いせ九条の会

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日米共同演習のシナリオについて/山崎孝

2006-06-08 | ご投稿
海上自衛隊の演習内容が、コンピューターウイルス「ウイニー」によって、海上自衛隊員のパソコンから流失して、前田哲男さんは、この演習内容(作戦計画)について、「このシナリオでは、先にアメリカが手を出して、経済制裁や中国への金融操作を行って戦争の原因を作っている。アメリカの先制攻撃戦略をそのままシナリオ化したもので『周辺事態』の発動要件を無理矢理作りだしているのが特徴」と述べていることを、先回は紹介しました。そのシナリオをもう少し詳しく紹介します。(しんぶん赤旗日曜版より)演習日時は2003年11月7日~11日。

 茶国(添付地図などにより北朝鮮)経済制裁により、深刻な経済危機におちいり、新型弾道弾の発射が準備されたり、工作船の潜搬入訓練が活発化したと想定。

 黄国(同=中国)緑国(共同演習のパートナー、米国)が黄国市場からホットマネーを一斉引き揚げしたことから、株式市場が大暴落。S(尖閣)諸島の領有権を主張し、漁船が領海侵犯したり、青(日本)巡視船へ体当たりする事態が起きます。

 その後、茶国は黄国と共同して緑国の後方支授部隊や米軍に抵抗し、茶国は紫国(同=韓国)に侵攻、ついには内部崩壊へいたると想定されています。(以上)

 この想定が相当現実から遊離した想定であることは次の文章を読んでも気付きます。朝日新聞掲載「合同シンポ/東アジアと米国」で、元大蔵省財務官で「ミスター円」と言われた榊原英資早稲田大学教授が述べています。

【「ドル支配」変わる可能性ある】アジアの経済統合は市場主導ですでに相当進んでいる。東アジアの域内貿易の比率は54%で、将来は、現在65%の欧州連合に迫る。生産工程の分業が国境を超え進んでいる。日中、日韓の政治がどうであれ、この傾向は加速する。

 実は中国・人民元を切り上げても米国の赤字は減らない。中国の輸出品は日本やASEANの部品や素材を含むからだ。調整には東アジア通貨全体が切り上がらないといけない。逆に言うと域内の通貨間の安定が必要になってくる。

 政策的にはまだ初歩的な段階だが、ASEANプラス3の財務大臣はアジアの「ドル支配」変わる可能性ある通貨単位の研究を始めると言った。これでまずできるのは債券を発行することだ。資金が必ずニューヨークにかえるパターンが修正される。さらにアジアの外貨準備をASEANプラス3で共同で管理できれば大きなステップだ。

 米国が超大国である理由の一つはドルによるドミナンス(支配)だ。アジア域内で資金を還流する仕組みをつくることで変わる可能性がある。もし、プラザ合意のようなことを米国がやろうとした時にはドルが暴落する危険がある。いよいよ、基軸通貨国として指導力を持つ米国が、それを維持できるかどうかという重要な局面に来た。(以上)

プラザ合意は1985年9月、行き過ぎたドル高を是正しようとしたG5の会議です。

韓国、中国は自らの国の安定が図るために北朝鮮を支援しています。2006年1月の東京新聞電子版には、国連は北朝鮮を人道支援から開発型に支援する事業計画(人材育成や専門家によるアドバイスなど)を策定中で、北朝鮮もこれを希望していると報道しています。

中国への輸出国は米国、EU、日本の順番となっています。米国がどのような理由で、このような関係になっている中国へ金融操作をしなければならない状況になるのでしょうか。また、紹介しましたように、榊原英資教授は、中国の輸出品は日本やASEANの部品や素材を含んでいると指摘しています。中国に打撃を与えればアジアにも打撃を与えることになります。

日本の総合雑誌の多くは中国脅威論を毎号満載しています。これらは筆者の共産主義アレルギーから中国を観察したものでイデオロギー的な見方です。政治家の場合は、改憲潮流に国民を乗せるために、これからますます日米軍事同盟や軍事力強化が必要だということを国民に植え付ける狙いを持っています。政治家はイデオロギー的には、国民を整然と統率したい国家主義的なイデオロギーにもよるものと考えられます。

経済がグローバル化した今日の世界で、国家の営みは経済的には他国との深い関係の上に成り立っています。このことを無視した国家の営み、国民生活の営みは考えられません。この現実を踏まえれば、対決するのではなく、意見の食い違いが起こっても双方の合理的な妥協点を見出していくことより方法はありません。相手より優位に立とうとして軍事力を背景にすることは、米国が世界から絶えず批判されているように、国際社会を納得させることは出来ません。

現在の隣国との対立は、小泉首相の主観と客観の区別がつかないものの考え方、政治家の史実を客観的に見ない歴史認識が絡んで対立を深めていることは残念です。