いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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物事のある一面だけを捉えて発言する首相/山崎孝

2008-11-29 | ご投稿
【首相、暴言謝罪直後 たらたら飲み食いしている人の医療費を何で私が払う】(しんぶん赤旗のHPの情報)

 「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」。麻生太郎首相が二十日の経済財政諮問会議で、医療費増大にかかわって、受診する高齢者を攻撃する発言をしていたことが、同会議の議事要旨で明らかになりました。麻生首相は二十七日、記者団に「病の床にある方の気分を害したならおわびする」と陳謝したものの、「(病気の)予防に注意する人としない人ですごい差があるというのが趣旨だ。その一部だけが(報道に)出た」などと開き直りました。

 二十六日に公開された議事要旨によると、麻生首相は「六十七、六十八歳になって同窓会に行くと、よぼよぼしている、医者にやたらにかかっている者がいる」と発言。「彼らは、学生時代はとても元気だったが、今になるとこちらの方(麻生首相)がはるかに医療費がかかってない。それは毎朝歩いたり何かしているからである。私の方が税金は払っている」とし、「何もしない人」の医療費は負担できないと語りました。

 いざというときに安心して医療が受けられるように、保険料を出して支えあっているのが医療保険制度です。麻生首相の発言は、こうした保険制度の存在意義そのものを無視する暴論です。

 麻生首相は、医師不足問題で「社会的常識がかなり欠落した人が多い」(十九日)と医師に責任をなすりつける発言をし、問題になりました。日本医師会は翌二十日に麻生首相に直接会って抗議し、麻生首相は陳謝しましたが、今回明らかになった暴言は、その陳謝から三時間半後の経財会議で飛び出たもの。まったく反省がないことを示しています。

【コメント】私は酒やタバコやお金もないので飽食もしません。しかし、加齢と共に体の衰えは確実に起きて昨年から血圧が上がり薬を飲むはめに陥っています。加齢により体が衰えるのは、人類が継続的に新しい世代を交替させ、新しい命を生み出すための摂理だと思っています。昔あったと言われる姥捨ての習慣は貧しい村が次の世代を生かすための悲しい方策だったと思います。しかし現在は、命ある限り人間を大切にするのが人間のとるべき道とされるのが世界の普遍的な理念となっています。

麻生首相の発言は物事のある一面だけを捉えて、すべてがこのようなものだと判断しています。病気になるケースは様々です。責任を負わされて働きすぎて過労死や病気になる人もいます。首相の発言はかつて言った「日本は一民族、一言語、一文化」などと総体を捉えず事実を無視した発言と共通のものです。安全保障政策も米国一辺倒では立ち行きません。

政治を行うものは、大きな視野に立ち物事の総体を捉えて適切な政策を行なわなければと思います。人間に対する優しさも必要です。

派遣切り 労働者を使い捨てにするな/山崎孝

2008-11-27 | ご投稿
(毎日新聞 2008年11月27日の社説)

 「君は明日で終わりだから」。自動車部品メーカーの工場で派遣で働いていた埼玉県の男性(38)は派遣元の営業担当者から突然そう言われた。契約はまだ1カ月残り、その後も更新されると思っていた。休まず残業もこなしてきた。「減産」を理由にメーカーとの派遣契約が中途解約されたことを、派遣元が男性に伝えていなかった。

 派遣元との交渉で残り1カ月分の金銭補償は得られそうだが、新たな働き先はまだ見つからない。男性は「派遣はいつ切っても平気な道具としか思われていない。年末年始をどうしのげばいいのか」と憤る。

 米国発の金融危機のあおりを受け、こんな光景が製造業の現場で広がっている。自動車、電機を中心に工場などで働く派遣労働者や有期雇用の期間工との契約打ち切りが一斉に進む。その数は報道されている大手企業だけでも計1万7000人以上。年末に向けてさらに増えるのは確実だ。非正規社員の「大量首切り」で景気悪化に備えようとする企業の姿が浮かぶ。

 突然切られる労働者はたまらない。派遣や期間工の多くは3カ月や6カ月の短期契約を更新しながら働いているが、更新なしの雇い止めだけでなく、一方的な中途解約も少なくない。工場近くの寮も同時に出なければならず、仕事と住居を一遍に失ってしまうケースが多い。インターネットカフェで寝泊まりしたり、そのまま路上生活に移行したりする人も出始めている。

 まさしく使い捨てだ。非正規を正社員よりも安い賃金で働かせ、巨額の収益を上げてきた製造大手が先行きに不安を抱くや、千人単位でばっさり切ることが許されるのだろうか。増益を見込んだり、多額の内部留保があったりする企業も少なくないのに、である。

 企業が正社員を経営上の理由で解雇するには、努力しても他に方法がないなど厳格な要件が必要だが、この考え方は非正規にも通じるはずだ。企業には再考を求めたい。派遣元も含め、再就職先のあっせんなどにも手を尽くすべきだ。雇用の不安定は消費低迷を招き、景気悪化に拍車をかけ、社会不安も引き起こす。企業には重い社会的責任があることを自覚してほしい。

 政府も手をこまねいている場合ではない。全国の実態を早急に調べ、問題あるケースがないか監視を強めるべきだ。就職先紹介や住宅あっせん、失業給付金支給などにも万全を尽くしてもらいたい。

 派遣では、相次ぐ規制緩和で派遣先の対象が広がり04年から製造業へも解禁されたことが今日の事態を招いたといえる。派遣は雇用の調整弁に使われるとの懸念がまさに現実になった。政府が今国会に提出した労働者派遣法改正案は、今起きている「派遣切り」問題には無力のままだ。派遣先を専門業務に限るなどの抜本改正がぜひとも必要だ。

【コメント】この社説を読めば、人間の尊厳を守ることを基本にした日本国憲法の理念に基づいて、雇用関係の法律を改正しなければならないと思います。

民族対立と「複合環境汚染」をイラクに残して米軍は去るだろう/山崎孝

2008-11-25 | ご投稿
11月16日にイラクで自爆テロが起こり、15人が死亡し20人が負傷する事件が起きていますが、イラクでのテロ事件は以前よりは減り、イラク情勢はイラク駐留を可能にする、米・イラク安全保障協定の交渉の成り行きに注目され、11月16日にイラク政府は閣議で米国が示したイラク安全保障協定を承認したと新聞は伝えています。

その内容は来年6月末までに米軍はイラクの都市部から撤退し、2011年末までに完全撤退するなどとなっています。また、米軍はイラクから他国へ攻撃できないとすることも含まれています。協定はイラクの強い要求を取り入れています。イスラムの同胞の国であるイラン攻撃に基地としてイラクが使われることを拒否しました。この点で言えば、ベトナム戦争やイラク戦争の時、日米安保が一番機能した役割、他国への攻撃基地を日本が提供する日米安保よりは遥かに良い点は持っています。

最近のイラクの実情や米軍がイラクで行なったことに関するほんの一端を報告したレポートがあります。紹介します。

◆特集/イラクからの報告/フリージャーナリスト 西谷文和さん/深刻化するテロと環境汚染(「連合通信・特信版」で憲法改悪反対共同センターのHPに掲載 2008年11月20日)

イラクからの報告/フリージャーナリスト 西谷文和さん/深刻化するテロと環境汚染

●イラク人同士の戦いへ

 10月2~20日、9度目となるイラク取材を敢行した。今回は、治安が安定しつつあるとはいえ、連日のように爆破テロが起こるバグダッドに潜入することができた。

 バグダッド空港からクルド愛国同盟(PUK)の護衛つきで、バグダッド市内へと入る。空を見れば、飛行船がぷかり。

 「あれは何?」「米軍の監視飛行船だ。毎日飛んでいるよ。ああやって上空から市民生活をモニターしているんだ」。

 4年前は、街角には米軍の戦車、上空には軍用ヘリが飛んでいた。その後、治安は極端に悪化し、武装勢力のロケット弾はヘリを撃ち落すし、道路わきに仕掛けられた路肩爆弾は戦車を吹っ飛ばす。あまりにたくさんの米軍兵士が殺されるので、今では「無人飛行船」が市内を監視しているのだ。

 バグダッドは壁だらけの「監獄都市」と化した。自動車に爆弾を積んだテロを警戒して、軍や政府関係の建物はもちろん、ホテルや企業までが、「コンクリートの壁に囲まれた要さい」になっているのだ。メーンストリートを車で走行すると、約100メートルおきに「検問」がある。検問しているのはシーア派中心のイラク国防軍。その国防軍にテロがかかる。今では米軍は基地に引っ込んでいて、戦争は「イラク人同士の戦い」に変質している。

◇日常化する爆破テロ

 チグリス川沿いのホテルにいると、「ドッカーン」という爆発音。続いてパトカーのサイレン。川の対岸で煙がもうもうとわきあがる。その日のアルジャジーラテレビによれば、爆発で27人が亡くなったという。しかし、道行くイラク人はぜんぜん驚かない。「ユージュアル(いつものことだ)」と通訳のオマル。爆発は前日も、翌日も起こった。そのなかで人々は粛々と日常生活を続けている。

●多発する子どもの障害

 もっと深刻なのは、戦争で使われた兵器などによる「複合環境汚染」だ。

 アリー君(9歳)は、生まれつき左足が変形している。足が折れ曲がり、ひざに足首が張り付いたようだ。91年の湾岸戦争、98年の「砂漠のキツネ作戦」、そして今回のイラク戦争。雨あられのように爆弾と銃弾が飛び交った。

 モハマド君(3歳)は顔が変形して鼻がねじ曲がっている。イラクでは手術不可能。薬もなければ医療器具もなく、医師もいない中で、彼は障害を抱えたまま幼年期を過ごす。 カトリーンちゃん(10歳)の左足かかとに大きな腫瘍。生まれつき下半身の感覚がなく、自力でおしっこもできない。まだオムツが欠かせない。

 劣化ウラン弾の放射線による被ばくか、それとも神経まひガスや、さまざまな爆弾に使われた重金属の影響か?いずれにせよ、日本はこんな「残酷な戦争」に、絶対協力してはならないのだ。

 にしたに・ふみかず 1960年生まれ。元大阪府吹田市役所職員。イラクやアフガニスタンで取材を続ける。イラクの子どもを救う会代表。

民族の個性を輝かすアイヌの人たち/山崎孝

2008-11-24 | ご投稿
朝日新聞11月に連載している「ニッポン人・脈・記」の「ここにアイヌ」に登場した酒井美直さんは、アイヌに対する差別により「アイヌとは良くないこと」と思っていました。しかし、少数民族であるカナダ先住民の若者が自信を持って伝統の民族舞踊を踊る姿に目を開かされます。混血の青年に、美意識や価値観は社会の多数者に支配されていると言われ、差別はあるが、それは民族の優劣で生まれるのではないと認識しました。そしてアイヌ民族としての誇りを持てるようになり、自らもアイヌの民族舞踊を踊るようになりました。

その他にも「ここにアイヌ」には、アイヌに対する偏見や差別を、祖先から伝わるアイヌの民族文化を自覚し、それをバネにして乗り越えていく人たちが登場します。

この人たちに、大正時代知里幸恵が「アイヌ神謡集」序文に、今は激しい競争場裡に敗残の醜さをさらしている私たちだが、いつかは進みゆく世と歩を並べる日も来ると期待したように、今日の日本でアイヌの個性を輝かして生きる姿を見ることが出来ます。

知里幸恵のいう「進みゆく世」とは、憲法第14条に謳われた「すべて国民は、法の下に平等であって、人権、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」の理念と解釈することが出来ます。それぞれの個性を輝かすことが尊重されなければならないと思います。

差別が起こるのは、異なるものに不寛容で同一性を求める集団主義によるものと考えます。これが国家規模で起きると排他的な民族主義となります。

知里幸恵と同じく大正時代に青春を生きた金子みすゞは、鈴と、小鳥と、それから私、みんな違って、みんないいと、違いに優劣はなく、お互いの違いを認め合う詩を作っています。

「わたしと小鳥とすずと」わたしが両手をひろげても/お空はちっともとべないが/とべる小鳥はわたしのように/地面(じべた)をはやく走れない

わたしがからだをゆすっても/きれいな音はでないけど/あの鳴るすずはわたしのように/たくさんのうたを知らないよ

すずと、小鳥と、それからわたし/みんなちがって、みんないい

知里幸恵がアイヌのユーカラを日本語に訳した「アイヌ神謡集」に、人間が鹿を捕った時に皮や頭をそのまま捨てていく、魚をとるとき腐った木で叩く、これに怒った鹿の神、魚の神は鹿や魚を山や川に出さなくなった。アイヌの国の守護神の梟が人間を諭したため、人間は魚をとるときは美しい道具でとり、鹿の皮や頭をきれいに飾り祭ったという神謡があります。

この神謡は地球環境を破壊し、様々なしっぺ返しを受けている現在の人間へ戒めとなるのではないでしょうか。

永井荷風の慧眼/山崎孝

2008-11-22 | ご投稿
NHKの教育テレビ番組で8月から9月に放送し、11月に再放送された「私のこだわり人物伝」に、永井荷風を取り上げました。その中で半藤一利氏は、1917年から書き始めた日記「断腸亭日乗」の1941年6月15日の日記を紹介しています。永井荷風は、

《日支今回の戦争は日本軍の張作需暗殺及び満洲侵略に始まる。日本軍は暴支贋懲と称して支那の領土を侵略し始めしが、長期戦争に窮し果て俄に名目を変じて聖戦と称する無意味の語を用い出したり。欧洲戦乱以後英軍振わざるに乗じ、日本政府は独伊の旗下に随従し南洋進出を企図するに至れるなり。然れどもこれは無智の軍人等及猛悪なる壮士等の企るところにして一般人民のよろこぶところに非らず。国民一般の政府の命令に服従して南京米を喰いて不正を言わざるは恐怖の結果なり。麻布聯隊反乱の状を見て恐怖せし結果なり(以下略)》

永井荷風が日記を書いていた時代は、内務省は「昭和六年九月十八日の皇軍の行動を目して自衛行動に非ずとなすもの」「日本帝国の侵略行為なりとなすもの」などの主張にも目を光らせ、「之を抑制」した(国会図書館態政資料室所蔵資料「日支事変以来ノ検閲係勤務概況」)という状況でした。

新聞が、《満州事変以降、社説が振るわないのはなぜか。時事新報の編集局長などを務めた伊藤正徳は「読者大衆の感情を察し、なるべく之を損しない範囲内」で立論する「筆法」を理由に挙げ、「大衆の欲求する方向に社説を妥協」させたと自戒を込めて述べている(『昭和九年新聞総覧』)。排外的ナショナリズムが高揚するなか、愛国心を疑われたくない、大衆に嫌われたくない、という新聞の心理》が働いていました。

そして次のような全国の新聞の状況もありました。国際連盟が《リットン報告を審議していた1932年12月、東京朝日、大阪朝日を含む全国の新聞、通信社が共同宣言を発表した。「満洲国の厳然たる存立を」危うくするような解決案は「断じて受託すべき」でないと、132社が「日本言論機関の名に於いて……明確に声明した」》(以上新聞などの情報は2007年8月に朝日新聞に連載された「新聞と戦争」より)

このような新聞などの状況にもかかわらず、永井荷風は時流に流されず確固とした「個」を確立していました。これは米国やフランスに住んでいた影響もあると思います。永井荷風は世界を良く観察しており、現在の自由主義史観のように世界に通用しない歴史観を述べる一国民族主義(井の中の蛙)の観点とは無縁でした。

改憲派には経団連も旗を振っています。その経団連前会長で現在名誉会長の奥田碩氏の次のような発言の報道がありました。

トヨタ自動車の奥田碩相談役は11月12日、首相官邸で開かれた政府の有識者会議「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で、年金記録問題などで厚労省に対する批判的な報道が相次いでいることについて、「朝から晩まで厚労省を批判している。あれだけ厚労省がたたかれるのはちょっと異常。何か報復でもしてやろうか。例えばスポンサーにならないとかね」とメディアへの不満をあらわにした。

 奥田氏は同懇談会の座長を務めているが、会合の最後になって突然「個人的な意見だが、本当に腹が立っている」と厚労省に関する報道への不満を切り出し、こうした番組などからのスポンサー離れが「現実に起こっている」と述べた。(以下略)

以上を考えれば国のあり方の基本を決める改憲にマスコミが批判的な立場を取れば、経団連が動き、新聞・テレビにスポンサー離れが起こりかねず、圧力に強いとは言えず、自主規制の得意なマスコミは、改憲に批判的な論調を控えるとか改憲に批判的なコメンテーターを出演させなくなる恐れがあります。

私たちはこのようなことも予想して国民投票に備えて、永井荷風のようにマスコミの日和見や時流に流されないように宣伝していかなければと思います。

前記の本の中で坪内祐三氏(文芸評論家)は、1940年2月に還暦を過ぎた永井荷風は、医者から尿の淡白と血圧の高さを指摘され、野菜を取るように勧められたことを述べた後、「断腸亭日乗」に書かれた次の箇所を紹介しています。

《余窃(ひそかに)に思うところあり。余齢既に六十を越えたり。希望ある世の中ならば摂生節慾して残生を倫むも又あしきにあらぎるべし。されビ今日の如き兵乱の世にありては長寿を保つほど悲惨なるはなし。平生好むところのものを良して天命を終るも何の侮(くゆ)るところかあらん》

私は永井荷風が生きた時代を思えばこの心情は良くわかります。しかし、今は国民主権で憲法で戦争はしないと決めた時代です。希望を持って生きなければと思います。

大きな無駄遣い/山崎孝

2008-11-21 | ご投稿
【イージス艦:迎撃ミサイルSM3の発射試験に失敗】(毎日新聞HPより)

 防衛省は19日午後4時21分(日本時間20日午前11時21分)、米ハワイ沖で、海上自衛隊のイージス艦「ちょうかい」(佐世保基地所属)搭載の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の発射試験を実施した。しかし、標的の模擬中距離弾道ミサイルを迎撃できず失敗に終わった。防衛省が詳しい経緯を調べている。

 イージス艦の発射試験は昨年の「こんごう」に続き2回目だが、今回は標的となるミサイルの発射時間があらかじめわからない状態で実施した。米海軍がハワイ・カウアイ島の米ミサイル発射施設から標的の模擬ミサイルを発射。ちょうかいは数百キロ離れた海上で探知し、SM3を発射した。試験費用は約60億円。【本多健】

【コメント】朝日新聞の今日の報道では、試験費用は約62億円で、この失敗した海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を、海上自衛隊は2010年度までにイージス艦4隻を改修して搭載する予定と報道しています。この予定に関して益田好平・防衛事務次官は「技術的信頼性は高く、整備予定に影響はない」と話しています。

不完全なシステムなのに大きなお金をかけて予定通り搭載することは大きな無駄遣いといえます。

イージス艦の発射試験は昨年の「こんごう」は、あらかじめ発射時間が判っていた条件下で成功しています。今回は、実際の状況と同じ条件の標的となるミサイルの発射時間があらかじめわからない状態でした。それで失敗しています。

信頼性が万全でないミサイル防衛ステムをそんなに急いで大きなお金をかけて配備しなければならないアジアの情勢なのでしょうか。

日本にミサイル攻撃をすると予想している国は、仮想敵国に想定している以前はソ連でしたが、現在は中国と北朝鮮とされています。これらの国は北東アジアの平和と安定を築くための6者協議でミサイルの飛ばない環境を構築するために協議をしています。

それに、どこかの国が実験でなくミサイルを発射すれば核戦争に発展する危険性があります。これに関わった国に勝者は生まれません。このような核戦争でも抑止力を口実にしてミサイル迎撃システムを構築して、生き残ろうと夢想することは愚かなことです。

真の抑止力とはミサイルの飛ばない環境を粘り強く築くことだと思います。この方が経済的にもうんと安上がりで明るい未来を展望できると思います。

ブッシュ政権は、初めは北朝鮮を軍事力で封じ込めようとして、北朝鮮との二国間対話を拒否してきました。政権内でイラク戦争の失敗で、米国流民主主義を武力を用いても世界に広げようとするネオコン強硬派のチェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官などの影響力が低下して、国務省の合理的な手法で問題の解決を指向する穏健派の力が増して、対北朝鮮政策を対話路線に切り替えました。その結果、粘り強く話し合いを繰り返しながら、現在、北朝鮮の核廃棄状況の検証を詰める点を残しながらも、北朝鮮の核を廃棄させる方向に導いてきています。このことは大きな北東アジアの緊張緩和に繋がっています。これはミサイルが飛ばない環境作りの方向へです。

金大中政権やブッシュ政権が北朝鮮の指導者の心を和らげさせたのは、軍事や経済制裁などの圧力ではなく対話路線と相手の望んでいる経済援助の提供でした。この教訓が大切だと思います。

自衛隊の歴史教育の講師に自由主義史観の人物/山崎孝

2008-11-20 | ご投稿
【自衛隊統幕学校講座で「つくる会」正副会長が講師】(しんぶん赤旗の情報)

 自衛隊の高級幹部を教育する統合幕僚学校(東京都目黒区)の「歴史観・国家観」講座の講師を務めた三人の大学教授が、いずれも当時、侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の正副会長であったことが11月18日、分かりました。

 同講座は、侵略戦争肯定の懸賞論文に応募して「更迭」された田母神俊雄前航空幕僚長が統合幕僚学校長だった二〇〇四年に新設されました。

 三人の大学教授のうち一人が、「つくる会」副会長だった福地惇大正大学教授であったことは、本紙十一日付で報じています。

 今回、明らかになった二人は、八木秀次高崎経済大学教授、高森明勅拓殖大学客員教授。八木氏は〇五年度、高森、福地両氏は〇四年度から現在まで講師を務めています。

 八木氏は本紙の取材に「自衛隊の勉強会には奉仕のつもりで何度も講師をしている。それが統合幕僚学校だったかは記憶していない」と述べ、否定しませんでした。

 八木氏は、「つくる会」の三代目会長でした。

 同講座の講師を担当した坂川隆人元統合幕僚学校教育課長(元海将補)は自衛隊専門のテレビ放送で「田母神学校長と二人三脚でカリキュラムをつくった」と紹介。同氏は、番組中に「八木先生のお話でつくった」とするフリップで「歴史観・国家観」について説明していました。

 高森氏は当時、「つくる会」副会長でした。PHP研究所のホームページ「PHPインターフェイス」に「統合幕僚学校で『歴史観・国家観』の講座を担当」と記載されています。同研究所は、高森氏が執筆した『歴代天皇事典』(PHP文庫)の著者経歴を転載したもので、「著者の目が通っていると考えている」としています。(以上)

【統幕学校「歴史観」講義内容判明 講師に桜井よしこ氏】(朝日新聞の情報)

 日本の侵略を否定する論文を発表した田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長(60)が更迭された問題で、防衛省は11月19日、田母神氏が、自衛隊の高級幹部を育成する統合幕僚学校の学校長時代に新設した「歴史観・国家観」の講義に招いていた外部講師の名前や講義内容を明らかにした。

 ジャーナリストの桜井よしこ氏や作家の井沢元彦氏らが招かれていたほか、元海将補の坂川隆人氏や、「新しい歴史教科書をつくる会」の副会長を務める大正大学の福地惇教授らが講師を務めていた。

 講義内容は日本の歴史の特徴や節目の出来事、集団主義など日本人の価値観の特徴についてなど。「現在の日本の歴史認識は、日本人のための歴史観ではない」とする内容の講義もあった。

 防衛省は「様々に考えることに意味があり、異質なことを話したからすぐに問題だ、と言うわけではない」としつつも、来年からは「(人選や内容で)よりバランスを取っていく」としている。(以上)

【追記】私が最近読んだ本(加藤陽子著「満州事変から日中戦争へ」)で田母神俊雄氏の論文の主張に対する反証となる資料を新たに見つけました。これは当時の日本軍の資料に記載されているもので事実は否定しようもありません。

田母神俊雄氏の論文で《日本軍の軍紀が他国に比較して如何に厳正であったか多くの外国人の証言もある。我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣である》と述べています。

しかし、日中戦争が拡大した頃(1937年以降)の記述の中で加藤陽子氏は次のように述べています。

陸軍次官通牒「支那事変地より帰還する軍隊及び軍人の言動指導取締に関する件」に例示されている帰還兵の話には、次のようなものがあった。

「兵粘地域では牛や豚の徴発は憲兵に見つけられてよく叱られたが、第一線に出れば食わずに戦うことは出来ないから、見つけ次第片端から殺して食ったものだ」、「戦闘間一番嬉しいものは掠奪で上官も第一線では見ても知らぬ振をするから思う存分掠奪するものもあった」、「戦地では強姦位は何とも思わぬ」。このような事例は、吉見義明が従軍兵士の日記や手紙を軸に民衆の戦争体験を構成した『草の根のファシズム』で描く世界と通底している。いったいこの戦争は何のためにやっているのか、との疑念が人々の間に湧くのも当然だろう。(以下略)

中国からの帰還兵は上記のような話をするなという陸軍の通達です。

1940年、北京、北支方面軍司令部は『燼滅作戦』を行なっています。『燼滅作戦』とは、(1)敵地区に侵入した際は、食糧は全て輸送するか焼却し、敵地区に残さないこと、(2)家屋は破壊または焼却すること、(3)敵地区には人を残さないという作戦でした。

私が思うことは、虚構の上に立った歴史の誇りはとても虚しいことです。歴史の事実に学びその上に立って日本の未来を展望することこそ大切だと思うのです。日本国憲法の理念は、絶対的天皇制とそのもとで生まれた軍国主義の反省から生まれたことは言うまでもありません。この歴史をしっかりと認識しない人たちが、再び軍事力に依拠して国際紛争を解決する方向である改憲を画策するのです。

ソマリア沖へ自衛隊を派遣は集団的自衛権行使へと繋がる方向/山崎孝

2008-11-19 | ご投稿
【「ソマリアヘ海自」要請】(2008年11月19日付朝日新聞)

 アフリカ・ソマリア沖で多発する海賊に対応するため、超党派でつくる「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」の代表幹事の中谷元・元防衛庁長官らが18日、麻生首相と会い、海上自衛隊の艦船などの派遣を要請した。

首相は海賊対策のための新法について「早急に検討しなければならない」と前向きな姿勢を示した。

 中谷氏らは政府が現行法に基づいて調査研究を目的に海自艦艇を派遣し、「海上警備行動」の発令によって海自が日本船舶を護衛するよう求めた。また海自が他国の艦船を関係国と連携して守る「海賊取締法(仮称)」を制定する必要性を訴えた。(以上)

【コメント】海賊を取り締まることは海賊との交戦は避けられません。政府が現行法に基づいて調査研究というのは、9条で定められた交戦権禁止の解釈を、海賊やテロ組織は国家という組織に当たらないとして、交戦権は認められるという解釈にする可能性があります。

しかし、自民、公明、民主3党の超党派議員による「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」が、今年4月に決めた新活動方針では、日米軍事同盟をより効果的なものとする集団的自衛権の議論はじめ領域警備、秘密保護など防衛法制の見直しを掲げていることを見れば、海賊との交戦に止まっていないことは明らかです。海賊対策として海外での武力行使の既成事実を作り出して何れは集団的自衛権行使を可能にする方向に違いありません。

このことに関しては「海賊取締法(仮称)」には、海自が日本船舶を護衛だけでなく、「他国の艦船を関係国と連携して守る必要性を訴えている」ことが挙げられます。解釈改憲で言われた外国部隊が攻撃された場合の「駆け付け警護」の可能に該当することを盛り込もうとすることで推察できます。

私たちは、ソマリア沖の海賊行為を取り締まる隣国イエメンの沿岸警備隊のアルマフディ作戦局長が来日し、朝日新聞の取材に対して、日本政府が海上自衛隊艦艇の派遣を検討していることについて「高い効果は期待できず必要ない。むしろ我々の警備活動強化に支援をしてほしい」と述べたことを宣伝していかなければならないと思います。

ソマリア政府が機能しなくなったので、外国船が魚を取りつくした。それで海賊になったという海賊の言い分があります。それに海賊の多くは元漁師であったと言われています。ソマリア沖の海賊を取り締まるだけではすまない問題があるようです。
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力石氏「自衛隊が歓迎されざる存在に映るのは恐らく必定」/山崎孝

2008-11-18 | ご投稿
第170回国会外交防衛委員会が、11月5日に参考人を呼んで行なった議事録をもとにして抜粋して紹介します。抜粋した部分は民主党と自民党の議員が、アフガニスタンへ自衛隊を派遣した場合とか、治安支援を行なった場合とかについて聴かれた参考人の意見です。抜粋しても相当長いテキストになっています。

停戦合意のできていない紛争地域に自衛隊を送ろうとする考えに対して、有益性はなくかえって害になることを二人の参考人は述べています。自民党と民主党は、自衛隊の海外任務を本務にしました。そして次のステップは自衛隊の派遣をPKO以外のケースで行ない、武力行使を想定した活動であることでは共通しています。これは憲法9条の国際紛争は武力で解決しない精神とは違います。この情報は「憲法改悪反対共同センター」のホームページに全文掲載されています。

参考人 ペシャワール会現地代表 中村 哲氏、独立行政法人国際協力機構広報室長 力石寿郎氏

○犬塚直史議員(民主党)(前略)今、我々が一番民主党の法案で中心にしたのは、治安構造分野改革といいまして、現地の警察あるいは軍あるいは司法というものをいかにして応援していくかという視点での立法をしたわけですが、この現地の治安部隊の外国の政府からの応援ということについて、中村参考人の御意見をいただきたいと思います。
○参考人 中村哲氏 お答えします。
 外国の軍事面の援助は一切不要でございます。
 具体的な例を挙げますと、これがすべてのアフガン全土に通用するかどうかは別といたしまして、PMS、ペシャワール会のワーカーである伊藤君が死亡した後、現地の治安当局と地元住民が話合いをしまして地域治安委員会というのをつくり、そこが我々を防衛するという形を取っておる。何のことはない、これが伝統的なアフガニスタンの治安体系でありまして、旧タリバン政権もそれにのっとってアフガニスタン全土を治めたという経緯があります。
 それを考えますと、治安問題というのは基本的に警察の問題であって軍隊の問題ではないということが私たちの基本的な認識でありまして、物取り強盗からあるいは武装集団の解決に至るまで、これは地域長老会、地域共同体と密接にありますそういった治安委員会の設立によりまして、少なくとも、アフガニスタンの都市部は別といたしまして、農村部ではそれが最も良好な形態でありまして、陸上自衛隊の派遣は有害無益、有害無益という言葉が嫌ならば百害あって一利なしというのが私たちの意見でありまして、要するに軍事面に関与せず、そういった地域の自治体制に沿った形での治安体制の確立、これは十分可能なことではないかと思います。
 ただし、これはアメリカのPRTあるいはNATO軍とは無関係なところで日本独自で進めれば、私は武装解除、武装解除プロジェクト、外務省が行いました武装解除プロジェクトというのがありましたが、案外これは十分希望が持てるのではないかというふうに思っております。 以上です。
○犬塚直史議員 今おっしゃった警察の機能についてもう少し伺います。
 今警察が、内務省が大変な腐敗を抱えていて、末端のアフガニスタン政府の警察官は麻薬取引に自ら積極的に加担をしているというふうに聞いておりますが、現場から御覧になっていかがでしょうか。
○参考人 中村哲氏 これも伝えたかったことの一つですけれども、日本で考えるような警察力、すなわち中央集権的に警視庁と警察庁がありまして、これが全国隅々まで統括して目を光らせるという体制はアフガニスタンでは不可能。先ほど言いましたように、アフガン農村においては成人男子のすべてが兵員であります。したがって、地域の伝統社会に沿った形の防衛というのはあり得る。これも是非言っておくべきでありますけれども、農村地帯に行けば行くほど、すなわち日本で危険地帯と呼ばれるところに行けば行くほどいわゆる昔ながらの伝統、これは良しあしは別といたしまして非常に強固なものがある。客人と認められれば自分の命を代えても守るというのが大体のアフガン社会のおきてであります。
 それを考えますと、私たちがそういった地域に本当に役に立つということでもって入っていくならば、地域の人たちが守ってくれる。もちろん伊藤君の場合のケースもありますけれども、あれは、詳しくは今日は申しませんけれども事故に近かった。そういった形で、合同治安委員会というのを設置して、今のような形で私が守られているような形でその地域の治安を守るということは十分あり得ます。
 また、日本のいろんなプロジェクトを成すに当たりましても、PRTやNATOとは無関係にそれをすることができるというならば、住民挙げて歓迎するであろうということは私ははっきり申し上げておきたいと思います。
○犬塚直史議員 今、日本独自の活動として中立性を持って、しかも現地をよく理解をして、現地の宗教を含めてこれを尊重する立場で支援をするのであれば、現地挙げて応援をしてくれるだろうという心強い御意見をいただきました。
 そこで、少しさかのぼりまして、九・一一後のボン合意というものがありました。この言わば停戦合意、これからの復興をどうしようかという会議に北部同盟の人たちは入ったけれどもタリバンが入らなかった、これが一つ大きな障害であったと言われておりますが、参考人の御意見を伺いたいと思います。
○参考人 中村哲氏 このことについては、私は一般的なことしか言えませんけれども、北部同盟もタリバーンも実は似たり寄ったりの内戦であったということですね。ただし、この北部同盟は少数民族であった。少数民族が多数民族を支配するという変則的な形になって、あのときだれもがこれは長続きしないと、少数者が多数派を支配はできないだろうということでありましたが、それが現実のものとなってきました。
 実際には、カルザイ大統領を始めといたしましてパシュトゥン、タリバーンというのはパシュトゥン出身者が多かったわけですけれども、このパシュトゥンの地域に開発を集中させたり、それをなだめるような政策が各国によって取られましたけれども、まだまだ行政内部ではタリバーン全体が冷や飯を食っているという状態。さらに、タリバーンの構成民族でありますパシュトゥン民族は、アフガニスタン北西辺境州の多数派を成しておりますパシュトゥン民族と一体でありまして、このために非常にややこしいことになっておる。この事態はそう長続きしないというのがこれは一致した見方であります。 以上であります。
○犬塚直史議員 先ほどおっしゃった、二千万人のパシュトゥン人を抹殺しない限りはこの軍事作戦の成功はあり得ないだろうという趣旨のことを先ほどおっしゃいました。アフガニスタンの南部、東部、そしていわゆるFATAという地域、そしてパキスタンの北部、西部というところ一帯にこのパシュトゥンの人たちが住んでいると。
 そういったいわゆる国境をまたいでこの人たちが存在をしておるという中で、今我が党が出したこの法案の中核を成すのが、実は抗争停止合意の推進ということを言っているわけであります。これは、国境も実ははっきりしない、そして全国的な停戦を命ずるような、言わば停戦を強制できるような主体も存在しない中にあって、幾つでもいいから地域的に抗争停止合意というものをつくっていこうじゃないかと。
 その際に最も大事になるのは、日本が国として停戦合意ができたならばこういう支援をしていくんだという一つの覚悟といいますか準備だと我々は主張をしているんですが、参考人の御意見を伺いたいと思います。
○参考人 中村哲氏 これは既に、おっしゃることは非常に真っ当なことでありまして、これはカルザイ政権、あの米軍に擁立されたカルザイ政権、それからパキスタン側の方も同じ動きをしておりまして、新聞で御存じかと思いますけれども、今もうこの戦争では事は解決しない、基本的に対話路線でいかないと駄目だということが、アフガニスタン、パキスタン両国政府にとってはこれは死活問題になりますから、非常な熱意でディスカッションといいますか対話が開始された直後でございます。これは米軍もイギリスもそうでありまして、武力では勝てないという共通認識が広がりつつあるというのは皆さん御存じかと思います。
 その中にありまして日本がどういった態度を取るか。これはやはり、平和国家を自称する日本といたしましては、おっしゃったとおりに、このまとめ役、調停役として振る舞うと。これはパキスタン、アフガニスタン共に対日感情はまだまだましですから、十分力を発揮し得る政策ではないかと思います。ただし、これが米国やヨーロッパ諸国の手先と思われるような動きを避けて、日本独自の動きであるということを明確に打ち出すべきだというふうに私は思います。 以上であります。
○犬塚直史議員 これは今年になってお出しになった「対日感情の動き」という中村参考人のメールの一節なんですが、少し引用さしていただきます。六月になって日本軍、ジャパニーズトゥループ派遣検討の報が伝えられるや身辺に危機を感ずるようになった。日本が兵力を派遣すれば、我がペシャワール会は邦人ワーカーの生命を守るために活動を一時停止する。これまで少なくともアフガン東部で親日感情をつないできた糸が切れると、自衛隊はもちろん、邦人が攻撃にさらされよう。
 これは、この国会にも実は報告書が提出されたばかりなんでありますけれども、そのように余り知られていない現地視察がどのような形でそうやって現地に広がり、参考人の耳に入ったんでしょうか。
○参考人 中村哲氏 これはパキスタンでかなり大々的に報道されました。その際に、我々自衛隊と言っていますけれども、英字紙ではジャパニーズトゥループと書いてあった。パシュトゥー語放送でもこれは報ぜられまして、私のところで働いている職員は、言いにくいものですから顔で分かるんですね、こういう放送があったが本当かと。制服着た人がうろうろしているとかえって我々危なくなるということを率直におっしゃったのを覚えております。そういうことで知りました。
 パキスタンのテレビ放送、それからアフガニスタンのラジオ放送、それからそれを聞いた職員が心配して我々に述べたということでその記事を書いたわけであります。 以上であります。
○犬塚直史議員 済みません、JICAの力石参考人、大変失礼しました。最後に伺いますが、この六月の現地調査は、現地のJICAにも調査団は来たんでしょうか。
○参考人 力石寿郎氏 これは来なかったということでございます。接触はなかったというふうに理解しております。
○犬塚直史議員 最後に中村参考人に御意見を伺います。
 日本が国家として政府としてこのアフガニスタンに対する支援、どのようなものを現地から期待されますか。
○参考人 中村哲氏 まず、何をすべきかという性急な結論を出さず、大きな目でアフガニスタンの流れを見て、これが有効だという道を宣言すること、すなわち何をすべきかと同時に何をしていけないかということを明確にするだけで大きな方針が出される、対日感情の好転も見られるのではないかと思います。
 今の対テロ戦争の破綻というのはだれの目にも明らか。ただ、それを言うとみんなから責められるので、みんな黙っている。裸の王様。その中にありまして、日本が独自に、先ほど申されました治安の回復も、米軍に寄らず、NATO軍に寄らず、独自に地元に寄り添って、地元が納得する形で治安の確立を回復しながら支援の道を探っていく。支援の道は明らかであります。
 先ほどJICAの方もおっしゃられたように、水さえあればいろんなことがアフガニスタンでできる。このことについて力を入れるべきだという宣言をし、そして、国際社会というこのマジックのような言葉に踊らされずに、日本独自の道を見出す。過って改むるにはばかることなかれという言葉がありますけれども、誤りは誤りと認めて、まだ間に合う。ここで議論を尽くして、性急な結論を出さず、しかし大局は大局として見据えて決定していく、抽象的ですけれども、私はそれを望みたいと思います。 以上でございます。

〇佐藤正久議員 (前略)PKOについては、国連の第二代総長のハマーショルドさんが、PKOは軍人の仕事ではないけれども、軍人でなければできない仕事だというふうなことを言われました。恐らく復興支援の分野でも、やはり国連のPKO、あるいはそういうある程度の武力集団が関与しなければ国づくりとかあるいはそういう再建というものができない時期とか場所もあるんだろうということでいろんなところに今展開をしていると。昨年末に民主党の方々が提案されたテロ根絶法案という中でも、そういう発想の下に、自衛隊が活動するという場合もあるという前提で自衛隊をアフガニスタン本土で民生支援を行うということも踏まえた法案を出されたと思います。
 それで、中村参考人にお伺いしますけれども、そういう民主党の方々も一部賛同されておられるように、自衛隊が治安維持ではなく民生支援という形で現地に入るということについて、どういう要領であれば非常に現地の方々とマッチングするのか、絶対マッチングしないとお思いなのか、その辺りをお聞かせ願いたいと思います。
○参考人 中村哲氏 お答えします。
 自衛隊派遣によって治安はかえって悪化するということは断言したいと思います。これは、米軍、NATO軍も治安改善ということを標榜いたしましてこの六年間活動を続けた結末が今だ。これ以上日本が、軍服を着た自衛隊が中に入っていくと、これは日本国民にとってためにならないことが起こるであろうというのは、私は予言者ではありませんけれども断言いたします。敵意が日本に向いて、復興、せっかくのJICAの人々がこれだけ危険な中で活動していることがかえって駄目になっていくということは言えると思います。

【山崎 JICAの活動について、参考人の力石寿郎氏が詳しく質疑の場で述べています。アフガンにおけるJICAや日本のNGOの活動は国際社会に誇っても良い内容です。それにもかかわらず日本が給油活動をしないと国際社会から孤立するとかという意見はこじつけで説得力はありません。中村哲氏は続いて重要なことを述べています】
 してはならないということは、これは国連がしようとアメリカがしようとNATOがしようと、人殺しをしてはいけない、人殺し部隊を送ってはいけない、軍隊と名前の付くものを送ってはいけない、これが復興のかなめの一つではないかと私は信じております。そのことは変わりません。
○佐藤正久議員 もう一度確認しますが、治安維持任務ではなく、民主党さんが出された法案も、人道復興支援という分野で、あるいは民生支援という分野での自衛隊の活動を一応考えているというふうに私は理解しております。今言われた、治安維持分野ではなく復興支援分野で自衛隊を運用するということについてはいかがですか。
○参考人 中村哲氏 お答えします。
 ならば、JICAを全部引き揚げて全部自衛隊員を送ればいいことでありまして、それなら、それじゃないとできないというならば、麻生首相自ら銃を握って前線に立ってもらいたい、その上で考えてほしいと私は思います。
○佐藤正久議員 冷静にちょっとお話ししたいんですけれども、自衛隊が復興支援あるいは民生支援で現地で行うということとJICAの方々を引き揚げるということとどういうふうな関係があるんでしょうか。もう少し丁寧にお考えをお聞かせください。
○参考人 中村哲氏 これは明らかであります。自衛隊が復興支援に携わるというならば、現在、復興支援で死力を尽くしておられるJICAの方々の立場はどうなるのか。JICAの人々はただの付録なのか。自衛隊が銃を捨てて現在のJICAの仕事ができるのかということを考えますと、自衛隊がしゃしゃり出てくるならJICAの支援も要らないということであります。また、NGOも要らないという議論になってくるかと思います。
 私が言いたいのは、軍隊と名の付くものを、日本では軍隊とは呼びませんけれども、実質的にこれは国際的には軍隊だ、軍隊と受け取られるものを現地に送る必要が、あえて復興というならばあり得るのかと。治安という意味ならば、先ほど民主党の方が御質問されたとおりでありまして、自衛隊を送らなくとも治安を守る、日本人ワーカーを守るという方法は幾らも存在するわけであります。その道を探らずしていきなり自衛隊が復興に出てくるのは私はおかしい。自衛隊派遣は、七年前と同じことを言いますけれども、有害無益と私は強調したいと思います。

○佐藤正久議員 私も国際貢献というのは、海外支援イコール自衛隊という考えは持っておりません。非軍事、先ほど言いましたように非軍事であるのが一番いいわけで、実際そういう非軍事での海外支援が主流だということは、今の日本の政府の活動から見てもそれは明らかです。
 ただし、場所とか地域で使い分けをした方がいいんではないかという部分があろうかと思っています。同じ地域で自衛隊とJICAの方がやるという場合は、今、中村参考人言われたような懸念もあるかもしれませんけれども、場合によっては、アフガニスタンでもいろんな地域がございます、そういう治安の状況によっては、JICAの方々がされるような復興支援を行う場所と、あるいは自衛隊というものを使いながら復興支援する場所と、使い分けをしながら困っている人を助けるというやり方も私はあろうかと思います。これについて、力石参考人の方にお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○参考人 力石寿郎氏 大変難しい御質問だと思うんですね。自衛隊が来たら、先ほど中村参考人がおっしゃったように、やはり印象としては軍隊の印象を持たれますので、そうすると、今まで民生支援中心にやってきた日本までがついに軍隊を送ったかと、そういうようなとらえ方をされてしまうおそれが多々あるというところは否めないと思います。
 その上で、それが可能かどうかというのは私の立場では何とも申し上げられようがないので確たるお答えはできないんですけれども、一般的には、現地の武装勢力の人たちも事あるごとに声明を出している、あるいは警告を出しているように、外国の軍隊は全部出ていけ、外国人もすべて出ていけということを繰り返し言っていることから推察すれば、自衛隊が歓迎されざる存在に映るのは恐らく必定だろうというふうに思います。ですから、使い分けができるかどうかというのは非常に難しい判断だと思います。

イエメンの沿岸警備隊局長 自衛隊より財政援助を/山崎孝

2008-11-16 | ご投稿
【「自衛隊より財政援助を」イエメンの沿岸警備隊局長 アルマフディ作戦局長】(2008年11月15日付朝日新聞より)

ソマリア沖の海賊行為を取り締まる隣国イエメンの沿岸警備隊のアルマフディ作戦局長が来日し、朝日新聞の取材に応じた。日本政府が海上自衛隊艦艇の派遣を検討していることについて「高い効果は期待できず必要ない。むしろ我々の警備活動強化に支援をしてほしい」と述べた。

 アデン湾は年間約2万隻が往来するが、ソマリアが無政府状態のため、約2300人のイエメン沿岸警備隊が海上警備を主に担う。だが、現態勢では約1200㌔の海岸線の3分の2は手が回らない。「この海域では麻薬密輸や人身売買も横行している」として、アルマフディ局長は日本側に基地港5カ所の新設や高速警備艇10艇導入などで財政援助を求めた。海上保安庁からは警備の技術指導も受けたいという。

 海賊グループは事件で得た「身代金」で高速ボートや武器、無線などを購入。装備の水準は警備隊をしのいでいるという。「日本から大きな自衛艦を派通すれば費用がかかるはず。現場をよく知る我々が高性能の警備艇で取り締まった方が効果が上がる」(望月洋嗣)(以上)

【コメント】私は以前にも海外の海賊への対応は自衛隊より海上保安庁の仕事で、日本の船が航行するマラッカ海峡の海賊対策に海上保安庁が高速の巡視艇を供与したことを述べました。

訪日したイエメンの沿岸警備隊のアルマフディ作戦局長は、《日本側に基地港5カ所の新設や高速警備艇10艇導入などで財政援助を求めた。海上保安庁からは警備の技術指導も受けたい》と語りました。

軍事指向が強く改憲を目指す政治家たちは、自衛隊より国内の他の組織が対応する方がより効果的な問題でも自衛隊を用いようとします。これは最終的には自衛隊が海外で武力行使を想定した活動を可能にするための、世論の地ならしのためだと思います。

軍事指向の強い日本の政治家たちは、石油など資源の多くを海上輸送に頼る日本の状況を強調して、シーレーンの警備に自衛隊を用いる政治宣伝を盛んに行なっています。以前はマラッカ海峡をよく取り上げていましたが、最近はソマリア沖の海賊問題が強調されるようになりました。しかし、イエメンの沿岸警備隊のアルマフディ作戦局長はこの問題に対して、海賊問題解決へ日本の取るべき明快な意見を示しました。