いせ九条の会

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日米首脳会議が合意した共同文書「新世紀の日米同盟」を考える/山崎孝

2006-06-30 | ご投稿
日米首脳会議が6月29日に合意した共同文書「新世紀の日米同盟」が朝日新聞で報道されています。

その中に【世界の中の日米同盟】として、共通の価値観と利益が、地域及び世界における日米協力の基盤を形成する、としています。その共通の価値観とは、自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配の推進を挙げています。

両首脳の考えている市場経済は新自由主義といわれる、強者が弱者を淘汰して行く市場原理主義です。故都留重人さんが著書で紹介した、「市場には心がない。だが、市場の行き過ぎを制御するレフリーがいれば、極めて効率的な調整機能を発揮する(ポール・サムエルソン)」ではありません。レフリー役の政府の役割は不要とした市場経済主義で、社会が国民の間で格差が拡大されてゆく政策です。この市場経済主義を導入した南米諸国において、自らの経験に基いて国民はこれを拒否して政権党を交代させています。

これまで両首脳は、法の支配の推進をしてきたでしょうか。否です。

国際法を解説した本には、イラク戦争を行った基本となった考え方、先制的自衛権を次のように解説しています。先制的自衛権とは簡単にいえば、「やられる前に相手をつぶす」という理由で行われる武力行使になります。

 たとえば、隣国が国境周辺に武装した軍隊を結集させており、今にも攻め込んで来そうな状況があるとします。攻め込まれる脅威を感じている国が、攻め込まれることを防止するために武力を行使した場合、それは先制的自衛権の行使だといえます。確かに、攻め込まれてからでは遅いということはあります。攻め込まれる前になんとか回避したいと思うのも無理ありません。

先制的自衛権は自衛権として認められていない

 しかしながら、現実的には先制的自衛権は自衛権として認められていません。なぜならば、まだ事実として攻撃を受けていないからです。たとえ、明日にでも攻め込まれそうだとしても本当に相手国が攻めてくるかどうかはわかりません。客観的に相手国の心理や意図を事前に知ることができないのですから、明白な根拠もなく先に攻撃する先制的自衛権は認められていません。

 もし、これを認めてしまえば、世界中で先制的自衛権が発動され武力紛争だらけになってしまいます。特に核兵器の存在は先制的自衛権を発動する理由として十分なものだといえるでしょう。

 しかし、いくら相手が自国に核弾頭ミサイルの照準を合わせたからといって、相手国に先制的自衛権を発動すれば大変なことになってしまうでしょう。こうしたことから、先制的自衛権は認められていないのです。(以上)

ついでに付言すれば、国家の要件として領域とそこに住む住民が居て、この二つを有効に支配する政府が存在することです。この国家の主権を脅かしてはなりません。この国家の形態や政府の性格は、君主制、共和制、立憲君主国、民主主義国家、逆の軍事独裁国家だろうが関係ありません。

米国のように軍事独裁政権だから、自由と民主主義の政府を作るのだといって、他国に軍事力を行使して政権を崩壊させれば国際法違反となります。民族の自決が原則です。

イラクのフセイン政権は、核兵器は保有せず、米国に届く核弾頭ミサイルも持ってはいませんでした。そして国際テロ組織との関係もありませんでした。全くの空想に過ぎませんでした。ブッシュ大統領の気のいらない政権を打倒するための武力行使であったことを世界は知っています。小泉首相がわからないだけです。

「新世紀の日米同盟」の合意文書は、私たちの思っている共通の価値観の、自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配の推進ではありません。