いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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日本の軍事的貢献なるものを語る前に世界の実情を見て欲しい/山崎孝

2007-04-30 | ご投稿
【タイ極貧の村 給食事情を見た】短大講師 杉谷哲也(三重県鈴鹿市 64歳)(4月30日付朝日新聞「声」欄より)

学生たちとミャンマー国境のタイ山岳少数民族の村の小学校を訪ねる機会を得た。若い女性の先生が、1人で1年生から6年生まで40人の面倒をみている。貴重な授業時間の半分近くを子どもたちの給食作りに使い、疲れ果てている。

 「給食を作るために先生になったのではない」と嘆くが、「貧しい山の子どもたちにとっては、給食があっての勉強なんです」とも付け加える。

政府から支給される給食代約90円と牛乳は子どもたちの命綱だ。おなかをすかせた子どもたちを前に、先生はいっぱい話をする。子どもたちには酷ともとれるが、一番子どもたちがそろう時でもあり、教育効果が上がるらしい。

 「感謝して残さずに食べます」と唱和して食べにかかる。が、一向に食が進まない。5分もしないうちに、先生は「ごちそうさま」をさせてしまった。

子どもたちは待ちかねたように教室を飛び出していく。学校に来られない弟妹のために給食を持って帰るのだそうだ。「私が休むと学校に来ても給食がもらえないのです」。極貧の村で頑張る先生の苦悩が伝わってくる。(以上)

この「声」欄に書かれたことに胸をつかれました。次に思い出したのは、私の子供の頃の学校給食のことでした。後で知りましたが、給食は米国では家畜の餌にしていると言われた米国製の脱脂粉乳のミルクでとても飲みにくいものでした。それでも当時の日本の子供にとっては貴重な栄養源であったと思います。

戦後の日本は憲法の規定で軍備に余りお金をかけず、国の力や科学技術を民生に活用しました。そのお陰で産業は立ち直り世界有数の貿易国になりました。戦前までは自存自衛といって、大規模な軍隊を持ち国力を疲弊させ、軍隊の力で他国の資源を略奪しようとして大失敗をしています。戦後は石橋湛山が主張したように国力を軍隊より民生に使い自存を図る貿易立国を目指しました。そして国力をつけた日本は財政的力により国際社会に寄与しています。

国連は1945年に誕生し、2005年に創設60週年を迎え記念式典が10月24日に開かれています。その当時のアナン国連事務総長が記念式典で特に訴えたことは、極端な貧困が富と共存していることを不名誉と考え、救う手立てがありながら、数億の人たちが飢餓や病気、環境悪化にさらされたままだ、ということでした。

紹介済みですが、国連が2000年に作成した「ミレニアム開発目標」は、1日1ドル未満で暮らす貧困層が10億人。これを半分に減らそう。5歳まで生きられない子どもは1100万人。これを3分の1に減らす。そしてすべての子どもを小学校へでした。目標達成を2015年にしています。

この目標は、憲法前文の「われらは、平和を維持し、専制と隷従を地上から永遠に除去しようと務めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存することを確認する」「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と述べたことは、正にアナン国連事務総長が記念式典の演説の精神と一致しております。

武器使用の基準を他国より強い制限を設けて自衛隊、そして文民をPKOに派遣をすることや、財政力で国際貢献することを何も国の不名誉なことではありません。インドの女性ばかりの警察官を派遣した例があります。

国際貢献を口実にして日米同盟で用いられる集団的自衛権、“海外での武力行使の風穴を空けられる”ことは御免です。

柳井俊次氏の主張を考える/山崎孝

2007-04-29 | ご投稿
4月29日付朝日新聞「持論」という欄で、集団的自衛権を研究する首相の懇談会座長を務める柳井俊次氏は次のように述べています。

(前略) 90~91年の湾岸危機・戦争の際は、米国の高官らが次々に来日し、「おれたちは血を流すんだ。日本は石油の80%以上を中東からの輸入に依存しながら、何もしないのか」と大変な剣幕で圧力をかけられた。結局、130億㌦の資金援助をしたが人的貢献をしなかった日本は、国際世論から強く非難された。

 日本はイラクの復興支援策の一つとして、現地の人や国際機関を使って円借款や無償援助を実施している。だが、日本の文民がイラク国内で支援活動をするのは、今の治安状況では危険すぎる。自分で身を守れる組織でないとできないから、自衛隊の出番になった。

  ■ ■ □ □

 米国ではイラク鹿留米軍に撤退期限を求める補正予算案が上下両院で可決された。議員たちの念頭には来年の大統領選がある。ブッシュ大統領のイラク政策に批判的なほうがいいと思う議員が与党の共和党にもいるなど、いろんな思惑で撤退論が加速している。だが、いま撤退したら、もっと大変なことになる。日本の世論調査で、イラク持措法を延長して自衛隊の派遣を続けることに反対する人が多数を占めたのも、撤退後にどうするかまで考えている人が少ないからではないか。

 イラクの中で対立している国民が和解を進めたうえ、イラク人の手で治安と政治状況を安定化し、政治機構をつくってもらってから撤退するのが、責任あるやり方だ。しかし、まだ時間がかかる。国際社会としては、もう少し手を貸して、徐々にイラク人の手に委ねていくしかない。

 国連ではなく米軍中心の統治であることへの批判や、何でも国連がやればいいという意見があるが、国連には手足となる国連軍がない。だから、米軍中心の多国籍軍にならざるをえないのだ。

 ■ ■ □ □

 ただ、国連には、世界の国々を最もよく代表しているという正統性や権威がある。イラク問題では、軍事力を持つ米国が、いま以上に国連で国際世論を醸成する努力をするなど、国連をもう少しうまく活用してほしい。そういう意見を日本はもっと言うべきだ。武力を持つ鎌倉幕府や江戸幕府が、朝廷の歴史的正統性を生かして政権を運営した日本の歴史に学んでほしい。

 イラク支援は安保理決議に基づいた協力である半面、同盟国である米国への協力という側面もある。自分が助けてもらいたいときだけ頼むのではダメで、普段からいろんなことで協力するのが同盟国だ。日本の防衛力は自衛隊だけで、核兵器を持たない。日本の周りには、核兵器と大陸間弾道弾で重武装したロシアや中国、さらには、ついに核を手にした北朝鮮がある。このような北東アジアで軍事的バランスを保ち、日本の安全保障を図るには、米国の核の傘が必要であり、米国との同盟しかない。(聞き手・増田洋一)(以上)

柳井俊次氏は「人的貢献をしなかった日本は、国際世論から強く非難された」と述べていますが、外務省がクウェート政府の感謝リストに日本の名がなかってことから騒ぎ出したことを誇大宣伝に使っています。財政支援だけでも国連に評価されたことは先日のブログで紹介しました。

柳井俊次氏は「日本の文民がイラク国内で支援活動をするのは、今の治安状況では危険すぎる。自分で身を守れる組織でないとできないから、自衛隊の出番になった」と述べています。イラクに自衛隊を派遣した目的は人道復興支援に名を借りた米国支持を行動で示すためのものです。それをなによりも裏付けるのが、人道復興支援という名目の陸自は撤退させても米軍などの輸送を行う空自の派遣は継続させて尚且つ活動期間を延長させようとしています。「イラク支援は安保理決議に基づいた協力」と主張していますが、イラク支援の安保理決議以前に自衛隊のイラク派遣は検討されていますから、この名目は後付です。

柳井俊次氏は「ブッシュ大統領のイラク政策に批判的なほうがいいと思う議員が与党の共和党にもいるなど、いろんな思惑で撤退論が加速している」と述べていますが、このことはブッシュ政権のイラク政策は米国の選挙民に間違っていたと言う認識が大きくなっている事実を証明していて、イラク政策を改めなければならないことを裏付けています。現在の米国のイラク政策は、柳井俊次氏の言う「イラク人の手で治安と政治状況を安定化し、政治機構をつくってもらってから撤退する」ことにつながらないのです。このことを別な表現で表したのが、先日ブログで紹介したエジプトのアブルゲイト外相の発言です。4月19日、毎日新聞など日本メディアとカイロで会見し、約400万人とされるイラクの難民・国内避難民の処遇について、「イラクに侵攻した多国籍軍が責任を負うべきだ」と語った。先月にはサウジアラビアのアブドラ国王が米軍のイラク駐留を「不法な占領」と非難した。アブルゲイト外相は、治安悪化に加え、大量の難民・国内避難民の発生を「多国籍軍のイラク侵攻の結果であることは誰も否定できない」と述べたことだと思います。柳井俊次氏は「いま撤退したら、もっと大変なことになる」と述べますが、米軍を増派しても規模の大きなテロ活動は起きる、イラクの内戦状況は更に深刻な状況を呈していて「国際社会としては、もう少し手を貸して、徐々にイラク人の手に委ねていく」という見通しは全然立ちません。

柳井俊次氏は「日本の防衛力は自衛隊だけで、核兵器を持たない」と述べましたが、このことこそ重要です。現在の自衛隊は海外で武力行使は出来ません。このことは、他国は日本に攻められないということです。この状態の自衛隊であれば隣国にとっても、自衛隊は脅威ではありません。攻撃の対象に必要がありません。「核兵器を持たない」ことも脅威にはなりません。

なぜ、隣国にとって日本が脅威になるのか。それは偏に在日米軍の存在で、ベトナム戦争、イラク戦争などで、日本が米軍の他国を攻撃する基地となったからです。日米同盟で集団的自衛権行使が可能となれば、更に日本の軍事力が他国への脅威になることでしょう。攻撃の対象として視野に確実に入ります。

懇談会のメンバーの発言について/山崎孝

2007-04-28 | ご投稿
朝日新聞4月27日の社説【集団的自衛権 結論ありきの懇談会だ】

これでは、初めに結論ありきの出来レースだとしか思えない。

安倍首相が、集団的自衛権について研究するための私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を設置した。13人のメンバーを見渡せば、集団的自衛権の行使容認に前向きな意見の持ち主ばかりがずらりと並ぶ。

この秋に出すという報告書には「行使を容認する」の文字が躍る――そんな場面が目に浮かぶようだ。

「戦後レジームからの脱却」を掲げる首相にとって、集団的自衛権の行使を禁じてきた政府の憲法解釈は、憲法や改正前の教育基本法とならぶ「脱却すべきタブー」のひとつなのだろう。

3年前の著書では、懇談会のメンバーのひとり、岡崎久彦・元駐タイ大使と対談している。

安倍氏「軍事同盟は、“血の同盟”だ。日本が外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流す。しかし今の憲法解府の解釈釈では、日本の自衛隊はアメリカが攻撃されたときに血を流すことはない」

岡崎氏「解釈は裁判所が決めたわけでもないし、憲法に書いているわけでもない。単に、役人が言っただけだから、首相が『樺利があるから行使できる』と国会で答弁すればいいんです」

ほかのメンバーにも同種の発言をしてきた人が目立つ。たとえば中西寛・京大教授は2001年、参院の国際間題調査会に招かれ、こう述べている。

「集団的自衛樺を行使しないという政府の解釈は、外国から見れば日本がエゴイスト、危険を避けて重要な安全保障問題にノータッチで、経済的利得だけを求めているととられかねない」

そんな見方も確かにあるだろう。しかし、わが国は集団的自衛権を持ってはいるが、その行使は憲法上、許されない。

これが政府の一貫した見解だ。それを支持している有識者も少なくない。

なのに、特定の考え方のメンバーだけを集め、わずか数カ月の議論で解釈変更をめざす。そんな強引で一方的なやり方がまかり通っていいはずがない。

今回の人選にあたっては、中曽根内閣で首相の靖国神社参拝に道を開いた靖国問題懇談会を参考にしたという。

だが、この懇談会には哲学者の梅原猛氏ら首相の参拝に反対、慎重な有識者も加わり、最終的に少数意見も併記して報告書をまとめた。梅原氏は後に「反対者がわりに多かった。3分の1は反対。非常に公平な選び方をしたと思う」と振り返っている。

難しい課題であればこそ、有識者の多様な意見に進んで耳を傾け、判断を誤らないようにする。国のリーダーにとって懇談会の効用はそれに尽きる。

今回の懇談会では、その意味をなさない。ただちに人選を見直すべきだ。

それとも首相は、自分の意見と異なる論者には知識がない、有識者とは認めない、とでも言うのだろうか。(以上)

★コメント 岡崎氏「解釈は裁判所が決めたわけでもないし、憲法に書いているわけでもない。単に、役人が言っただけだから、首相が『権利があるから行使できる』と国会で答弁すればいいんです」と述べたことが社説で紹介されていますが、これは単なる役人ではありません、国会で重要な法律の解釈の説明が求められたときは、常に内閣法制局の見解が求められています。法律には権威のある役所の役人です。ですから歴代政府は内閣法制局の見解に従ってきました。

岡崎氏は「憲法に書いているわけでもない」と述べていますが、憲法には書いてない自衛権について、内閣法制局の日本国憲法は個別的自衛権行使を否定していないという見解によって、世界有数の軍事組織の自衛隊を持つことが出来ているのです。内閣法制局の見解は集団的自衛権行使をきっぱりと否定しています。岡崎氏の意見は自分勝手な論理です。

中西寛・京大教授の「外国から見れば日本がエゴイスト」と述べたことが社説で紹介されています。しかし、2006年5月16日、国連総会は、紛争後の復興を支えるために新設する「平和構築委員会」の常設機関である組織委員会のメンバー31カ国の中に日本を選びました。軍事や警察分野での人的貢献の高い国も選ばれてはいますが、日本の理由は“財政的貢献”が高いでした。決してエゴイストではなく、平和憲法の規定を守りながら日本の財政力を活用して財政貢献したことは大いに評価されています。世界の大規模な災害救援には参加する。国連平和維持活動の後方支援活動は行っています。自衛隊以外で国連の武装解除活動は行っています。国際社会からエゴイストと思われてきたのであれば、192カ国ある国連加盟国の中から重要な役割をまかされるはずがありません。この平和構築委員会の重要性を示した言葉を以下に紹介します。

2006年5月19日、イラク駐留米軍ナンバー2であるカレリ中将は、「治安回復のかなめは経済復興だ」と述べています。現役の高級軍人が軍事力では根本的な解決が出来ないことを指摘しています。

平和構築委員会は2005年3月にアナン事務総長が提唱、国連はこれまで紛争の予防や解決に力を注ぎ、平和維持部隊などを派遣してきたが、同委員会は部隊が去った後も現地での国づくりをになう機関として構想され、その創設は国連創設60周年の総会特別首脳会議で人権理事会創設とともに最優先課題とされました。戦争や内戦を経験し、1990年代に和平合意に達した国の約半数が5年以内に再び暴力や混乱に逆戻りしたとも指摘される。委員会は、世界銀行や国際通貨基金(IMF)とも協力、多国間と2国間の経済支援など必要な支援を長期的に管理します。

2005年6月23日、平和構築委員会の初会合で、国連のアナン事務総長が開会挨拶し、「この委員会が象徴しているのは、希望とともに忍耐だ。自分たちの社会が平和に向かう壊れやすい道からはずれないよう努力している世界中の数百万の人たちにとっては希望であり、忍耐とは、みなさんが相当の困難を乗り越えて、この新しく、重要な試みを実現し、実行しているからだ」と述べました。エリアソン総会議長は「(19日)の人権理事会の初会合に続き、国連改革の歴史的な収穫」だと述べました。

このように平和構築委員会は国連にとって重要な位置づけがなされています。

安倍晋三氏の「日本が外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流す」と、如何にも日本が不平等なことをしている感じを持たせようとした発言ですが、日本は在日米軍基地の費用を「おもいやり」予算で大きな負担をしています。日米同盟の双務性の主張で集団的自衛権の最大の留意点は、“米軍が攻撃を受ける場所が外国の領域ばかり”です。日本は米軍の攻撃を武力行使で支援することになると、地球規模の領域となってしまいます。このようになれば、日本人から見れば、日米同盟が公平・平等とは言えなくなり逆転します。

参議院選挙はこのような解釈改憲を行おうとする政権へ厳しい審判を下さなければと思います。公明党も平和の党と自称するのであれば、イラク戦争のような国連がイラク攻撃容認決議をしなかった戦争に、日本が武力行使まで視野に入れている政権と足並みを揃えている矛盾に自問自答すべきだと思います。公明党支持者は公明党の態度に厳しい目を向けないと自分自身の平和思想を裏切ることになると思います。人の命が国家の政策で人為的に奪う戦争を支持していては、平和思想とはいえません。

米国ではイラク駐留米軍の撤退期限を盛り込んだイラク戦費などの予算案を下院は4月25日に、上院は26日に共和党の議員の賛成を得て可決しました。イラク戦争の大義はこのような形でも否定されるに至っています。

世界の何処に住もうと人間は同じ潜在的知力を秘めている/山崎孝

2007-04-27 | ご投稿
2007年4月14日付け朝日新聞文化欄に次のような記事がありました。栃木県北部、高原山の黒曜石原産地遺跡で見つかった約3万5千年前の石器は知的で効率的な作業の痕跡で、旧石器時代のイメージを塗り替えるものだった。世界の人類史と日本列島が結びつくと研究者は注目。日本にどうやって人がやってきたかを考える手がかりでもある。(中略)

【進化への懐疑】高原山の発見がもたらすさらに大きな衝撃は「人間は進化する」という「常識」への懐疑かもしれない。発見者である田村隆・千葉県立中央博物館歴史学研究科長の研究の歩みが、そのことを物語っている。千葉県出土の石器の原料となる石の取得地を探し出せば、当時の人の行動範囲が分かるはずだと考え、研究を続けてきた。知的レベルが低く石材は拾うしかなかったとされていたので、関東地方の河原を巡り続けた。だが20年続けても、手がかりは乏しかった。そんななか、城西大講師の国武貞克さんの提案で、2002年に原石産地そのものを探すことにした。これが2005年の高原山遺跡の発見につながり、約4万~3万5千年前の石器が見つかった。

 近年の人類学では、人間は徐々に進化したのではなく、6万年ほど前に一気に進化し、その結果、アフリカから世界に広がることができたという仮説が主流。今回発見された石器の年代は、この仮説に符合する。

 国立科学博物館の篠田謙一・人類第一研究室長(分子人類学)は「氷河期にアメリカ大陸に渡った人たちが、その後、環境の変化に対応して独自に農耕を始めた。思考・行動する基本的な能力は5万年前の人も、現代人も変わりはないはずです」と語る。(以下略)

この記事で述べられた「思考・行動する基本的な能力は5万年前の人も、現代人も変わりはないはずです」というのは、海部陽介著「人類がたどってきた道」を読んで私が理解したことを要約すると、遺跡品などから判明したことは、人類の祖先ホモサピエンスは道具の種類が多様であり、形の規格化が図られている。絵、彫刻、音楽などの芸術を創造していた。長距離交易を行っていた。文化が地理的に多様性を持っていたなどを挙げられます。

ホモサピエンスの特徴として、具体的な事象を分析して抽象的で概念的な思考を行う能力、無限とも言える発見・発明能力、優れた予見・計画能力、シンボル(絵とか文字など)を用いて知識伝達をする能力があること挙げています。この知的潜在能力はアフリカから世界に拡散していく段階で備わっていました。ですから住む環境に応じて必要な能力の発揮している水準の違いがあるけれど、基本的に同様の知的潜在能力を持っています。

海部陽介氏の著書から私が理解したことを要約すると、民族とか国家の地域集団の知的潜在能力の発揮は、物流と情報流入を左右した地理的条件と穀物生産力の基礎となった自然環境に影響された。穀物生産が豊かな地域では生産労働の余剰力が、専門の技術や学問を研究する職業を生み出した。この要素が各々の地域文化が複雑化していく速度を決めた。現在の地域間格差は集団的な知力の優劣差ではないとしています。

世界の人々は共通して持つ「世代を超えて知識を蓄積し、祖先から受け継いできた文化を創造的に発展させてゆく能力」を生かし、現代では情報網や物流が発達していて、民族や国家間の相互の世界観や価値観を研究しあい理解を深める。共同して科学や経済を発展させる。社会制度を研究して自分たちに合うものはほぼ共通にする。各々芸術を理解し合い、そのことで世界的な芸術が生まれます。

平和と安定を守る分野では、世界が世代を超えて知識を蓄積し進歩させた現在の到達点に、第2次世界大戦の教訓を土台にした国際連合の組織と憲章があり、国連憲章よりも厳しく武力を否定した日本国憲法の9条があります。憲法前文は世界に目を向けています。

改憲を考える自民党は現行憲法を削除して内向きになり、新憲法草案前文に日本の歴史、文化、伝統、愛国心を盛り込もうとしています。国民に特定の価値観を押しつける。民族の優越性を誇りたい意図が見えます。民族の優越性を一方的に誇ることや、同等の能力を持つ国家間同士が、一方が一方を力で抑えつけようとすることは科学的でないといえます。

河野洋平衆院議長、憲法は国家の命運を左右する/山崎孝

2007-04-26 | ご投稿
【「集団的自衛権見直す」 首相、米大統領に伝達意向】(4月22日付中日新聞)

安倍晋三首相は二十一日、二十七日に米キャンプデービッドで予定されるブッシュ大統領との首脳会談で、憲法で禁じられてきた集団的自衛権行使の見直しに向け、具体的研究に入る考えを伝達する意向を固めた。訪米前に事例研究を行う有識者会議設置を決定する。

首相は集団的自衛権の研究について「世界の平和と安定に一層貢献するため、時代にあった安全保障の法的基盤を再構築する必要がある」と必要性を強調してきた。これを具体化する有識者会議の設置を訪米前に決め、大統領との会談に臨むことで日米同盟強化の姿勢をアピールする。日本の集団的自衛権行使には、米国から期待が高まっていることも背景にある。

集団的自衛権は、同盟国が攻撃を受けた際に反撃する権利。政府は戦後一貫し「権利は保有しているが、行使できない」と憲法解釈してきた。

有識者会議の初会合は五月になる見通しで「いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するか、個別具体的な事例に即し、研究を進めていく」(首相)方針だ。(以上)

【集団的自衛権:中心は首相の「仲良し」人脈 政府有識者懇】(4月25日付毎日新聞)

政府が25日発表した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」のメンバーは、日米同盟を重視する論客をずらりそろえた。中心を固めるのは安倍晋三首相の人脈。いずれも集団的自衛権に関する政府の憲法解釈を疑問視しており、解釈変更までを視野に入れた布陣と言える。ただ、提言時期を参院選後としたのは解釈変更に慎重な公明党への配慮とみられ、どこまで踏み込むかは政治状況に左右されそうだ。【古本陽荘、小山由宇】

「素晴らしいことだ」。25日、首相官邸を訪れたアーミテージ元米国務副長官は、首相から有識者懇の説明を受け、絶賛した。元副長官は2000年10月、米国のアジア戦略を描いたアーミテージ報告書で「日本が集団的自衛権の行使を禁止していることが同盟協力の制約となっている」と指摘していた。

有識者懇の議論をリードするのは、座長に就任予定の柳井俊二前駐米大使、岡崎久彦元駐タイ大使の外務省OBになりそう。「集団的自衛権行使は、日本の安全保障政策の基軸である日米同盟強化のため必要」と主張してきた外務省にとっては、長年の悲願を実現させるチャンスと言える。

特に柳井氏は、アーミテージ報告書が発表された当時の駐米大使。翌年の米同時多発テロ後、米国がアフガニスタン攻撃に踏み切った際には、速やかな協力を期待する米国と、集団的自衛権との関係を慎重に判断せざるを得ない本国との板ばさみになった経験も持つ。

首相の外交ブレーンである岡崎氏は、首相が官房副長官だった時代から、折に触れ憲法解釈変更の必要性を説いてきた。佐瀬昌盛・拓殖大客員教授は、首相の成蹊大入学時の面接官でもあり、気心の知れた仲。集団的自衛権について「内閣法制局の定義が誤っている」というのが持論だ。

政府内では、内閣法制局を中心に「解釈変更が簡単にできるなら内閣ごとに政府の解釈が変わることになる。それでは法的安定性が保てない」との意見が根強い。ただ、有識者懇はその顔ぶれから、集団的自衛権の行使そのものを容認する方向で議論が進む可能性が大きい。

有識者懇は、自衛隊の行動について具体例を挙げながら、憲法が禁じる集団的自衛権行使や海外での武力行使にあたるかどうかを議論する。

首相が特に重視するのは、(1)米国向けの弾道ミサイルを日本のミサイル防衛(MD)システムで迎撃可能か(2)公海上の米軍艦船が攻撃された場合自衛隊の艦船が反撃できるか――の二つ。いずれも集団的自衛権行使にあたる可能性が高いと解釈されているが、直接米国を日本が守れるかという日米同盟の根幹を問われるからだ。

(1)は北朝鮮の弾道ミサイルを想定。将来、ハワイやグアムに向けたミサイルへのMDでの迎撃が可能となった場合、「米国が攻撃されるのを黙って見ているわけにはいかない」(外務省幹部)との指摘がある。日本向けの弾道ミサイルの迎撃について政府は「自衛権の行使ではなく、とりあえず危険を排除するための警察権の行使」と説明。米国向け弾道ミサイルも「自衛権とは別の概念で整理すれば迎撃可能」との理屈も考えられるが、「強引な解釈」(自民党国防族)との声が出ている。

(2)では、久間章生防衛相が公海上でも米軍艦船が自衛隊の艦船の近くにいる場合は「正当防衛」として反撃することが可能と答弁。安倍首相もこの考えに同調しており、憲法解釈が明確でないケースについて、個別的自衛権や正当防衛で行使可能なものがないか議論することになりそうだ。

このほか、海外で活動中に他国軍が攻撃された場合、自衛隊が駆け付けて警護ができるか、治安維持活動ができるかなども議論の対象となる。(以上)

★コメント 中日新聞に《集団的自衛権行使の見直しに向け、具体的研究に入る考えを米国に伝達する意向を固めた》、毎日新聞に《「素晴らしいことだ」。4月25日、首相官邸を訪れたアーミテージ元米国務副長官は、首相から有識者懇の説明を受け、絶賛した》とあるように、集団的自衛権行使の見直しは、偏に安倍首相の米政権への“大きな土産”に当たるものです。毎日新聞の報道にも有識者懇に《日米同盟を重視する論客をずらりそろえた》とありますから間違いありません。

日本の運命は米国の行動に委ねられるのです。米国の今までの行動は、かつての日本のように、外国の領土・領域で戦争や軍事行動を行っているばかりの国ですから、世界の平和と安定に寄与することとは無縁です。毎日新聞には《直接米国を日本が守れるかという日米同盟の根幹を問われるからだ》とありますが、これは米国が他国から米国の領域を攻撃されたときのみ説得力は持ちます。しかし、米国は他国での米国の軍事行動ばかりです。米国は黙って攻撃を受けるのを黙って見ているわけには行かないとする“先制攻撃戦略を駆使する国是”ですから、米国の領域が攻撃を受けたとしても先制攻撃に対する報復攻撃の場合がありうるのです。軍事超大国の米国に先制攻撃をする国はまさに自殺行為です。日本の運命は米国の行動に大きく左右される運命になります。

毎日新聞に《内閣法制局を中心に「解釈変更が簡単にできるなら内閣ごとに政府の解釈が変わることになる。それでは法的安定性が保てない」との意見が根強い》と書かれているように、《解釈変更が簡単にできるなら内閣ごとに》変わると言うことは、憲法は法律ではなく、臨機応変とか融通無碍のとりあえずの決め事みたいな性格のものになります。これでは江戸幕府のように権力者の意のままになる司法となります。

国会は4月25日午後、憲法施行六十周年を記念し、憲政記念館で式典を行った。その中で河野洋平衆院議長は「憲法の下でわが国の部隊が海外で一人たりとも他国の国民の生命を奪うことはなかった。この平和の歩みは誇ってよい実績だ」と強調。「憲法は国家の命運を左右する。憲法議論は幅広い視野に立ち、謙虚に歴史に学ぶ心を持ち、国家と国民の将来に責任感を持って行われることを切に望む」と慎重な議論を求めたと中日新聞は報道しています。河野洋平衆院議長は、憲法は国家の命運を左右すると述べましたが、その通りです。日本が米国の内政干渉やイラク戦争みたいな先制攻撃戦略の道連れになるのは御免です。

安倍首相の仲良し倶楽部のメンバー、特に《米国がアフガニスタン攻撃に踏み切った際には、速やかな協力を期待する米国と、集団的自衛権との関係を慎重に判断せざるを得ない本国との板ばさみになった経験も持つ》という被害意識を持つ人物は、かつての仲間の外務省の官僚が米国の要求と憲法規定との板ばさみになることを避けたい気分を持つに違いありません。国家の命運を左右する憲法を変えるかどうかは、“日本の戦争の歴史に学んだ国民の叡智”に最終的には委ねられるべきものです。

安倍首相は事実を踏まえて国会答弁を/山崎孝

2007-04-25 | ご投稿
NHKの4月24日のニュースは「イラク特措法」延長に関して、安倍総理大臣は「イラクの安定と復興は国際社会の共通の課題であり、日本の国益にも直結するものだ。国連のパン事務総長やイラクのマリキ首相からも航空自衛隊の活動を継続するよう要請されており、イラクの復興に対する支援に腰を据えて取り組む姿勢を示すため、法律の期限を2年延長することとした」と述べ、航空自衛隊の活動を継続する必要性を強調しました。イラクでの自衛隊の活動をめぐっては、野党各党が反対しており、衆議院本会議では、民主党が提出した自衛隊の即時撤退を求めるイラク支援法の廃止法案も、合わせて審議に入りました。

答弁の中で、安倍総理大臣は、日本政府がアメリカのイラクに対する武力行使を支持したことについて、「イラクが過去に実際に大量破壊兵器を使用した事実や、国連の査察団が数々の未解決の問題を指摘したことなどを考えれば、イラクに大量破壊兵器が存在すると信じるに足る理由があったと考えている。日本政府は、累次の国連安保理の決議や、国連査察団の報告書に基づいて主体的に判断したものだ」と述べました。(ニュース以上)

「国連査察団の報告書に基づいて主体的に判断したものだ」と安倍首相は述べています。この国連査察団の活動について、軍事評論家の田岡俊次さんは次のように述べています。(「AERA」2007年4月2日号より)

実際には、イラクは開戦前年の2002年11月に出た決議1441号を受け入れ、中断されていた査察が再開された。国際原子力機関(IAEA)と国連監視検証委員会(UNMOVIC)の専門家計約230人がイラクに入り、翌年3月までにIAEAは147ヶ所で247回、UNMOVICは731回、計978回もの査察を実施した。

特に米英が疑惑を示した地点・施設は重点的に調べたが、大量破壊兵器の備蓄や活動の証拠は発見できず、査察に対する妨害もなかったことが報告されている。国連安保理がイラクに対する武力行使を容認しなかったのは当然だ。(以上)

安倍首相は「イラクに大量破壊兵器が存在すると信じるに足る理由があった」と考えたと述べていますが、このような査察を行っても大量破壊兵器は発見されず、国際原子力機関は査察を継続すべきことを国連に報告しています。国際原子力機関とその議長エルバラダイさんは、イラクの査察活動の姿勢を含めて評価されてノーベル平和賞を受賞したことを見ても、安倍首相の言葉に説得力はありません。安倍首相は事実を踏まえて、国会答弁をすべきです。

自民党の新憲法草案第9条の3は、自衛軍が「国際社会の平和と安全のために、国際的に協調して行われる活動」を行うことを謳っています。戦争を起こした本家本元の米国の国民がイラク戦争は間違いという意志を示したのが米国上下両院の選挙の結果です。それなのにイラク戦争を正しいと考えたことは、将来も「国際社会の平和と安全のために国際的に協調して行われる活動」が、「米国に協調して行われる活動が、国際社会の平和と安全」ということにすり替わることは十分に予測されます。安倍首相の集団的自衛権行使の研究事例に、イラク・サマワで活動している英豪軍が攻撃を受けた場合、自衛隊が駆けつけることが入っていることを見れば確実ともいえます。(安倍首相は2006年10月、参院予算委員会で、このような行動は警察行動ではないかという問題もあると述べる。非武装の組織ならいざ知らず、他国の国に侵入し、その国の武装抵抗組織に抵抗を受けている軍隊が攻撃を受けている状況が警察行動とは不思議な話です)。

4月25日付の朝日新聞には集団的自衛権行使の研究例が「国際復興支援活動で共に行動する他国軍への攻撃に自衛隊が応戦する」となっています。この「国際復興支援活動」が国連平和維持活動であるならば、他国軍への攻撃に自衛隊が支援する義務はなく、攻撃を受けた軍隊自らの自衛行動で反撃できます。攻撃を受けた軍隊に自衛隊が支援することは、自衛隊そのものが紛争の当事者になる可能性があります。PKOでは国際部隊が紛争の当事者にならないことを鉄則にしています。

4月25日付の朝日新聞には4月24日の「イラク特措法」延長の国会質疑で、2年間支援活動を延長することは、日本は原油の約9割を中東からの輸入に依存しているだけに、イラクを含む中東の安定が安倍首相は「国益に適う」と説明したとあります。しかし、現在イラク自体がイラク戦争のために石油関連施設やパイプラインが破壊されてしまい、ガソリン不足で大変困っている状況です。これに関連して言えば、米軍を自衛隊が支援すること自体が中東を不安定にしていると言えます。中東の平和と安定の責任の所在に言及したエジプトのアブルゲイト外相の4月20日付毎日新聞の記事を紹介します。

エジプトのアブルゲイト外相が4月19日、毎日新聞など日本メディアとカイロで会見し、約400万人とされるイラクの難民・国内避難民の処遇について、「イラクに侵攻した多国籍軍が責任を負うべきだ」と語った。先月にはサウジアラビアのアブドラ国王が米軍のイラク駐留を「不法な占領」と非難しており、外相の発言は、米国が親米穏健派と位置づけるアラブ諸国の不満の高まりを表したと言えそうだ。

イラク周辺国への難民は約200万人と言われ、アブルゲイト外相によると、エジプトでも約10万人の難民が医療などのケアを受けているという。外相は、治安悪化に加え、大量の難民・国内避難民の発生を「多国籍軍のイラク侵攻の結果であることは誰も否定できない」と強調。その上で、「イラク政府が治安を保証できない以上、多国籍軍は資金援助をして家を逃れた人たちを支えるべきだ」と主張した。

エジプトは来月3、4日に開催されるイラク安定化に向けた外相級国際会議のホスト国。エジプト・シャルムエルシェイクで開かれる国際会議は3月にバグダッドで開催された大使級会議に続くもので、イラク周辺国や国連安保理常任理事国、日本を含む主要国(G8)など、二十数カ国が参加する予定だ。(以上)

安倍首相は事実をしっかりと見つめて国会答弁を行わなければなりません。野党は安倍首相の述べたことを事実に照らし合わせて、理詰めで追及すべきです。

沖縄の二つの選挙結果から言えること/山崎孝

2007-04-25 | ご投稿
【伊波氏が再選/宜野湾市長選 外間氏に3800票の大差】(沖縄タイムスのニュース)

【宜野湾】任期満了に伴う宜野湾市長選は二十二日投開票され、無所属現職の伊波洋一氏(55)=社民、社大、共産、民主推薦=が二万一千六百四十三票を獲得、新人で前市教育委員会教育部長の外間伸儀氏(59)=自民、公明推薦=に三千八百四十二票の大差をつけ再選を果たした。普天間飛行場の移設問題や企業誘致などに取り組む、伊波氏の実績が評価された。投票率は60・39%で、前回の55・54%、過去最低だった前々回の41%を上回った。

当選後、伊波氏は市域の四分の一を占める普天間飛行場代替施設の移設先について、「名護市辺野古に新たな基地を造ることに反対する。海兵隊を普天間に足止めさせるようなことはさせない」と強調。グアムなど早期の国外移転を主張し、一期目に続き、県内移設を明確に否定した。

早急に取り掛かる施策として「若者に雇用の場を確保するため、企業誘致を積極的に進めたい」と説明。大差の再選に「福祉、教育など四年間の実績が市民から全般的に評価されたものであり、うれしい」とした。

伊波 洋一(いは・よういち) 1952年生まれ。琉球大学卒。74年宜野湾市役所入り。市職労委員長、中部地区労事務局長を経て、96年から県議2期7年。2003年同市長選に初当選。同市嘉数出身。

【島尻氏が初当選 参院補選 狩俣氏に2万7000票差/与党初の女性国会議員】(沖縄タイムスのニュース)

参院沖縄選挙区補欠選は二十二日投開票が行われ、諸派新人で前那覇市議の島尻安伊子氏(42)=自民、公明推薦=が二十五万五千八百六十二票を獲得し、諸派新人で前連合沖縄会長の狩俣吉正氏(57)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=に約二万七千票差をつけ、初当選を果たした。与野党が総力戦を展開した全国注目の選挙。島尻候補は「台所から政治を変える」と生活者の視点を訴える一方、仲井真県政や安倍政権と連携するスタンスを強調し県民の支持を得た。狩俣候補は「格差是正」を前面に、安倍政権との対立色を明確にして運動を展開したが、及ばなかった。投票率は47・81%で、二〇〇四年参院選の54・24%を6・43ポイント下回り、国政選挙や知事選など主要選挙で最低となった。

島尻氏は子育て世代の代弁者をアピールし、「沖縄を子育て最先県にしたい」と強調。キャラクターやテーマソングを駆使したイメージ戦略を展開した。赤色のエプロンで那覇市内の商店街を練り歩くなど無党派層対策も功を奏した。与党では初の女性国会議員。(中略)

島尻安伊子氏 握手していただいた有権者の思いに恥じないよう全身全霊を尽くし、沖縄の発展のために頑張りたい。期間中、台所から政治を変えると一貫して訴えてきた。その訴えが県民に浸透したと思う。子育てしやすい環境づくりに力を入れたい。基地問題は県知事と一緒に、地元の意見を大事に県民益を考えて対応していく。実効性のある政策を立案、実行していきたい。

狩俣吉正氏 県民の審判を厳粛に受け止める。運動員の皆さんには頑張っていただいた。私の力が足りなかった。知事選の敗北の後の建て直しで、基礎的な組織基盤も違った。格差問題はかなり浸透したと思うが、選挙結果につながらなかったのは残念。もう少し政策論議がしたかった。県民が選んだ代表として、島尻さんには沖縄の声を国政に届けてほしい。(以上)

沖縄タイムスの二つのニュースから言えることは、島尻安伊子氏が沖縄タイムス

が述べたように、《子育て世代の代弁者をアピールし、「沖縄を子育て最先県にしたい」と強調。キャラクターやテーマソングを駆使したイメージ戦略を展開した。赤色のエプロンで那覇市内の商店街を練り歩くなど無党派層対策も功を奏した。》とあるように基地問題は争点化を回避して、基地問題は県知事と一緒に、地元の意見を大事に県民益を考えて対応していく。実効性のある政策を立案、実行していきたい」と述べて、必ずしも政策を明確にしたとはいえません。

沖縄基地問題の最大の争点になっている普天間飛行場の移設問題の地元民の意志は選挙結果では明確になっています。伊波洋一氏は「名護市辺野古に新たな基地を造ることに反対する。グアムなど早期の国外移転を主張し、一期目に続き、県内移設を明確に否定して当選しています。それに、参院補選は狩俣氏に2万7000票差でしたから、それほどの大きな差とはいえません。

在日米軍再編促進特別措置法案は、在日米軍再編に伴い基地負担が増える市町村への新たな交付金制度(再編交付金)などを設けて、在日米軍再編に協力する関係市町村のみに公共事業などの国の補助率引き上げを可能にしようとしています。政策の道理ではなく、国民の金を使って地元の住民の心を買い、米国に協力する政策を行うのです。

ドラマ「夢千代日記」に思う/山崎孝

2007-04-23 | ご投稿
4月21日付朝日新聞に「愛の旅人」(筆者は森本美紀記者)は、ドラマ「夢千代日記」(私はこのドラマは少し見ただけです)を取り上げていました。主人公は広島に投下された原爆で胎内被爆した女性です。何人かの男性に愛を抱きました。主役の吉永小百合さんは原作者の早坂暁さんに尋ねています。(以下、記事より)

毎回男性に恋心を抱くのはみだらな女と思われないでしょうか、と言ったという。私のやりきれなさは、命わずかな夢千代に一つの愛も成就することさえ許されないのか、ということ。二つの問いに早坂さんはこう語った。

「不治の病に侵され、途方もない絶望に直面したとき、生きる力になるのは愛しかありません。愛を注ぎ、注がれることが希望になる。それは天上の恋なのです。ぎりぎりの命で、愛することに何の遠慮がいるでしょうか。そして悲恋は美しいのです」。

ドラマ「夢千代日記」の記事の最後の部分では、ある特定の男性への「愛」から、社会性をもった「愛」に対象が変化していきます。以下、記事です。

湯村温泉を後にして、私は、夢千代日記の原点となった広島へ向かった。焼けた衣服、真っ黒に焦げた弁当箱……。広島平和記念資料館の遺品コーナーで、吉永さんの深く静かな声がイヤホンから流れる。

音声ガイドを吉永さんに依頼したのは、自身も被爆した前館長の畑口実さんだ。館長になるまで周囲にも語らなかった胎内被爆者としての自分をさらけ出し、5年前に手紙を書いた。吉永さんが胎内被曝の夢千代を演じたことが記憶にあったからだ。まもなく快諾の返事が届いた。

哀れみを受けるのが嫌で、それまで被爆者である自分と向き合うことを避けていた。だが、館長として世界に平和を発信する経験が自身を変えた。

「同じ被爆者として夢千代の痛みを共感できる。愛がなければ生きる力は見いだせない。憎しみを乗り超えるのは憎しみではなく、愛のみなのです」(記事以上)

畑口実さんの語った愛は、政府の行為によって、自分たちと同じ運命に陥る人たちへ思いやる心、また、意見が対立し、立場や国家を異にする人たちの心を開かせ、和らげる愛であると思います。

この愛に立脚した人々がいました、ディビット・ポトティと「ピースフル・トゥモロウズ」です。その指導者のディビット・ポトティはジャーナリストで9・11同時多発テロ事件によって兄を亡くした。ピースフル・トモローズは同事件で肉親を失った100人以上の遺族と2000人以上のサポーターで構成される米国のNPO組織です。

「ピースフル・トゥモロウズ」は2001年12月2日の「9・11家族会合同声明」の中で、《アフガニスタンやその他の国の罪なき家族が、私たちが味わった痛みと悲しみを味わうことから免れるべきであると要求する権利やブッシュ大統領に武力を使うな》などと主張しています。

この主張は、国際紛争の解決手段としての戦争放棄をした日本国憲法を擁護する人々と、原水爆禁止を求める人々と共通の考えです。2003年の「広島市長平和宣言」は、イラク戦争を背景にして『「力の支配」は闇、「法の支配」は光です。「報復」という闇に対して、「他の誰にもこんな思いをさせてはならない」という、被爆者たちの決意から生まれた「和解」の精神は、人類の行く手を照らす光です』と述べています。

韓国の元大統領金大中氏は、北朝鮮の指導者に心開かせ、心を和らげる愛の政策「太陽政策」を打ち出しました。その結果、南北対話と交流は進みました。このことで、大国の圧力により北の指導者が強迫観念にとりつかれることを防げることが出来た一つの要素だと思います。優れた指導者は寛容心・包容心のある指導者だと思います。

人類普遍の人道主義に立脚していないと、米紙ワシントン・ポストの社説のように《拉致問題に熱心な安倍首相が従軍慰安婦問題には目をつぶっていると批判され、首相が「拉致問題で国際的な支援を求めるなら、彼は日本の犯した罪の責任を率直に認め、彼が名誉を傷つけた被害者に謝罪すべきだ」》と言われてしまいます。この指摘は安倍首相だけのものではなく、日本人の一部に映像マスコミの報道の仕方によって形成されたと私は思っています。2002年9月17日に合意した「日朝平壌宣言」を正確に踏まえて、映像マスメディアは報道しませんでした。「日朝平壌宣言」は、両首脳は、日朝間の不幸な過去の歴史を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが双方の利益に合致する…となっています。「日朝間の不幸な過去の歴史を清算し、懸案事項を解決し」とは、日本の植民地支配への反省であり、懸案事項とは北朝鮮が認めて頭を下げた拉致問題です。拉致問題は大きく取り上げて毎日のようにテレビで流し、日本の植民地支配という加害責任は少なからぬ日本人の意識の中から吹き飛んでしまいました。日本の加害意識は吹っ飛ばされ、被害意識が強く残されました。そのことを指摘する主張には、植民地支配の問題は過去のこと、拉致問題は現在進行形の問題であると反論、結果的には日本の植民地支配の問題は無視されました。そして、現在、日本が世界から現在進行形で突きつけられた問題は、従軍慰安婦問題です。日本の植民地支配の問題と大きく関連して生まれた従軍慰安婦問題でした。「河野官房長官談話」で一応の解決の形はついていたのに、現在進行形の問題となったのは、いうまでもなく、首相も含めた自民党の政治家たちの「河野官房長官談話」の見直しを行い、軍隊による強制はなかったとの認識を示したからです。「日朝平壌宣言」にある「日朝間の不幸な過去の歴史を清算」していなかったからです。

憎しみを抑えることは、とても理性が要りますが「愛がなければ生きる力は見いだせない。憎しみを乗り超えるのは憎しみではなく、愛のみなのです」の言葉の意味を反芻したいと思います。被害に受けた方にこれを要求するのは酷ですが、第三者が冷静な立場に立って、被害者に同情するだけでなく、どうすれば問題を解決できるのか合理的な判断が必要だと思います。相手への憎しみだけでは永遠に心は安らかにならず、問題も解決できないと思います。

9・11の遺族「ピースフル・トゥモロウズ」の《アフガニスタンやその他の国の罪なき家族が、私たちが味わった痛みと悲しみを味わうことから免れるべきである》とする「愛」が必要です。

★日本と韓国の最近の動き

毎日新聞の報道は、南北経済協力推進委員会は4月22日、韓国が借款方式で支援するコメ40万トンの輸送を5月末から開始することや、南北縦断鉄道(京義線、東海線)の試験運行の同月17日実施などを盛り込んだ合意文を採択して閉幕した。韓国の同行取材団によると閉幕後、南側代表は「北側が6カ国協議今回の合意には、韓国側が衣類やせっけんの製造資材8000万ドル分を送り、北朝鮮側が地下資源と地下資源開発権を提供する内容が含まれている。だが、具体的な推進は6月以降に設定されており、「鉄道試験運行の5月17日実施が前提条件」というのが韓国側の立場だ。試験運行実現の可能性が高いとの見方が出ているが、北側の出方は不透明だと伝えています。

一方、日本は、自民党の中川昭一政調会長は4月22日、東京都内で開かれた拉致問題に関する集会で「北朝鮮のような国はテロ(支援)国家と指定するような法律を作りたい」と述べ、今国会中に北朝鮮人権法の改正を目指す考えを示した。同党幹部によると、具体的な制裁内容は盛り込まず「宣言的、象徴的な改正になる」見通し。

拉致問題の解決に向け政府と国会が一体となって取り組む姿勢をアピールするのが目的だが、北朝鮮に関する6カ国協議では、米国のテロ支援国家指定解除をめぐる駆け引きが焦点の一つになっており、中川氏の提案は、これをけん制する狙いもあるようだ。(4月22日付毎日新聞ニュースの抜粋)

自民党の対北朝鮮政策は、6者協議を前進させよういう視点はほとんどありません。6者協議の成功は東アジアの平和と安定にとって不可欠な要素であることを自民党は認識すべきだと思います。

首相の言葉に真実性を持たす処置が必要/山崎孝

2007-04-22 | ご投稿
【従軍慰安婦 首相「日本に責任」 訪米控え米メディアに】(朝日新聞4月21日夕刊記事)

安倍首相は28日からの訪米を前に米メディアのインタビューに応え、従軍慰安婦問題について「大変申し訳ないと思っている」と謝罪したうえで、「日本の責任」に言及した。また、近く開始する集団的自衛権の研究は、日米同盟強化による中国の軍事費増大への対応が念頭にあることを明らかにした。

従軍慰安婦問題をめぐっては、首相が先月初め、強制連行と直接的に軍が関与する狭義の強制性」を否定したことに、米国内で反発が起きている。首相しては米メディアを通じて「謝罪と責任」を明確にすることで、米国内の反発を沈静化させたいとの狙いがあるようだ。

 首相は「当時の慰安婦の方々に人間として心から同情するし、そういう状態に置かれたことに対し、日本の首相として大変申し訳ないと思っている」と語った。さらに「20世紀は人権が世界各地で侵害された世紀だが、日本にも責任があり、例外ではない。慰安婦として彼女たちが非常に苦しい思いをしたことに対して責任を感じている」と述べた。

一方、首相は中国の軍事費増大について「日本は中国に合わせて軍事費を増やそうとは考えていない。しかし、日米同盟をより効率的に、より強化していく必要がある」と指摘。そのうえで「憲法との関係においても、そのための研究をしなければならない。集団的自衝権の行使についての研究だ」と語り、研究自体が中国を念頭に置いていることを示した。

 また、「世界に貢献するために何をするかという観点から、(憲法の)解釈を研究していきたい」と述べ、行使を禁じている政府の憲法解釈の変更も視野に入れていることを明らかにした。

 首相インタビューは17日に官邸で行われ、ウォールストリート・ジャーナル誌とニューズウイーク誌の質問に答えた。(以上)

私はブログで何度か安倍首相の言葉の矛盾を指摘してきましたが、安倍首相の新聞で報道された言葉は、真実性を持たす処置を取らない限り真実性は持ちません。対中外交政策と安全保障政策の間に一貫した論理的な思考回路が繋がっていません。

安倍首相が本当に「当時の慰安婦の方々に人間として心から同情するし、そういう状態に置かれたことに対し、日本の首相として大変申し訳ないと思っている」のであれば、具体的な行動で示さなければなりません。ご自分の「狭義の強制性はなかった」という言葉と、3月25日の下村官房副長官が民放ラジオ番組で、「従軍看護婦とか従軍記者はいたが、『従軍慰安婦』はいなかった。ただ、慰安婦がいたことは事実。親が娘を売ったということはあったと思う。だが、日本軍が関与していたわけではない」。3月27日の記者会見で「直接的な軍の関与はなかったというふうに私は認識している」と言う言葉を取り消させる処置を取らなければ、言葉に真実性は生まれません。

4月15日の朝日新聞報道は、東京裁判の検察側資料に軍の強制性を示す日本軍軍属の証言等が裁判の証拠として採用されたことが記録されていたことを伝え、新聞の投書欄にも従軍慰安婦問題に関して投稿者自身が見聞きした文章が掲載されています。また、日本の弁護士会に所属する弁護士も自らの調査を新聞に発表し、その調査で軍の関与と強制が裏付けられたことを述べています。安倍首相や下村官房副長官の主張は歴史の事実と違います。

朝日新聞の記事は、集団的自衝権行使の研究自体が中国を念頭に置いていることを示した、と伝えています。

安倍晋三首相は4月11日、来日した中国の温家宝首相と官邸で会談し、会談後に出した共同プレス発表で、「戦略的互恵関係」構築への努力を強調。「双方は歴史を直視し、未来に向かい、両国関係の美しい未来を共に切り開くことを決意した」と表明しています。これは相互の信頼を基本にしない限り成り立ち得ない外交政策の言葉です。さほど日数が経たないのに、中国への不信感を根底に置いた軍事同盟の強化を語りました。国家経営の基本のあり方を決めている最高法規の60年にわたる憲法解釈まで変えてまで、集団的自衛権行使にこだわるのは、対中外交政策の方針と全く論理的な整合性がありません。本来は一体的であるべき外交政策と安全保障政策との間の思考回路が断絶しています。「戦略的互恵関係」構築は相互の信頼をもとに、日中の間だけでなく、アジア地域の平和と安定、繁栄を築いていく戦略ですから、外交政策と安全保障政策は整合性がない限り構築は出来ません。表面はニコニコしながら裏では相手は信用できないから鋭い刀を磨こうとするようなものです。その刀は国民の多数が望まない集団的自衛権行使という刀です。しかもこの刀は日本が攻撃されたときに用いるものではなく、何度も武力まで用いて内政干渉をしてきた国家、米国を助けるためのものです。

海外で武力行使をしないとする日本の国是は、かつて外国に軍隊を派遣して植民地主義や占領政策を行い、大きな被害を与えた国を安心させてきた意味を持ってきました。この国是を棄てることは強い警戒感を呼び起こすと思います。日本が集団的自衛権行使の憲法を持つことよりも、日中の戦略的互恵関係構築と整合性の持つ、6者協議を成功させ、さらに話し合われ始めた東アジア共同体の構築を目指す方向こそ、安倍首相の述べた「世界に貢献するために何をするかという観点」だと思います。

私は深遠な哲学を持ち、一貫した論理で思考する国家の指導者をほしいと思います。

【自民・中山元文科相が暴言“「従軍慰安婦」もうかる商売”“ほとんど日本の女性” 】( 4月21日付「しんぶん赤旗」)

 自民党の中山成彬元文部科学相は二十日の衆院教育再生特別委員会で、米下院が「従軍慰安婦」問題で日本政府への謝罪要求決議案を採択しようとしている動きを強く非難し、「『美しい国』は強くなきゃいかん。間違ったことに反論していく勇気、強さが必要だ」と述べました。

 中山氏が会長を務める自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、米下院の決議案阻止のため今月下旬から訪米を予定しましたが、米国内で「従軍慰安婦」問題の批判が高まるなか、「火に油を注ぐ」として訪米延期を決めたばかり。しかし、この日の質問は中山氏の本音をあらためて示したものです。

 中山氏は「当時は公娼(こうしょう)制があり、売春が商行為として認められていた。慰安婦はほとんど日本の女性だった」などと述べ、日本軍による「従軍慰安婦」強制を否定。さらに「(慰安婦は)もうかる商売だったことも事実だ」と暴言を吐きました。(以上)

この中山成彬元文部科学相の発言を、安倍首相は自民党総裁として、国家の最高責任者として撤回させない限り、日本を代表しての安倍首相の「当時の慰安婦の方々に人間として心から同情するし、そういう状態に置かれたことに対し、日本の首相として大変申し訳ないと思っている」という言葉は、自民党の総裁としての本心、日本の首相の本心とは見なされないと思います。それぞれに言論の自由があると言っても、一般の民間人ではなく、政権与党の党員でしかも政府の要職を経験している党員の発言ですから、日本が世界に表明する言葉を否定するような言葉を首相が野放しにしていたら、日本は二枚舌の国と思われてしまいます。

憲法9条の解釈変更を企図することに関して/山崎孝

2007-04-21 | ご投稿
前日のブログで紹介したように、自民党の船田元衆院議員は、18日の参院憲法調査特別委員会で、改憲手続き法によって国会に設置が狙われている憲法審査会の役割に関して、集団的自衛権の憲法解釈の見直しが「9条に密接に関連するものとして当然(行われる)」とのべました。 公明党の赤松正雄衆院議員もこれに同調して「当然そうなる」とし、「9条をめぐる議論の中で(集団的自衛権を)どう位置付けるか、概念の整理も含めて議論するとのべました。

私はこれに対して、集団的自衛権行使の概念は明確であると述べました。内閣法制局の憲法解釈は、自衛のための必要最小限度の実力は保有し行使することは認めている。しかし、集団的自衛権というのは、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず、外国のために実力を行使するものであるから行使できない。数量的な概念(註、安倍首相の主張)として用いているわけでもしない、という意味を述べています。

この憲法解釈を憲法学者の高見勝利さんは「要するに、憲法9条のもとでは、集団的自衛権は保持しうるものではなく、したがって、その行使はカテゴリカルに排除され、禁じられているのであるからのであるから、そもそも、「必要最小限度の範囲」(註、集団的自衛権行使の範囲)における行使云々する余地など存しないというものである」と述べています。(「世界」5月号で、憲法九条の「解釈改憲と「明文改憲」」と題して高見勝利さんは詳しく論じています。内閣法制局解釈は高見勝利さんの紹介から私が要約しています)

ブログで紹介済みですが、安倍首相は2006年9月29日、国会での所信表明演説において「日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使にあたるのか、個別具体的な例に即し、よく研究してまいります」と述べました。2006年11月15日付日本経済新聞は、個別具体的な例として、安倍首相が、米国に向かうかもしれないミサイルを日本で撃ち落すことが出来ないか、海上自衛隊の艦艇と公海上で併走している米艦艇が攻撃された場合、イラク派遣の陸上自衛隊を警護している英豪軍が襲撃された場合、に集団的自衛権行使が出来ないか研究することを挙げたことを書いています。

海上自衛隊の艦艇と公海上で併走している米艦艇が攻撃された場合を考えますと、どのような目的のため、どこに向かって米艦船が航行しているかが問題です。米国はかつて他国への内政干渉をたくさんしています。

ほんの数例を挙げます。ベトナムのトンキン湾で実際は米軍が自軍を攻撃してそれを北ベトナムのせいにして北爆を開始した謀略を行いベトナム戦争を拡大(ベトナム人の民族解放運動を弾圧する南ベトナム政府を軍事支援)、しています。1983年のグレナダ侵攻、1989年パナマへの軍事介入、1998年のスーダンとアフガニスタンへの空爆、21世紀に入ってからはアフガニスタン戦争、イラク戦争を起こしています。これが「平和が維持される」ためとは絶対に言えず、これからも「イラク派遣の陸上自衛隊を警護している英豪軍が襲撃された場合」を想定していますから、国連と対立する場合の米国の有志連合に参加するようなことが、「平和が維持される」ものだとは言えません。

4月21日の「みのもんたのサタデーずばっと」で、民主党の議員が今の憲法は、国連が武力を用いて紛争を解決していこうとする傾向に対して、対応できていないと意味の発言をしていました。国連は国連憲章第42条の軍事制裁を行うような傾向ではなく、昨年のレバノン紛争は即時停戦を求め、停戦後は紛争当事者の合意に基づいて国際部隊を派遣して、万が一の場合のトラブルに備えて武器使用の基準は緩和しましたが、これは紛争当事者が任務を妨げた場合と自衛のためのみの武器使用です。軍事制裁するためのものではなく、PKOは国際部隊自体が紛争の当事者にならないことを鉄則にしています。北朝鮮のミサイル発射実験、核実験に対しては何れも軍事制裁の適用は排除しています。物事は正確に述べるべきです。国連の平和維持活動において集団的自衛権の行使が出来る憲法は必要ありません。番組は世論調査の結果が護憲より改憲の意見が上回ることを紹介していましたが、改憲の意見の多くが決して自民党の改憲の最大目的と一致していなくて、憲法に「自衛力を明記したい」気持ちが強いことが理由です。このことは内閣法制局の憲法解釈で、必要がないことを宣伝しなければならないと思います。

軍事超大国に米国にミサイルを発射するような国があるとは思えません。米国の軍事圧力に耐えかねて強迫観念に囚われた国家指導者が出るかも知れません。このような状況が起こらないよう国連は努力しなければならないし、日本は決して米国の肩を持つのではなく、国連に協力すべきです。日本が米国に向かうミサイルを迎撃する国になれば、日本が無傷でおられるというのは現実離れした考えです。自らが火の粉に飛び込むことを意味します。