会は、関係当事者がこの暫定措置に従わなかったときは、そのことに妥当な考慮を払わなければならない。

東京地裁、戦後レジーム体制の法の精神に則り判決/山崎孝

2006-09-22 | ご投稿
東京地裁は入学式や卒業式で日の丸に向かって起立や君が代の斉唱を強要するのは不当だとして、東京都立の高校や養護学校などの教職員が都教委などを相手に、起立や斉唱義務がないことの確認を求めた訴訟の判決が9月21日、東京地裁でありました。

難波孝一裁判長は、違反者を処分するとした都教委の通達や職務命令は「少数者の思想信条・良心の自由を侵害する」として違憲・違法と判断。起立、斉唱義務がないことを確認し、違反者の処分を禁止しました。さらに、401人の原告全員に一人3万円の慰謝料を支払うよう都に命じました。東京都は控訴する方針です。

難波孝一裁判長は、日の丸や君が代が皇国思想の精神的支柱として用いられてきた経緯に言及。式典での掲揚や斉唱に反対する主義・主張を持つ人の思想・良心の自由も憲法上保護に値する権利だと述べました。

通達については、「教育の自主性を侵害し、一方的な理論や観念を生徒に教え込むに等しい」と指摘し、国旗掲揚の方法まで指示するなど「必要で合理的な大綱的な基準を逸脱した」として、校長への「不当な支配」に当たるとしました。国旗・国歌は自然に定着させるのが、国旗・国歌法の趣旨であることに照らして、教職員への職務命令は違反としました。(朝日新聞報道を参考にしました)

難波孝一裁判長は、日の丸や君が代が皇国思想の精神的支柱として用いられてきた経緯に言及しました。これに関して述べます。戦前の教科書には次のように書かれています。「日本人のいるところには、かならず日の丸の旗があります。(中略)敵軍を追いはらって、せんりょうしたところに、まっ先に高く立てるのは、やはり日の丸の旗です。兵士たちは、この旗の下に集まって、声をかぎりに、「ばんざい。」をさけびます。日の丸の旗は、日本人のたましいと、はなれることができない旗です。」(入江曜子著「日本が『神の国』だった時代」より)

都教委が国旗・国歌を強制するのは、個人の尊厳より国家の権威が重要とする石原都知事を筆頭とする国家主義的な思想に基づき、日の丸を単なる国の標ではなく「日の丸の旗は、日本人のたましいと、はなれることができない旗」と考え、日の丸に絶対的な国威を示す役割を持たせ、その権威に服従させる。そして、国家の方向を一つの絶対的価値観で国民を束ねていく方向につなげようとする一つの手段と考えたと言えます。だから都教委は通達を出して意向に逆らうものを、戦前の日本のように個人の思想信条の自由を奪い処罰したのです。

難波孝一裁判長は、公務員は憲法を守る義務を負うを深く自覚して、戦後レジーム体制の大黒柱である憲法と教育基本法に則り判決を下しました。

「みのもんた朝ズバッ!」で、司会者やコメンテーターが、日の丸、君が代に国民が親しみを持つのは当たり前なのにというような趣旨の発言をしていました。これはスポーツで掲げられるような日の丸の扱い方と一般化し、常識の範囲の視点でしか事件を見ていません。日本の歴史を認識して教職者として危機感を持って都教委の行政に反対し、弾圧され訴訟を起こした教員たちの心も理解していません。コメンテーターたちの発言は、裁判所が指摘した「日の丸や君が代が皇国思想の精神的支柱として用いられてきた経緯」歴史を認識しない発言です。歴史を知らない者は、現代においても盲目であるの言葉の通りです。

朝日新聞9月22日の記事は、解説で次のように述べています(抜粋)。教育基本法の論議に東京地裁の判決は影響を与えるとして、《継続となった改正案は、「不当な支配」条項はそのままで、「(教育は)この法律や他の法律の定めるところで行われるべきもの」との文言を追加したが、不安視する声が広がっている。教育法学者の堀尾輝久・東大名誉教授は「『他の法律』には、通達や職務命令も含まれる、と教委側が解釈するおそれがある」とし、「改正案通りだと、通達や職務命令の強制力はこれまで以上に高まる」と懸念する。

学校現場で思想・良心の自由の侵害があったとする司法判断が示される中、国会は、法改正が何をもたらすかという疑問に答える責務がある。》

自民党と公明党は教育基本法改定を国会に上程する時、「統治機構を意味する国ではない」という「国を愛する」ことで合意をしました。しかし、安倍晋三氏は教育基本法改定に関する発言で、郷土愛から出発して国への帰属意識を高め、国のために闘う若者を期待しています。これは明らかに国家という統治機構という認識です。初めの合意などは忘れ去られ、一つのステップさえ踏めば、どんどん解釈が拡大することの証です。東京都の教育委員会も、国旗・国歌に関する法律は、国旗・国歌の強制をしないとした趣旨が盛り込まれていることを都合よく忘れ、教職員に日の丸、君が代を強要するに至っています。私たちは騙されません。

沖縄知事選で野党共同統一候補擁立に成功/山崎孝

2006-09-21 | ご投稿
安倍晋三自民党新総裁は、9月20日の記者会見で26日に召集する臨時国会では、教育基本法と11月1日に期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長改正案の成立を最優先させる方針を表明しました。

テロ対策特別措置法はアフガン戦争を行う米軍などの艦船に、財政難を理由に国民には負担を押し付ける日本政府が無料の石油供給活動の根拠となる法律です。

テロ対策特別措置法は、日本が戦争中の軍隊に戦後初めて具体的な形で後方支援活動を行うステップを踏んだものです。このステップは、イラク戦争で更に階段をあがり、現在では航空自衛隊は「非戦闘地域で活動しなければならないとした」イラク特別措置法に違反する状況にまでなっています。

アフガン戦争は9・11同時多発テロ事件への報復が大きな動機で、テロとの戦いとも称されました。しかし、その戦争の犠牲者は9・11同時多発テロ事件を大きく上回る民間人の犠牲者を出してテロ組織の無差別攻撃と同じ性格を持つに至りました。そしていまだにアフガンの武装組織の抵抗を封じ込めずに、軍隊の増派さえ必要になっています。欧米の市民組織「イラク・ボディーカウント」によれば、今年8月末までのイラク民間人の死者は最低でも4万3千人以上出ているといっており、ブッシュ大統領も昨年に3万人の死者が出ていることを認めています。

日本政府の戦争への協力行為は、「政府の行為によって戦争の惨禍が起きることのないやうにする」、「国際紛争を武力で解決はしない」とした憲法の精神を踏みにじるものです。

日米同盟には「双務性」が必要と主張する安倍晋三氏。やがて生まれる安倍氏を総理大臣とする安倍政権が進めようとする米国追従路線に異を唱える共同戦線が沖縄県に誕生しました。

9月19日、県議会内で社民、社大、共産、民主、自由連合、政党「そうぞう」の野党6党の共同推薦を受けて、社大党副委員長で参議院議員の糸数慶子氏が沖縄知事選への出馬の決意を表明しました。

糸数慶子氏は「平和な県政」を実現したいとして、在日米軍再編に盛り込まれた普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設案に反対を表明。新基地建設の是非を争点にして市民の支持を訴える方針を示しています。

糸数慶子氏は「新たな基地建設を容認する知事が誕生すれば、沖縄の将来は危うい。命と暮らしを守るため、県民の思いを日米両政府に伝えたい」と決意を述べました。(沖縄タイムスの電子版を参考)

一致点で団結すれば幅広い国民の結集は可能です。このことは沖縄の動向と「九条の会」の活動が示しています。共産党や社民党、市民組織が参加して、憲法を守るための共同会派を結成し、その会派から共同統一候補を立てれれば良いと私は考えています。