いせ九条の会

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イスラエルに人間の自由の理念に関する国際賞を与える資格はない/山崎孝

2009-02-20 | ご投稿
作家の村上春樹さんがイスラエルから「エルサレム賞」を贈られるニュースを読んで考えたことを朝日新聞の読者欄に投稿しました。運良く掲載されましたので、この文章をブログにも投稿します。

2009年2月20日付朝日新聞「声」欄掲載文【村上春樹講演感動して共感】

イスラエル軍のパレスチナ・カザ地区の攻撃で1300人の市民らが犠牲になり、その中に子供たちが多く含まれていた。ガザ地区の封鎖で、食糧不足や電気・水道の供給不足が起こり、国連人道問題調整事務所の報告書は「人道的尊厳の危機」と訴えていた。

イスラエルの非人道的な行為は、国際的な制裁に値すると思う。そのイスラエルが村上春樹さんに「エルサレム賞」を贈った。この賞は、社会における個人の自由の理念を表現した著作の筆者に与えられると言うが、イスラエルが罪の無い多くの人の生きる権利と自由を奪っておいて、このような賞を与える資格があるとは思えない。

私の気持が救われたのは、村上春樹氏が授賞式の記念講演で、イスラエルのガザ攻撃に言及し、私たちを守るはずの制度が組織的に人を殺すことがあると述べ、一人ひとりの力で国家や組織の暴走を防ぐよう訴えたことであった。

自民党は国民の安全の確保とか国際協力とか称して自衛軍を持とうと考えている。このことを思うと村上春樹氏の言葉は、実に教訓的である。(以上)

【参考】【エルサレム16日の共同通信配信記事】作家の村上春樹さんが2月15日行った「エルサレム賞」授賞式の記念講演の要旨は次の通り。

 一、イスラエルの(パレスチナ自治区)ガザ攻撃では多くの非武装市民を含む1000人以上が命を落とした。受賞に来ることで、圧倒的な軍事力を使う政策を支持する印象を与えかねないと思ったが、欠席して何も言わないより話すことを選んだ。

 一、わたしが小説を書くとき常に心に留めているのは、高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵のことだ。どちらが正しいか歴史が決めるにしても、わたしは常に卵の側に立つ。壁の側に立つ小説家に何の価値があるだろうか。

 一、高い壁とは戦車だったりロケット弾、白リン弾だったりする。卵は非武装の民間人で、押しつぶされ、撃たれる。

 一、さらに深い意味がある。わたしたち一人一人は卵であり、壊れやすい殻に入った独自の精神を持ち、壁に直面している。壁の名前は、制度である。制度はわたしたちを守るはずのものだが、時に自己増殖してわたしたちを殺し、わたしたちに他者を冷酷かつ効果的、組織的に殺させる。

一、 壁はあまりに高く、強大に見えてわたしたちは希望を失いがちだ。しかし、わたしたち一人一人は、制度にはない、生きた精神を持っている。制度がわたしたちを利用し、増殖するのを許してはならない。制度がわたしたちをつくったのでなく、わたしたちが制度をつくったのだ。(以上)