いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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小沢発言 専門家は「憲法改正が必要になる論法」と指摘/山崎孝

2009-02-28 | ご投稿
小沢代表:対米追随脱却を強調 防衛力強化も言及(毎日新聞のHPより)

 日米首脳会談に合わせる形で、民主党の小沢一郎代表は2月25日、在日米軍削減論を重ねて示し、「対米追随脱却路線」を鮮明に打ち出した。次期衆院選後の政権交代をにらみ、「対等な日米同盟」の具体策として持論を強調したものだが、日本の防衛力強化にも言及。専門家からは「憲法改正が必要になる論法」との指摘が出たほか、野党内に困惑や警戒感が広がった。

 「グローバルな戦略を米国と話し合って役割分担し、日本に関係の深い安全保障面は日本が負担すれば、米軍の役割はそれだけ少なくなる」

 小沢氏は25日、大阪市で記者団に語った。そのうえで「米国のプレゼンスは必要だが、おおむね(米海軍横須賀基地に司令部を置く)第7艦隊の存在で十分だ。米軍が引くことによって日本の防衛に関することは日本が責任を果たせばいい」と改めて指摘した。

 小沢氏に近い民主党関係者によると、在日米軍の役割のうち「日本の防衛」に応分の負担をする分、「極東の安定」は第7艦隊で十分になるという意味だという。

 ただ、森本敏・拓殖大大学院教授(安全保障)は「在日米軍には海兵隊と戦略空軍があり、海軍である第7艦隊だけでは抑止機能の一部しか果たせない」と指摘。「出ていった米軍の肩代わりを日本がするのであれば、再軍備を意味し、憲法改正が必要となる」と語った。

 こうした中、共産党の志位和夫委員長は「軍拡の道を進むことでイコールのパートナーになるのは間違った道だ。日本が軍事的な力を強めれば強めるほど米国は利用する」とけん制。社民党の福島瑞穂党首は「『第7艦隊で十分』の後が『日本でやる』か『基地縮小』かで意味が違う。軍備拡張には反対だ」と戸惑いを見せた。

 民主党の鳩山由紀夫幹事長は東京都内で記者団に「極東において脅威が増大している状況ではないという発想ではないか。日本の軍備増強という発想ではない」と語り、小沢氏の発言への理解を求めた。ただ、その一方で「将来ミサイル防衛網などをしっかり作れば、米国に頼らなくとも専守防衛の中で日本の安全を保てる」という持論も展開した。【渡辺創、古本陽荘】

【コメント】「グローバルな戦略を米国と話し合って役割分担し、日本に関係の深い安全保障面は日本が負担すれば、米軍の役割はそれだけ少なくなる」という民主党の小沢一郎代表の発言は、20世紀後半と21世紀に入ってからの米国が行なってきた軍事的行為を基本的には肯定的に捉えたものと考えます。私は米国が起こしたベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争の例をみても、またパレスチナ人の生活を圧迫し、犠牲にしているイスラエル行為を米国が支持していることを見ても、米国の軍事力が世界平和に貢献したとはいえません。

小沢一郎代表の「将来ミサイル防衛網などをしっかり作れば、米国に頼らなくとも専守防衛の中で日本の安全を保てる」という発言も、基本的には軍事力によって安全保障を確保するという考えです。安全保障は軍事力によって得られないことは明らかで、また軍事を増強することは国力を疲弊させ国民生活を圧迫します。日本国憲法の精神による外交こそが考えが対立している相手を安心させ、脅威なるものを取り除き、恒久的な安全保障の確保に繋がると思います。

作家の村上春樹さんが「エルサレム賞」授賞式の記念講演の言葉、《わたしたち一人一人は卵であり、壊れやすい殻に入った独自の精神を持ち、壁に直面している。壁の名前は、制度である。制度はわたしたちを守るはずのものだが、時に自己増殖してわたしたちを殺し、わたしたちに他者を冷酷かつ効果的、組織的に殺させる。》という言葉は、安全保障を軍事力に頼ることへの警告と取れます。日本の戦前の歴史、米国の戦後の歴史、イスラエルのパレスチナ政策に当てはまります。

映画「おくりびと」 「人の生をいくつしむ心」の政治を/山崎孝

2009-02-24 | ご投稿
第81回米アカデミー賞外国語部門に「おくりびと」とアカデミー短編アニメ賞に「つみきのいえ」が受賞しました。

「おくりびと」は、遺体を清め、装束を着せ化粧を施し棺に納める「納棺師」という仕事を描いた映画だそうです。

納棺師との関連で、遺体を葬る方法の話をすると、日本では火葬し墓に納骨する、或いは遺体を墓に土葬にするのが一般的ですが、「千の風になって」という歌が流行ってからは、自然界に「散骨」する人も目立ってきました。

特異なものに沖縄県周辺で行なわれていた「風葬」は、マブイ(魂)というのは、煙のようなものと考えられ、遺体を土中に埋めない風葬は、魂を海の彼方の幸せの世界「ニライカナイ」に還す方法だとされました。

チベットの「鳥葬」は、死体をハゲワシなどの鳥類に食べさせます。鳥葬は魂の抜け出た遺体を「天へと送り届ける」ための方法として行われており、鳥に食べさせるのはその手段に過ぎないと言われています。また、多くの生命を奪うことによって生きてきた人間が、せめて死後の魂が抜け出た肉体を、他の生命のために布施しようという思想もあるともいわれています。

「風葬」や「鳥葬」も死者を敬うことでは共通しています。

「天声人語」の筆者は映画「おくりびと」を《いくつしむ所作を通して「人の尊厳」がにじみ出る》と書き、米国の映画紙が《死に対する畏敬の念を通して生をたたえる感動作》と評したことを紹介しています。

今日の日本は、人を人として扱わない企業経営、福祉の分野でのサービスが切り捨てられ「人の生をいくつしむ心」で、社会が営まれているとは言えません。日本国憲法で謳われる「人の尊厳を尊ぶ」心の政治が行われなければならない。庶民が日本に生まれ育ち生きてきて良かったと言える社会にならねばならないと思います。

イスラエルに人間の自由の理念に関する国際賞を与える資格はない/山崎孝

2009-02-20 | ご投稿
作家の村上春樹さんがイスラエルから「エルサレム賞」を贈られるニュースを読んで考えたことを朝日新聞の読者欄に投稿しました。運良く掲載されましたので、この文章をブログにも投稿します。

2009年2月20日付朝日新聞「声」欄掲載文【村上春樹講演感動して共感】

イスラエル軍のパレスチナ・カザ地区の攻撃で1300人の市民らが犠牲になり、その中に子供たちが多く含まれていた。ガザ地区の封鎖で、食糧不足や電気・水道の供給不足が起こり、国連人道問題調整事務所の報告書は「人道的尊厳の危機」と訴えていた。

イスラエルの非人道的な行為は、国際的な制裁に値すると思う。そのイスラエルが村上春樹さんに「エルサレム賞」を贈った。この賞は、社会における個人の自由の理念を表現した著作の筆者に与えられると言うが、イスラエルが罪の無い多くの人の生きる権利と自由を奪っておいて、このような賞を与える資格があるとは思えない。

私の気持が救われたのは、村上春樹氏が授賞式の記念講演で、イスラエルのガザ攻撃に言及し、私たちを守るはずの制度が組織的に人を殺すことがあると述べ、一人ひとりの力で国家や組織の暴走を防ぐよう訴えたことであった。

自民党は国民の安全の確保とか国際協力とか称して自衛軍を持とうと考えている。このことを思うと村上春樹氏の言葉は、実に教訓的である。(以上)

【参考】【エルサレム16日の共同通信配信記事】作家の村上春樹さんが2月15日行った「エルサレム賞」授賞式の記念講演の要旨は次の通り。

 一、イスラエルの(パレスチナ自治区)ガザ攻撃では多くの非武装市民を含む1000人以上が命を落とした。受賞に来ることで、圧倒的な軍事力を使う政策を支持する印象を与えかねないと思ったが、欠席して何も言わないより話すことを選んだ。

 一、わたしが小説を書くとき常に心に留めているのは、高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵のことだ。どちらが正しいか歴史が決めるにしても、わたしは常に卵の側に立つ。壁の側に立つ小説家に何の価値があるだろうか。

 一、高い壁とは戦車だったりロケット弾、白リン弾だったりする。卵は非武装の民間人で、押しつぶされ、撃たれる。

 一、さらに深い意味がある。わたしたち一人一人は卵であり、壊れやすい殻に入った独自の精神を持ち、壁に直面している。壁の名前は、制度である。制度はわたしたちを守るはずのものだが、時に自己増殖してわたしたちを殺し、わたしたちに他者を冷酷かつ効果的、組織的に殺させる。

一、 壁はあまりに高く、強大に見えてわたしたちは希望を失いがちだ。しかし、わたしたち一人一人は、制度にはない、生きた精神を持っている。制度がわたしたちを利用し、増殖するのを許してはならない。制度がわたしたちをつくったのでなく、わたしたちが制度をつくったのだ。(以上)

日米政府は沖縄の声を聞かない/山崎孝

2009-02-18 | ご投稿
2月9日の沖縄タイムス社説 [グアム移転協定]住民不在の露骨な策だ

 日米両政府は、新たに締結する在沖米海兵隊のグアム移転協定の中に「ロードマップ(行程表)の順守」を明記する方針だという。

 ロードマップとは、二〇〇六年五月、日米安全保障協議委員会で合意された在日米軍再編に関する最終報告(「再編実施のための日米のロードマップ」)のことである。

 ロードマップを「政治文書から条約と同レベルの合意に引き上げる」(外務省幹部)ことによって、ロードマップに盛り込まれた日米合意案に強い法的拘束力をもたせる、というわけだ。

 なぜ今、協定を締結するのか。なぜ、「ロードマップの順守」をあえて協定に盛り込まなければならないのか。

 次期衆院選を控え、政権交代の可能性が取り沙汰される中で、「選挙の結果にかかわらず、米軍再編は最終報告に盛り込まれた合意案通りに進める」との姿勢を明確にする狙いがあるのは明らかだろう。

 だが、米軍普天間飛行場の移設に関する日米合意案(V字形滑走路二本案)は、一見、地元の合意を得たように見えるものの、その内実は、どさくさまぎれの押しつけというほかなく、多様な見方や読み方が可能な代物だ。

 ロードマップ発表後、額賀福志郎防衛庁長官と稲嶺恵一知事(いずれも当時)は〇六年五月十一日、「在沖米軍再編に係る基本確認書」に署名した。しかし、その時点では防衛庁と県の信頼関係は失われており、確認書の解釈をめぐって、署名直後から大きな食い違いが生じた。

 「知事は政府案を容認した」と主張する防衛庁に対し、稲嶺知事は、V字形滑走路案を容認したわけではない、と言い続けた。〇六年四月に沖縄タイムス社が実施した世論調査で、県民の約七割がV字形滑走路案に反対であることも明らかになった。

 〇六年十二月に就任した仲井真弘多知事も、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部へのV字形滑走路案について「現行のままでは賛成できない」と明言し、頭越しの日米合意を批判してきた。沖合移動を求める知事の姿勢は今も変わっていない。

 丁寧な合意形成がなされないまま、強引に、上から押しつける形で地元に示されたのが、ロードマップに盛り込まれた日米合意案なのである。

 ロードマップの順守を協定に明記するということは、沖縄地元の声をローラーで敷きならすのに等しい、と言わざるを得ない。

 日米合意案をまとめた守屋武昌元防衛事務次官は「沖縄の食い逃げは許さない」というのが口癖だった。県政不信の土壌の上に築かれたのが現行案だ。

 不信の土壌の上に、「アメとムチ」の交付金をつくり、さらにロードマップの順守を衆院選前に協定化する―それが「沖縄の負担軽減」のための政策といえるのだろうか。

 普天間問題のそもそもの出発点は普天間飛行場の危険性除去である。その具体策も示さないまま、ロードマップ順守の協定を「駆け込み締結」するのは納得できない。

【コメント】中曽根弘文外相とクリントン米国務長官は2月17日、会談後に、沖縄米海兵隊のグアム移転に関する協定に署名しました。この協定について沖縄タイムスの社説は《不信の土壌の上に、「アメとムチ」の交付金をつくり、さらにロードマップの順守を衆院選前に協定化する―それが「沖縄の負担軽減」のための政策といえるのだろうか》と述べています。

このグアム移転に関わる日本側の費用負担で2009年度政府予算に、346億円負担するといわれるうちの202億円が計上されています。しかも沖縄から移転する海兵隊とは無関係なグアムの海軍や空軍の施設基盤整備の費用まで含まれています。以前にも紹介していますが、沖縄からグアムに移転する海兵隊員の生活などのインフラ整備にも日本が負担することになっています。

憲法で定められた日本国民の生存権を守ろうとしない政府が、他国の軍隊の生活環境や軍事施設を整備する必然性はどこにあるのかと問い質さなければと思います。

小泉元首相のふたたびの脚光浴びに私はあきれた/山崎孝

2009-02-14 | ご投稿
【小泉元首相:厳しく政権批判 郵政見直し「あきれた」】(毎日新聞HPより)

自民党の小泉純一郎元首相は12日、党本部で開かれた「郵政民営化を堅持し推進する集い」であいさつし、民営化を巡る麻生太郎首相の一連の発言について「怒るというよりも、笑っちゃうぐらい、ただただあきれている」と厳しく批判した。郵政民営化見直しの動きに対し、小泉氏が公の場で反論するのは初めて。首相は構造改革路線の転換を鮮明にしているが、小泉氏の「反麻生発言」を機に、党内の改革推進派の反発が一層高まり、政権内の亀裂がさらに広がりそうだ。

 会合には政権批判を強める中川秀直元幹事長や塩崎恭久元官房長官ら18人が出席した。(中略)

 小泉氏は総額2兆円規模の定額給付金の財源を確保する08年度第2次補正予算関連法案についても「本当に(衆院の)3分の2を使ってでも成立させなければならない法案だとは思っていない」と指摘。法案が参院で否決された場合の衆院再可決に疑問を呈した。その上で「参院の意見と調整して、妥当な結論を出してほしい」と見直しを求めた。(後略)

【コメント】小泉元首相が民営化を巡る麻生首相の一連の発言について「怒るというよりも、笑っちゃうぐらい、ただただあきれている」と批判しましたが、国会では郵政民営化見直し法案は、昨年12月に参院を通過し(民主党、日本共産党、国民新党、社民党が賛成)継続審議となっていました。11日の衆院本会議で採決され自民・公明両党の反対多数で否決されています。これを見れば郵政民営化成立当時に関する麻生氏の発言を除外すれば、それほど小泉氏が「怒るというよりも、笑っちゃうぐらい」というような政治的なピントのはずれた問題ではありません。

 郵政民営化見直し法案採決に先立って、日本共産党の塩川てつや議員が賛成討論に立ち、「郵政民営化から一年を経過して、政府・与党が主張してきた民営化のメリットなるものは、根底から破たんしている」とのべ、国民へのサービス後退や、郵政労働者の労働条件悪化などを告発しました。

 また、安心・安全という郵便局の信用のもと、「官から民へ資金を流す」の看板で、リスクの高い金融商品を売りさばくのは、「国家的詐欺といわれても仕方がない」と強調。郵政民営化を要求した「アメリカ金融業界が、日本と世界に押し付けてきた『金融の規制緩和』が何をもたらしたかは今や明白」「小泉内閣のすすめた郵政民営化に未来はない。根本から見直すべきだ」と主張しました。

 その上で、全国の郵便局ネットワーク、金融サービスの全国一律サービスの維持など、公益優先の経営への見直しには、国が日本郵政の株式を100%保有し続けることが不可欠の条件だと指摘し、「国民の財産である郵政の本来あるべき姿について、国民的合意をつくるべきとき」「私たちはそのために力を尽くす」と表明しています。

2月12日の小泉氏の発言をテレビ各局はニュースで朝から晩まで、そして翌日まで取り上げて放送しました。そのニュースには、今日の非正規雇用労働者の生存権を脅かしている状況と絡めて小泉氏への批判はほとんどありませんでした。これに対して私は腹が立ちました。

小泉氏に当時の麻生氏の郵政民営化法案審議に関する発言を批判する資格はありません。《08年度第2次補正予算関連法案についても「本当に(衆院の)3分の2を使ってでも成立させなければならない法案だとは思っていない」》という発言は、定額給付金がそれほど重要な法案という認識がなければ審議をしていた当時の衆議院で発言すべき筋合いの発言です。参議院で反対され否決されることは判っていました。

それにイラク戦争は誤りという世界の評価が定まっている状況になっても、小泉元首相はイラク戦争に賛成し加担したことについて、ひとことの反省の弁を語っていません。選挙民も劇場型政治に踊り、衆議院の議席を与党が3分の2まで与えたことをしっかりと反省しなければと思います。

9条が危ない政治状況になれば軸足を研究から運動の方に移す/山崎孝

2009-02-07 | ご投稿
2月6日に、ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英・京都産業大学教授は、母校の名古屋市立向陽高校で講演をしました。その中で「学問は、より多くの自由を獲得するための作業だ」、勉強は本来は知ることで楽しいものであらねばならないという趣旨のことを述べました。

益川敏英教授は「『九条の会』のアピールを広げる科学者・研究者の会」の呼びかけ人になっています。1月31日の朝日新聞の記事で「9条が危ない政治状況になれば軸足を研究から運動の方に移す」と述べたことを紹介します。朝日新聞の武田肇さんがインタビューをしています。

見出しは「平和の心 常に/戦争体験は人生の一部/改憲の動き放置できぬ」

――受賞講演では「自国が引き起こした無謀で悲惨な戦争」という表現で太平洋戦争に言及した。1940年生まれ。父は当時家具職人。5歳のとき破る。

益川教授 家財道具を積んだリヤカーに乗せられ、おやじやお袋と逃げまどう。そんな場を断片的に覚えている。焼弾は不発で、近所でうちだが焼けなかった。発火してれば死んでいたか、大やけを負っていたと恐怖がわい」。こんな経験は子や孫に絶対させたくない。戦争体験はぼくの人生の一部であり、講演では自然と言葉が出た。

――敗戦翌年に小学校入学。校舎は旧日本軍の兵舎跡。銭湯の行き帰り、父から天体や電気の話を聞かされ、理科や数学が得意と思い込んだ。

 小学校3年生のとき、大好きだった担任の先生が突然いなくなった。レッドパージ(共産党貞やその支持者の職場からの追放)だと後で聞いた。戦前に植民地下の朝鮮で豊かな暮らしをしていた祖父母のことを、妹がうれしそうに母にたずねるのを見て「そんなの侵略じゃないか」と怒鳴ったことがあったらしい。高校生のとき。戦争につながるもので利益を得るのは許せ

ないと思っていた。

――58年春、名古屋大理学部に入学。日本初のノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士の弟子の

坂田昌一氏が教授を務める素粒子論教室で学んだ。

 家業の砂糖商を継ぐことを願っていた父に、1回だけの条件で受験を許してもらった。その坂田先生は「素粒子論の研究も平和運動も同じレベルで大事だ」と語り、反核平和運動に熱心に取り組んでいた。科学そのものは中立でも、物理学の支えなしに核兵器開発ができないように、政治が悪ければ研究成果は人々を殺傷することに利用される。「科学的な成果は平和に貢献しなければならず、原水爆はあるベきでない」と熱っぼく語られた。私たち学生も「そうだそぅだ」ということで全国の科学者に反核を訴える声明文や手紙を出すお手伝いをした。

――67年、名古屋大理学部助手に。大学職員の妻明子さんと結婚した。学生運動全盛の時代。べトナム反戦デモに参加したり、市民集会に講師として派遣されたりした。

 とにかく戦争で殺されるのも殺す側になるのも嫌だという思いだった。ぼくのやるべき仕事は物理学や素粒子論の発展で、平和運動の先頭に立って旗振りをすることじゃないと。でも研究者であると同時に一市民であり、運動の末席に身を置きたいと考えてい

た。受賞対象の研究「CP対称性の破れ」を手がけていたときは京都大の職員組合書記長として非常勤職員の解雇撤回に取り組んでいた。

――作家大江健三郎さんらが設立した「九条の会」に賛同して、05年3月、「『九条の会』のアピールを広げる科学者・研究者の会」が発足する

と呼びかけ人になった。

 日本を「戦争のできる国」に戻したい人たちが改憲の動きを強めているのに、ほっとけない。自衛隊がイラクヘ派遣されたが、海外協力は自衛隊でなくてもできる。まだおしりに火がついている状態とは思わないが、本当に9条が危ない政治状況になれば軸足を研究から運動の方に移す。

――ノーベル賞授賞式から約一カ月後、黒人初のオバマ大統領が誕生した。

 ぼくは物理屋でいるときは悲観論者だが、人間の歴史にっいては楽観的。人間はとんでもない過ちを犯すが、最後は理性的で100年単位で見れば進歩してきたと信じている。その原動力は、いま起きている不都合なこと、悪いことをみんなで認識しあうことだ。いまの米国がそう。黒人差別が当然とされてきた国で、黒人のオバマ大統領が誕生するなんて誰が信じただろう。能天気だと言われるかもしれないが、戦争だってあと200年くらいでなくせる。

【沢田昭二の話】 科学者の思い代弁 名古屋大で益川教授の論文を審査し、広島での被爆体験もある沢田昭一・名古屋大名誉教授の話当時の研究室では社会や政治の問題を自由に語り合った。益川さんには、アインシュタインや湯川博士が核兵器廃絶を訴えて「ラッセル・アインシュタイン宣言」(55年)を発表したように、物理学者には成果が正しく利用されるようにする社会的責任がある、という意識が強い。益川さんの受賞は科学者の平和への思いが伝わるいい機会となるだろう。

一時の便宜のために理想を歪めるな/山崎孝

2009-02-05 | ご投稿
オバマ大統領は大統領就任演説で次のように述べていることを知りました。

《国防において、我々は「安全保障のためには理想を捨てなくてはならない時もある」という二者択一の考えを拒否する。建国の父たちは、我々の想像を絶するような危機を乗り越えた末に、法の支配と人権を保障する憲章を起草した。そしてその憲章(に書かれた理想)は、何世代にも渡る人々が血を流す中で拡大してきた。これらの理想は今も世界を照らしており、我々が一時の便宜のために手放してはならないものである》(古山葉子訳/マガジン9条のHPより)。

このような言葉を述べるから、オバマ大統領は世界の人々から熱い視線を浴びるのだと思います。多くの世界の人々は、人の命を尊び、人の命を奪う軍事に依拠しない平和こそ大切で、追求すべきだと考えていると思います。

オバマ大統領は大統領就任演説の法の支配と人権を保障する憲章は《何世代にも渡る人々が血を流す中で拡大してきた》の言葉は、日本の明治時代から自由民権運動を行い、戦争の時代にも戦争に反対し拷問を受けて獄死した人がいる。戦争により数多の命が奪われました。そしてこの戦争の深い反省の上に立って日本人の多くは現行憲法の誕生を歓迎しました。日本国憲法を生み出した歴史にも通じます。

そして《我々は「安全保障のためには理想を捨てなくてはならない時もある」という二者択一の考えを拒否する》提示は、現在の日本にとても大切です。

本来は警察活動なのに海上保安庁を使わず、ソマリアの海賊対策にかこつけて、軍事組織の自衛隊の派遣を行ない、武器使用基準の変更が企図されて、憲法の理念を歪めようとします。

日本国憲法の《理想は今も世界を照らしており、我々が一時の便宜のために手放してはならないもの》なのです。

平和問題と男女共同参画の講演を聴いてのつぶやき/山崎孝

2009-02-02 | ご投稿
【憲法守り貧困根絶へ 女性の憲法年連絡会 新春のつどい】(しんぶん赤旗のHPより)

 幅広い女性団体や個人がつくる女性の憲法年連絡会は1月30日夜、東京都千代田区内で「2009年いきいき新春のつどい」を開き、50人が参加しました。

 会を代表して堀江ゆり婦団連会長が主催者あいさつしました。「今年は女性差別撤廃条約の国連採択三十年の年。日本の女性の権利を拡充する年にしていくために、私たちが日本国憲法の価値にさらにめざめ、運動の力にしていきましょう」とのべました。

 田中隆弁護士が、戦争違法化の世界史的流れからうまれた日本国憲法について講演。海外派兵をめぐる攻防、格差社会・貧困を克服するたたかいに日本国憲法を生かしていくことをよびかけました。

 参加者からは、九条の会を広げるとりくみを地域や職場ですすめる決意が発言されました。(以上)

【コメント】私は1月に志摩市主催で、男女の共同参画を進める講演会に参加しました。中山千夏さんがお話をしました。

中山千夏さんは、子役からの経験で劇場を中心とする芸能社会は男女や学歴に関係なく、才能のある人が尊重された。テレビの時代を迎えてテレビに出るようになり、そこで経験したことに番組の制作の主導権を握るのは高学歴の男性で、その中に学歴を自慢する人がいるのを経験して違和感を持った。そのような時にウーマンリブ運動が日本に及び、それに参加して女性の歴史を勉強した。そして以下のような歴史の話をしました。

中山千夏さんは、オバマ大統領誕生との関連で、ローマの時代は市民には市民権を与えられていたが、奴隷制度があった。米国は南北戦争後、奴隷制度を打破したが黒人差別を残していた。ベトナム戦争反対運動と公民権運動が連動して、米国社会は黒人差別をなくしていく方向に転換していった。そして黒人の大統領を誕生させる社会になった。

日本では戦前に普通選挙権が与えられたが、男性のみの権利であった。現在の憲法で初めて女性が選挙権を持てるようになった。

歴史を見ると、男性が優れた業績を残しているのは、女性が学ぶ機会を男性のように与えられていなかったからだと話し、男女の共同参画にはこのような歴史を知ることも大切だと話されました。

中山千夏さんは、男女の共同参画には男性は家事に参加して、食事の作り方を学ばないと妻を亡くした場合に偏った食事で健康を害すると話しました。中山千夏さんは、女性は子供生み育てることから、生理的に戦争に反対する気持を持っていると話しました。

だけど現在の日本は、自由主義史観の立場で、先頭を切って靖国神社を描いた映画の上映を妨害した女性政治家がいます。沖縄住民の集団自決死を「清い死」と主張、大江健三郎さんと岩波書店に対して名誉毀損と出版差し止めの訴訟に加担する女性作家がいます。憲法を変えて軍事裁判所を設けよと主張する女性政治家がいます。これはどうゆうことなのか私にはわかりません。

女子の教育に関連した記事を紹介します。2月2日、朝日新聞記者のインタビューで奈良女子大の学長・久米健次さんは、次のように述べています。

――大学院生の1割以上が留学生ですね。

 「奈良はシルクロードの東端で、アジアからの留学生が多い。男女同権が完全に進んでいない国・地域も多いので、女子大ということで選びやすい面もある。そうした受け皿にもなれればいい」

 「また、男女差別の激しかったタリバーン支配から脱したアフガニスタンの復興のため、国費留学生を積礎的に受け入れています。女性教員研修も奈良女子、お茶の水、津田塾、日本女子、東京女子の5大学の連携事業として02年から始めました」

 ――その5大学では唯一の男性学長ですね。

 「『男女共同参画の最終的姿とは』とか『専業主婦をどう考えるか』などの問いは男だとなかなか口にしにくい。私個人としては、いろんな意味で多様性が尊重される社会がよいと考えている。同じように、女子大の存在意義についても考え続けています。女子大があるのは世界でも数カ国。普遍的人権観からすれば、女子大は過渡的な措置で、いずれ役割を終える。一方、男女の性差こそ普遍的とすれば、いつまでも存在し得る。逃げているようですが、どちらにも割り切れないものを感じる。それは、私が男の女子大学長だからでしょうか」(以上)

日本の政治家の中には、軍事的な国際貢献をしないと日本は列強国から見下されるというコンプレックス見たいなものを持っているように見受けられます。

日本は、昔は中国の隋や唐の時代に、幕末、明治維新以降は西洋に学びました。そして現在は学問の分野でアジアの留学生を受け入れる力を持っています。アフガニスタンからの留学生を受け入れています。このように教育の分野でも、アジアの国の未来を担う女性の人材養成に日本は国際協力をしています。

1月23日、中曽根弘文外相とクリントン国務長官は電話で会談し、在日米軍再編の着実な実施や日米同盟を一層強化していくことなどを確認しました。

しかし、一方では、1月27日、マレン米統合参謀本部議長はアフガニスタンの安定化のためには「軍事力だけでは限界があり、それを認識する必要がある」と述べ、アフガニスタンは医療、経済、教育の支援が不足しており、日本に対しても、民生分野での貢献に期待を示しています。1月28日にはライス米国連大使は軍事面だけでなく、アフガニスタンの経済・社会開発にも力を入れる方針を示しました。

このようにブッシュ政権と比較すると一定のソフトな変化が生まれています。この変化を捉えて、日本は日本国憲法の理念に基づいた主体性を確立すれば、国際協調を重視すると主張するオバマ政権は、ブッシュ政権よりは平和主義の外交を展開できる可能性を秘めていると思います。

自然との共生を図る理念は人と人とが共に生きる理念と結びつく/山崎孝

2009-02-01 | ご投稿
1月31日に志摩市阿児町鵜方で開かれた「里海シンポジュームin志摩」という英虞湾の環境を良くする運動をすすめる催し物を見学しました。英虞湾は、リアス式海岸で湾内の海水と外洋との海水の循環が弱く、その上に沿岸部の多くが埋め立てられてしまったので、干潟に棲む生物やアマモなどが減少して海水を浄化する役割が低下する。真珠養殖のよる海水の汚れが加わり、海底に富栄養素が大量に蓄積され、酸素不足が起きて生物の棲息にダメージを与えていると言われています。

「里海」という考え方は、里山のように人間の手を適当に加えて、海の生物が使う資源と人間が戴く資源の調和を図り、再生循環型の環境・持続可能な人間社会にすることだとされています。

基調報告では、これから向かうべき人類の方向として、自然資源を豊かに回復すること、エネルギー規模を引き下げることが、社会崩壊を避け、「持続可能な社会」に導くと報告されました。

現在の「エネルギー規模を引き下げる」という言うことでは、世界的な大不況による生産活動の大きな低下は、地球環境にとってはプラスに働いていると思います。しかし、人間社会は失業によって生きる糧を失い、ささやかな住処を失い、食べることさえ困難な状況になった人が大量に生まれています。

これを考えると生産活動が低下しても、すべての人が、そこそこに生きていかれる調和の取れた社会の仕組みであらねばならないと思います。剰余価値の公平な分配をはかる社会の構築やセーフティサービスの行き届いた社会の構築だと思います。

基調報告で説明された「生物多様性条約」は、①生物の多様性の保全、②その構成要素の持続的な利用、③その利用から生まれる利益の公正な均衡のとれた分配の環境保護条約であると同時に経済条約、南北格差の是正の条約とされています。

これらの理念は、日本国憲法の前文に謳われている理念や生存権を守る理念と一致していると思います。自然と人間の営みの調和を図り、自然との共生を図る理念は、人間社会の調和を図り、人と人とが共に生きる理念とは無縁ではないと考えます。