8月30日の朝日新聞に、加藤紘一氏の実家に放火した容疑者が逮捕された事件に関してコメントが載っていました。
【右翼の弱体化象徴する事件】日本の右翼に詳しい松本健一・農沢大教授(日本近代精神史)の話 右翼の人は、常に自分の死に場所を探す傾向がある。自殺の舞台として靖国問題で中国の主張に理解を示してきた加藤氏宅を選んだと考えられる。ただし朝日新聞社で自殺した野村秋介氏のように、相手に自分の主張をぶつけてから腹を切るのが、本来の彼らのやり方だ。だが、今回は加藤氏が留守中の犯行で、主張もよくわからない。
これまで右翼が金看板としていたナショナリズムを最近は保守派政治家が体現してしまう。それによって厳近の右翼は、以前に比べて思想的な背景が希薄になった。自分の中にアイデンティティーを作りだせないために、外に無理やり敵を作る。今回の犯行は、そうした右翼の弱体化を象徴する事件だと考える。(以上)
安倍官房長官のブレーンには、親米保守の岡崎久彦氏や中西輝政氏らがおります。お二人の思想的傾向は所属する「皇室典範を考える会」が出した声明でわかります。声明は、皇室の男系継承を維持するためには、旧皇族の皇籍の復帰さえ求める考え方をします。象徴天皇より復古主義的な天皇像を望んでいるといえます。中西輝政氏は靖国神社が発行する「やすくに」にも寄稿しています。
朝日新聞8月29日「安倍晋三研究」という記事には次のような安倍氏の政治行動が書かれています。
(前略)憲法と教育へのこだわりは、筋金入りだ。1994年末に自民党がまとめた「新宣言」の草案に、自主憲法制定の項目が抜けていることを知ると、若手議員らで党執行部に抗議。「新しい時代にふさわしい憲法」との文言が盛り込まれた。
1997年2月、現農水相の中川昭一氏らと「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を立ち上げた。歴史教科書の従軍慰安婦問題に関する記述には、裏付けがない」と削除を要求。その年の5月の衆院決算委員会分科会では「教科書会社は営利を上げるために、内容を『社会主義化』することによって利益を上げている」と強調した。
近著「美しい国へ」で教育について「戦後日本は、戦争の原因と敗戦の理由をひたすら国家主義に求めた。その結果、戦後の日本人の心性のどこかに、国家=悪という方程式がビルトインされてしまった。戦後教育の蹉跌のひとつである」と記した。戦後の国家観が「教育のゆがみ」を生んだとの考え方だ。(以下略)
安倍氏は歴史の事実に基いて負の歴史を述べることを「自虐史観」と批判し、1995年の「植民地支配や侵略的行為」に「深い反省の念を表する」とした戦後50年決議の採決を欠席しています。
戦前の日本国民は「天皇の臣民」で、国家主義そのものでした。この就縛から解放したのは憲法で、近代的な日本の姿である国民主権、自由と民主主義、平和主義のあり方に是正し、これに基く教育基本法を制定しました。安倍氏はこのような是正を「戦後教育の蹉跌」と捉えています。
従来の教科書を「自虐史観」と批判した「新しい歴史教科書を作る会」会長を務めた八木秀次氏も安倍氏のブレーンの一人です。
戦死者を哀悼ではなく尊祟する、戦争の歴史を肯定的に捉える「自虐史観」の主張、そして国家主義に郷愁を抱く学者や政治家が、松本健一氏の意見「右翼の金看板としていたナショナリズム」のお株を奪ってしまったと言えます。
【右翼の弱体化象徴する事件】日本の右翼に詳しい松本健一・農沢大教授(日本近代精神史)の話 右翼の人は、常に自分の死に場所を探す傾向がある。自殺の舞台として靖国問題で中国の主張に理解を示してきた加藤氏宅を選んだと考えられる。ただし朝日新聞社で自殺した野村秋介氏のように、相手に自分の主張をぶつけてから腹を切るのが、本来の彼らのやり方だ。だが、今回は加藤氏が留守中の犯行で、主張もよくわからない。
これまで右翼が金看板としていたナショナリズムを最近は保守派政治家が体現してしまう。それによって厳近の右翼は、以前に比べて思想的な背景が希薄になった。自分の中にアイデンティティーを作りだせないために、外に無理やり敵を作る。今回の犯行は、そうした右翼の弱体化を象徴する事件だと考える。(以上)
安倍官房長官のブレーンには、親米保守の岡崎久彦氏や中西輝政氏らがおります。お二人の思想的傾向は所属する「皇室典範を考える会」が出した声明でわかります。声明は、皇室の男系継承を維持するためには、旧皇族の皇籍の復帰さえ求める考え方をします。象徴天皇より復古主義的な天皇像を望んでいるといえます。中西輝政氏は靖国神社が発行する「やすくに」にも寄稿しています。
朝日新聞8月29日「安倍晋三研究」という記事には次のような安倍氏の政治行動が書かれています。
(前略)憲法と教育へのこだわりは、筋金入りだ。1994年末に自民党がまとめた「新宣言」の草案に、自主憲法制定の項目が抜けていることを知ると、若手議員らで党執行部に抗議。「新しい時代にふさわしい憲法」との文言が盛り込まれた。
1997年2月、現農水相の中川昭一氏らと「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を立ち上げた。歴史教科書の従軍慰安婦問題に関する記述には、裏付けがない」と削除を要求。その年の5月の衆院決算委員会分科会では「教科書会社は営利を上げるために、内容を『社会主義化』することによって利益を上げている」と強調した。
近著「美しい国へ」で教育について「戦後日本は、戦争の原因と敗戦の理由をひたすら国家主義に求めた。その結果、戦後の日本人の心性のどこかに、国家=悪という方程式がビルトインされてしまった。戦後教育の蹉跌のひとつである」と記した。戦後の国家観が「教育のゆがみ」を生んだとの考え方だ。(以下略)
安倍氏は歴史の事実に基いて負の歴史を述べることを「自虐史観」と批判し、1995年の「植民地支配や侵略的行為」に「深い反省の念を表する」とした戦後50年決議の採決を欠席しています。
戦前の日本国民は「天皇の臣民」で、国家主義そのものでした。この就縛から解放したのは憲法で、近代的な日本の姿である国民主権、自由と民主主義、平和主義のあり方に是正し、これに基く教育基本法を制定しました。安倍氏はこのような是正を「戦後教育の蹉跌」と捉えています。
従来の教科書を「自虐史観」と批判した「新しい歴史教科書を作る会」会長を務めた八木秀次氏も安倍氏のブレーンの一人です。
戦死者を哀悼ではなく尊祟する、戦争の歴史を肯定的に捉える「自虐史観」の主張、そして国家主義に郷愁を抱く学者や政治家が、松本健一氏の意見「右翼の金看板としていたナショナリズム」のお株を奪ってしまったと言えます。