いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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愛国心より地球愛を/山崎孝

2008-01-31 | ご投稿
私は1月31日の朝NHKFM放送で、「世界中を南極にしよう」、「愛国心より地球愛を」と主張する柴田鐵治さんの話を聴きました。南極は1952年12月に日本を含む12カ国により採択された南極条約があります。軍事的利用の禁止、科学的調査の自由、領土権・請求権の凍結、核爆発・放射性廃棄物の処分の禁止、査察制度の採用を決めました。

そして、1991年には南極の生態系を保護する南極条約議定書と4つの付属書が採択されています。

柴田鐵治さんの話の概要 1965年、30歳の時、朝日新聞記者として第7次観測隊に同行して南極の自然とそこにいる世界の科学者や人間の素晴らしさを体験しました。

南極では基地を構える各国が輸送手段を提供、連係プレーで病人を治したり、怪我をした隊員の治療を行ったりと、自ら見聞きした国境のない南極のすばらしさをのべました。

そして同氏は71歳になった、2005年に40年ぶりに南極を訪れたりしています。

地球と人類が生き延びるためには、世界中を南極のようにしなければと考えています。

同氏は小学校に入った年に太平洋戦争が始まり、軍国主義教育を受けます。戦争の悲惨さに子ども心にも二度と戦争はごめんだという思いが強く持ちました。そして平和と人権を守ろうとしてジャーナリズム仕事につきました。

同氏はベトナム戦争の時、日本のメディアはそろって反対したのに、イラク戦争ではそろってバグダッドから記者を引きあげてしまい、「戦争に反対する姿勢が弱まっただけでなく、ジャーナリスト精神まで衰退してしまった」と残念がります。

 「戦争をなくすにも、地球環境を守るにも、各国が自国の『国益』ばかり考えていたら解決しない」と述べます。人類が地球で生き延びていくためには、「夢物語」だといわれようとなんだろうと、「国益にとらわれず、地球をまるごとひとつに考える視点」を持つことが大切だとのべます。

「世界中を南極にしよう」 著者:柴田鐵治 出版社:集英社 定価:680円+税

ドイツの負の歴史の清算/山崎孝

2008-01-30 | ご投稿
【ロマ追悼碑、2月着工決定 ナチス犠牲、同性愛者碑も】(2008年1月30日付中日新聞)

【ベルリン30日共同】ナチス・ドイツに虐殺された約50万人のロマ(ジプシー)を追悼する記念碑が首都ベルリンで2月に着工されることが正式に決まった。同様に殺された同性愛者の追悼碑も建設される。ドイツ政府とベルリン市当局者が29日、明らかにした。

ベルリン中心部には2005年、巨大なユダヤ人虐殺追悼碑が完成。予算やデザインをめぐって計画が停滞していたロマの追悼碑が近くにできることで、ナチス時代に犠牲となった2大民族の碑がそろうことになる。政府が近く正式発表する。

政府当局者によると、建設計画がこのほど連邦議会の委員会で承認され、首都中心部ブランデンブルク門や連邦議会ビルに近いティアガルテン公園内に建設される。噴水型の碑で、今年秋の完成を目指す。

同性愛者の追悼碑も今年春に同門とユダヤ人碑のそばに建立される見通しとなった。(以上)

ドイツはこのように歴史の負の清算に真摯に取り組んでいます。しかし、日本は南京虐殺事件、従軍慰安婦問題など政府の公式的な見解を否定する政治家が多くいます。これら政治家の歴史観の根幹に明治以降の歴史は西欧列強に対抗するため、西欧列強の帝国主義を見習ったという歴史の正当化の考えがあります。この歴史観に基づいて、小さな要素を全体の要素にすり替えて否定するのだと思います。

西欧列強を向いて正当性を図るのではなく、帝国主義を実践して大きな被害を与えたアジアの国に対して、この歴史観の正当性が図れるのかを考えなければならないと思います。

アフガニスタンの人たちの窮状支援ために日本のお金を/山崎孝

2008-01-29 | ご投稿
【女性や子供三百人超が死亡 アフガン、寒波で】(2008年1月29日付中日新聞)

【カブール28日共同】複数のアフガニスタン当局者は28日、同国を襲った寒波の影響で、同日までの約10日間に女性や子供を中心に300人以上が死亡したことを明らかにした。家畜約5万頭も死んだという。

寒波の影響が深刻なのはアフガン北部や西部などで、北部のいくつかの地域ではマイナス30度以下の気温を記録。保健省報道官によると、死因の多くは呼吸器疾患だったという。

地元テレビは肺炎にかかった自分の子供に薬を買うために、別の子供を10ドル(約1070円)で売った母親の話を伝えた。

国際赤十字当局者は、食料などの救援物資の必要性を訴えているが、積雪などによる道路寸断で、こうした地域へ届けられない懸念が増しているとしている。(以上)

新テロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油活動について、日本政府が米政府に要求した使途の検証の明文化を米政府が拒み、給油に関する取り決め文書である日米の交換公文に盛り込まれないことになっています。このように給油された燃料の使い道が確かめられないことに日本のお金を使うことより、アフガニスタンの人たちの窮状を支援することに日本のお金を使う方がはるかに役にたちます。

ちなみにインド洋での給油活動にかかった費用(燃料費と海自の活動費)は、2007年6月末時点で累計560億円を超しています。

日本の脅威とされる東アジアの国々の動向/山崎孝

2008-01-26 | ご投稿
【国境鉄道中口朝が再開へ前進 貨物の輸送条件で合意】(2008年1月26日付朝日新聞)

 【藩陽什古谷浩一】中国とロシア、北朝鮮の3カ国の鉄道当局が、国境地域をつなぐ鉄道貨物輸送の再開に向けて動き始めた。鉄道輸送は貨物量の減少などで90年代に停止したが、昨年末に3カ国の鉄道当局者が中国で再開について協議した。国境地帯の経済開発を促したい中国側は地域間の交通網整備の一環として積極的に進める意向で、中口間の貿易促進につながると期待している。

 経路は中国古林省延辺朝鮮族自治州の中朝国境にある図椚から、中朝国境の図椚江(豆満江)沿いに北朝鮮の豆蒲江を経てロシア極東のハサンまで。中国の地元報道によると昨年12月25日に図椚で開かれた協議で貨物料金や決済方法などの輸送条件で合意したという。

 この貨物輸送は92年に始まり、化学肥料などの輸送が年間20万トン規模で行われ、その後停止されていた。再開には北朝鮮側の電力不足問題の解決が必要と指摘され、具体的な時期は不透明だ。(以上)

ロシアはかつて日本の一番の脅威とされた国、北朝鮮と中国は現在一番に日本に脅威を与えている国と宣伝されています。しかし、三国の動向はかように協調して三国を結ぶ鉄道網の建設により経済を発展させようとしています。

2007年11月15日、ソウルで開かれた韓国の韓悳洙首相、北朝鮮の金英逸首相による南北首相会談で、南北をつなぐ京義線を使った開城工業団地への鉄道貨物輸送を来月11日に開始することや、京義線の北朝鮮側の線路の補修を韓国が支援することを決めています。開城工業団地までの貨物定期便は開始されましたが、2008年1月22日から開催予定だった南北鉄道委員会は延期されました。北朝鮮が韓国の新政権の動きを見極めようとしたことによるものとされています。いずれにしても南北関係を韓国の次期政権が宥和政策を後退させて、6者協議に悪い影響をあたえるようなことは韓国の世論は許さないと思います。

2008年1月22日、米国務省のディリー対テロ調整官は、北朝鮮のテロ支援国家指定解除の問題で「北朝鮮はすべての法的要件を満たしているようだ」と記者団に語っています。米国政府は北朝鮮の核計画の申告に進展があれば、解除に応ずるというメッセージを発信したものと受け止められています。

東アジアの情勢は軍事によって平和と安定を得ようとする政策が本流ではありません。日本の改憲を目指す勢力だけが、東アジアの動向を無視して、東アジアの国を仮想敵国に想定して、軍事によって平和と安定を得ようとしています。

国際平和協力活動は軍事活動という視野狭窄/山崎孝

2008-01-23 | ご投稿
【派兵恒久法 検討を/首相が民主に呼びかけ】(2008年1月22日付「しんぶん赤旗」)

 福田康夫首相は、二十一日の衆院本会議で、自衛隊の海外派兵を常時・迅速に可能とする恒久法について、「わが国が迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくためにふさわしく検討を進めていく。野党とも十分議論させてもらいたい」とのべ、民主党へ協議をよびかけました。

 民主党の鳩山由紀夫幹事長の質問にたいする答弁。鳩山氏は「歴代自民党政権の外交安保政策には基本原則がない。原理原則もないのに一般法をつくれるはずがない」などとのべ、恒久法の必要性を強調しました。

 恒久法は、これまで個別の戦争ごとに特別措置法をつくって自衛隊を海外派兵してきたのに対し、政府の判断でいつでも派兵できるような法的枠組みをつくろうというもの。民主党は、政府提出の新テロ特措法に対する「対案」の中で、恒久法に盛り込むべき「基本原則」として国連による軍事行動を含む強制措置への対応や、「憲法の下での自衛権の発動に関する」ものをあげています。これは、海外での武力行使=集団的自衛権の行使を可能にする危険があるものです。

 鳩山氏はこうした「基本原則」を念頭に、「民主党がつくる政府は、日本の外交安全保障政策にしっかりした原則を導入する」と主張しました。(以上)

鳩山由紀夫幹事長のいう、外交安保政策の基本原則は、憲法に明示してあります。これを生かすべきなのです。

民主党が国会に提出した「アフガン復興支援特措法案」は、アフガニスタンに自衛隊を派遣し、今までは自衛隊員の「正当防衛」に限られていた武器使用基準を「復興支援活動への抵抗抑止」まで拡大しています。PKOの活動は、武器を持った人たちに国連から付託された任務を妨げられた場合は、妨害を排除する権限が国際派遣部隊には与えられていますが、PKOは停戦合意、紛争当事者の国際部隊の受け入れ容認が前提です。そして日本は武器使用の基準が他国より強くこの活動に参加していません。軍事部門ではなく医療活動、道路の補修など復興支援活動を行なっています。

アフガニスタンに停戦合意、紛争当事者の国際部隊の受け入れ容認はありませんから、絶えず「復興支援活動への抵抗抑止」とみなされる事態は起こります。「復興支援活動への抵抗抑止」活動は国際治安支援部隊の活動と同類の活動になると思います。国際治安支援部隊は住民を巻き込み犠牲者を出す戦闘を行なっています。

民主党が国会に提出した「アフガン復興支援特措法案」は、インド洋で船舶の臨検などテロリストの海上阻止活動も可能となっています。これでは自民党が目論むことと同じ内容で憲法違反です。

かつては国連で難民救済活動を行ない、現在、国際協力機構(JICA)の理事長をしている緒方貞子さんは、2008年1月15日の朝日新聞紙上で次のように述べています。

《アフガニスタンが復興から平和の定着、そして成長へと発展していくためには広く着実に民生支援が行なわれ、より多くの人々が「平和の果実」を享受できる必要がある。本来、開発援助はこうした役割が期待されており、これがテロの予防にもつながるということは認識されなければならない。》と述べています。

日本の与党、民主党の議員たちは、国際平和協力は自衛隊を派遣して軍事活動に参加することという視野狭窄から抜け出すべきです。

対話は、軍事的手段ではなく衝突に対峙する最善の方法/山崎孝

2008-01-22 | ご投稿
【「文明の同盟」フォーラム/対話促進で衝突回避へ/西洋・イスラムの溝埋めよう 80カ国の代表参加】(2008年1月21日付「しんぶん赤旗」より)

 【パリ=山田芳進】「文明の同盟」の第一回フォーラムが1月15日と16日の両日、スペインのマドリードで開かれ、世界八十カ国の政府関係者や国際機関、民間組織の代表が集い、西洋社会とアラブ・イスラム社会の溝を埋めるため、教育、青年、移民、メディアの各分野で十二の計画が実施されることが決まりました。

 「文明の同盟」は、二〇〇三年に始まったイラク戦争と、〇四年三月にマドリードで起きたテロを受けて、「グローバル化した世界において多様性をうまく管理」し、「不寛容、急進主義、原理主義を後退させる」という目的のもと、スペインのサパテロ首相が提唱したイニシアチブで、その後トルコのエルドアン首相が共同発起人となり〇五年に誕生しました。〇七年には、ポルトガルのサンパイオ前首相が、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長によって同盟の上級代表に任命されました。

 潘事務総長は開会あいさつで「個人、コミュニティー、文化、国家それぞれの間で、これほどまでに建設的で真剣な対話が必要な時はない」と強調。「対話の促進が、今日、明日に変化を起こすものではない」としながらも対話が結果を得るための最も確実な方法だと指摘しました。サパテロ首相は、同盟の使命は、平和の促進、互いの尊重と寛容の理解を奨励していくことで「文明の衝突を避けることだ」と語りました。

 また、オスロ平和人権センターのボンデビク所長は「対話は、軍事的手段ではなく衝突に対峙(たいじ)する最善の方法だ」と主張しました。

 イランのノーベル平和賞受賞者エバディ氏は、「文明の衝突」という理念は「武器を売るために政治家によって使われた誤った理論」だと、これを否定しました。同氏はまた、西側諸国が冷戦後にそれまで対立していた「共産主義」に代わるものとして、「敵であるイスラム主義者」という考え方を編み出したと指摘しました。

 エルドアン首相は、トルコの欧州連合(EU)加盟が同盟の成功の試金石だとの考えを示し、サパテロ氏も「われわれは、トルコをEU内に求める」と表明しました。(以上)

先日、ブッシュ大統領はアラブ諸国を歴訪して、首脳たちと話し合いをしましたが、イラクとアフガンで武力を使いイスラム教徒を殺害する。武力を使用してパレスチナ人を殺しているイスラエルを支持しているために、イラン包囲網を築くことは出来ませんでした。

武力行使と決別してこそ対話は成り立ちます。日本国憲法の武力による威嚇と行使をしないで国際紛争の解決するという理念は「文明の同盟」と一致します。自民党や公明党、民主党の政治家は、憲法理念と反する自衛隊海外派遣恒久法の制定を目論んでいます。国民にこの法律の性格を知らせていかなければならないと思います。

日本の提供燃料の使途限定は有名無実/山崎孝

2008-01-21 | ご投稿
【燃料使途の検証、明記せず 米が日本の要求拒否】 (2008年1月20日付東京新聞)

新テロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油活動について、日本政府が要求した使途の検証の明文化を米政府が拒み、給油に関する取り決め文書である日米の交換公文に盛り込まれないことが分かった。米側は「作戦行動に影響を及ぼし、現場の負担になる。決して受け入れられない」とはねつけた。複数の日米関係筋が19日、明らかにした。

対テロ新法の「テロリスト海上阻止活動に従事する艦船への給油・給水」という目的に言及することでは米側が譲歩し、大筋合意したものの、燃料の使途限定が有名無実になるとの批判が出そうだ。

海自は2月中旬にも給油を再開する見通し。日米両政府は今月中に交換公文を結ぶ方向で調整している。(共同通信配信)

日本の提供する燃料の使途の検証の明文化を「作戦行動に影響を及ぼし、現場の負担になる。決して受け入れられない」米国がはねつけたことは、人命を犠牲にする戦争にも使われる可能性を意味します。

現在の新テロ対策特別措置法は海上での戦争協力ですが、自衛隊海外派遣恒久法は、陸海の戦闘地域でも自衛隊の活動を可能にし、治安維持や護衛の口実にして戦争に参加することを企図しています。憲法9条の理念は破壊されてしまいます。

福田政権は安倍政権以上に油断ならない政権です。民主党を抱き込むことも目論んでいます。民主党の中にも自衛隊海外派遣恒久法に賛同する議員は相当数いるとみなければなりません。注視していく必要があります。

福田首相の第169国会の施政方針演説について/山崎孝

2008-01-19 | ご投稿
福田首相は第169国会の施政方針演説を行ないました。その中で、《迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくため、いわゆる「一般法」の検討を進めます》と述べています。

この自衛隊海外派遣一般法(恒久法)は、国連決議を前提にして戦闘行動をしている地域で、治安維持活動、護衛活動を視野に入れて、武器使用の権限を拡大することを目論んでいます。民主党の小沢代表の国連決議があれば、海外で武力行使をするという主張と符合する法律の制定です。

国連決議のあるアフガニスタンで「テロとの戦い」をする国際治安支援部隊(ISAF)の空爆や戦闘で住民が多数の犠牲者が出ていることを見れば、国連決議を自衛隊海外活動の参加基準にすることは出来ず、日本の国際活動の参加基準は、人命を犠牲にしない活動であるべきです。

参考「伊勢崎賢治の15歳からの国際平和学」より 先日、在京のアフガニスタン大使のアミンさんと一緒にご飯を食べる機会がありました。色々アフガン情勢を語った後、最後に、「アフガン政府として今一番、日本を含む国際社会に訴えたいことは?」という問いに、アミン大使は、じっと考え込んだ後、一言。「コラテラル・ダメージ」。「もっとアフガニスタンに支援を」ではなく、「第2次被害」もしくは「巻き添え被害」です。

福田首相は第169国会の施政方針演説のなかで改憲について《すべての政党の参加の下で、幅広い合意を求めて、真摯な議論を行なうことを強く期待しております》と述べています。

改憲の論調をはる読売新聞の2007年4月5日付、憲法に関する全国世論調査結果は、「改正派は昨年調査に比べて9ポイント減り、3年連続で減少した」。「改正派」は46%で、半数を割ったのは1997年以来十年ぶり。逆に「改正しない方がよい」は昨年比7ポイント増え39%でした。

9条については、改正の必要が「ない」は9条1項80%、2項は54%に達しています。

これを見ても、福田首相が、各政党の参加の下で、国会議員の幅広い合意を求めて改憲の道を歩もうとしても、国民の意向ではありません。現在の国民の幅広い合意は報道機関の世論調査でも「9条を変えるな」です。私たちはこの世論を継続させていかなければと思います。

竹内浩三の映画を創りたいと思った山田洋次監督/山崎孝

2008-01-18 | ご投稿
「世界」2月号に「母(かあ)べえ」の時代を語る」と題して、山田洋次さんと野上照代さんが対談しています。その中で、竹内浩三を主人公にした映画をつくりたいと思ったことを述べています。

山田洋次 ばくが、この映画の原作である野上照代さんの「父へのレクイエム」にどうやってめぐりあったかについては、話せば長くなるけど、なんだか奇しき縁があるのです。竹内浩三とか、黒澤明とか、伊丹万作とか、すごい芸術家たちがかかわっている。

 竹内浩三(一九三年生まれ.映画監督を志すも、四五年にフィリピンで戦死。書き遺した日記・詩が戦後注目される)の詩が最初に話題になったのは、ぼくがまだ助監督だった、昭和三〇年代に「戦死やあわれ」が出たころです。ぼくは、とてもその詩集にひかれた。その中に三島中尉というのが出て来る。竹内浩三が特殊空挺部隊で訓練を受けていたときの上官ですが、その三島さんは、なんと、ぼくが働いていた松竹大船撮影所の製作部長だったんです。見るからに陸軍の将校みたいな、やたらに威張っている人で、あの人が上官じゃいじめられたんじゃないかなと思いましたけどね。

野上照子 かわいがってくれたみたいですね。『筑波日記』のほうでは。

山田洋次 ええ。竹内浩三は、好意をもって書いていますね。ひ弱な彼を庇ってくれたのかな、三島中尉は。何十年前にそういういきさつがあってタイトルは『戦死やあわれ』がいいな」なんてずっと思っていました。野上さんがずっと前から竹内浩三に関心をもっていらっしゃって、竹内浩三の詩が世に出るにあたっては野上さんが大きな役割を果たしていたことをその後ぼくは、知って、びっくりしたんですよ。

 黒澤明さんを縮介していただいたのも野上さんだったし、家も近所だったということもあって、竹内浩三について野上さんにお訊ねしたり資料をお借りしたりしていました。

 野上さんが、最初に竹内浩三の名前を知ったのは、戦争中ですか? 戦後ですか?

野上照子 戦後です。

山田洋次 やはり伊丹万作さん(一九〇〇―一九四六年戦前に活躍した映画監督.伊丹十三は長男)を通して?

野上照子 ええ。竹内浩三という方も監督になりたいくらい映画が好きで、伊丹万作さんに手紙を出していたんです。憧れていて、伊丹万作と手紙をやりとりをしていらっしゃった。

野上照子 私が伊丹さんの奥さんから竹内浩三の手紙を預かって「探してくれないか」と言われたのが戦後、昭和二二年頃ですね。それは竹内浩三が伊丹さんに宛てた厚い封書でした。

 その後、私は松阪にいらっしゃる竹内浩三のお姉さんに会ったり、戦友会に行ったり、いろいろな兵隊さんに会って資料を集めたんです。ドキュメンタリーをつくるつもりで、プロダクションを通してNHKに企画を出していました。(山崎註 姉の松島こうさんは現在津市に在住)

山田洋次 そういういきさつがあるから、ぼくは野上さんの力を借りて竹内浩三のことを何とか映画にしようと思っていた。

そんなある日です。「昭和の一〇年代のことだったら、私もこんなものを書いたのよ」と言って、「父へのレクイエム」という御自分の少女時代のことを書いた作品を見せて頂きました。(以下省略)

山田洋次監督は、この後、どんな映画をつくるときも最初に閃くシーンがあることを述べています。対談の全文は「世界」2月号をお読みください。

さて、竹内浩三の詩に「五月のように」という詩があります。最後のところは次のように詠われています。

青空のように/五月のように/みんなが/みんなで/愉快に生きよう

2月23日から28日まで、伊勢市の進富座で「日本の青空」が上映されます。私はこの「日本の青空」というタイトルを見た時にイメージとして思い浮かべたのが竹内浩三の「五月のように」の詩のイメージでした。

戦争や抑圧のない社会で、無限に広がる青空を見ながら、それぞれの人生を思い描ける自由な社会のイメージでした。

「日本の青空」は、GHQの憲法草案に先駆けて日本の学者たちが、国民主権と平和主義を骨格にした憲法草案を発表し、その起草に関わった学者のひとり鈴木安蔵を主人公にした映画です。

その映画のキャッチフレーズは《8月15日、あの青空は希望のはじまりだった》です。

沖縄人たちは原則を守り戦う 原則を貫いた薬害訴訟の女性たちのように/山崎孝

2008-01-17 | ご投稿
「沖縄県史」第10巻より(1月15日付朝日新聞掲載 大江健三郎「定義集」より抜粋。定義集の全文を読みますと大江健三郎さんがどのような位置づけで知念朝睦大尉の書いた手記を紹介したのかは知ることができます。

渡嘉敷島で島民の集団自殺が行なわれた後、軍が降伏するまでにおこったことを、守備隊長の副官だった知念朝睦大尉の書いた手記

《……米軍の捕虜となって逃げ帰った二人の少年が歩哨線で日本軍に捕らえられ、本部につれられて来ていました。少年たちは赤松隊長に、皇民として、その汚名をつぐなうかと折かんされ、死にますと答えて、立木に首をつって死んでしまいました。》

かように旧日本軍は極めて人間性を失っていました。この人間性を失っていた軍の性格を曖昧にしょうとしているのが、文部科学省の教科書検定です。これに関連した情報を二つ紹介します。

【軍強制明記を再要請/県民大会実行委】(2008年1月15日の沖縄タイムスより)

【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会(実行委員長・仲里利信県議会議長)は十五日午前、首相官邸に大野松茂官房副長官を訪ね、「『集団自決』への日本軍による強制」の明記や検定意見撤回などをあらためて要請した。仲里実行委員長らによると、大野副長官は「皆さまの意向を福田首相に伝える」と述べたという。

仲里委員長らは、昨年十二月二十八日の実行委員会で採択した福田康夫首相あての要請書を手渡し、要請した。

要請後、仲里委員長は「(文科省が記述の修正を発表した際に)県民への謝罪など首相か文部科学相のコメントを前提にいったんは八十点という評価をした」と説明。「しかしコメントはなく、検定意見そのものは生きているという認識だ。これでは県民は納得できない」と、再要請の意義を強調した。

要請書では教科書会社からの訂正申請に対する文科省の決定について「(教科用図書検定調査審議会が示した)基本的とらえ方の結果、『日本軍による強制』の記述がなくなるという重大な問題が生じている」と指摘。

さらに「文科相談話でも検定意見撤回や、教科書検定で沖縄戦の記述改ざんの再発防止措置などに何ら触れていない」と批判し、「到底許すことはできない」と、検定意見撤回などをあらためて求めた。

十五日午後には文科省を訪ね、池坊保子副大臣に同様に要請する予定。

実行委とは別に、玉寄哲永・県子ども会育成連絡協議会(沖子連)会長、小渡ハル子・県婦人連合会(沖婦連)会長らは、自民党国会議員でつくる五ノ日の会と面談し、今後の協力を要請する。

【防衛研「鉄の暴風」も批判/軍命否定の見解判明】2008年1月15日の沖縄タイムスより)

慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛省の防衛研究所が、隊長命令があったと記述していた所蔵資料に対し、「隊長命令はなかった」と見解を付け加え公開していた問題で十四日、全文が明らかになった。所蔵資料について、沖縄タイムスの「鉄の暴風」との共通部分を指摘、「『日本軍側の旧悪を暴く』という風潮の中で事実とは全く異なるものが、あたかも真実であるがごとく書かれた」と記述していた。防衛省は批判を受け、削除する方針だが、識者は「防衛省によるゆがんだ沖縄戦住民観の本質は変わらない」と批判する。

防衛研究所が見解を加えて公開していたのは、一九六〇年に元大本営参謀が陸上自衛隊幹部学校で沖縄戦に関する講演をした際、資料とした慶良間戦体験者の手記。

「友軍は住民を砲弾の餌食にさせて、何ら保護の措置を講じようとしないばかりか『住民は集団自決せよ!』と赤松大尉から命令が発せられた」(「集団自決の渡嘉敷戦」)

「艦砲のあとは上陸だと、住民がおそれおののいているとき、梅沢少佐から突然、次のような命令が発せられた。『働き得る者は男女を問わず、戦闘に参加せよ。老人、子供は全員、村の忠魂碑前で自決せよ』」(「座間味住民の集団自決」)

戦史研究室は、元渡嘉敷島巡査の手記や沖縄女性史家の宮城晴美さんの著書を上げ「赤松大尉、梅沢大尉の自決に関する命令はだされていないことが証明されている」と手記の表紙に掲載している。

見解に著書を引用された宮城さんは「この問題は『集団自決』訴訟と教科書検定問題と連なっている。防衛省は旧日本軍への『集団自決』への関与を否定することを前提に資料を分析している」と批判した。