いせ九条の会

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北朝鮮、6者協議合意の「初期段階措置」の約束を守る/山崎孝

2007-06-30 | ご投稿
【稼働停止対象は5カ所 IAEA北朝鮮視察団】(2007年6月29日付中日新聞より)

【平壌29日共同】北朝鮮を訪れている国際原子力機関(IAEA)のハイノネン事務次長率いる実務代表団は寧辺の視察を終え、29日午後零時半(日本時間同)ごろ、平壌に戻った。事務次長は、北朝鮮の非核化に向けた「初期段階措置」で定めた稼働停止の対象は5カ所になるとの見通しを示した。

事務次長は、寧辺の核施設のうち(1)実験用黒鉛減速炉(2)建設中の原子炉(3)放射化学研究所(4)再処理施設-などを視察したとし、「見たいところをすべて見ることができた。北朝鮮側も非常に協力的だった。視察に満足している」と述べた。また、実験炉は依然稼働していることを確認したと明らかにした。

代表団は26日、2月の6カ国協議で合意した「初期段階措置」の手続きの協議のため平壌入り。北朝鮮側と協議の後、28日から核施設が集中する寧辺を訪れていた。(以上)

【稼働停止の対象は5カ所IAEA代表団が見通し】(2007年6月29日付朝日新聞より)

 訪朝している国際原子力機関(IAEA)の実務代表団が29日、寧辺(ヨンビョン)核施設の視察を終え、平壌に戻った。AP通信が伝えた。ハイノネン事務次長は、停止・封印の対象施設が5カ所になるとの見通しを示した。北朝鮮側がIAEAや6者協議関係国の要求をそのまま受け入れたとみられる。

ハイノネン氏は平壌で記者団に「我々が計画したすべての場所を視察した。北朝鮮側の協力は素晴らしかった」と説明。5000キロワットの実験用黒鉛減速炉や放射化学実験施設(プルトニウム再処理施設)、建設中の5万キロワット黒煙減速炉、核燃料棒製造施設の4カ所を訪れたことを明らかにした。これらに、泰川に建設中の20万キロワット黒煙減速炉や使用済み燃料棒の貯蔵施設などのうちの一力所を加えた計5施設が停止・封印の対象になるとみられる。

6者協議関係国の問では、北朝鮮が5000キロワット原子炉と再処理施設の2カ所しか封印に応じないのではないか、との見方もあった。北朝鮮の積極的な対応で、7月中旬とみられる6者協議の再開に大きく前進したと言えそうだ。

IAEA代表団は30日に北京に戻り、中国政府と意見交換する。7月初旬には、合意内容や予算措置などを承認するIAEA特別理事会が開かれる見通しだ。(以上)

ヒル国務次官補は6月25日、北朝鮮の訪問など東奔西走した一連の活動を総括して将来への展望を次のように述べています。「初期段階の措置がすべて履行されれば、2007年末までに核施設の無能力化を期待する。08年には、完全な非核化の最終段階に取り組むだろう」。

核施設の無能力化とともに、朝鮮半島の平和体制構築などもテーマになる。米国、中国、韓国、北朝鮮の四者による朝鮮半島の和平協議や、北東アジアの安全保障を話し合うフォーラムのような組織の導入、米朝関係などの作業部会の前進を期待したい。

このようにヒル国務次官補は朝鮮半島の平和構築に意欲を示していますが、韓国日報の5月9日付には《日本政府はヒル次官補の動きに対して、水面下で攻撃的な対応を見せている様子で、国務省や国家安全保障会議関係者は、日本外交官や米政府内の日本人脈のヒルに対するバッシングが目に余るものとなっていると指摘している》と報道しています。

日本外交官の国務次官補を快く思わない考え方は、麻生外務大臣が6月22日の記者会見で、ヒル国務次官補の訪朝に関して「焦って(北朝鮮に)行っているが、焦って足元を見られるほどアホらしい話はない。安易に譲ってもらいたくない」と批判したことにも表れています。

朝鮮半島の平和構築に意欲見せる人物の活動の足を引っ張ると言うことは、安倍政権がアジアの平和に冷淡であることの証明です。自衛軍という軍隊を持ち、集団的自衛権行使を可能にする改憲のため、その方向に国民を誘導するには、日本の周辺に脅威が存在している方が望ましいと思っているのでしょう。軍事抑止力こそ安全保障になるという「力の信奉者」にとっては、対話路線による6者合意の進展は自らの信条に打撃を受けることになると思います。

私は安全保障を軍事力に頼り、疑心暗鬼で生きるより、信頼を基本として国家間に問題が起これば穏やかに対話・交渉して生きる方を選びたいと思います。軍事力に頼っていては、未来に展望を見出すことは出来ません。

かつての米国の北朝鮮政策であった、ボルトン前米国連大使の「核開発を止めさせるためには政権の崩壊しかない」とか、ペリー元米国防相の「北との交渉は核施設に対する爆撃の可能性を圧力として使いながら行うべき」という考え方を基本にした政策や米朝二国間交渉はしないとしてきた米国の姿勢では、6者合意は進展しませんでした。

昨年の北朝鮮のミサイル発射実験のときに報道された日本政府の対応、【朝日新聞】「複数の政府関係者は『中国が拒否権を使うのなら仕方ない』と強気を崩さなかった。中国が拒否権を行使した場合に備え、中国のいない主要国首脳会議(G8サミット)で支持を訴える構想を語る関係者もいた」と紹介。また「外務省幹部が7月13日、『7章にこだわらない』と発言すると、安倍氏は外務省に『(最後の)1分1秒まで立場を貫け』と指示」と報道。

【毎日新聞】「外務省は当初から非難決議への譲歩を想定していたが、『安倍長官がネジを巻いた』(首相官邸筋)結果、麻生外相、谷内正太郎事務次官らが集まった7月7日の幹部協議で『中国に拒否権を行使させてもいい』と正面突破を図る方針を確認した」と報道されたような考え方の国連外交は敗北を喫したのです。日本国憲法の理念、国際紛争の解決は武力による威嚇や行使をしてはならないという考え方が勝利しました。


安倍首相は言葉に魂を入れなければならない/山崎孝

2007-06-29 | ご投稿
【全41市町村議会 可決/「集団自決」修正意見書】(2007年6月28日付沖縄タイムスより)

高校歴史教科書の沖縄戦の記述から「集団自決(強制集団死)」への軍関与が削除された教科書検定問題で、国頭村議会と嘉手納町議会は二十八日午前、検定の撤回と記述の復活を求める意見書を可決した。五月十四日の豊見城市議会の決議を皮切りに、県内四十一市町村のすべての議会が同様の意見書を可決。検定の撤回を求める県民の意志をより強く示した。一方、県選出・出身の与党系国会議員でつくる「五ノ日の会」(会長・仲村正治衆院議員)は、党三役に検定撤回を要求したが、中川秀直幹事長らは困難との見方を示した。

嘉手納・国頭も 【嘉手納・国頭】嘉手納町議会(伊礼政吉議長)と国頭村議会(仲井間宗明議長)が全会一致で可決した意見書は「沖縄戦で、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられた県民にとって到底容認できない」「係争中の裁判を理由に、一方の当事者の主張のみを取り上げることは、文部科学省自らが課す検定基準を逸脱する」などと文科省の検定意見を批判。

その上で「戦後生まれの世代が増え、体験者の減少化が進むこの時代こそ、史実をねじ曲げ風化させる動きをいさめ、沖縄戦の実相を正しく伝えるとともに、悲惨な戦争を再び起こさせないよう今回の検定意見の撤回を強く要請する」と、速やかな記述の回復を求めている。あて先はいずれも、首相、文部科学相、衆参両院議長(以上)

既に紹介していますが安倍首相は、県主催の沖縄全戦没者追悼式で、「筆舌に尽くし難い塗炭の苦難を経験されたことを私は大きな悲しみとする」と述べています。しかし、教科書検定問題についての記者団の質問に対し、「審議会で学術的な観点から検討している」と言っています。式典での言葉に魂は入っていない、ただの式典用に書かれた文章を読んだに過ぎません。

思想信条、政治的立場の異なる議員たちが生き証人の発言や県史などに記録された史実に基づいて超党派で可決した沖縄県議会、沖縄全市町村の首相宛の意見書に応えることが、首相の述べた言葉に魂が入り、言葉に真実性が帯びます。

学術的な観点とは、論説が広範囲な事実に裏付けられており、客観性を持っていることです。係争中の裁判の一方の当事者の主張に根拠を置くことでは学術的とは言えません。思想信条、政治的立場の異なる議員たちが一致して可決した意見書は客観性があります。

安倍首相に共通したパターンが見受けられます。自分の本心を表明せず、学者に判断を任せるというパターンです。たぶん任せる学者は「自由主義史観」の学者だと思います。教科書検定問題についての記者団の質問に対し、「審議会で学術的な観点から検討している」と発言する。以前は、日本の戦争の侵略性について質問されると、政治家が判断することではなく「学者が決めること」と述べています。

沖縄県議の意見書や国頭村議会の意見書は「沖縄戦で、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられた」こととは、沖縄戦研究及び多くの生存者・体験者が明らかにしている沖縄戦で極限状況におかれた住民が、「軍官民共生共死」の教えに従って、家族同士が殺し合うという悲惨なことを指しています。沖縄で軍隊がいなかった所では住民の「集団自決」は起こってはいないといわれます。

たくさんある中の一つと言って済ますわけにはいかない/山崎孝

2007-06-28 | ご投稿
【「たくさんある中のひとつだ」従軍慰安婦決議で首相】(2007年6月27日付朝日新聞より)

安倍首相は27日夜、米下院外交委員会が従軍慰安婦問題に関する決議案を可決したことについて、「米議会の決議だからコメントするつもりはない。すでに私も米国を訪問した際、私の考えを説明している」と述べた。そのうえで「米議会では相当たくさんの決議が決議されている。そういう中の一つなんだろう」と語った。首相官邸で記者団の質問に答えた。

首相は「米議会でたくさん決議されていてもその一つひとつは割と重要ではないか」との記者団の問いに対し、「それはあなたの意見ですね」と不快感をにじませ、質問を続けようとする記者団を振り切って質疑を打ち切った。(以上)

《首相は「米議会でたくさん決議されていてもその一つひとつは割と重要ではないか」との記者団の問いに対し、「それはあなたの意見ですね」》と答えましたが、記者個人の意見と切り捨てるわけには行かないのです。

2006年6月に発表された日米共同文書「新世紀の日米同盟」には、自由、民主主義、市場経済、法の支配、人間の尊厳及び人権といった価値観を共有すると謳われています。

この価値観を世界に広めるために、時には軍事力行使さえ正当化しようとするほど重要と位置付けています。このなかの「人間の尊厳及び人権」という問題を米国の議会から問い詰められたのです。

それに米国の議員たちを刺激した「河野官房長官談話」の見直しに安倍首相自らが関わっています。2007年度予算案の衆院通過がもつれ込んだ3月3日未明の衆院本会議場。従軍慰安婦問題で自民党の中山泰秀衆院議員が首相に「党でまとめた提言は総理が受け取って頂けますか」とたずねると、首相は「私が受け取る。私に持ってきてくれ」と応じています。(朝日新聞2007年3月24日付「安倍政権の研究」)。そして「官憲が家に上がりこんで連れてくるようなことは無かった」と「狭義の強制性」を否定します。

安倍首相が任命した下村官房副長官は3月25日、民放ラジオ番組で、「従軍看護婦とか従軍記者はいたが、『従軍慰安婦』はいなかった。ただ、慰安婦がいたことは事実。親が娘を売ったということはあったと思う。だが、日本軍が関与していたわけではない」と歴代の政府の見解を否定する見解を述べています。

安倍首相は下村官房副長官や自分の発言を清算しなければ、ブッシュ大統領に謝ったと済ましているわけにはいかないと思います。安倍首相の主張する「美しい国」の体面は、米下院外交委員会が従軍慰安婦問題に関する決議案を可決したことで傷つきました。

「人間の尊厳及び人権」という問題で国際批判までされるようでは、国家の基本理念を定める憲法を語る資格にも疑念を持ちます。

国家のあり方が違う自民党と公明党が連立を組む不思議/山崎孝

2007-06-27 | ご投稿
【憲法改正で公明に配慮 与党、統一公約を正式決定】 (2007年6月26日付中日新聞より)

自民、公明両党は6月26日、国会内で政策責任者会合を開き、参院選で掲げる統一公約「連立与党重点政策」を正式決定した。

調整中だった憲法改正に関しては「改憲」の表現を避けたい公明党の意向に配慮して、「新しい憲法づくりをめざす」から「新しい時代にふさわしい憲法をめざす」と変更した。原案では「(憲法審査会の)議論を主導し」としていたが、最終的に「議論を深め」の表現にした。また当初の「憲法改正発議が可能となる2010年の国会」との表記を「2010年以降の国会」に変えた。(共同通信)(以下略)

【3年後の改憲めざす 安倍首相明言 「自民草案を軸に」】 (2007年6月25日付中日新聞より)

安倍晋三首相は二十四日、NHKの報道番組で、参院選の争点に関連し「三年後の憲法改正を目指していくことを、国民に宣言していく必要がある。それが政権として正直な姿勢だ」と述べた。

首相は就任以来、最大二期六年の自民党総裁任期中の改憲を目指すと発言してきたが、今国会で成立した国民投票法の施行で三年後から改憲発議が可能になることを受け、さらに踏み込んだ。

また首相は、改憲にあたっては、民主党などとも協議する必要性を指摘する一方、「今の自民党案は、よくできている。新しい価値観、新しい世界の状況にあった憲法草案だ」と、二〇〇五年に自民党が決めた新憲法草案を軸に議論したいとの考えを示した。(以下略)

【公明党:加憲案取りまとめ10年めどに…太田代表考え示す】(2007年5月3日付毎日新聞より)

公明党の太田昭宏代表は5月3日、さいたま市で街頭演説し、同党の憲法改正案である「加憲案」について「(国民投票法の成立後)3年後をめどに取りまとめてはどうか」と述べ、10年をめどに取りまとめる考えを初めて示した。国民投票法案では、衆参両院に設置される憲法審査会は同法公布後、3年間は憲法改正案の審査や提出ができない。この凍結期間中の具体案提示を避けることで、自民党を中心とした改憲論議の過熱をけん制する狙いがあるとみられる。

同党は02年10月、従来の「論憲」から「加憲」に方針を転換。現行憲法に「プライバシー権」や「環境権」などを加え、9条も1項、2項を堅持したうえで、自衛隊や国際貢献のあり方を明文化して加えるかどうか検討している。

当初は太田代表の就任に合わせ、昨年9月の党大会で加憲の具体案を取りまとめる方針だったが、支持者らに慎重論も根強く、取りまとめを先送りしていた。

太田氏は「9条1項、2項を守り抜き、集団的自衛権も行使はならないということを堅持する。現憲法は優れている」と述べ、現行憲法の条文は基本的に変えるべきではないとの考えを改めて強調した。【高山祐】(以上)

自民党と公明党は、参院選で掲げる統一公約「連立与党重点政策」の中で、憲法改定問題について、幾つかの言葉の調整を行なっていますが、改憲の内容は、自民党の総裁は、2005年に自民党が決めた新憲法草案を軸に議論したいとの考えを示しています。公明党の党首は《「9条1項、2項を守り抜き、集団的自衛権も行使はならないということを堅持する。現憲法は優れている」》と述べています。

自民党の新憲法草案は9条2項を変えて、1項とは理念の違う「自衛軍」という軍隊を持ち「軍事力」で国際紛争を解決しようとする姿勢が伺える内容になっています。軍隊は国際的には集団的自衛権行使が出来る組織だと認識されていますし、自民党総裁は解釈改憲や明文改憲で集団的自衛権行使を可能にすると明確に意思表示をしています。公明党の党首の考えとは大きく隔たっています。

本来ならば国家を運営する指針である憲法でこれだけ違っていては、連立は組めないのが普通なのです。公明党が「9条1項、2項を守り抜き」と言う立場を取るのであれば、国際紛争を武力で解決しないとした規定と、正反対の米国のイラク戦争を支持し支援した自民党のイラク政策に反対となるのが論理の帰結なのです。筋道が通りません。

公明党の党首の《「9条1項、2項を守り抜き、集団的自衛権も行使はならないということを堅持する。現憲法は優れている」》という言葉は、自民党の改憲の狙いにポイントをおいて考えれば、論理的には憲法を変えない立場となるのが普通の態度です。《現憲法は優れている》のですから「プライバシー権」や「環境権」を守る取り組みは、現行憲法の理念と矛盾するものではなく、現憲法下で既にこれらに関する法律が制定されていて、憲法を変える必要はありません。

公明党の党首が《9条1項、2項を守り抜き》と述べていることは、党の支持者にこの考え方が根強くあることの反映だと考えられます。私たちは選挙民が自民党の改憲の目的にポイントを置いて、憲法改定問題を考えるよう働きかけなければならないと思います。

道のりは長くても平和路線が確固としたものであれば目標に辿りつく/山崎孝

2007-06-26 | ご投稿
【「今後2週間が重要」 ヒル次官補、訪朝を総括】(2007年6月26日付中日新聞より)

【ワシントン=立尾良二】北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議の米首席代表で、訪朝を終えて帰国したヒル国務次官補は二十五日、国務省で会見し、「今後二週間が六カ国協議の過程において非常に重要になる」と指摘。北朝鮮が寧辺(ニョンビョン)の核施設の稼働停止に着手すれば「七月の第二週にも首席代表者か、公式か非公式か、いずれかの六カ国協議を開きたい。各国と調整する(議長国の)中国次第だ」と述べた。

次回六カ国協議で話し合う「次の段階の措置」として「北朝鮮のすべての核計画の完全な申告や核施設の無能力化などを立案する」と説明。「初期段階の措置がすべて履行されれば、二〇〇七年末までに核施設の無能力化を期待する。〇八年には、完全な非核化の最終段階に取り組むだろう」との見通しを示した。

核施設の無能力化とともに、朝鮮半島の平和体制構築などもテーマになるが、「長い道のりだ」と指摘。米国、中国、韓国、北朝鮮の四者による朝鮮半島の和平協議や、北東アジアの安全保障を話し合うフォーラムのような組織の導入、米朝関係などの作業部会の前進に期待しつつ、米朝の国交正常化については「完全な非核化が実現するまであり得ない」と述べた。(以上)

ヒル国務次官補は、《核施設の無能力化とともに、朝鮮半島の平和体制構築などもテーマになるが、「長い道のりだ」と指摘》しましたが、長い道のりであっても、道が平坦でなかったとしても、平和的手段による問題の解決路線、憲法9条の規定のように国際紛争を解決する手段として、武力による威嚇や行使をしないとする路線が、確固として揺るぎないものであれば、朝鮮半島の平和体制の構築という目標に到達できると思います。6者合意ができたのは、米国の北朝鮮政策が融和路線に転換したことが第一に挙げられます。

朝鮮半島の平和体制の構築が出来る方向に向かえば、朝鮮半島有事を想定し、米国がその有事に介入し米軍が攻撃を受けた場合に、日本が集団的自衛権行使を発動するような体制を取る必要はありません。日本が改憲をして海外で武力行使を可能にすることをアジアの国は警戒をしております。特に日中・太平洋戦争を自存自衛と考えるような政治家たちが幅を利かすような日本になればなおさらにアジアの国は警戒心を高めます。

日本は改憲をして軍事的な体制を強化するより、現行憲法の理念を生かすことこそ、アジアの平和に貢献できます。

矛盾に満ちた安倍首相の言葉/山崎孝

2007-06-25 | ご投稿
【「真実」刻み継ぐ/慰霊の日 遺族ら歴史歪曲危ぐ】(沖縄タイムスより)

慰霊の日の二十三日、県内各地で沖縄戦の犠牲者を悼む慰霊祭が行われ、六十二年を経て癒えない悲しみと痛み、惨禍を繰り返さない非戦の誓いを新たにした。高校歴史教科書の検定で「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与が削除されたことに、遺族や学徒同窓会などからは、歴史を書き換えようとする国への怒りの声や次代への沖縄戦の継承を訴える声が相次いだ。

糸満市摩文仁の平和祈念公園で行われた県主催の沖縄全戦没者追悼式で、県遺族連合会の仲宗根義尚会長は「集団自決」問題に触れ、「『集団自決』は、我が国唯一住民を巻き込んだ地上戦があった故に惹起した。生き残りや多くの方々の証言で紛れもない真実である」と述べた。(以下略)

朝日新聞は、《県主催の沖縄全戦没者追悼式で、安倍首相は「筆舌に尽くし難い塗炭の苦難を経験されたことを私は大きな悲しみとする」とあいさつ。在日米軍の再編に触れ、「沖縄の負担を確実に軽減していかなければならない。県民の切実な声に耳を傾け、再編を着実に推進していく」と述べた。

式典終了後には教科書検定問題についての記者団の質問に対し、「審議会で学術的な観点から検討している」と述べた。

一方、仲井真弘知事は平和宣言で「沖縄戦の真実の姿を次の世代に伝え、その教訓をいかすことに私たち一人、一人が胸に刻み、平和の実現のために日々努力することが求められている」とし、基地問題については「過重な負担が続いており、事件や事故、騒音に悩まされている。私たちの望む状況からかけ離れている」と訴えた》と報道しています。

安倍首相が「筆舌に尽くし難い塗炭の苦難を経験されたことを私は大きな悲しみとする」と、本当に思っているならば、県遺族連合会仲宗根義尚会長の「生き残りや多くの方々の証言で紛れもない真実である」という言葉に耳を傾けなければならないと思います。教科書検定問題についての記者団の質問に対し、「審議会で学術的な観点から検討している」とは言えない筈です。

その審議会は、学術的な観点ではなく、審議会に文部科学省の関与があることが明らかになっています。(詳しくは参考情報をお読みください)

その審議会の「学術的な観点」も怪しげなものです。名誉毀損と出版差し止めを求めて大江健三郎氏と岩波書店を訴えた裁判の原告側だけの主張を「検定の参考資料」にしています。「学術的な観点」という客観的観点の偽装をしてはいけないと思います。また、「学術的な観点」に忠実であるならば、政治的立場を異にしながらも文部科学省に検定の撤回を求めることで一致した沖縄県議会や沖縄41自治体のほとんどの議会が検定の撤回を要求した事実を直視しなければなりません。

安倍首相が「沖縄の負担を確実に軽減していかなければならない。県民の切実な声に耳を傾ける」のが本心であるならば、自らが総裁を務める自民党が推薦して知事になった仲井知事の「私たちの望む状況からかけ離れている」と言う訴えに耳を傾けなければなりません。政府の政策や説明では沖縄の人たちを説得できず、安倍首相が最高指揮権を持つ自衛隊の艦船まで派遣して恫喝と受け取れるような態度を示したことは「県民の切実な声に耳を傾ける」態度ではありません。安倍首相の言葉「県民の切実な声に耳を傾け、再編を着実に推進していく」ことは整合性を保てないのです。

在日米軍の再編が効果的に機能するために、米国は日本に集団的自衛権行使の出来る憲法を求めており、中日新聞は《安倍晋三首相(自民党総裁)ら各党党首が6月24日、NHKなどの報道番組に相次いで出演した。首相は3年後の国民投票法施行で改憲発議が可能になることを踏まえ「3年後に改正を目指していくことを国民に宣言する必要がある」と、7月の参院選の争点として訴えていく考えを表明》と報道しています。日本人の集団的自衛権行使はいらないとする世論よりも米国の声に耳を傾けています。私たちは、集団的自衛権行使は不要という声を参院選に反映させなければと思います。

参考情報【文科省「関与」鮮明に 修正前提の審査求める「集団自決」検定】(沖縄タイムスより)

二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で文部科学省が、教科書を審査する教科用図書検定調査審議会に提示した調査意見書の決裁資料に、教科書会社から提出された記述通りに検定の合否判定をせず、修正後に審査するよう求める具体的記述があることが二十二日、分かった。民主党の川内博史衆院議員(比例・九州ブロック)が入手した文科省の原義書(決裁書)で明らかになった。局長、審議官、課長、教科書調査官ら検定に関係する主要な事務方の決裁印があり、審議会への文科省側の「関与」があらためて浮き彫りになった。(吉田央)

原義書は教科書調査官がまとめた調査意見書を、所管の初等中等教育局が決裁した内部資料。調査対象の教科書を提出した会社別に受理番号、教科、種目などが記されている。

それぞれの教科書の「調査結果」の項は、「上記の申請図書(教科書)は、別紙調査意見書のとおり検定意見相当箇所がある」と指摘。その上で「合格又は不合格の判定を留保し、申請者(教科書会社)によって修正が行われた後に再度、審査する必要がある」と記述し、調査意見書に沿った検定意見を付すよう求めている。

調査意見書は日本史教科書に対する指摘事項で、沖縄戦「集団自決」への軍関与を「沖縄戦の実態について誤解する恐れのある表現である」と記述。これとまったく同じ表現が、審議会での審議を経て教科書会社に示された検定意見書に記載された例があることが明らかになっている。

伊吹文明文科相は国会で「文科省の役人も、私も、安倍総理も一言も(=口出し)できない仕組みで教科書の検定は行われている」と答弁しているが、調査意見書の作成段階で文科省が容喙「口出し」し、検定の方向性を決めていた構図が鮮明になっている。

川内氏は「はんこ(決裁印)は文科省の意思として押されており、記述を変えさせた判断が文科省側にあったことは明らかだ」と指摘している。(以下略)

参考情報 沖縄の人たちの真実を求める声(沖縄タイムスより)

沖縄戦の実相が揺さぶられる中で迎えた慰霊の日。二十三日、糸満市の「平和の礎」にある座間味、渡嘉敷両村の刻銘碑を背に、「集団自決(強制集団死)」体験者たちが消せない記憶を語った。家族も聞いたことがない初めての証言。亡くした家族への誓い。高校の歴史教科書から「集団自決」への日本軍の関与が削られた文部科学省の教科書検定は、逆に危機感を生み、重い口を開かせた。各地の慰霊祭でも、せきを切ったような怒りの声。若い世代は、そんなお年寄りたちの姿をまっすぐに見つめた。

「おじが刃物」首に傷/座間味出身 松山さん 松山茂子さん(80)=那覇市=の首の左側には、よく見ると白い筋が残っている。座間味島の「集団自決」でカミソリを当てたあとだ。一緒にいたおじが「どうせみんな死ぬんだから、あんたから」と、首筋にカミソリを当てた。しかし松山さんが、泣いて激しく嫌がったので、おじは途中でやめたという。久しぶりに訪れた「礎」の前で、初めて「自決」を語った。記者たちに急に質問され、心の準備ができていなかったからか、答えが混乱する。それでも、長時間答え続けた。歴史教科書の検定問題の話になると「許せません。子どもたちに、戦争は、きれい事でなく、怖いものだとちゃんと教えないと駄目だ」と語気を強めた。

何となく母と「自決」の関係を感じていた娘たちも、初めて聞く具体的な話に驚き、記者と一緒に聞き入った。松山さんは「あんたたち記者が聞くから、話したんだよ」と笑ったが、娘たちは、「座間味の知人が新聞やテレビで証言しているのを見て、母も黙っておれなかったのだろう」と思う。「母の半生をまとめて残そう」。姉妹でそう相談している。

死地脱出「川 血染め」/渡嘉敷出身 高嶺さん 渡嘉敷島出身の高嶺繁昌さん(68)=糸満市=は沖縄戦当時、六歳だった。「集団自決」の現場となった「第一玉砕場」に集められ、親戚十数人と座り込んだ。そこへ防衛隊員のおじが来た。「ここは死に場所だ。逃げろ」と教えられ、死地を脱した。

皆で川の下流へ逃げた。「流れが血で真っ赤に染まったのを鮮明に覚えている。血だらけの人が歩いてきた」。生死を分けたのは「情報」の差だった。

教科書検定で、またも恣意的な情報が史実として伝わることに危機感を募らせる。「真実は一つ。右も左もない。政府はなぜへし曲げるのか」と強い口調になった。

この日、礎に刻まれた父や妹に語り掛けた。「大丈夫、心配するな。生き残っている私たちが真実を守る。これだけ証言する人がいるんだから、いつか本土政府も謝ってくれるよ」

米軍再編に関わる費用 日本側負担は30兆円/山崎孝

2007-06-24 | ご投稿
(6月23日付沖縄タイムスより)

【東京】在日米軍のライト司令官(空軍中将)は二十二日、都内で講演し、在日米軍再編にかかる経費全体の日本側負担について「おおざっぱにいって大体二百六十億ドル(約三十兆円)くらいではないかといわれている」と説明した。

米軍再編経費については二〇〇六年四月にローレス米国防副次官(当時)が同様に「計二百六十億ドル」と明らかにしたものの、日本国内での強い反発が起こったことから、それ以来公言されることはなかった。

ライト司令官は「ローレス氏が推計した額」としたが、今回の発言は、現在も日本側負担額が約三十兆円に上ると米側が認識していることを示したものといえる。

ライト司令官は日本の国内総生産(GDP)に占める防衛費の割合が低いことを指摘した上で、「大きな額と思われるかもしれないが、もし有事が起きたとき、あるいは戦争がこの地域で起きたとするならば、比較にならない幾何級数的な額になるはずだ」と強調した。

一方、最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター十二機を米軍嘉手納基地に暫定配備したことについて、「われわれは、空軍の最も近代的な兵器の展開能力を実証できたと思っている。新しい環境の下での効果的な訓練を行うこともできた。この訓練においては日本の航空自衛隊のカウンターパートとともに行うことができた」と語った。

同基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)配備については「抑止にもなるし防衛にもなる。潜在的な敵にとっては、彼らの攻撃の成功の確率がそれだけ低くなるということを知らしめることができる」と意義を強調した。(以上)

米軍再編の一例を挙げれば、南西太平洋・インド洋地域での航空作戦を計画、実行、統制する任務を持ち、長距離爆撃機や空中給油機の前進配備拠点で、米本土から中東などへの出撃中継基地にもなっている、グアムのアンダーセン基地にある米第一三空軍は同司令部を廃止し、横田基地にある米第五空軍司令部に統合します。これにより、同基地に置かれる新たな司令部は、西太平洋からインド洋、アフリカ東海岸までの広大な地域全域を管轄することになります。日本は横田基地に、航空自衛隊の全戦闘部隊を指揮・統括する航空総隊司令部(東京都)を横田基地に移転して日米の航空司令部の連携を図っています。

この一例だけでも在日米軍の再編は、米国の世界戦略のためのものであることがわかります。そのための費用を日本に負担させるものです。日本は恒常的に在日米軍の駐留経費の約70%を負担しています。

自民党の改憲の大きな目的は、言うまでもなく、日米が連携し軍事行動するときの障害になっている集団的自衛権の行使を可能にすることです。自民党は自衛隊の海外派遣のための「恒久法」の制定も検討しています。恒久法は自衛隊を国連平和維持活動や海外の大災害の救援活動以外で、アフガニスタン戦争、イラク戦争などのような事態に米軍を支援するためにその都度法律を作らなくても、米国の関わる有事に自衛隊が即応できる根拠とする法律と言われています。世界的な規模で行動する米軍の道連れにならない歯止めとして憲法の規定の大切さを国民に宣伝しなければと思います。

麻生外相 米の北朝鮮政策を批判/山崎孝

2007-06-23 | ご投稿
本題に入る前に、東奔西走といわれるヒル米次官補の行動と成果を紹介します。

【北朝鮮が「無能力化」準備 ヒル米次官補が会見】(2007年6月22日付中日新聞より)

【ソウル22日共同】北朝鮮訪問を終え韓国入りした北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補は22日午後、ソウルで記者会見し、北朝鮮側が、2月の6カ国協議で合意した核放棄に向けた「初期段階措置」の次の段階の措置となる、核施設の「無能力化」についても準備ができていると明らかにした。

次官補はまた、訪朝で同合意を履行する意思を再確認し、北朝鮮側が寧辺の核施設の稼働を速やかに停止する意思を示したと強調。6カ国協議の北朝鮮首席代表の金桂冠外務次官との会談について「具体的で実質的、有用な論議だった」と述べた。

北朝鮮に対して日本人拉致問題の解決を促した上で、日朝関係の改善が重要だと伝えたとも語った。

次官補はソウルで韓国首席代表の千英宇外交通商省平和交渉本部長と会談し、その後、共同記者会見した。

次官補によると、北朝鮮側と6カ国協議の首席代表会合や、6カ国外相会議の早期開催などについても、共に支持すると話し合ったという。(以上)

特にアジアに住む人であれば、6者協議の具体的な形の進展を喜ぶ筈なのに、このヒル米次官補の行動を冷ややかな視線でみる外務大臣がいます。6月22日の朝日新聞の記事を紹介します。

【米の北朝鮮政策 麻生外相が批判「焦れば足元見られる」】

麻生外相は22日の閣議後の記者会見で、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮資金問題への米国の対応について「少々時間がかかりすぎた。他の国からすれば、(米朝)2カ国の問題で4カ国が待たされている」と批判した。6者協議の米首席代表、ヒル国務次官補の訪朝に関しても「焦って(北朝鮮に)行っているが、焦って足元を見られるほどアホらしい話はない。安易に譲ってもらいたくない」と注文をつけた。

 麻生氏は「米国務省が予定したこととはかなり違った方向に行き、『うまくいかなかったかな』と反省の意識があるのではないか。金融業界に与える影響が理解できていなかった。政策判断としてちょっと違った」とも語り、重ねて米国の対応、を批判した。(以上)

6月4日の参院拉致問題特別委員会で塩崎官房長官は、日朝国交正常化は、北東アジアの平和と安全に不可欠との認識を示し、「拉致問題を含む日朝関係の進展が見られれば、(日本は)六者会合の他の分野においても、これまで以上の積極的な役割をする用意がある」と答えました。この政府の方針と照らして、政府の方針を具体的に進める任務を持っている麻生外務大臣の冷ややかな態度は、政府が表明した「日朝国交正常化は、北東アジアの平和と安全に不可欠との認識」という方針に沿って努力しようとする姿勢であるとは思えません。6者協議の初期段階への進展は日朝正常化交渉にとっても不可欠な条件です。初期段階の措置を北朝鮮が取らなければ、拉致問題を含めた日朝国交正常化交渉は難しくなります。

日本政府は拉致問題で北朝鮮と交渉しようにも北朝鮮は拒否してきました。6者合意の中で日朝正常化の部会が設けられたためにとにもかくにも交渉が出来ることになったのです。日本政府は経済制裁で北朝鮮を締め上げ、根を上げさせて北朝鮮が折れてくることを計算していましたが、経済制裁の政策は機能しませんでした。

麻生外務大臣は、ヒル国務次官補の行動を「焦って足元を見られるほどアホらしい話はない。安易に譲ってもらいたくない」と批判していますが、6者協議の合意で既に5カ国がやるべきこと、北朝鮮がやるべきことが決まっており、米国が積極的な行動をしても、足元を見透かされるような状況を起こることはありません。国力が疲弊した北朝鮮にとっては5カ国からの経済支援を受けることは国家を経営するためにもとても大事なことです。6者協議の合意「核施設不能化」を行なわない限り、重油95万トン相当のエネルギー支援や人道支援などは受け取れません。この「核施設不能化」の状況は、北朝鮮以外の機関が検証し確認を得なければならないことになっています。「核施設の不能化」を行なえば、ミサイルが威力を発揮するために搭載できる核弾頭の小型化は出来ないと思います。

6者合意の初期段階は、北朝鮮が寧辺の核施設閉鎖と国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れ、その見返りに重油5万トン相当のエネルギー支援を開始する。米国のテロ支援国家指定解除などの論議を始めるとしている。「核施設不能化」の段階で、重油95万トン相当のエネルギー支援や人道支援などを5カ国が行うことも明記されています。

麻生外務大臣は米国にけちをつけるのではなく、北東アジアの平和と安定の成果を得るという立場にたって行動して欲しいと思います。

自民党政治が目指す国の有り様が読み取れる法律が成立/山崎孝

2007-06-22 | ご投稿
【教育関連3法が成立 学校現場、国の関与強化】(6月21日付中日新聞より)

◇空自派遣を2年延長する改正イラク特措法も成立

安倍内閣が今国会の最重要法案と位置づけてきた教育関連三法と、航空自衛隊のイラク派遣を二年間延長する改正イラク復興支援特別措置法が、二十日の参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数でそれぞれ可決、成立した。

民主党は同日、両法をめぐって参院外交防衛、文教科学両委員会で十九日に採決が強行されたことを受け、田浦直、狩野安両委員長に対する解任決議案を相次いで提出。両決議案は参院本会議で自民、公明の与党の反対多数で否決された。

教育関連三法は、学校教育法、地方教育行政法、「教員免許法および教育公務員特例法」の改正法で、それぞれ学校現場に対する国の関与を強める内容が含まれた。

改正学校教育法は、義務教育の目標として「国と郷土を愛する態度」を新たに明記。幼稚園や小中学校などの指導体制を強化するため、副校長、主幹教諭、指導教諭を新設した。

教育委員会改革を柱とする改正地方教育行政法は、国の教委に対する関与を強化。緊急に児童・生徒らの生命を保護する必要が生じた場合には文部科学相に指示権を付与する。改正「教員免許法および教育公務員特例法」は、終身制の教員免許を二〇〇九年四月から有効期間十年の更新制とする。

一方、改正イラク復興支援特措法は、七月末までの自衛隊派遣期限を二年間延長するもので、政府は八月以降も空自のイラク派遣を継続する。

特措法は二〇〇三年七月、四年間の時限立法として成立。空自は現在、クウェートを拠点にバグダッドなどとの間で米軍を中心とした多国籍軍と、国連の要員、物資の空輸を続けている。(以上)

航空自衛隊がとても非戦闘地域とは思えない状況のもとで活動していること、イラク人が自衛隊の活動をどのように受け止めているか、空自の活動がNGO活動に支障が出ていることなどを報道した6月21日付朝日新聞記事からを抜粋して紹介します。

ミサイル攻撃の《「(警報が鳴る)可能性が常にある。一度、空へ上がったら下りられる保証はない。そんな意識で、すぐに対応できるよう準備しつつ飛ぶ」と小林3佐は心得を語る》

《2度、イラクに派遣されたロードマスター(空中輸送員)の新納博文1曹(40)も「実戦的な訓練は重ねている」と話す》

《派遣が長期化する一方で、空自の活動実態は不透明なままだ。小牧基地幹部も「積み荷の中身は答えられない」と固く口を閉ざす》

【「米軍を支援」現地で浸透】 「日本の部隊は米軍を支援していると、地元では多くの人が知っている」。米軍と武装勢力の戦闘やテロが続くイラク中部の都市ラマディで破壊された学校や診繚所の再建活動にあたるカーシム・トゥルキさん(30)は、イラクの人々の認識をそう語る。

 激戦地のため実態がよく知られていないラマデイの様子をブログで伝える活動もしている。

 カーシムさんによると、ラマディでは米軍の空爆や掃討作戦が続き、多くの民間人が命を落としている。市内の大学や学校は米軍の基地になり、ガラス工場が刑務所になった。交通事故で重傷を負った兄を病院に運ぼうとして米軍の検問に止められ、兄はその場で死んだ。3歳のおいは精神的なショックを受け、米軍戦車の音を聞くと、部屋に逃げ込む。

 NGO「セイブ・イラクチルドレン・名古屋」代表・小野万里子弁護士)は03年の設立後、白血病のイラク人少年を治療のために日本へ招き、薬や医寮器材をイラクヘ贈った。昨年3月と7月には、カーシムさんのグループへ学校用の机やいす、黒板などを贈る活動に協力した。

小野代表は「日本は米軍の軍需物資を運んでいるというの常識となってきたために活動がやりにくくなっている」と話す。(以上)

《教育関連三法は、学校教育法、地方教育行政法、「教員免許法および教育公務員特例法」の改正法で、それぞれ学校現場に対する国の関与を強める内容が含まれた》と報道するように、教育に対して国家の統制力を強めて、国家の方針に対して従順な教師群を作り上げ、その教師に教わる子どもたちも国家の方針に従順な国民を育てようとする法律です。

一方では従軍慰安婦問題、沖縄戦における住民集団自決に関して、旧軍隊の非道さを覆い隠して、軍隊に対する警戒心を取り払うことに腐心しています。自民党が改憲して「自衛軍」という軍隊を持つことと無関係ではありません。

改正イラク特措法は、イラク戦争の誤りが明々白々なのに、これを無視して米国に盲目的に追従し、自国民を危険に晒すことを厭いません。そしてイラク特措法で自衛隊の活動は非戦闘地域で活動しなければならないとした規定さえ守りません。

NGOの代表が「日本は米軍の軍需物資を運んでいるというの常識となってきたために活動がやりにくくなっている」と話すように、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」という名前がついた法律で、自衛隊が活動することが本物の人道支援活動に悪影響を与えています。

教育関連三法と改正イラク特措法は、自民党が目指す国の有り様が読み取れる法律といえます。

6者協議関係の情報/山崎孝

2007-06-21 | ご投稿
【ヒル次官補:来月にも6カ国協議再開を 佐々江局長と会談】(6月19日付毎日新聞より)

北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議で米首席代表を務めるヒル国務次官補が6月19日、日本を訪れ、外務省で日本首席代表の佐々江賢一郎・同省アジア大洋州局長と会談した。両氏は北朝鮮が核廃棄に向けた初期段階措置の履行に動き出したのを受け、6カ国協議の再開について、初期段階措置の実施確認後に行うべきだとの方針で一致。ヒル次官補は会談後、「早ければ7月にも協議を再開したい」と記者団に語った。

ヒル次官補は、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)にある北朝鮮関連資金の送金問題について「基本的に決着がついた」と述べた。佐々江局長は6カ国協議再開に関し「拉致問題を解決して(日朝)関係を改善することが重要だ」と指摘。ヒル次官補も支援の考えを示した。

ただ、6カ国協議の進展に向け対北支援に傾く米国と、拉致問題の進展なしには支援に応じない日本の温度差は、ここへ来て再び目立ち始めている。ヒル次官補は再開後の協議について「(初期段階措置後の)『次の段階』に焦点を当てるべきだ」と述べ、初期段階措置を受けた各国の「見返り」支援を議題とする必要性を強調した。

協議が7月下旬の参院選とぶつかれば、安倍政権は選挙で対北強硬姿勢を訴えつつ、6カ国協議で国際協調にも配慮する難しいかじ取りを迫られそうだ。【尾中香尚里、大前仁】

【7月上旬にも6カ国協議 ヒル米次官補が見通し】(6月20日付中日新聞より)

北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補は20日、外務省で谷内正太郎事務次官と会談後、記者団に対し、6カ国協議が7月上旬にも再開可能との見方を示した。

ヒル次官補は「中国は7月上旬に何かできると考えている」と述べ、議長国中国と密接に相談しながら6カ国首席代表会合などの調整を図る意向を示し、「(米独立記念日の)7月4日の直後ぐらいに開ければ」と語った。

6カ国外相会合については、8月2日の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の前後に開催される可能性を指摘した。

次官補はまた、20日の帰国予定を21日に延期したことを明らかにした。(共同)

【北朝鮮支援:米、「初期段階措置」履行なら200万ドル】(6月19日付毎日新聞より)

【ワシントン笠原敏彦】北朝鮮が6カ国協議の2月合意に基づき核施設の稼働停止・封印など「初期段階措置」を履行した場合、米政府は見返りとして200万ドル(約2億4000万円)相当の緊急人道支援を行う方針であることが18日、分かった。複数の米政府当局者らが毎日新聞に語った。6カ国協議が今後前進した場合、積極的な支援に転じた米国と拉致問題の進展がない限り支援に参加しない方針の日本との溝は一層鮮明になりそうだ。

2月合意では、北朝鮮の初期段階措置の履行に対し他の5カ国が重油5万トン相当の支援を行うと規定。この5万トンは韓国が単独で支援することが決まっており、米国の支援は合意の枠外の追加的な支援となる。米政府は北朝鮮の病院などに小型発電機を贈ることを検討していると表明していたが、具体的な支援規模が明らかになるのは初めて。

米政府当局者によると、米国は当初、重油5万トン相当の支援の一部として人道援助を行う考えだった。しかし「韓国は米国がこれほど迅速に支援に乗り出せるとは思わず、早々と単独支援を決めてしまった」(同当局者)ため、合意の枠外で独自に支援を行うことになった。

計画の検討にかかわった元米政府高官は「韓国だけでなく米国も初期段階で支援を行うのは、米国の2月合意への関与を示すことが目的だ」と説明する。米国には支援により北朝鮮に核放棄への取り組み強化を促したい思惑がある。

米国は3月の6カ国協議の経済・エネルギー支援作業部会で「非政府組織(NGO)を通じて北朝鮮の病院などに小型発電機を贈ることを検討している」と表明した。発電機が支援の検討対象になったのは、米世論の抵抗が少ない人道支援の名目で事実上「エネルギー支援」に参加する狙いがあったとみられる。なお、具体的な支援内容は正式にはまだ決まっていないという。

【ヒル米次官補が初訪朝 初期段階措置の履行促す】(6月21日付中日新聞より)

【北京21日共同】新華社電によると、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補が21日、北朝鮮の平壌を初めて訪問した。米国務省当局者によると、訪問は2日間の日程で、北朝鮮首席代表の金桂冠外務次官と会談する予定。

2月の6カ国協議で合意した寧辺の核施設稼働停止など、初期段階措置の早期履行を北朝鮮側に促し、米朝間の信頼を醸成するのが目的。訪問は北朝鮮側の招きによるものといい、対米関係改善の転機にしたいとの意向があるとみられる。

米国務次官補の訪朝は2002年10月のケリー国務次官補以来。今年4月にはリチャードソン米ニューメキシコ州知事やビクター・チャ国家安全保障会議(NSC)アジア部長が訪朝している。

ヒル次官補は19日から日本に滞在、21日に米国に帰国するとみられていた。新華社電などによると、次官補は米軍横田基地から韓国中西部の米軍基地経由で平壌に到着した。(以上)

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の初会合が5月18日に開かれたとき、安倍首相は、北朝鮮の核開発や弾道ミサイルの問題などをあげて、日本を取り巻く安全保障環境は格段の厳しさを増していると述べました。紹介した新聞の情報を見れば、安倍首相の情勢認識は北朝鮮の核実験以後のアジアの情勢を見ているとは思えません。

《北朝鮮が6カ国協議の2月合意に基づき核施設の稼働停止・封印など「初期段階措置」を履行した場合、米政府は見返りとして200万ドル(約2億4000万円)相当の緊急人道支援を行う方針であることが18日、分かった》、《2月の6カ国協議で合意した寧辺の核施設稼働停止など、初期段階措置の早期履行を北朝鮮側に促し、米朝間の信頼を醸成するのが目的。訪問は北朝鮮側の招きによるものといい、対米関係改善の転機にしたいとの意向があるとみられる》という報道は、6者協議を成功させようとする米国のなみならぬ意欲を感じます。また、北朝鮮も6者協議を成功させる意欲を持っていると思われます。

ヒル国務次官補は、6カ国外相会合については、8月2日の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の前後に開催される可能性を指摘しました。このARFは既に紹介していますが、再度紹介します。日本の外務省のARF評価は《ARFはアジア太平洋地域における安全保障面での対話と協力の場として緩やかではあるが、着実に進展していると評価できる》。ARFは1》信頼醸成の促進、2》予防外交の進展、3》紛争へのアプローチの充実、という三段階のアプローチを設定して漸進的な進展を目指しています。

日本政府は6者協議や6カ国外相会合が開かれた場合や、8月に開かれるARFに参加してどのような態度を表明するのでしょうか。

アジアの情勢は、中国や北朝鮮の脅威を煽り立てて、日本の周辺事態を想定しそれに対応するために、日米軍事同盟を強化のための集団的自衛権行使を可能にする、解釈改憲や明文改憲を行なう根拠として説得力を失いつつあります。