いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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植木枝盛の「東洋大日本国国憲案」/山崎孝

2008-02-28 | ご投稿
映画「日本の青空」で憲法研究会が草案要綱を討議する場面で、高野岩三郎が鈴木安蔵の起草した案に意見を述べるとき、度々、自由民権運動の活動家植木枝盛の作成した憲法草案と同じ考え方だと指摘していました。

植木枝盛の「東洋大日本国国憲案」 は第1編から第18編までで、附則1条をふくみ全220条からなる膨大な憲法草案でした。その中の基本的人権や思想信条などの自由に関係した部分を紹介します。

第4編 日本国民及日本人民の自由権利

第40条  日本の政治社会にある者之を日本国人民となす。

第41条  日本の人民は自ら好んで之を脱するか及自ら諾するに非ざれば日本人たることを削かるることなし。

第42条  日本の人民は法律上に於て平等となす。

第43条  日本の人民は法律の外に於て自由権利を犯されざるべし。

第44条  日本の人民は生命を全ふし、四肢を全ふし、形体を全ふし、健康を保ち、面目を保ち、地上の物件を使用するの権を有す。

第45条  日本の人民は何等の罪ありと雖も生命を奪はれざるべし。

第46条  日本の人民は法律の外に於て何等の刑罰をも科せられざるべし。又た法律の外に於て麹治せられ、逮捕せられ、拘留せられ、禁錮せられ、喚問せらるることなし。

第47条  日本人民は一罪の為めに身体汚辱の刑を再びせらるることなし。

第48条  日本人民は拷問を加へらるることなし。

第49条  日本人民は思想の自由を有す。

第50条  日本人民は如何なる宗教を信ずるも自由なり。

第51条  日本人民は言語を述ぶるの自由権を有す。

第52条  日本人民は議論を演ぶるの自由権を有す。

第53条  日本人民は言語を筆記し、板行して之を世に公けにするの権を有す。

第54条  日本人民は自由に集会するの権を有す。

第55条  日本人民は自由に結社するの権を有す。

第56条  日本人民は自由に歩行するの権を有す。

第57条  日本人民は住居を犯されざるの権を有す。

第58条  日本人民は何くに住居するも自由とす。又た何くに旅行するも自由とす。

第59条  日本人民は何等の教授をなし、何等の学をなすも自由とす。

第60条  日本人民は如何なる産業を営むも自由とす。

第61条  日本人民は法律の正序に拠らずして室内を探検せられ、器物を開視せらるることなし。

第62条  日本人民は信書の秘密を犯されざるべし。

第63条  日本人民は日本国を辞すること自由とす。

第64条  日本人民は凡そ無法に抵抗することを得。

第65条  日本人民は諸財産を自由にするの権あり。

第66条  日本人民は何等の罪ありと雖も其私有を没収せらるることなし。

第67条  日本人民は正当の報償なくして所有を公用とせらることなし。

第68条  日本人民は其名を以て政府に上書することを得。各其身のために請願をなすの権あり。其公立会社に於ては会社の名を以て其書を呈することを得。

第69条  日本人民は諸政官に任ぜらるるの権あり。

第70条  政府国憲に違背するときは日本人民は之に従はざることを得。

第71条  政府官吏圧制を為すときは日本人民は之を排斥するを得。

      政府威力を以て擅恣暴逆を逞ふするときは、日本人民は兵器を以て之に抗することを得。



第72条  政府恣に国憲に背き、擅に人民の自由権利を残害し、建国の旨趣を妨ぐるときは、日本国民は之を覆滅して新政府を建設することを得。

第73条  日本人民は兵士の宿泊を拒絶するを得。

第74条  日本人民は法廷に喚問せらるる時に当り、詞訴の起る原由を聴くを得。 己れを訴ふる本人と対決するを得。己れを助くる証拠人及表白するの人を得るの権利あり。(以下略)

映画「日本の青空」に関して/山崎孝

2008-02-26 | ご投稿
現在、映画「日本の青空」が伊勢の進富座で上映され、私が見に行きました24日は、ほぼ満席に近い盛況でした。

映画に出版社に勤める中山沙也可が国会図書館で憲法研究会草案要綱を調べるシーがありました。国会図書館のホームページには、憲法研究会の憲法草案要綱に関する資料が掲載されています。その資料を抜粋し、かつ現行憲法に反映された条文を註に付して紹介します。註は映画のパンフレットを参考にしています。

【憲法草案要綱 憲法研究会案】1945年12月26日GHQと政府に提出

研究会のメンバー 高野岩三郎、馬場恒吾、杉森孝次郎、森戸辰男、岩淵辰雄、室伏高信、鈴木安蔵

(註、映画のシーンに鈴木安蔵が起草したものを討議して付け加えていく場面がありました。高野岩三郎は共和主義者で天皇制廃止の意見を持っていたが、他のメンバーの当時の国民意識を考慮して天皇の政治に関わらない地位として残す考えの草案要綱に同意しました。私はその当時の判断としては妥当だとは思います。しかし、高野岩三郎は天皇制を残すことで反動勢力の利用されることを懸念していました。今日の自民党の憲法論議で表出した意見を見るとこの懸念は当たっているといえます。この反動勢力の企図を押し返すためには、国民の民主主義的な意識を高めていくことが何よりも大切と考えます。)

★根本原則(統治権)

一、日本国ノ統治権ハ日本国民ヨリ発ス(註、現行憲法前文に反映)

一、天皇ハ国政ヲ親ラセス国政ノ一切ノ最高責任者ハ内閣トス(註、現行憲法第3条・第4条に反映)

一、天皇ハ国民ノ委任ニヨリ専ラ国家的儀礼ヲ司ル(註、現行憲法に第6条に反映)

一、天皇ノ即位ハ議会ノ承認ヲ経ルモノトス

一、摂政ヲ置クハ議会ノ議決ニヨル

★国民権利義務

一、国民ハ法律ノ前ニ平等ニシテ出生又ハ身分ニ基ク一切ノ差別ハ之ヲ廃止ス・一、爵位勲章其ノ他ノ栄典ハ総テ廃止ス・一、国民ノ言論学術芸術宗教ノ自由ニ妨ケル如何ナル法令ヲモ発布スルヲ得ス(註、現行憲法に第14条に反映)

一、国民ハ拷問ヲ加へラルルコトナシ(註、現行憲法に第36条に反映)

一、国民ハ国民請願国民発案及国民表決ノ権利ヲ有ス(註、現行憲法に第16条に反映)

一、国民ハ労働ノ義務ヲ有ス・一、国民ハ労働ニ従事シ其ノ労働ニ対シテ報酬ヲ受クルノ権利ヲ有ス・一、国民ハ休息ノ権利ヲ有ス国家ハ最高八時間労働ノ実施勤労者ニ対スル有給休暇制療養所社交教養機関ノ完備ヲナスヘシ(註、現行憲法に第27条に反映)

一、国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有ス・一、国民ハ老年疾病其ノ他ノ事情ニヨリ労働不能ニ陥リタル場合生活ヲ保証サル権利ヲ有ス(註、現行憲法に第25条に反映)

一、男女ハ公的並私的ニ完全ニ平等ノ権利ヲ享有ス(註、現行憲法に第24条に反映)

一、民族人種ニヨル差別ヲ禁ス

一、国民ハ民主主義並平和思想ニ基ク人格完成社会道徳確立諸民族トノ協同ニ努ムルノ義務ヲ有ス(以下略)

映画には天皇大権を温存した日本政府の憲法草案をGHQが批判する場面がありました。GHQが日本政府を批判した根拠は、日本政府がポツダム宣言を受託していることにありました。ポツダム宣言は、日本の軍国主義的要素の一掃、日本の民主化を目的としていました。

従ってこの目的を具体化したGHQの憲法草案は、GHQの押し付けではなくポツダム宣言に則った国際的要求でした。そして肝心なことは明治以降、日本の先覚者たちが追求した自由と民主の理念を具体化した憲法研究会の草案要綱が、GHQの憲法草案に取り入れられていたことだと思います。

自衛隊の「派兵恒久法」は、明らかな立法改憲/山崎孝

2008-02-25 | ご投稿
2008年2月22日発行の「映画人九条の会」事務局ニュースにとても分かり易い自衛隊海外派遣恒久法についての説明がありましたので紹介します。

【自衛隊の「派兵恒久法」は、明らかな立法改憲!】

 自民党は2月13日、「国際平和協力の一般法に関する合同部会」の初会合を開き、自衛隊の「海外派兵恒久法」の検討に着手しました。座長は山崎拓前副総裁です。

 「派兵恒久法」とは、いつでも政府の判断だけで自衛隊の海外派兵ができる法的な枠組みを作ることです。いままでは海外派兵ごとに時限立法である特措法を作り、国会の審議を経た上で自衛隊を出動させていました。しかし「恒久法」が成立すれば、政府の判断一つでいつでも自衛隊を海外へ派兵させることができるようになるのです。

 この「派兵恒久法」は、昨年の福田・小沢による「大連立」協議の中心テーマとして政治の表舞台に浮上してきました。その後民主党は、新テロ特措法案の対案として、昨年12月に「アフガン復興支援特措法案」を提出しましたが、その中には恒久法の「早期整備」が明記されており、自民党はあえてこの法案を継続審議としました。民主党は「派兵恒久法」の先導役を果たしているのです。

 そして今年1月29日衆院予算委員会で、福田首相は「ぜひ一般法(恒久法)を作りたい」と表明し、通常国会への法案提出を示唆しました。また山崎拓氏は、「新テロ特別措置法が来年1月に期限切れになる。恒久法を制定しておかないと対応できない」と強調して、今年中の法案成立を狙っています。

 自民党「合同部会」が検討の土台にするのは、自民党・防衛政策小委員会が2006年にまとめた石破試案=「国際平和協力法案」です。この石破試案では、自衛隊の海外活動は国連の要請によるだけでなく、「国連加盟国の要請」でも日本政府が必要と判断すれば可能だとしています。

 また石破試案は、武器使用基準を大幅に緩和し、「安全確保活動」(これは治安活動そのものです)や「警護活動」「抵抗の抑止」にまで活動の幅を広げて、現地での武力行使や武力弾圧を可能にする恐るべき内容になっています。「合同部会」幹部の一人も、「武器使用基準の緩和が検討の重要なテーマになる」とし、他のメンバーも「自衛隊を海外に出す以上は(武器使用基準の緩和は)当然必要だ。武器使用制限は交戦規則でもできるので、法律で厳格に制限するのは適当でない」と述べています。

 「派兵恒久法」の制定を許せば、憲法9条は実質的に破壊され、日本は本当に「戦争ができる国」になってしまうのです。

 日本の平和憲法は、戦争を放棄しています。平和憲法があるからこそ、諸外国からの信頼を得ることもできるし、平和のための運動や国際貢献もできます。いま世界では、紛争が起きても外交的・平和的に解決する流れが大勢を占めています。武力で平和は作れない、これが世界の共通の認識であり、これこそが憲法9条の輝かしい精神であり、世界で9条に対する評価が高まっている理由です。

 しかし「派兵恒久法」は、その平和憲法を真っ向から踏みにじるものです。憲法9条を立法によって破壊し、実質的に改憲し、戻れないところにまで行ってしまおうとしているのです。

 私たち九条の会の活動の中心テーマは、「戦争の放棄」を明記した憲法9条を守ることであり、9条を生かすことです。これが私たちの活動の原点です。9条を破壊する「派兵恒久法」は、絶対に成立させてはなりません。

 おりしもアメリカでは、大統領選挙の予備選挙の真っ最中です。「ブッシュのアメリカ」はもうお仕舞いです。なのに、日本はいつまでアメリカの言いなりになり、屈辱的な追従を続けるつもりなのでしょうか。

 9条を守り、生かすために全国で行動をつづけている映画人九条の会の皆さん、自民・民主両党による「派兵恒久法」の制定を何としてもくいとめましょう。そのために、それぞれの地域、職場で、「派兵恒久法」の危険性を伝え、反対する世論を大きくひろげましょう。

テロとの戦いに「加われるのは、ともに血を流す覚悟をした国だけだ」/山崎孝

2008-02-24 | ご投稿
海上自衛隊による給油活動を再開したことについて、元海上幕僚長・古庄 幸一氏が2月24日付朝日新聞で次のように語っています。

中断から4カ月足らずで「テロとの戦い」に復帰し、海上自衛隊による給油活動を再開できてよかった。1月に新たな根拠法となる補給支援特別措置法が成立した後、多くの国から歓迎の言葉が寄せられ、日本の決断は国際的にも高く評価されている。参院の与野党逆転という政治状況にもかかわらず、早期の再開にこぎつけられたのは、多くの議員が、日本が担うべき役割や国益を重く受け止めたからであろう。

私は国益とは、「情報の共有」と「危機管理」であると考える。

対テロ戦に加わる各国は米フロリダ州タンパの米中央軍司令部に連絡幹部を派遣し、活動地域の脅威情報やテロ組織の情報を交換している。加われるのは、ともに血を流す覚悟をした国だけだ。日本が中東との貿易路にあたる海域の安全情報にアクセスできることが、どれほど重要な意味を持つかは自明だろう。

昨年10月には東アフリカのソマリア沖で、日本企業が所有するケミカルタンカーが海賊に乗っ取られた。近くにいた米海軍の艦艇が後を追ってくれたが、日本が対テロ戦やイラクでの活動から脱落したら、各国は日本を仲間として遇し、積極的に危機に対処してくれるだろうか。

私は03年1月に海上幕僚長になり、最初の海外出張で給油活動に携わる海自の艦艇を訪ねた。部下の隊員たちに直接、「活動は米英の支援ではなく、日本の国益のためだ」と伝えたかったからだ。活動に反対する人は、明確な成果が出ていないというが、他国から信頼されて得られる国益こそが、最大の成果だ。

しかし、今回の給油再開を手放しで喜ぶ気にはなれない。わが国や自衛隊の実力を考えれば、各国海軍と同じように、前線でのテロ阻止活動そのものに参加すべきではないか、との思いがあるからだ。日本はすでに91年、湾岸戦争後のペルシャ湾に掃海艇を派遣し、前線での活動を経験している。集団的自衛権の問題や武器使用基準といったハードルはあるが、政治が決断すれば超えられるはずだ。

本来ならば、給油の中断をチャンスととらえ、国会でこうした議論を深めてほしいと各国の信頼高め国益に寄与願っていた。ところが、米軍に提供した給油量の取り違えやイラク戦への転用疑惑などで、審議の混乱を招いてしまった。私は承知していなかったのだが、どちらも海幕長に在任中のことであり、監督責任を感じている。

燃料の転用問題では新たに、相手国との交換公文に目的外使用を防ぐ文言を加え、給油柏手の行動予定を聞き取って記録に残すといった防止策が講じられた。互いの信頼を基礎とする外交関係では、相当に踏み込んだ対策だ。不十分との批判もあるが、それでは同盟や友好関係が成り立たなくなってしまう。補給支援持措法は来年1月に期限が切れる。昨年の混乱を繰り返すまいと、与党内では自衛隊の海外派遣を随時可能にする一般法を制定しようという機運が高まっている。

せっかく議論するのなら給油に限らず、海洋テロや海賊の阻止、大量破壊兵器の拡散防止など、多様化する活動を視野に入れ、少なくとも有事でなく平時の共同訓練や地域の安全確保に向けた活動では、他国と同じ行動が取れるように、法律や環境面の整備を進めてほしい。(聞き手・林恒樹)

古庄幸一氏は《日本企業が所有するケミカルタンカーが海賊に乗っ取られた。近くにいた米海軍の艦艇が後を追ってくれたが、日本が対テロ戦やイラクでの活動から脱落したら、各国は日本を仲間として遇し、積極的に危機に対処してくれるだろうか。》と述べていますが、海賊事件は海難事件と同じ性格を持ち、各国が救助・援助しあうのが原則です。ですから、アジア通貨危機を背景にして海賊行為が頻発した時に、日本はマラッカ海峡に面する国に性能のよい巡視艇を供与しています。

古庄幸一氏は《国益とは、「情報の共有」と「危機管理」》と述べています。しかし、新テロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油活動について、日本政府が要求した使途の検証の明文化を米政府が拒み、給油に関する取り決め文書である日米の交換公文に盛り込まれていません。米側は「作戦行動に影響を及ぼし、現場の負担になる。決して受け入れられない」という態度です、燃料の使途限定が有名無実になるとの懸念があります。一番の供与国であり、一つの艦船団がイラクやアフガンの複数の軍事作戦を行なっている米軍とは完全な形の情報の共有化は図られていません。

古庄幸一氏は《集団的自衛権の問題や武器使用基準といったハードルはあるが、政治が決断すれば超えられるはずだ。》と述べています。これは憲法という最高法規を規範にして守り国家を経営する立場を放棄してもよいとも受け取れます。

街に出るとき、実力的な部分を置いて出るわけではない/山崎孝

2008-02-23 | ご投稿
「マガジン9条」の投稿欄で知りましたが、沖縄の中学生が米兵から暴行を受けた事件に関して、保守層から自己責任を問う意見が出ているといいます。

普通の感覚から言うと、少女は8時30分の時間帯で事件に遭い、事件が始まった場所も人で賑わう普通の繁華街でありました。これでどうして自己責任を問われるのかわかりません。

先月7日にも普天間基地所属の米兵による強盗致傷事件が起きています。問題の本質は戦場とつながっている在日米軍基地の存在にあるのは明白です。米兵は軍事訓練を受けるだけでも普通の人が持つ人間性を奪われていって鬱屈したものを抱え込んでいます。これについての元海兵隊員の話を紹介します。(2月24日付「しんぶん赤旗」日曜版より)

かつて海丘ハ隊員として沖縄に駐留していたことのある、アレン・ネルソン氏が、神奈川県横浜市で開かれた集会(16日)で、「なぜ『米兵』は人を殺せる心を持つのか」について語りました。

 海兵隊に入ると、まず教えられるのは、考えるな、命令に従えということだ。18、19歳の若者に、毎日教官が「お前は何をしたいか」と聞く。

「キル(殺す)」と答える。

 「聞こえないぞ」

 「キル」

 そしてこのうえなく大きな声で「キル」と叫ぶ。これが海兵隊員になるということだ。

 私が沖縄のキャンプ・ハンセンに来たときは、昼間は演習し、夜はシャワーを浴びて街に出かける。目的は三つ。一つは酒に酔うこと。二つにケンカをすること。三つ目が女性を探すことだ。街に出るとき、実力的な部分を置いて出るわけではない。

 兵士の暴力的な事件が明らかになると、司令官はすばやく謝罪する。しかし、心の奥底では喜んでいる。戦場に行く準備ができていると判断するからだ。

新たな悲しみと怒りが湧き起こる/山崎孝

2008-02-21 | ご投稿
【清徳丸発見は衝突12分前 衝突直前まで自動操舵】(2008年2月20日の東京新聞)

千葉県・野島崎沖で起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」(艦長・船渡健1等海佐、7、750トン)と漁船「清徳丸」(7・3トン)の衝突事故で、あたごの見張り員が事故の約12分前には清徳丸に目視で気付いていたことが20日、分かった。あたごはその後も自動操舵を続け、手動切り替えは事故1分前だった。

海上幕僚監部はこれまで、見張り員が気付いたのは約2分前とし、石破茂防衛相も19日の自民党部会で同様の説明をしていたが、事実上訂正した。

清徳丸と航行していた別の漁船のレーダーが事故の約35分前にあたごの船影をとらえていたことも判明。あたご側が早い段階で漁船に気付きながら、回避のための適切な対応を取らなかった可能性が一層高まっている。

あたごの速度は当時約10ノット(時速約18キロ)で、最初に漁船に気付いた際は3・6キロ程度離れていたとみられる。記者会見した海幕の河野克俊防衛部長は説明を変えた理由を「新たな情報が加わった」と説明。2分前と12分前に漁船の灯火に気付いた見張り員が同じ人物で、記憶の状況などから、最初に見た漁船が清徳丸と判断したとしている。(共同通信配信)

今回の事故は不可抗力の事故ではありませんでした。怠慢ともいえる「あたご」対応で、二人の漁師を冷たい冬の海に行方不明にさせた事故に、新たな悲しみと共に怒りが涌いてきます。

漁船を発見してから衝突事故が起きる前までの「あたご」の対応、事故後、防衛大臣に報告するまでの91分もかかった対応、そして事故の重要な点の経緯説明の変更など自然でないものを感じます。

このような事故を起こした責任とこのような事故を二度と起こさない決意の態度表明として石破防衛大臣は辞任すべきだと思います。

この海難事故を契機に、政府の不確実なミサイル迎撃システムに大金を投じることにも国民の関心が集まることを私は願います。軍事には大金を惜しまないが、国民のライフラインにはお金をかけず、今までの税金投入も削減する。憲法を守り生かそうとしない自民党の政治の本質が現われています。

試作品段階とも言うべき迎撃ミサイルを搭載するイージス艦/山崎孝

2008-02-20 | ご投稿
【膨大経費、MDに逆風も イージス艦衝突事故】 (2008年2月19日東京新聞)

最新鋭のイージス艦が起こした漁船との衝突事故。日本に飛来するミサイルの探知・追尾機能を備え、ミサイル防衛(MD)の中核を担うはずの護衛艦が、日本の領海内で民間船を事故に巻き込む事態となった。

防衛省内では、今回の事故がMD計画に波及することへの懸念がすでに生じている。同省幹部は「足元の国民を守ることさえできずに、莫大な金を出して配備する必要があるのかと言われかねない」と話す。

「イージス」はギリシャ神話でゼウスが娘に与えた「盾」を意味する。高性能レーダーで1度に100以上の目標を追い、ミサイルや大砲など武器を自動的に選択して迎撃。データリンクシステムで米イージス艦と情報を瞬時にやりとりできることから、日米同盟の象徴とも言われてきた。(共同通信配信記事)

この事故で行方不明になっている漁師親子の安否がとても心配です。昨日のテレビで千葉県勝浦の女性たちが二人の無事の救出を祈る姿を見て、奇跡が起こることを願いました。

衝突したイージス艦「あたご」は、ハワイ沖でミサイル迎撃実験を終えて横須賀基地に戻る途中でした。ミサイル迎撃実験は成功していますがこの迎撃ミサイルは敵側の攪乱戦法には対応できない迎撃ミサイルだといわれています。このことについて「世界」3月号で田岡俊次さんは詳しく述べていますからお読みください。

少し紹介しますとイージス艦に搭載した迎撃ミサイルは《防衛省の担当幹部も「開発の通過点」と認める試作品的なもので、速度、高度が不十分なうえ、オトリ弾頭と本物の弾頭を見分ける能力がない…(以下略)》と書いています。

迎撃ミサイルの費用は、「こんごう」の場合は9発で4億5800ドル、今日の為替レートで一発当たり54億円(ミサイル本体は16億円)もし、イージス艦1隻当たり、弾道ミサイル2基ないし4基しか対応できないと言われています。イージス艦「あたご」の建造費は1400億円です。これに装備費がいります。地上迎撃システムのパトリオットは一発8億円もします。

海上型(SM3)と地上型(パトリオットPAC3)の迎撃ミサイルシステムは、1999年に弾道ミサイル防衛の日米共同研究を初めて以来、2007年度までに5638億円が投じられ、2008年度は1338億円の予算が見積もられている。現在の計画完成まで1兆円の費用が要るとされています。これで日米のミサイル防衛計画は終わらず次世代のミサイル防衛計画があります。

到達点がなく際限のないミサイル軍事対抗で膨大な国費を使うことより、6カ国協議の到達点でもある、東アジアの平和と安定に全力を挙げることの方がよほど合理的だと思います。

自衛隊海外派遣恒久法は、ねじれ国会とはならない可能性がある/山崎孝

2008-02-19 | ご投稿
【民主へ誘いかけ強める/派兵恒久法で自民】(2008年2月18日(月)「しんぶん赤旗」)

 自衛隊の海外派兵をいつでも可能にし、海外での武力行使に道を開く恒久法の検討を始めた自民党が、民主党への誘いかけを強めています。

 恒久法を検討する自民党の合同部会の初会合(十三日)後、事務局長役の中谷元・元防衛庁長官は、民主党の鉢呂吉雄・衆院テロ特委民主党筆頭理事に電話して、同党からの意見聴取を持ちかけました。

 公明党を含む与党としての考え方はおろか、自民党としての考え方も明確になる前に、民主党に協議を申し入れるというのは異例の対応です。

 これに対し鉢呂氏は十四日朝、国会内で開かれた民主党外交部門会議の席上、与党が新テロ特措法の衆院再議決を強行した総括が明確にならない限り、恒久法での話し合いには応じられないとして、協議を断ったと述べました。

 しかし、すでに自民党と民主党には大きな接点があります。昨年十一月の福田康夫首相と民主党の小沢一郎代表との大連立協議では、両氏が恒久法制定の方向で突っ込んだ話し合いをおこないました。

 民主党が臨時国会会期末に国会に提出し、恒久法の「早期整備」を明記した「アフガン復興支援特措法案」を、自民党はあえて「継続審議」としました。

 自民党の合同部会幹部は「(衆院での)予算審議のメドがついたら野党と話したい」、「継続審議となっている民主案についてもいろいろ聞いてみたい。民主党にも恒久法が必要だという人はたくさんいる」とのべ、衆院テロ特別委を舞台に恒久法論議をくり広げたい意向を示しています。

 合同部会幹部が「新テロ特措法の期限となる来年一月十七日までに何とかする」というように、自民党は秋の臨時国会中にも恒久法の成立を目指すことを狙っています。そのためにも、民主党との協議が不可欠だという認識の現れです。(以上)

かつて民主党は自衛隊イラク派遣に反対をしながら、自衛隊のイラクでの活動を含む自衛隊の海外活動を本来任務に昇格させる法案に賛成する非論理的な態度を取っています。

民主党が国会に提出した「アフガン復興支援特措法案」は、自衛隊海外派遣恒久法の成立を盛り込んでいます。アフガニスタンに自衛隊を派遣し、今までは自衛隊員の「正当防衛」に限られていた武器使用基準を「復興支援活動への抵抗抑止」まで拡大しています。

これらをみれば盛んにねじれ国会と言われていますが、自衛隊海外派遣恒久法に関してはそうならない可能性があります。

私たちは国会に提出する法律を憲法に照らして審査する内閣法制局の態度を注視し、国民には自衛隊海外派遣恒久法の性格を宣伝していく必要があります。

自衛隊恒久法 憲法を揺るがす議論だ/山崎孝

2008-02-18 | ご投稿
2月17日付北海道新聞社説を紹介します。

自衛隊をいつでも海外に送り出せる。そんな法律(恒久法)をつくろうという動きが政府・与党内で加速している。

自民党は法案を検討する合同部会を発足させた。月内には公明党も参加して与党プロジェクトチームを旗揚げし、今国会への法案提出を目指すという。

私たちは恒久法制定に反対してきた。憲法九条の規定や理念を踏み外す恐れがあるためだ。

九条は戦争や海外での武力行使を禁じている。そこから「集団的自衛権の行使は認めない」という戦争の歯止めとなる政府見解も生まれた。

恒久法には、この日本の平和主義を揺るがしかねない危うさがある。

政府・与党は、インド洋で給油活動を行うための新テロ対策特別措置法の成立に苦労した。しかも来年一月には期限切れとなり、また国会で延長論議をしなければならない。

恒久法制定を急ぐ背景には、そんな面倒は避けたいという思惑がある。国会による文民統制を軽視した発想といわざるを得ない。

自民党が恒久法のたたき台としているのは、二○○六年に党内でまとめられた「国際平和協力法案」だ。

その柱は二つある。

一つは、国連平和維持活動(PKO)協力法やイラク特措法を含む現行法で派遣の前提となっている国連決議や国際機関の要請がいらないことだ。

この条件がなくなれば、たとえば米国単独の軍事作戦を自衛隊が支援することも可能になる。派遣のハードルがぐっと低くなるのは間違いない。

もう一つは現在、正当防衛と緊急避難に限定されている武器使用基準の緩和だ。自衛隊の海外活動に治安維持任務を加え、攻撃を受けた他国軍のもとに赴いて武器で応戦する「駆けつけ警護」を容認している。

駆けつけ警護は憲法が禁じる武力行使につながり、認められないというのがこれまでの政府見解だ。武器使用基準の緩和はこうした憲法解釈の見直しをも迫るものになる。

自民党合同部会の山崎拓座長は「従来の憲法解釈の枠内で議論を進めたい」という。だが過去、なし崩しに解釈を広げてきたのは自民党だろう。

最近、聞きおけない閣僚の発言があった。ドイツで開かれた安全保障会議での高村正彦外相の演説だ。

恒久法制定を目指す。PKO派遣にも積極的に取り組む。国内論議を置き去りにしてそんなことを外国に約束した。先走りがすぎないか。

民主党は自民党の協議呼びかけを拒否している。抱きつき戦術には乗らないということらしいが、対テロ新法の対案では恒久法制定を打ち出している。民主党にも憲法を踏まえた慎重な対応を求めたい。

文部科学省の学習指導要領改定案について/山崎孝

2008-02-17 | ご投稿
文部科学省は2月15日、小中学校の学習指導要領と幼稚園教育要領の改定案を発表しました。改悪された教育基本法を冒頭に掲げ、国が決めた通りの「道徳教育」の推進を前面に出しました。算数・数学、理科を中心に、授業時間を増やし、基礎的な知識や技能を「活用する力」や「言語力」の育成を重視するとして、具体的な指導法まで細かく示しました。(しんぶん「赤旗」の情報)

この学習指導要領改定案についての対照的な談話を紹介します。(朝日新聞掲載)

◆ 「日本教育再生機構」理事長を務める八木秀次・高崎経済大教授の話 教育基本法改正で掲げた理想が骨抜きにされ、現行指導要領とほとんど変わっていない。「伝統と文化の尊重」や「我が国と郷土を愛する」ことは、主に社会科で学ぶはずだったが、小学校で増えたのは縄文時代くらい。道徳教育も「全教科で行う」と書いてあるが、具体性に乏しい。国の質を高める戦略に基づいた教育が必要だ。

教育再生会議はそのためにでき、確かな学力や規範意識を打ち出したが、メンツを守りたい文科省官僚による捲り戻しが起きた。安倍内閣があと3カ月もってくれていれば、と悔やまれる。(以上)

◆ 「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」呼びかけ人だった小森陽一東京大教授の話 注意深く読むと、改訂案は国家統制的内容であることがわかる。特に、すべての教科に張り巡らされた言語教育は、上から与えられたものだけを読み取らせ説明させるばかりで、自発的思考と表現を養う視点がない。「伝統と文化の尊重」では「伝統音楽のよさを味わう」と国家の価値判断が前提とされている。改正教育基本法に入った「公共の精神」の名の下で、子供を国家に従わせ、自らが主人公・主権者になる力はつけさせないという思想に貫かれている。大声で「愛国心」を叫ばれるより怖い。(以上)

八木秀次氏は、教育再生会議は子どもたちに規範意識を持たすために出来た意味を述べて、今回の学習指導要領改定案には物足りないと思っています。規範意識を持たすとは国家の言うことに従うという規範意識です。改定教育基本法には「愛国心条項」がありますから、将来的にはこの条項を強く反映した学習指導要領になっていくと思います。