いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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教科書書き換えに抗議する沖縄の動き/山崎孝

2007-05-31 | ご投稿
【検定前・後の教科書比較/「集団自決」修正】(5月29日付沖縄タイムスより)

文部科学省の教科書検定で、高校歴史教科書から沖縄戦「集団自決」記述に関する日本軍の関与が削除・修正された問題で、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(共同代表・高嶋伸欣琉大教授ら)が、「見本本」や「白表紙本」などを集めて独自の教科書展示会を開く準備を進めている。検定本関係の展示会が開かれるのは県内で初めてという。

六月九日に那覇市で開かれる「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!沖縄県民大会」前の開催を目指している。場所は未定。

展示会は、仲井真弘多知事が削除・修正に「疑義」を示し、県内の市町村議会で検定意見撤回を求める意見書の採択が相次ぐ中、県民世論を高め、修正前の内容に書き換えさせる運動につなげるのが狙い。

「すすめる会」事務局長の山口剛史琉大准教授は「検定の問題点が広く分かるようにしたい」と展示会の意義を話す。

「白表紙本」は教科書案と呼ばれ、教科書会社が文科省の検定を受けるために作成する。「見本本」は検定に合格したもので、各学校は「見本本」の中から使用する教科書を採択する。今回、同省の修正意見によって日本軍の関与の表現が削除・修正された内容が記載されている。通常「見本本」はそのまま「供給本」となって印刷される。

「すすめる会」は検定意見を受けた五社、七冊のすべての「見本本」と一部の「白表紙本」、同省の修正表などを展示する予定。

「すすめる会」は今年四月、毎年全国数カ所で開催されている検定資料の公開を沖縄でも実施するよう同省に求めたが実現しなかったため、独自に「見本本」などを集め展示することにした。

山口事務局長は「記述部分をパネルにして展示したい。希望があれば意見書を採択した議会のある自治体庁舎などでの出前展示も考えたい」と話している。(以上)

【撤回意見書 相次ぐ/集団自決で県内議会】(5月29日付沖縄タイムスより)

文部科学省の検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除された問題について、検定意見の撤回を求める意見書を可決する動きが県内の市町村議会で広がっている。

十四日の豊見城市を皮切りに二十八日までに那覇市、浦添市、糸満市、沖縄市、うるま市、北谷町、与那原町、南風原町、恩納村、渡名喜村の十一市町村議会が意見書を可決した。

また、座間味村が二十九日、久米島町が六月四日、中城村が五日、臨時議会を開き、意見書案を採決する。

今帰仁村も五月二十九日に議会運営委を開き、それを踏まえ同日にも臨時会を開く方針だという。

このほか、名護市や南城市など十六市町村議会が臨時会や六月定例会での意見書の提案が決まっていたり、提案の方向で議論が進んでいる。

【渡名喜議会も意見書】教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与した記述が高校歴史教科書から削除された問題で、渡名喜村議会(上原睦夫議長)は二十八日、臨時会を開き、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。あて先は首相と文科相。

同議会は「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による命令、強制、誘導なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」と指摘。「この事実がゆがめられることは悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられてきた県民にとって到底容認できない」と批判した。その上で「悲惨な戦争が再び起こることがないよう、検定意見が速やかに撤回されるよう、強く要請する」と結んでいる。(以上)

本土ではあまり報道されていない、沖縄戦での住民集団自決の教科書書き換えに抗議する沖縄の人たちの動きですが、沖縄タイムスは連続して報道しています。

名誉毀損などで大江健三郎氏と岩波書店を訴えた原告側は、沖縄住民の集団自決を軍の足手まといにならないための「清い死」だと主張しています。これは戦争を美化する靖国史観とつながる歴史認識です。戦争を美化することは、日本が戦争を出来るようにするための布石の一つです。

「法の支配」という基準を持って外交を進める資格を問う/山崎孝

2007-05-29 | ご投稿
【81年政府答弁を否定 解釈変更の狙い鮮明に集団的自衛権「懇談会」議事録】(5月28日付「しんぶん赤旗」より)

 政府はこのほど、集団的自衛権の行使の研究を目的とする安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)の第一回会合(十八日)の議事録を公表しました(発言者の氏名は未公表)。首相主催の懇談会でありながら、集団的自衛権の政府解釈を擁護する発言は「なかった」(柳井座長)という異常ぶりです。(竹下岳)

 安倍首相は懇談会の目的について「実効的な安全保障体制を構築する」と述べるにとどまりましたが、出席者からは狙いを端的に示す発言がありました。

 「日本の安全保障の法的基盤が拠って立つものは、憲法と個別の法律の間の解釈だ。その解釈の中で一番重要なのは昭和五十六年(一九八一年)の集団的自衛権に関する政府解釈だ」「現在の政府解釈は問題があり、修正する必要がある」

 集団的自衛権の行使に関する政府解釈は、「自衛のための必要最小限の範囲を超え、憲法上認められない」とする八一年の政府答弁で確定しました。政府の軍事政策はこの解釈に制約され、自衛隊の海外派兵でも「武力行使はしない」ことなどが条件になっています。日米の軍事一体化を求める米国は、この政府答弁を「同盟関係の障害になっている」などと敵視しています。

明文改憲の前に 出席者の顔ぶれを見ると、改憲派ばかりであるにもかかわらず、改憲を求めた発言を封印したのも特徴です。

 「二十一世紀初頭という新しい状況下で平和と安定を得るため、憲法解釈が桎梏になるべきではない」「憲法解釈を抜本的に検討するのは歴史的に意義がある」

 明文改憲の前にまず、すぐにでも政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使に道を開こうという安倍首相の意図をくんでの発言です。

 内閣法制局は、「日本は集団的自衛権を保有している」としつつ、「行使できない以上、保有していないのと同じ」(二〇〇四年一月二十六日、衆院予算委、秋山收内閣法制局長官=当時)という立場です。これを否定する発言もありました。

 「集団的自衛権の保有の是非は憲法解釈の問題だが、この権利の保有を前提として行使するか否かは単なる政策判断だ」

 憲法解釈は一政権の都合で左右されてはならないもの。このような考えが許されれば、時々の政権の意向で何でもできることになります。

矛盾の原因は? 歴代政府は、集団的自衛権の行使は「憲法上許されない」とする一方、米軍の戦争支援や相次ぐ海外派兵など、限りなく集団的自衛権に近い政策を積み重ねてきました。懇談会では、これについても発言がありました。

 「我が国では集団的自衛権の行使を認めない立場を取ってきたため、逆に個別的自衛権の概念を不当に拡大してきた」「集団的自衛権の行使を認め、個別的自衛権を本来の枠の中に戻すべきだ」

 懇談会出席者には「個別的自衛権の概念を不当に拡大してきた」当事者である外務省・防衛庁OBが複数含まれているにもかかわらず、そのことには一切触れず、みずからがつくり出してきた矛盾を利用して、解釈改憲を極限まで推し進めようとしています。(以上)

★《「日本は集団的自衛権を保有している」としつつ、「行使できない以上、保有していないのと同じ」》と述べた(元)秋山收内閣法制局長官のインタビューが5月18日付朝日新聞に掲載されています。以下はインタビューの記事です。

――有識者懇談会の人選をどう思いますか。

非常に偏っていると思う。従来の政府解釈に批判的な立場の人ばかり。

安倍首相と異なる主張の人は見あたらない。

――なぜ政府は集団的自衛権の行使を容認していないのですか。

 政府見解では日本が自衛権を行使するには三つの要件が必要だ。①わが国への急迫不正の侵害、②他の適当な手段がない、③必要最小限度の実力行使にとどめる――の3要件だ。特に「わが国への」という点が重要で、他国が攻撃されても自衛隊が応戦できるという解釈はできない。

――かつて安倍首相の質問を受けていますね。

 首相が自民党幹事長だった04年1月の衆院予算委員会で、「集団的自衛権の行使はわが国を防衛するための必要最小限の範囲を超え、憲法上許されない」という81年の政府答弁書について「『必要最小限』というのは数量的な概念であり、行使を研究し得る可能性はあるのではないか」と聞かれた。

 内閣法制局長官だった私は誤解を解くいい機会と思った。答弁書は自衛権行使の3要件を満たすことを前提としており、それは数量的ではなく質的な概念だということを丁寧に説明した。だが、首相は当時の疑問が今も解けていないのだろう。

――与党には内閣法制局の憲法解釈は硬直的だという批判もあります。

 政策論として集団的自衛権の行使を認めるべきだ、という主張は理解できる。だが、それは法律論ではない。憲法9条は、自衛隊の行動に国際法の基準以上の厳しい制約を課している。強引に解釈を広げれば、国際法と憲法の解釈が一致し、憲法の意味がなくなる。

――政府解釈の変更はやはり無理だと。

 内閣法制局は憲法の規範的な意味を守ってきた。首相はそうした積み重ねを無視しないで欲しい。時の政府の判断で解釈を変更できるのなら、公権力を縛る憲法の意味が失われてしまう。歴代首相が集団的自衛権の行使を「真っ黒」(違憲)と言っているのを「真っ白」(合憲)にするのは至難の業だ。解釈変更をしたいのなら、憲法改正で正面から対応するのが筋だ。(聞き手鯨岡仁)(以上)

★内閣法制局の仕事(内閣法制局のホームページより抜粋)

法律案の原案作成

内閣が提出する法律案の原案の作成は、それを所管する各省庁において行われます。

各省庁は所管行政の遂行上決定された施策目標を実現するため、新たな法律の制定又は既存の法律の改正若しくは廃止の方針が決定されると、法律案の第一次案を作成します。

内閣法制局における審査 内閣が提出する法律案については、閣議に付される前にすべて内閣法制局における審査が行われます。

内閣法制局における審査は、本来、その法律案に係る主管省庁から出された内閣総理大臣あての閣議請議案の送付を受けてから開始されるものでありますが、現在、事務的には主管省庁の議がまとまった法律案の原案について、いわば予備審査の形で進める方法が採られています。

したがって、閣議請議案は、内閣法制局の予備審査を経た法律案に基づいて行われます。

 内閣法制局における審査は、主管省庁で立案した原案に対して、憲法や他の現行の法制との関係、立法内容の法的妥当性、立案の意図が、法文の上に正確に表現されているか、条文の表現及び配列等の構成は適当であるか、用字・用語について誤りはないか、というような点について、法律的、立法技術的にあらゆる角度から検討します。(以上)

内閣法制局のホームページを読めば、日本の主管省庁で立案した原案は、憲法や他の現行の法制との関係などを内閣法制局の審査が必要とするルールとなっており、その内閣法制局は憲法の規範的な意味を守ってきたと述べています。このことを無視して、首相が設けたお手盛りの私的懇談会の諮問を受けて、首相が憲法解釈を変更する権限はありません。正当性を持っていません。時の政府の判断で解釈を変更できるのなら、公権力を縛る憲法の意味が失われてしまうのです。公権力を縛るのが近代憲法のあり方です。

首相の側近の下村博文官房副長官、山谷えり子首相補佐官が加わる「価値観外交を推進する議員の会」は、相手国と共有すべき価値観の一つに「法の支配」を掲げていますが、自らが「法の支配」を破ろうとしているのです。これでは日本が「法の支配」という基準を持って外交を進める資格がありません。

頭の向き(政治)と胴体(経済)の向きが合わない/山崎孝

2007-05-28 | ご投稿
日本の経済活動の軸足が日本海を向いているのに、政権与党の政治家の頭が向いているのは太平洋の方向です。このことを指摘した文章を紹介します。

寺島実朗著(「経済人はなぜ平和に敏感にならなければならないか」より)

【「日本海物流」の重大な意味】 東アジアの台頭という歴史エネルギーを背景に、日本という国の基本的性格が急速に変わってきている。特に、この国がよって立つ経済産業の基盤が変化し、「アジアに依存して飯を食う日本」になっているという事実を確認する必要がある。

二〇〇五年の日本の貿易総額に占める米国の比重は十八%を割り込み、アジアは四七%と五割に迫ったものと見られる。こうしたことを背景に、日本国内の産業動向にも重大な変化が進行している。注目すべきは、太平洋側の港湾が地盤沈下し、日本海側の港湾物流が活況を呈していることである。

【転落した神戸、横浜】 神戸と横浜はかつて「通商国家」日本のシンボルとも言える港であった。ところが、二〇〇四年の世界港湾ランキングで、神戸はかつての四位から二九位に転落し、横浜も二八位まで順位を落とした。東海地域のモノ作り基盤を背景に健闘しているといわれる名古屋が二四位、そして東京の一七位が日本の港湾としては最上位である。

GDP(国内総生産)世界第二位の日本に、世界で妄位以内に入る港がなくなった。ちなみに、港湾ランキングの上位は、一位香港、二位シンガポール、三位中国・上海、四位中国・深川、五位韓国・釜山、六位台湾・高雄となっており、東アジアの産業構造と物流の変化が投影されている。

神戸、横浜がかくも無残に順位を落とした最大の理由は、釜山がハブ港化し、基幹航路につなぐ物流拠点としての地位を日本の港から奪っていることである。

例えば、四国の今治、松山、東北の仙台などの港湾の物流分析を見ても、従来は内航船で神戸、横浜につなぎ、基幹航路に乗せていたものが、内航船のコス高、港湾機能の非効率を理由に日本の港を避け、釜山を中継地として使う(釜山トランスシップ)傾向が顕著になっている。

急増する中国~北米大陸間の物流が、日本海を通って津軽海峡を抜けるルートを選択し始めている。そのほうが神戸、横浜を経由するより二日早いのである。それが釜山にとっての追い風となり、「日本海物流」が一段と太くなっている。

こうしただいダイナミズムに引っ張られて、日本の港湾の勢力図にも変化が生じ始めた。一九九五年から二〇〇四年までの「外貿貨物コンテナ取扱い」の物流量を見ると、日本の港湾全体で年平均四・六%の増加となる中で、日本海側の一一港(秋田、酒甲新潟、金沢、伏木、富山、敦賀、舞鶴、境港など)の増加ペースは、実に年平均一三・四%にも達している。

【「表と裏」を反転させよ】 戦後の日本人は、太平洋側を「表日本」、日本海側を「裏日本」と呼ぶような歪んだ認識を身につけてきた。それには、やむをえない事情もあった。

半世紀以上、日本にとって貿易相手の第一位は米国であり、外交とはすなわち米国との二国間同盟を意味した。太平洋の彼方の米国だけ見つめて生きるうちに、太平洋側を「表」とする感覚が見に染みついたとしても不思議ではない。しかも、冷戦時代の日本海はイデオロギー体制の違うソ連、中国、北朝鮮と日本を隔ててくれる「隔絶の海」であった。

だが、二一世紀の日本を考えるならば、この「表と裏」の感覚を反転さるぐらいの気迫で変化に立ち向かうことが必要となろう。

すでに、日本の経済産業の基般はアジアのダイナミズムによって突き上げられている。石油、天然ガスの増産をテコに、二一世紀のエネルギー大国となりつつあるロシアの動きからも目が離せない。

「日本海国土軸」という言葉があるが、太平洋側に主眼を置いた国土計画、産業立地を再考し、アジアとの相関から国土総体を戦略的に見直して、適正なインフラ投資と資源配分を行う視点が重要になるのは間違いない。(以上。2006年に書いた文章です)

今年5月に自民党の議員は「価値観外交を推進する議員の会」をつくり、「自由・民主・人権・法の支配」という価値観にそわない国として中国を名指ししています。また、「基本理念や政治哲学」から譲れない問題として靖国参拝を挙げています。これは、隣国と鋭く対立する問題に重点をおいた外交を行うことで、日本の経済産業の基盤変化「アジアに依存して飯を食う日本」になっているという事実を無視した外交です。

また、自民党の政治家たちは「新憲法制定促進委員会準備会」を結成しました。以下は「しんぶん「赤旗」より抜粋

今年五月三日には、日本会議議連のもとにつくる「新憲法制定促進委員会準備会」が「新憲法大綱案」を発表し、目指す国家像を明らかにしました。

 そこでは、日本国民が「天皇を中心として、幾多の試練を乗り越え、国を発展させてきた」と天皇中心の国家観を提示。天皇を「元首」と明記しています。

 「家族」条項を設け、「わが国古来の美風としての家族の価値」を「国家による保護・支援の対象」としています。

 「戦争放棄」と「戦力の不保持」「交戦権の否認」を定めた現行憲法の九条は全面改定。

 一方、国民に対しては「人権制約原理の明確化」を掲げ、「国防の責務」も課すとしています。

 天皇を頂点にいただき、個人の人権を制限し、家族を国の末端の基礎単位と位置づけて、戦争に国民を総動員していく――まさしく戦前・戦中の日本社会の復活を狙っているのです。(中略)

【アジアで孤立】 「戦後レジームからの脱却」というスローガンに対し、コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授は「民主主義国のリーダーが自分の国のレジーム・チェンジ(体制変革)を求める意味は理解しにくい」、「安倍首相の捨てたがっている戦後レジームの何がそんなにひどいのか、ぜひ説明してほしい」と発言。保守派の論客フランシス・フクヤマ氏も「日本が憲法九条の改正に踏み切れば、新しいナショナリズムが台頭している今の日本の状況から考えると、日本は実質的にアジア全体から孤立することになる」と警告を発しています。(以上)

「価値観外交を推進する議員の会」は、日本会議議連メンバーが中心となり発足させました。従って「価値観外交を推進する議員の会」は「自由・民主・人権」と言いながら、奇妙なことに国民に対して「人権制約原理の明確化」を考えているのです。

「アジアに依存して飯を食う日本」という経済の実態に合わない、イデオロギー外交を行えば、日本は不利益を蒙ることにならないでしょうか。

ARFについて/山崎孝

2007-05-26 | ご投稿
【北朝鮮ミサイル:6カ国協議影響なし ヒル次官補が見方(毎日新聞 2007年5月25日付より)

マニラでの東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)高級事務レベル協議に出席した6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補は25日、北朝鮮のミサイル発射について「今回は短距離ミサイルであり、これまでにも、たびたび(発射訓練を)繰り返してきた」と述べ、6カ国協議に影響はないとの見方を示した。

ヒル次官補は同夜、マニラを出発しバンコク経由でインドネシアに向かった。(以上)

NHKのニュースは、ホワイト・ハウスのスタンゼル副報道官は、「これまでも行なわれてきた訓練の一環だと思う」と述べ、問題視しない。米国務省のケーシー副報道官は「北朝鮮の軍事動向に根本的な変化があるわけではなく、ミサイル発射を凍結するという合意に反するものでもない。6カ国協議の行方に特別な影響を与えることはない」と述べ冷静な対応を強調した、と伝えています。

これらのニュースは、米国は6者協議を対話路線で問題を解決すると言う態度は確固としたものと受け取れます。

私は毎日新聞の記事を読み、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)について知識がありませんでしたので調べてみました。次の文章は、日本の外務省のホームページに掲載されているASEAN地域フォーラム(ARF)の説明です。

ASEAN地域フォーラム(ARF)の概要 平成18年8月21日

1. 目的・特色

ASEAN地域フォーラム(ARF)は、1994年より開始されたアジア太平洋地域における政治・安全保障分野を対象とする全域的な対話のフォーラムであり、安全保障問題について議論するアジア太平洋地域における唯一の政府間フォーラム。ASEANを中核としていることが特徴である。現在参加しているのは25か国+EU。

政治・安全保障問題に関する対話と協力を通じ、地域の安全保障環境を向上させることを目的とする。外交当局と国防・軍事当局の双方の代表が出席。

毎年夏に開催される閣僚会合(外相会合)を中心とする一連の会議の連続体であり事務局をもつ組織体ではない。

コンセンサスを原則とし、自由な意見交換を重視する。

1)信頼醸成の促進、2)予防外交の進展、3)紛争へのアプローチの充実、という三段階のアプローチを設定して漸進的な進展を目指している。

2. 活動の評価

これまでの会合を通じて、率直な対話を行う機会は増しており、従来は「内政干渉」として忌避される傾向にあった参加国自身を当事者とする問題(朝鮮半島情勢、ミャンマー問題等)を含めて、率直な意見交換を行う慣習が生まれつつある。また、具体的な信頼醸成措置(年次安保概観ペーパーの提出、各種会合の開催等)が実施されており、参加国間の信頼関係の醸成に大きく貢献している。

2001年の第8回閣僚会合ではARFの活動の第二段階である予防外交への取り組みの基礎となる考え方として、「予防外交の概念と原則」他2つのペーパーが採択され、2002年の第9回閣僚会合では、ARFの将来に関する9つの提言が採択された。

さらに、2004年のARFユニット(事務局的な役割を行う)設置、2005年の「ARF基金設立のための付託事項」の採択、2006年の第1回専門家・賢人会合開催など具体的な取組が増えており、現在は第一段階から第二段階の過渡期にある。

ARFはアジア太平洋地域における安全保障面での対話と協力の場として緩やかではあるが、着実に進展していると評価できる。

非伝統的な安全保障分野での協力が促進されており、特に、テロ対策に関する事務レベル会合が定期開催され、外交当局のみならず実務当局者も会合に参加するなど、テロ対策において信頼醸成のための対話を越えた「実務的」な協力が進められている。

3. 参加国・機関

 ASEAN10か国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、シンガポール、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア)、日、米、加、豪、ニュージーランド、韓、北朝鮮、中、露、パプアニューギニア、インド、モンゴル、パキスタン、東ティモール、バングラデシュの25か国及びEU。(以下略)

憲法解釈を変更してまで日本が集団的自衛権行使を可能にすることを視野に入れた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の初会合が5月18日に開かれ、その懇談会で安倍首相は、北朝鮮の核開発や弾道ミサイルの問題などをあげて、日本を取り巻く安全保障環境は格段の厳しさを増していると述べています。この安倍首相の情勢認識と、日本の外務省のアジアについての《ARFはアジア太平洋地域における安全保障面での対話と協力の場として緩やかではあるが、着実に進展していると評価できる》という情勢認識には食い違いがあります。

外務省の説明は昨年段階の評価ですが、その後に北朝鮮の核実験がありましたが、それを乗越えた6者協議の合意の成立もありますから、情勢はARFにとってもプラス方向に進んでいると思います。

ARFが《1》信頼醸成の促進、2》予防外交の進展、3》紛争へのアプローチの充実、という三段階のアプローチを設定して漸進的な進展を目指して》いますから、信頼醸成の促進させ予防外交の進展させる努力をすれば、やはりわざわざ憲法解釈まで変える必要はありません。それに本年の1月には東南アジア諸国連合と日中韓で確認された東アジア共同体の構築構想もあります。

日本周辺の軍事紛争を想定して、日米の軍事同盟を強化することより、現行憲法の精神を生かして、多国間で地域の平和と安定を図る方がより合理的で、恒久的な平和に近づけると思います。

教科書の沖縄戦集団死の書き換えを許さない/山崎孝

2007-05-25 | ご投稿
【教科書検定撤回を/大阪で/集団自決シンポ】(沖縄タイムスニュース)

沖縄戦時に慶良間諸島で起きた住民の「集団自決」への軍命の有無などをめぐる訴訟の第九回口頭弁論が5月25日に大阪地裁で開かれるのを前に、シンポジウム「沖縄戦集団死の書き換えを許さない」(主催=大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会)が二十四日夜、大阪市内で開かれた。研究者や教師、出版関係者ら約百五十人が参加。文部科学省の検定撤回や、同訴訟で旧日本軍による命令があったと主張する被告側の支援に向け、全国規模の運動を実現する重要性を確認した。

沖縄国際大の津多則光講師は文科省の教科書検定を「沖縄戦からこれまで六十数年の学問の集積をすべて否定するものだ」として、撤回のために沖縄と本土が連携するべきだと述べた。

大阪歴史教育者協議会の小牧薫委員長は、一九八二年に高校の日本史教科書で「日本軍による住民殺害」が削除された際に、次回検定から記述が復活した経緯を説明。

「当時は運動の盛り上がりがはね返して(文部省が記述を)元に戻した。検定の誤りを(教科用図書検定調査)審議会に認めさせるための運動が大事で、大阪の県人会組織にも協力をお願いしたい」と述べた。

フロアとの質疑応答では作家の目取真俊さん、沖縄国際大の安仁屋政昭名誉教授らが意見を述べた。(ニュース以上)

沖縄戦で住民の「集団自決」が何故起きたのか、その背景となる因子を大城将保さんは次のように書いています。(沖縄戦 ある母の記録より)

(前略)なぜ、同じ日本人の間にこのような(註、スパイ)疑心暗鬼が発生したのか。戦場の異常心理だけでは説明できない根深い問題がひそんでいるようである。

 第一の理由は沖縄守備軍の作戦指導にあったといってよい。牛島軍司令官の着任時の訓示にも「防諜二厳二注意スヘシ」という一条があるが、軍民混在の島しょ戦では原住民が寝返って軍の機密を敵側に通報するおそれがあるという戦訓が南方から伝えられていたし、“軍民一体”となって陣地構築にあたってきた沖縄においては老幼婦女子にいたるまで軍の機密を知りすぎている。従って、防諜対策=スパイ取締まりを厳重にすべし、というのが軍の基本方針になった。また、初めて沖縄諸島に移駐してきた将兵たちにとって、沖純の風土は異郷ともいうべき違いがあるし、意味不通の方言を使用する沖縄人にたいして根づよい差別意識があったことも否定できない。沖縄県民は「民度が低い」という蔑視があり、従って「信用できない」という敵視につながっていく。

 そこに、いよいよ米軍が上陸してきた。守備軍には住民を保護するだけのゆとりはない。

多くの住民が敵前に放置されることになった。ここで、守備軍にとってはやっかいな問題が生じた。友軍の秘密を知りすぎている一般住民が敵の手に落ちた場合、彼らの口から軍機が漏れることは明らかである。軍の論理からすれば、これはスパイ行為と同じことになる。「敵の捕虜になる者はスパイと見なして処刑する」という警告が発せられた。また、軍民混住の洞窟壕の中で幼児を泣かしただけで、「友軍陣地を敵に暴露する危険がある」として、スパイ同然に警戒された。

 では、追い詰められた避難民がスパイの汚名をまぬがれるにはどうすればよいか。「日本国民らしくいさぎよく自決せよ」というのが軍の指導方針であった。つまり、集団自決の奨励であり強要であった。この方針は、以前から住民に徹底され、「敵の捕虜になると、男は股裂きにされ、女は強姦される」と宣伝して”鬼畜米英”に対する恐怖感をあおり立てていた。実際、この宣伝のおかげで捨てなくてもいい命を捨てた者は数知れない。

 しかし、友軍の宣伝に従わなかったり、自爆に失敗して右往左往する避難民も少なくなかった。これらの人びとが戦場をさまよったあげく友軍陣地に接近してくると、敵を誘導するスパイ活動だときめつけられ、ただちに処刑が執行された。小銃で射殺したり、日本刀で斬首したり、あるいは拷問のあげく殺されたり、泣きやまない子どもたちの首を締めて殺したり、さまざまな残虐行為がまかり通った。「戦陣訓」の「生きて虜囚の辱めを受けず」といった人命軽視の軍隊思想が一般住民にもおしっけられた結末であった。(後略)

参考 大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会のホームページには、裁判に関する詳しいニュースを伝えています。

沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」についての報道/山崎孝

2007-05-24 | ご投稿
【座間味・渡嘉敷 撤回要求へ/「集団自決」軍関与削除 検定に意見書】

教科書検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する日本軍の関与が削除された問題で、座間味村議会(金城英雄議長)と渡嘉敷村議会(島村武議長)は二十二日、それぞれ全員協議会を開き、検定意見の撤回を求める意見書案を本会議に提案することを決めた。

座間味村は二十九日に臨時会で、渡嘉敷村は定例会初日の六月十四日に提案。いずれも全会一致で可決する見通し。

沖縄戦で日本軍の海上特攻艇の秘密部隊が駐屯し、米軍の最初の上陸地となった慶良間諸島の座間味村では、一九四五年三月二十六日に座間味島、慶留間島などで「集団自決」が起こり、大勢の住民が死亡。渡嘉敷村では同月二十八日、「集団自決」によって三百人以上が犠牲になったとされる。

「集団自決」をめぐっては、生き残った住民らが日本軍の軍命と誘導を証言している。

文科省は、検定で「集団自決」に対する日本軍関与を否定した理由の一つに、日本軍元戦隊長の軍命を否定する訴訟証言を挙げている。

【与那原議会も意見書/「集団自決」修正検定】

教科書検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する日本軍の関与が削除された問題で、与那原町議会(又吉忍夫議長)は二十四日午前臨時会を開き、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。あて先は内閣総理大臣、文部科学大臣、衆参両議院議長ら。

意見書では、文科省の検定姿勢変更について「沖縄戦体験者の数多くの証言による歴史的事実を否定しようとするもの」と批判。過去の教科書検定裁判の判決を引用しながら「軍による『自決』の強制は明確」と述べている。

さらに「検定結果は沖縄戦の実相をゆがめ、戦争の本質を覆い隠すもので、沖縄の未来を担う子どもはおろか、日本全国の子どもたちにこのような教科書が渡ることは到底容認できない」と抗議。その上で、検定意見の速やかな撤回と記述の復活を求めている。(以上)

以上の二つの記事は沖縄タイムス社の報道です。既にブログでお伝えしていますが、沖縄タイムス社が実施した緊急アンケートで回答した36市町村長のうち、32人(約9割)検定結果に「反対」と考えています。

次の文章は、「沖縄県史」の編集に関わった大城将保さんが1995年に出版された本に書いてある文章です。(沖縄戦 ある母の記録より)

(前略)三月二十六日、米軍上陸が始まった時、慶良間詰島は二八〇〇人以上の村民と二六〇〇人以上の兵士(朝鮮人軍夫、防衛隊を含む)が雑居した状態で敵を迎えたのでした。

 いわゆる「慶良間の集団自決」で知られる惨劇は、二十六日午前八時すぎ、米軍上陸の直後から慶留間、座間味、渡嘉敷で次つぎに発生しました。

 慶留間島では、米軍上陸の警報が伝わると、かねて打ち合わせてあった通り海上挺進隊一中隊の壕へ集合しましたが、壕は三日間の砲爆撃で破壊されて兵隊の姿も見あたりません。見渡すと島のまわりは黒蟻がたかるように水陸両用戦車や上陸用舟艇がひしめいています。もう逃げ場はありません。誰いうとなく、「敵につかまったら大変だ、もうこうなったら自決するしかない」という声があがりました。かねがね隊長からは「いざとなった時は玉砕するように」という指示がなされていたのです。しかし、慶留間では手榴弾の配給はありませんでした。命を絶つ道具としては鎌と毒薬と縄しかありません。鎌で頚動脈を切る者、木の枝に縄をかけて首をつる者、ネコイラズ(毒薬)を舐めて苦しみながら絶命する者、艦砲射撃で燃えあがった炎の中にとびこんで焼け死にする者、またたく間に島民100人のうち53人が絶命しました。それでも死ねない人たちは恐怖と絶望と無念の思いで米兵たちの捕虜になったのでした。

座間味島でも米軍上陸の直後に「集団自決」がはじまりました。あらかじめ村の職員から忠魂碑前に集合するように連絡がありましたが、激しい砲爆撃で集団行動は困難になり、各自の壕内で家族単位で決行することになりました。部隊から支給されていた手榴弾や各自のカミソリが多く使われましたが、なかには一本の縄で20人が次つぎ首を締めて自殺をとげた壕もあります。農業組合の壕では村長以下の村の職員約60人が全員「自決」して1人の生存者もありませんでした。

渡嘉敷島では上陸の翌日、山中に追いつめられて行き場をうしなった村民が、玉砕場とよばれる谷間に集結し、防衛隊が家族ごとに手榴弾を配り、村長の号令でいっせいに自爆を決行しました。しかし、手相弾は不発が多く、死に遅れた人びとは互いに刃物で刺し合ったり棍棒でなぐりあったりして、狂乱状態のうちに集団死へ突進していきました。(以下略)

集団自決の詳しい模様の《かねがね隊長からは「いざとなった時は玉砕するように」という指示がなされていたのです》、《部隊から支給されていた手榴弾》《防衛隊が家族ごとに手榴弾を配り》という1995年の記述は2007年になって、「隊長から」「部隊から」「防衛隊が」という日本軍にかかわる主語の部分が、安倍政権下の文部科学省の史実認識では事実ではないということになります。その理由は沖縄タイムスの報道のように「沖縄戦の実相をゆがめ、戦争の本質を覆い隠して」戦争が出来る国にするためです。

理念では説得できず金で人の心を操る手法/山崎孝

2007-05-23 | ご投稿
【米軍再編法が成立 協力に応じて交付金】(5月23日付中日新聞ニュース)

在日米軍再編への協力度合いに応じて地方自治体に交付金を支給することを柱とした米軍再編推進法(駐留軍等再編円滑実施特別措置法)が23日午前の参院本会議で、自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。民主、共産、社民、国民新の野党4党は「アメとムチで地方自治を破壊する悪法」と反対。

政府は同法に基づき、2006年5月に米国と合意した米軍再編最終報告の具体化に向けて調整を本格化。防衛相は自治体の再編計画の受け入れ状況などを見ながら対象自治体の選定に着手するが、強硬な手法には自治体の反発も根強く、曲折も予想される。

同法は、防衛相が関係自治体を「再編関連特定周辺市町村」に指定し(1)再編計画受け入れ(2)環境影響評価の着手(3)施設整備の着工(4)工事完了・運用開始-の4段階に分けて「再編交付金」を上積みする仕組み。特に負担が重い市町村には、公共事業での国の補助率をかさ上げする。(共同)(以上)

政府は、米軍再編推進法(駐留軍等再編円滑実施特別措置法)の持つ理念では、自治体住民を説得出来ずに、金の力で人の心を買おうとしています。国家の財政再建が問題になっていますから、何れは何らかの形で国民に負担させるはずです。

朝日新聞は、「総額で3兆円規模とされる巨額の再編経費や、日本側が負担する約60億ドルのグアム移転費用の積算根拠は不透明」と報道をしています。

外国の軍隊の移転費まで負担する国は、世界に例がないと言われています。押し付けられた憲法は変えなければならないとか、日本の伝統文化をことさらに誇るなど、国家・民族の誇りを盛んに口にする政治家たちがこの有様です。

柳井俊二前駐米大使の発言を考える/山崎孝

2007-05-22 | ご投稿
【憲法解釈変更が必要 有識者会議の柳井座長】(5月21日付中日新聞ニュース)

集団的自衛権行使に関する政府の有識者会議で座長を務める柳井俊二前駐米大使は21日夕、都内で講演し「日本が置かれた安全保障環境が大きく変わる中、60年前の状況で考えられた憲法解釈で今後も生きていけるのか」と述べ、行使を禁じた解釈見直しの必要性を強調した。

同時に「日本国民の生命、財産を守ることを基本に考えて検討すべきだ。同盟国を助けることは自分たちを助けることにもなる」と述べ、集団的自衛権行使による日米同盟強化が日本の安全につながるとの認識を重ねて示した。

また有識者会議で具体的に検討する方針の4類型のうちのミサイル防衛(MD)については「狙いが日本か米国か見分けるのは技術的に難しい。そのため日本を狙っているか分からない段階で撃ち落とす必要が出てくる」と指摘。その上で「今までの憲法解釈のままだと、せっかくのMDが使えなくなる」と述べた。

この日の講演は、特定非営利活動法人(NPO法人)の主催で行われ、米軍や自衛隊関係者らが多数出席した。(共同)(記事以上)

柳井俊二前駐米大使は「同盟国を助けることは自分たちを助けることにもなる」と述べました。この考え方を具体的な国際情勢に当てはめて見ると、イラクには米軍の撤退期限を明らかにしないマリキ首相を批判する状況があり、米国の侵略に抵抗しているイラクの反米武装勢力と戦っている米軍を自衛隊が武力で支援することが、日本を助けることにつながるという論法です。アフガニスタンで国際的には禁止しようとしている非人道的なクラスター爆弾を使用したり、一般住民を巻き添えにしてタリバン勢力と戦う米軍を自衛隊が武力で支援することが、日本を助けることにつながると言うことになります。中東にエネルギー資源を大きく依存するため、中東の平和と安定が欠かせないという理由をつけたとしても、イラク戦争自体が中東の平和と安定を大きく脅かしている状況を見れば、この理屈は通りません。

日米同盟の実態は、米軍が他国を攻撃するために在日米軍基地を利用してきたと言うのが主要な側面です。米軍が駐留するから日本は攻められなかったと主張しても、日本は他国から攻められた歴史は室町時代にあったのみです。

「日本を狙っているか分からない段階で撃ち落とす必要が出てくる」と述べましたが、これは先制攻撃に相当する主張です。私は外交の専門家であった人がこのような発言をするのに不思議な気持ちがします。外交は国同士で対立する問題が生まれた場合、交渉で双方が折り合える妥協点を見出し、戦争に至らないようにするのが一番の仕事です。それなのに軍事で解決する姿勢を露骨に見せます。本当の有識者といえるでしょうか。

北朝鮮と国交を結ぶ国は154カ国あります。それに米国が従来の軍事的威嚇、政権を崩壊まで視野に入れた強硬路線を転換して、国交正常化まで視野にいれている状況の中で、日本の政治家や有識者といわれる人が、軍事に偏る主張を述べるのは、世界を大極的に見ない視野狭窄に陥ったとしか考えられません。

朝鮮半島情勢は融和の方向を更に強める/山崎孝

2007-05-21 | ご投稿
【南北関係:定期航路に初の北朝鮮貨物船が就航】(5月21日付毎日新聞ニュース)

韓国と北朝鮮を結ぶ定期航路に北朝鮮籍の貨物船が初めて就航することになり、20日未明、北朝鮮籍の貨物船「カンソン号」(1853トン、27人乗り)が釜山港に入港した。

南北間には01年以降、釜山-羅津(北朝鮮北東部)間と、仁川-南浦(同西部)を結ぶ定期航路が開設されているが、これまで韓国籍と中国籍の貨物船で運用されてきた。今回、05年に発効した南北海運合意書に基づき、韓国統一省が北朝鮮籍の貨物船の就航を承認した。

カンソン号は釜山-羅津航路を月3回程度往復する予定。聯合ニュースによると、入港した船から船員が笑顔で手を振っていたという。

韓国海洋水産省のまとめでは、南北間の定期航路の輸送量は昨年、北朝鮮の核実験などにより政治対話が途切れたにもかかわらず前年比で約20%伸びた。また、北朝鮮産砂利の韓国への輸入が急増し、不定期航路を使った輸送量は前年比で約2.4倍の高い伸びを記録した。

朝鮮半島では17日に、軍事境界線を越える56年ぶりの南北直通列車の試運転も行われた。(ソウル共同)(以上)

憲法解釈を変更して日本が集団的自衛権行使を可能にすることを目論む「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の初会合が5月18日に開かれ、安倍首相は冒頭に、北朝鮮の核開発や弾道ミサイルの問題などをあげて、日本の安全保障環境は格段の厳しさを増していると述べています。この情勢の見方は6者協議の進展を無視した情勢の見方です。そして毎日新聞のニュースで明らかのように、朝鮮半島の動向は北朝鮮の核実験後も逆流せず平和的統一の方向に流れています。朝鮮半島に有事が起こる可能性は低下の方向に向かっています。

朝鮮半島の有事に備えて、米国がその紛争に介入しその米軍が攻撃を受けた場合に日本が、武力を用いて米軍を支援できるようにするのが、安倍首相が「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」に研究するように提示したケースの一つ「公海上で米軍艦船への攻撃に対して自衛隊が対処する」があります。

このケースは中国と台湾の軍事衝突が起きたときにも適用を想定しています。しかし、中国と台湾は経済関係を拡大して相互に利益を得ている状況です。軍事衝突を起こすような経済的な利害関係はありません。日本と中国も経済関係をみれば相互扶助の関係です。

安倍首相を支援する自民党の中堅・若手議員ら43人は、「価値観外交を推進する議員の会」を発足させて、「中国は我々に一番近くて脅威の国だ。我々が中国の一つの省になることは絶対に避けないといけない」と述べています。

安倍首相は、中国の首脳と本年は今まで2回会談して地域の平和と安定も視野に入れた「戦略的互恵関係」を築くことを確認しています。しかし、政権党の一部議員は「中国は我々に一番近くて脅威の国だ」と正反対の見解を主張をする。一見奇妙な状況を呈しています。安倍首相は、解釈改憲をしてまで日本周辺の有事を想定して集団的自衛権行使を出来るように考えていますから、本音は「価値観外交を推進する議員の会」に近いと思われます。そのことは首相の側近の下村博文官房副長官、山谷えり子首相補佐官が「価値観外交を推進する議員の会」に加わっていることで明らかです。

実態とかけ離れた軍事的脅威を煽り立てて、日米同盟を強化するための改憲を目論んでいることは確実です。

悲しい記録とさせてはいけない/山崎孝

2007-05-20 | ご投稿
【「平和憲法改定は悲しい記録に」UAE紙 社説】(5月19日付「しんぶん赤旗」ニュースより)

 【カイロ=松本眞志】アラブ首長国連邦(UAE)の英字紙ハリージ・タイムズは十七日、日本国内での最近の憲法改悪の動きについて論評し、「日本が平和憲法改定に着手するならば、明らかに、われわれが生きている時代の悲しい記録となる」と報じました。

 同紙は、「変化する世界の中の日本」と題する社説で、「第二次世界大戦は日本に荒廃をもたらしただけでなく、(日本の)軍事的冒険主義の愚かさも示した」と指摘。世界大戦の惨事の教訓をふまえてつくられた平和憲法が、日本に将来の軍事的野望を放棄して経済発展に集中するよう促したと述べました。

 同紙は、憲法改悪の動きの背景に、在日米軍とこれに対抗する中国、北朝鮮などの軍備拡大、最近の米軍によるイラク侵攻・占領があるとし、これらが日本国憲法の平和構想をはじめとする世界の平和への志向を弱め、後戻りさせようとしていると指摘しています。

 安倍首相が進める憲法改悪の動きについては、「日本が必要とあれば世界中に軍事的打撃を拡大できるようにするものだ」とし、日本の憲法が、戦争のない世界を目指す理念をもっていると評価しました。さらに、日本が軍備を保有し、世界有数の軍事予算をもっているものの、平和憲法がこれらを実際の戦争に使用されるのを防いできたと述べています。(以上)

アラブ首長国連邦(UAE)の英字紙ハリージ・タイムズの社説は、的確に現在の日本の政治状況を捉えています。日本人は、日本のためにも世界のためにも、参院選で安倍政権に打撃を与え、改憲派を動揺させる。そして、改憲が発議された場合は、国民投票で勝利して、21世紀の時代の悲しい記録ではなく、輝かしい記録にしなければと思います。