いせ九条の会

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自衛隊海外派遣「恒久法」自民党素案の概要/山崎孝

2006-06-16 | ご投稿
5月28日に開かれた「いせ発『平和を守る署名』はじまりの会」で招かれた高田健さんの講演の中で、米国が起こす新しい事態に対応して自衛隊を海外に派遣するためその都度制定する法律(テロ特措法、イラク特措法)をいちいち作らないで済むように自民党は恒久法を考えていると述べたことを私は紹介しました。私はその時に恒久法は憲法9条との関係をどう扱っているのか懸念を持ちました。「恒久法」の概要では憲法9条との関係は完全に無視されています。

2006年6月15日「しんぶん赤旗」電子版の報道より

【海外派兵 国連決議なしで可能「恒久法」自民素案 治安維持活動も】

 自民党は十四日、防衛政策検討小委員会(委員長・石破茂元防衛庁長官)で、自衛隊の海外派兵を地球規模でいつでも可能にする「恒久法」の概要をまとめました。自衛隊の活動には、米軍などへの補給・輸送といった後方支援活動のほか、現行のイラク・テロ特措法などでは実施できない治安維持活動や他国要員・施設の警護活動も追加。「暴動に遭遇したというような非常事態」での武器使用まで認める内容になっています。自民党は7月中に条文化し、党内論議を進める構えです。

 自衛隊の活動としては▽国際平和協力活動▽人道復興支援活動▽停戦監視活動▽治安維持活動▽警護活動▽船舶検査活動▽後方支援活動―の七分野を列挙。このなかには「(派兵先で)軍事組織を設立するための助言、指導又は教育訓練」も含まれています。

 武器使用では、「暴動」への対処のほか、「(自衛隊の)活動の目的を達するため特に必要があると認める相当の理由がある場合の武器使用が可能」とし、正当防衛以外にまで拡大しています。

 活動地域については、「非国際的武力紛争地域」と規定。「国際的」武力紛争が起こっていなければどこでも派兵できるようになっています。米軍が、「テロ掃討」を口実に激しい戦闘を展開しているイラクなどでも活動可能になります。

 派兵の要件に、「我が国として特に必要であると認める事態」をあげ、国連決議や紛争当事者の要請がなくても、政府の判断でいつでも可能にするものになっています。

 政府・与党は、自衛隊の海外派兵のため、PKO(国連平和維持活動)法のほか、テロ・イラクの両特措法といった時限立法の制定を強行してきました。しかし、派兵のたびに法律をつくるのでは、米国の要求に迅速に応えられないとして、恒久法の検討を進めてきました。(以上)

政府は自衛隊のイラクでの武器の使用についての見解で、反米武装勢力やテロ組織は国家的組織ではないと規定して、攻撃されれば正当防衛と規定して武器の使用が出来る見解を表明していました。この見解を頭に入れて「非国際的武力紛争地域」という聞きなれない言葉を考えますと「国際」の概念は辞書には、国家と国家の交際または関係となっていますから、イラクにように、米国が武力で政権を打倒した後で、米国に抵抗する反米武装勢力やテロ組織は国家的組織でないから、そこでの自衛隊の交戦地域は「非国際的武力紛争地域」だという考え方を用いるのではないかと思います。

「我が国として特に必要であると認める事態」とは実に政府に都合のよい恣意的な規定です。綱が切れた猛犬が当たり構わず暴れ回ることを想像します。自民党の本音が表れています。自民党新憲法草案の「法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行う活動」の文言の考え方が、法律の定めるところが、恒久法が適用され「国際社会の平和と安全を確保」が「我が国として特に必要であると認める事態」になり、有志連合の活動が「国際的に協調して行う活動」になる可能性があります。

2003年12月16日、参議院外交防衛委員会における川口順子外相の答弁。

よく日米同盟関係という言葉を使いますけれども、これは日本が経済やあるいはその他の政治テロとの戦い、その他途上国への支援、そういったすべていろいろな分野において考え方を一にする、同じ価値観を持つ、自由とか民主主義とか市場経済とか、そういう国として世界のいろいろな課題に共に手を取り合って取り組んでいこうと、そういうことを日米同盟関係というふうに考えているわけでして、決して狭義の安全保障のことだけを考えているわけではない。(中略)我が国として、やはりアメリカというのはスーパーパワーであります。そして、この考え方について多くの点で共有をしているという観点で、引き続き同盟関係を、同盟関係を持っていく、維持していくことは重要であると思います。(以上)

自民党政府は日米同盟を「すべていろいろな分野において考え方を一にする、同じ価値観を持つ」同盟と考え、「同盟関係を持っていく」としていますから、米国の考える「世界の平和と安全」の軍事行動は、日本の「我が国として特に必要であると認める事態」となりうるのは必定であります。

そのために自民党政府は、自衛隊が海外活動を本土防衛と同格とする「省昇格法案」を考え、米国の軍事行動に素早く対応できるように自衛隊と米軍の一体化をはかり、さらに「恒久法」を制定し、そのための障害となる憲法9条を消滅させ、自衛軍という軍隊で、日米軍事同盟による集団的自衛権を行使できるようにするのです。