いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

日中が共に未来をつくりあげるために/山崎孝

2007-12-29 | ご投稿
2007年12月29日付朝日新聞より 福田首相は12月28日、北京大学で講演し、日中間の歴史について、「不幸な時期を直視し、子孫に伝えていくことが我々の責務だ。過去を見据え、反省すべき点は反省する勇気と知恵があって、はじめて将来に誤りなきを期すことが可能になる」との認識を示した。そのうえで、日中両国が「今ほどアジアや世界の安定と発展に貢献できる力を持ったことはない」と指摘。アジアや世界の未来を築く「創造的パートナー」であるべきだと訴えた。

一方で、両国関係の現状について、「相互理解や相互信頼がまだまだ足りない」と指摘。「日中関係の歴史や様々な経緯、国際情勢の流れに思いたさない大局観の欠如、折々の感情に流されて事を進める危険性も指摘しなければならない」と述べ、日中双方における、日本に留学していた作家魯迅の作品「故郷」の一節「もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になる」を引用。「共に歩き、共に道を造り、共に未来をつくりあげていこう」と呼びかけた。(以上)

15年戦争の戦争指導者を神として祀る靖国神社に参拝するか、しないのかの態度を明確にせず、腹に一物をもった安倍前首相とは違い、福田首相は明確に日中の負の歴史に言及し反省する態度を明確にし、そのことが「将来に誤りなきを期すことが可能になる」と指摘しました。

福田首相は、魯迅の作品「故郷」の一節「もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になる」を引用しました。日本国憲法第9条の理念は、国連憲章の第2条〔原則〕《4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力よる威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない》と一致していて、「歩く人が多くなれば、それが道」になって示されています。

日中が福田首相の述べた、共に歩き、共に道を造り、共に未来をつくりあげてゆくためにも、日本国憲法の理念に立脚することが大切だと思います。中国とも敵対することを想定した軍事志向の改憲の道では決してありえません。

投稿文で振り返る2007年/山崎孝

2007-12-28 | ご投稿
本年を振り返って、私の幾つかの投稿文をまとめてみました。

2007年1月23日付け朝日新聞「声」欄掲載文【アジア政策と矛盾する改憲】

14日の「日中韓報道声明」は、3カ国首脳は地域全体の安定のために行動し、相互の尊厳と理解に基づく政治的信頼を強化、政治・外交課題を調整するため、局長級以上の事務レベルの協議組織の創設で合意した、となっている。

また、この日の東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国の首脳会議では、東アジア共同体の創設に向けた取り組みの強化が確認された。日本は東アジアの平和と安定をはかるための6者協議に参加している。

これらのアジア外交は、憲法前文の諸国民の公正と信義に信頼して安全と生存を保持するという理念にかなっていると思う。しかし、安倍首相は17日、自民党大会で「憲法改正に取り組む」と、改憲への強い意欲を示した。その根底にある考え方は、アジアのある国に不信を抱き日本の周辺事態を想定。それに対応するために、日米同盟で集団的自衛権行使を可能にして、軍事同盟を一段と強化することにある。

安倍首相のアジア政策と改憲は整合性や統一性がなくねじれている。アジアの動向に対応し、信頼されるアジア外交を展開するには現行憲法がふさわしい。



2007年1月23日付け朝日新聞「声」欄掲載文【アジア政策と矛盾する改憲】

14日の「日中韓報道声明」は、3カ国首脳は地域全体の安定のために行動し、相互の尊厳と理解に基づく政治的信頼を強化、政治・外交課題を調整するため、局長級以上の事務レベルの協議組織の創設で合意した、となっている。

また、この日の東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国の首脳会議では、東アジア共同体の創設に向けた取り組みの強化が確認された。日本は東アジアの平和と安定をはかるための6者協議に参加している。

これらのアジア外交は、憲法前文の諸国民の公正と信義に信頼して安全と生存を保持するという理念にかなっていると思う。しかし、安倍首相は17日、自民党大会で「憲法改正に取り組む」と、改憲への強い意欲を示した。その根底にある考え方は、アジアのある国に不信を抱き日本の周辺事態を想定。それに対応するために、日米同盟で集団的自衛権行使を可能にして、軍事同盟を一段と強化することにある。

安倍首相のアジア政策と改憲は整合性や統一性がなくねじれている。アジアの動向に対応し、信頼されるアジア外交を展開するには現行憲法がふさわしい。



2007年2月19日付け朝日新聞「声」欄掲載文【6者の合意を活用すべき】

北朝鮮の核問題をめぐる6者協議が、合意文書を採択しました。これで北朝鮮の非核化の方向へ一歩前進したと思います。

合意文書にあるように、北東アジア地域の永続的な平和と安定のために共同の努力をすれば、平和への道は開かれると思います。

協議を前進させたのは、米朝のこれまでにない真剣な対話姿勢と関係国が協議を成功に導きたいという熱意だったと思います。

ボルトン前米国連大使の「核開発を止めさせるためには政権の崩壊しかない」とか、ペリー元米国防相の「北との交渉は核施設に対する爆撃の可能性を圧力として使いながら行うべき」という考え方ではありませんでした。北朝鮮に対し、厳しい姿勢を貫いてきた安倍政権に影響を期待したいと思います。

前進できた考え方は、憲法9条の「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争の解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という理念と合致していました。

合意文書で、日朝国交正常化作業部会設置が決まり、これまで会談を拒否されてきた拉致問題も話せる場が出来ました。この場を大局的見地に立ち、活用すべきだと思います。



2007年4月7日付朝日新聞「声」欄掲載文【国民投票法に最低投票率規定を】

 先月末にあったエジプトの憲法改正の国民投票は、75・9%の賛成であった。しかし、投票率は27・1%と低く、国民の総意が反映したとは言えない形で、承認を得る結果となった。

これは国民投票を有効とする「最低投票率規定」がなかったからではないか。

日本の憲法改正手続きを定める国民投票法の与党案には最低投票率規定が設けられていない。新潟市での同法案の地方公聴会では4人の公述人のうち3人が最低投票率規定の必要性を述べていた。

現行憲法は補則を除いて10章99条項で構成される。その条項のどこか変わって、どこが変わらないのか。条文の変更や条項が増えた意味を理解し、その是非を判断して、総合的に賛成か反対かを判断するということは、かなりの努力が要る。

この努力を面倒だと思い、自分の生活に関係がないと考えたりすると、棄権する人も多く出るのではないか。

国民の総意を反映させるためには、国民投票法には最低投票率規定は必要だと思う。

しかし、今回の国民投票法の与党案はテーマを改憲に限定している。改憲するためだけの国民投票法案には私は反対である。



9条マガジンの掲示板へ投稿【有識者懇談会 解釈改憲の答申を目論む】

集団的自衛権の研究を進めている有識者懇談会の柳井座長は、7月10日、朝日新聞社のインタビューで、集団的自衛権の行使容認を安倍首相に求める報告書を今秋まとめる意向を表明。同氏は「現実に合わない憲法解釈はもうやめるべきではないか」と語った。米国は日米同盟で集団的自衛権不行使が障害と言っているから、現実に合わすとは自衛隊と在日米軍の一体化に合わすことと思われる。秋山收元内閣法制局長官は、内閣法制局は憲法の規範的な意味を守ってきた。首相はそうした積み重ねを無視しないで欲しい。時の政府の判断で解釈を変更できるのなら、公権力を縛る憲法の意味が失われてしまう。解釈変更をしたいのなら、憲法改正で正面から対応するのが筋と話す。共同通信社の5月の世論調査は、集団的自衛権行使は憲法で禁じられているとの政府解釈に関し「今のままでよい」が62%であった。私たちはこの世論と同じ考えを参院選挙の投票行動で示さなければと思う。



2007年7月22日付朝日新聞「声」欄掲載文【憲法を生かし いのちを守ろう】

 本紙「ポリティカ日本」(16日)は、がんで余命半年と宣告された現職参院議員が「私は国会議員の仕事は人々のいのちを守ることと思った」と語る演説を紹介し、「命は大切にされているか」という観点で、政治や社会を論じていた。その結果、参院選の争点の奥底にあるほんとの争点は、「『いのちを大切にすること』から出発しているかどうかということなんだなと私も思った」と書いていた。同感だ。

 命を大切にすることを出発点にしている、と言えるのが日本国憲法だ。日中戦争、太平洋戦争を起こした日本は、憲法前文で政府の行為により再び戦争の惨禍を起こさないと決意し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持すると述べる。第9条では国家の手で人命を奪わない考えの戦争放棄の規定をした。

命を大切にすることと密接に結びついている個人の尊重を第13条でうたい、第25条では健康で文化的な最低限度の生活の保障を政府に課している。

政府が危険なイラクに自衛隊を派遣している現実やとてもひどい格差社会を見れば、憲法の精神を生かす政治こそが、国民の命と、生活を守ることになる。

2007年10月2日付朝日新聞「声」欄掲載文【戦争への道を歩まぬために】

沖縄戦での住民の集団自決死に軍の強制が無かったとする教科書の検定意見の撤回を求める決議が沖縄以外の議会でも相次いで可決されている。

 教科書に検定意見がついたのは、沖縄・座間味島の元第1戦隊長らが岩波書店と大江健三郎氏に出版差し止めとなどを求めた裁判が影響を与えたとされる。問題とされた大江健三郎著「沖縄ノート」は、1970年9月が初版。提訴は2005年8月である。

原告らが本で名誉を傷つけられと思ったのであれば、発行された時か余り重版されない段階で訴えるのが自然である。従軍慰安婦問題と同様に旧日本軍を免罪にしたい人たちの意図と結びついて裁判は起こされたものだ。

福田康夫氏は自民党総裁になった時、安倍政権が失った国民の信頼を取り返す決意を表明した。教科書の検定意見の撤回を求める意見書を安倍前首相は無視した。

福田首相は国民の信頼を回復する一つの課題として対処してほしい。戦争への道を歩まないために戦争の実相を次世代に伝えなければならない。



2007年12月6日付朝日新聞「声」欄掲載文【保護費削減は納得できない】

 11月30日付本紙で、生活保護の支給基準の見直しを行なう厚労省の検討会の報告書案の内容が報道された。低所得所帯に比べ生活保護所帯の生活費が高いため、同省は来年度からの引き下げを視野に検討に入る、という趣旨だった。

 生活保護基準は、憲法第25条の「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ことに基づいて定められている。

 同省の検討会が生活保護基準と比較して低いとした低所得者に対して、憲法に規定された国家の責任が放棄されている。低所得者を生活保護基準レベルにする手当てをするのが本来のあり方である。

生活保護を受けたくても受けられない人が多い。北九州市で生活保護を打ち切られた人が孤独死した事態さえ起こった。

 生活保護費は2007年度予算ベースで国と地方を合わせて2兆6033億円。一方、自衛隊の装備費は2兆円の規模に膨らむ。商社が接待に大金を使っても利益が見込めるから贈収賄事件が後を絶たない。

このような厚生行政や防衛行政のあり様は、庶民が納得できるものではない。

日本軍の黒い行為をぼかす/山崎孝

2007-12-27 | ご投稿
【ぼけた核心 落胆/歪曲懸念 消えず】(2007年12月27日付沖縄タイムスより抜粋)

高校歴史教科書検定問題で教科用図書検定調査審議会(検定審)は二十六日、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への「日本軍の強制」「軍命」などの記述を認めなかった。「軍関与」の表現にとどめ、九月二十九日の県民大会で決議された検定意見の撤回にも触れなかった。「日本軍の黒い行為をぼかす」「自分たちがうそをついているというのか」。「集団自決」や沖縄戦の体験者、学校関係者は怒りをあらわにした。一方、東京で記者会見した県民大会実行委員会のメンバーらは不満は残るとしながらも「記述の回復は、ほぼなされた」と一定の評価。受け止めは分かれた。

「日本軍の黒い行為が、消しゴムでこするように灰色にぼかされた。次の検定では白にするんですか」。座間味島の「集団自決」の体験者、宮城恒彦さんは憤りを抑える口調で問い掛けた。

「過ちを犯したのは日本軍であって今の政府ではないのに、認めてどんな損があるのか。不可解だ」と声を落とす。「私たち体験者がいなくなった後は、誰も事実を伝えられない。検定ごとに首相や文科相の意向で歪曲されてしまう」と将来を案じた。

渡嘉敷島で「集団自決」を体験した池原利江子さんは「私たちは、防衛隊の伝令に軍の命令だからと言われ、まさか死ぬとは思わず集合した」と強調。軍の命令を認めない文科省に「まるで私たちがうそを言っているみたいだ。怒るというより、あきれる。死んだ人がかわいそう」と憤る。「このまま、黙っていてはいけない。私たちが生きているうちに、どうにか教科書の記述を回復してほしい」と力を込めた。

慶留間島で「集団自決」を目の当たりにして生き延びた体験を持つ元座間味村長の與儀九英さんは「(軍の強制を明記せずに)『追い込まれた』というと、自決する以外にも選択肢があったように聞こえるが、当時はそんな生ぬるい状況ではなかった。個人の自由や主体性が生まれる余地はなく、軍の命令には絶対服従で、自決する以外に道はなかった」と記述の“後退”を批判した。

「日本軍の強制は入れるべき」。元女子学徒隊でつくる「青春を語る会」の中山きく会長は、納得がいかない。「受け入れられないのなら上京し、自分たちの思いを伝えたい」。戦時中、手榴弾を配られ自ら命を絶とうとした悲しい過去を忘れることはない。「これだけ生き証人がいる。日本軍の強制を入れるまで訴えていきたい」と語った。(以上)

文部科学省が検定意見の撤回をしない限り「日本軍の黒い行為が、消しゴムでこするように灰色にぼかされた。次の検定では白にするんですか」という懸念と危険性は残ります。検定時期の世論の如何によって、記述の内容は影響を受けることになると思います。

沖縄タイムスの報道【つくる会が抗議】新しい歴史教科書をつくる会は二十六日、沖縄戦の「集団自決」に日本軍の関与があったとの記述を認めた教科書検定審議会の決定について「到底容認できない」などとする抗議声明を出した。つくる会は「文部科学省は検定制度の根幹を揺るがすという重大な汚点を残した」としている。(以上)

この報道を見ても、また、「過ちを犯したのは日本軍であって今の政府ではないのに、認めてどんな損があるのか。不可解だ」という沖縄県民の疑問があるように、今回の教科書検定の背景にあるのは、沖縄住民の集団自決死を「清い死」と美化し、再び国家に殉じる精神を国民に広める。旧日本軍の行為を免罪にし、再び軍隊を持つことの障害を弱くさせる狙いがあることは明確です。このことについて切り込んだ報道がとても弱いと思います。

ハートが矢で貫かれた絵を描いた少女/山崎孝

2007-12-25 | ご投稿
12月19日、志摩国際交流教会主催「地球のステージ」という催し物を見ました。NPO法人「地球のステージ」を組織した、医師の桑山紀彦さんが、パレスチナ、震災時のイラン、カンボジア、旧ユーゴスラビア、其の他の国で、医療活動・ボランティア活動を行なった様子を映像・歌・語りで伝えました。震災時のイランを除き戦争によって心身ともに傷ついた人々の姿を伝えていました。改めて武力を使って、自らの言い分を通すことをしてはならないと思いました。

私は、民族紛争が起こった旧ユーゴスラビアで、桑山紀彦さんが出会ったアリッサという少女のことが強く印象に残りました。アリッサは6歳の時故郷のブコバルで悲惨な出来事に遭遇した。お父さんは戦争に取られて行方不明、彼女と母親、姉は倉庫の中に監禁され拷問を受けた。4ヵ月後に味方によって助け出されましたが、心因性失語症で話せなくなってしまった。

桑山紀彦さんは言葉を失った彼女に絵を描くことを薦めました。10歳の時にアリッサの描いた絵は、父親が棺の中で眠っている絵でした。12歳の時はブコバルが爆撃に遭っている絵、そして桑山紀彦さんと別れる時に描いた絵は、私の傷ついた心というハートが矢で貫かれた絵でした。

戦争という状況の中で起きた出来事はとても少女の心を傷つけました。

戦争は戦闘行動をしなかったけれど、戦争に関わった自衛隊員の心を傷つけていました。2007年12月25日の朝日新聞シリーズ記事「9条をもつ国で」/新編「あたらしい憲法のはなし」見出しは《国際貢献近づく「戦場」》という記事の抜粋です。

(前略) 陸自派遣部隊のサマワ宿営地。ある夜、何者かが放った砲弾が上空をかすめた。昨年まで自衛隊中央病院の精神科部長だった福間詳医師(50)は、隊員の精神面のケアのため滞在中だった。

 「ロケット弾より『あそこの物陰に人がいるかも』と思う方が怖い」。見張り隊員は明かした。

 現地では、派遣の使命感に加え、日常の小さなストレスと、命の危険を感じる高い緊張度のストレスが重なる。ただ、「テンション」を上げることで抑えられる。福間医師は5回サマワに入ったが、治療が必要な人はいなかった。

 影響は帰国後に出る。テンションが自然に下がり、落差からか、「イライラする」「物音をうるさく感じて眠れない」などと訴え、精神的なバランスを崩す隊員が相次いだ。暴力や酒に走る人。そして、命を絶つ人。

 政府によると、インド洋やイラクに派遣された隊員延ベ1万9700人のうち16人が自殺した。派遣との因果関係は「一概に言えない」という。

 偶然とは考えにくい。福間医師はそう思う。自殺は派遣と関係があるのではないかとの見方だ。

 「防衛省にも影響を認めている人はいるはず。支援態勢なしに危険地域に送るのは無責任だ」

  ■ 

 イラク人医師モハメッド・ヌーリ・シヤキルさん(31)は大阪大大学院で医療を学ぶ。9条のことを知り、「日本人にとって絶対的にいいものだ」と思った。

 失望もした。「じやあなぜ大義のない米国の戦争に加わったのか」。市民が次々と殺されるイラクでは自衛隊を「占領側」と見る市民も多い。

 開戦直後、バグダッドの病院で負傷者を手当てしていたころ。知識人殺害が相次ぐなかで脅迫状が届き、隣国ヨルダンに身を寄せざるを得なかった。故郷が破壊される映像に涙があふれた。

 イラクにもし9条があったら? 「できたらいいね。いつか」。一瞬考え、小さな声で言った。(小林恵士)(以上)

戦闘行動はしなかった自衛隊員でさえこのような状況が生まれました。イラクで戦争をしている米軍は、兵士が任務を離れ一定期間普通の人間の精神状態に戻る期間を設けています。しかし、イラク帰還兵を対象に2006年に医学雑誌が米軍の協力も得て調査したところ6人に1人はPTSD(心的外傷後ストレス)など深刻な精神的問題を抱えていると報告されています。帰還後、普通の生活が出来なくなり、就職が出来ない人たちも多く出ています。戦争は人間の体も心も破壊します。

薬害肝炎原告弁護団の理念は、憲法理念と重なる/山崎孝

2007-12-24 | ご投稿
【「大きな一歩」と評価 原告団、責任と謝罪を要求】(2007年12月23日東京新聞)

「大きな一歩だが、全面解決につながるかどうかは不透明だ」。福田康夫首相が議員立法による薬害肝炎被害者の一律救済に初めて言及したことを受け、全国弁護団の鈴木利広代表は23日夕、厚生労働省で記者会見。首相の決断を評価しつつも、問題解決には国が責任を認め、謝罪することが不可欠だとの認識を示した。

原告2人とともに会見に臨んだ鈴木代表は終始硬い表情。冒頭に読み上げた弁護団声明の中で、首相の発言を「いよいよ政治が大きく動き始めた」と評価したが、一方で「これまでの判決で行政の不手際や怠慢が多く指摘されており、責任と謝罪が伴わないものでは意味がない」と厳しく指摘した。

声明で、原告側は首相との面談をあらためて要求。鈴木代表は今後の見通しについて「与党は突貫作業で法案づくりをしていると思うので、どのようなものが出てくるか見守りたい」とし「全面解決には立法措置も含めた基本合意が必要で、年内は難しいだろう」と話した。(共同)

12月24日の朝日新聞は原告弁護団の声明を伝えています。

《全面解決の理念として①国は国民の命を大切にし、切捨てにしない②被害者が安心して暮らせる③薬害は繰り返さない、の3点を上げ、法が「国の責任」を踏まえてこれらの理念を実現することを要望した。》

憲法の理念は、人の命と尊厳を大切にしてすべての国民に文化的な生活を保障する。世界の人の命を大切にすることを最優先して国際紛争を武力で解決しない。

軍事的抑止という考えの軍事バランスの上に築く不安定な「平和」ではなく、相互信頼の獲得を不退転の決意で努力して、安心して暮らせる恒久平和を築く。

戦争は二度と繰り返さない。

原告弁護団の理念を憲法理念とこのように比較することが出来ると思います。薬害肝炎被害者の理念は、憲法理念と重なっていると思います。

政府の対応の冷たさに薬害肝炎訴訟の原告の流した涙は、道理のあることとして多くの国民の共感を呼びました。福田首相はこれ以上内閣支持率が落ちることは政権にとって見逃せないと考え、自民党総裁として議員立法の形で薬害肝炎訴訟原告団の意見を取り入れる姿勢を示しました。5年間を闘い一律救済と言う原則を堅持し団結力を示す。不屈の意志から出た涙は政治家を動かしました。

文部科学省は教科書の記述を「偽」にしてはならない/山崎孝

2007-12-23 | ご投稿
【「県民ばかにしている」/「軍強制」文言回避】(2007年12月22日付沖縄タイムス)

沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、文部科学省が教科書会社に日本軍による「強制」の表現を避けるよう求め、会社側もほぼ従って再申請していることが分かった。「このままでは文科省の思い通りに史実が曲げられる」。二十二日、県民大会実行委員会の危機感は頂点に達した。

県民大会実行委員長の仲里利信県議会議長は「強制記述の有無は非常に重大。内容を確認した後にコメントしたい」とした。二十五日からの東京での要請行動を控え、「県民は蚊帳の外。不退転の決意で行く」と強調した。

副委員長を務めた小渡ハル子県婦人連合会会長は「沖縄をばかにするな」。怒りは収まらず、「県民の努力を徒労に終わらせるわけにはいかない。文科相に会って検定を撤回させるまで、東京から帰らない」と語気を荒げた。

琉球大学の山口剛史准教授は「三月の検定結果発表からまったく前進がなく、史実として間違った記述になる」と批判。「柔軟姿勢を示していた文科省が強硬になったのは、強制を否定する団体の巻き返しに力を得たのではないか」と指摘した。(以上)

【軍命めぐり最終弁論/「集団自決」訴訟 大阪地裁3月にも判決】(2007年12月21日付沖縄タイムス)

沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、島に駐屯していた部隊の元戦隊長とその遺族らが、作家・大江健三郎氏の「沖縄ノート」などの著作で名誉を傷つけられているとして、大江氏や岩波書店に出版の差し止めや慰謝料などを求めている訴訟は二十一日午後、大阪地裁(深見敏正裁判長)で最終弁論が始まった。

原告と被告の双方がこれまでの主張をまとめた最終準備書面を提出。法廷で代理人がそれぞれ十五分ずつ、要旨を陳述した。提訴から約二年五カ月の審理を経て弁論は同日で終結し、来年三月には判決が言い渡される見通し。

これまでの審理で原告側は、自決命令を否定する元戦隊長らの名誉回復訴訟と位置付け、戦隊長による個別の命令について事実の立証を要求。被告側は、当時の状況から軍隊による強制や命令があったのは明らかで、戦隊長による命令も数多くの資料から真実だと反論。判決が「集団自決」の事実にどこまで踏み込むかが焦点となる。

訴えているのは、座間味島駐屯部隊の戦隊長だった梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(74)。「沖縄ノート」や故家永三郎氏の著作「太平洋戦争」で、住民に「集団自決」を命じたと記され、両元戦隊長の名誉とともに、秀一氏が兄を慕い敬う「敬愛追慕の情」が侵されている、としている。

弁論に先立ち、傍聴抽選が行われ、六十四枚の傍聴券を求めて百七十八人が並んだ。

宜野湾市から傍聴に訪れた平和ネットワーク会員の外間明美さん(41)は「沖縄戦の実相を住民からみれば、軍によって多くの被害をもたらされ、命を失うところまで追いやられたのは明らか。被告側は幾つもの新証拠で示している」と指摘し、「裁判所は、それを踏まえた判決を書いてほしい」と話した。(以上)

沖縄の高校生は県民大集会で「うそを真実と言わないでほしい.あの醜い戦争を美化しないでほしい」と述べています。

周知のように本年の日本の出来事を代表するとされた漢字は「偽」です。日本人としてとても恥ずかしいと思います。

沖縄タイムスは《文部科学省が教科書会社に日本軍による「強制」の表現を避けるよう求め、会社側もほぼ従って再申請していることが分かった。》と報道しています。このような方針で教科書が記述されれば、後世にまで沖縄戦における住民集団自決死の本質を偽って伝えることになります。本土の新聞も沖縄タイムスのように、教科書検定に関する文部科学省の動きをしっかりと伝えてほしいと思います。

周知のように「集団自決」訴訟は、文部科学省が検定意見をつけたひとつの根拠にしています。裁判所は裁判で明らかにされた事実をしっかりと踏まえて判決を下してほしいと思います。

参考情報【被告弁護人の原告への尋問の抜粋】

被告弁護人「手榴弾は重要な武器だから、梅沢さんの許可なく島民に渡ることはありえないのでは」

梅澤氏「ありえない」

被告弁護人「大江健三郎氏の『沖縄ノート』を読んだのはいつか」

梅澤氏「去年」(註、去年は2006年です。裁判は2005年8月5日に起こされています)

被告弁護人「どういう経緯で読んだのか」

梅澤氏「念のため読んでおこうと」

被告弁護人「あなたが自決命令を出したという記述はあるか」

梅澤氏「ない」

被告弁護人「訴訟を起こす前に、岩波書店や大江氏に抗議したことはあるか」

梅澤氏「ない」

被告弁護人「(梅澤の手紙を示し)あなたが昭和55年に出した宮城晴美さんへの手紙で『集団自決は状況のいかんにかかわらず、軍の影響力が甚大であり、軍を代表するものとして全く申し訳ありません』と書いているが、集団自決は軍の責任なのか」

梅澤氏「私は『軍は関係ない』とは言っていない」

被告弁護人「手紙を出した当時、軍の責任を認めているということか」

梅澤氏「関係ないとは言えないという趣旨だ。責任は米軍にある」

9条の精神を政策に反映させれば、国民負担は軽減できる/山崎孝

2007-12-22 | ご投稿
防衛予算の報道を二つ紹介します。

【米軍再編経費に191億円/防衛予算】(2007年12月20日付沖縄タイムス)

防衛省は十九日、二〇〇八年度防衛予算の米軍再編(地元負担軽減分)と日米特別行動委員会(SACO)の両関係経費を財務省に変更要求した。米軍再編(地元負担軽減分)の関係経費の総額は歳出ベースで〇七年度当初予算比約二・六倍の百九十一億七百万円を要求。SACO関係経費は五十四億二千六百万円増の百七十九億八千六百万円(歳出ベース)を求めた。

普天間飛行場移設は、移設先の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部周辺で〇七年度の継続で海象、気象、文化財調査や、海域の環境現況調査、既存施設の再配置などに、四十八億三千百万円(同)を要求。埋め立てに関する基本検討も行う。

〇七年度当初予算比三十八億二千八百万円増だが、〇七年度契約分の執行によるものだ。

「嘉手納以南六基地」の全面・一部返還は、既存施設などへの機能移転で米側との交渉に役立てるため、施設の配置検討を実施。二千九百万円増の二億千九百万円(同)を求めている。

在沖米海兵隊八千人のグアム移転では、日本側が整備する家族住宅やインフラの整備に向けた事業者選定などに関する業務を調査検討する費用として四億円(同)。

〇七年度から始まった嘉手納基地所属F15戦闘機の本土六自衛隊基地への訓練移転経費は七億五千万円増の十一億二千三百万円(同)。大規模な訓練移転に備え、新田原飛行場(宮崎県)の滑走路補強や隊舎、食堂を拡充する。

防衛省関係者によると、二十日の財務省の予算原案内示で全額が認められる見通しだ。

SACO関係経費では、「土地返還のための事業」に七十八億四千七百万円増の百三十三億四千七百万円を要求。キャンプ桑江(北谷町)の海軍病院移転経費などで、SACO関係経費全体を押し上げた。

米軍再編とSACO関係経費は八月の概算要求時には金額が確定せず、合計額を「仮置き」していたが、変更要求に合わせて精査した。(以上)

【軍事費 疑惑のなか5兆円規模 米軍再編・「ミサイル防衛」…】(2007年12月21日付「しんぶん赤旗」)

 財務省が内示した二〇〇八年度の軍事費は、前防衛事務次官の守屋武昌容疑者逮捕を発端に防衛省・自衛隊の装備調達をめぐる疑惑に対して国民の怒りが広がっているにもかかわらず、これまでの約五兆円規模をあくまで維持し続けるものになっています。

216億円増 〇七年度予算で初計上した在日米軍再編経費は、今回の財務省原案では大幅増の五百二十九億円(二百十六億円増)となりました。「ミサイル防衛」関連経費は、〇七年度に比べ若干減ったものの、千七百十四億円です。いずれも、日米の軍需企業などが利権の対象にして群がっている事業です。

 たとえば在日米軍再編に基づく在沖縄海兵隊のグアム移転事業には、守屋容疑者に接待を繰り返した宮崎元伸容疑者の「日本ミライズ」や、同氏が専務を務めていた軍需専門商社「山田洋行」が参入しようとしていました。また、東京地検特捜部が、防衛省への捜索の際、米軍再編に関する資料を多数、押収したとも報じられています。

 特捜部が家宅捜索した「日米平和・文化交流協会」(秋山直紀常勤理事)が主催団体の一つになり、毎年、米国と日本で開いている日米安全保障戦略会議―。そこで日米の軍需企業などが声高に求めているのが、「ミサイル防衛」システムの日本への配備のいっそうの推進です。

 現在、進めているシステムの導入経費だけでも、一兆円をつぎ込む計画です。同時並行で開発を進めている次世代の迎撃システムを導入すれば、経費はさらに膨らみます。その巨大利権に軍需企業や政治家、防衛省幹部が群がっているのです。

 これだけの疑惑が指摘されても、福田・自公政権が在日米軍再編や「ミサイル防衛」を進めるのは、いずれも米国の要求があるからです。

 米軍再編も「ミサイル防衛」も、ブッシュ米政権が掲げる先制攻撃戦略を支える一環です。米国の要求に応え、日本政府は、「ミサイル防衛」を含む再編計画を「徹底して実施する」(〇六年五月)ことを合意しています。

海外想定 財務省原案に盛り込まれた次期哨戒機(PX)四機調達(六百四十六億円)も、海外での作戦まで想定したものであり、地球規模での日米軍事協力を「同盟の重要な要素」とした日米合意に基づいています。

 日米地位協定は、基地提供以外は米側負担としています。それにも違反する在日米軍への「思いやり予算」が今回、わずか九十億円減にとどまったのも、米国の負担増要求に屈したからでした。

 国民はいま、度重なる負担増にくわえ、原油高騰などによる物価高に苦しめられています。

 それでも米国の要求であれば、疑惑があっても、法的義務がなくても負担する―。財務省原案からは、こんな福田・自公政権の卑屈な姿勢が浮かび上がってきます。(田中一郎)(以上)

財務省が内示した2008年度の予算原案は、全国紙の報道は、軍事費に鋭く切り込んだ報道が見られません。今まででも在日米軍基地の米兵の光熱費まで負担する思いやり予算を計上していますが、世界でも例を見ない米国の都合で沖縄からグアムに移転する米兵の住宅費・光熱費までが日本が負担しようとしています。(2008年度の在日米軍再編経費の財務省原案では大幅増の五百二十九億円(昨年比二百十六億円増)

その一方で国の財源が大幅に不足しているから、かつてなく増えている困窮所帯に、更に追い討ちをかける消費税の税率アップを考えています。全国紙の論調は財政再建のためには止むを得ないという姿勢です。

憲法9条の武力で国際紛争を解決しない精神を堅持して、国の政策に反映させる事は、国民の負担軽減に結びつきます。

米国と軍事的な共同努力が目立つ日本政府/山崎孝

2007-12-21 | ご投稿
【半島の非核化に意欲 韓国大統領選 李明博氏が当選会見】(2007年12月20日付東京新聞)

【ソウル=中村清】韓国の次期大統領に決まった保守系最大野党ハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)前ソウル市長(66)は二十日午前、ソウル市内で当選後初めて記者会見し、今後の対北朝鮮政策について「南北間の最大の懸案は北朝鮮に核を放棄させることだ。核放棄が体制維持と住民のためになると強く説得する必要がある。朝鮮半島の非核化を通じ、南北は新しい協力の時代を開く」と述べた。

北朝鮮の人権問題については「批判のための批判ではなく、北朝鮮の社会を健全にするために必要な指摘はしていく」と述べ、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権より積極的に人権改善を求めていく姿勢を示した。

また、次期政権の外交方針について「今後はアジア外交に積極的に取り組む。米韓同盟も信頼を土台に共同の価値と平和を新たに固める」と語り、日本や中国、米国との友好関係強化に積極的に乗り出す考えを示した。

国民からの期待の高い経済再生策については「企業が安心して投資できる環境をつくる。経済を活性化させ、働き口を増やし、地方経済と中小企業、自営業を復活させる」と述べた。(以上)

李明博氏の述べた、「朝鮮半島の非核化を通じ、南北は新しい協力の時代を開く」これは6者協議の北朝鮮の非核化への前進に応じて支援するという基準と同じだと思います。そして大筋において盧武鉉大統領の進めて来た路線と大きくは変わらないと思います。

北朝鮮の人権問題について「批判のための批判ではなく、北朝鮮の社会を健全にするために必要な指摘はしていく」と南北関係を前進させる立場で述べました。日本の政治家の多くがこの立場が欠けています。拉致問題という人権問題を政治的に利用し、北朝鮮の脅威と結びつけて、憲法改定の宣伝材料に利用しました。

さしたる効果がないことがはっきりしているのに強硬な経済制裁を取り続け北朝鮮の態度を硬化させ、日朝の会談を拒否されて、あまり努力をしなかった6者協議でしたが、その合意の日朝正常化作業部会で対話の場を確保出来ました。しかし、拉致問題の解決の糸口さえ見出していません。拉致問題を解決するために、日朝国交正常化へ前進するために現実的で柔軟な政策に転換すべきです。

米国政府は李明博氏の大統領選挙当選について、国務省のケーシー副報道官は、「対米姿勢など根本的などに根本的な変化があるとは思わない」「韓国は米国にとって重要な友人であり、同盟国であり続ける」と述べ、米韓関係強化に期待感を示しています。ケーシー副報道官は、特に「一番の関心は、6者協議における我々の共同努力だ」と語りました。(12月21日の朝日新聞の情報より)

同じ米国の同盟国の日本政府は、米国の一番の関心事である6者協議の成功に共同努力をしているとはいえません。先日のイージス艦によるミサイル迎撃実験の例を見ても、もっぱら東アジアの軍事的緊張を高めることになる軍事的な共同努力が目立ちます。

日本の国是に風穴を開ける弾道ミサイル防衛計画/山崎孝

2007-12-19 | ご投稿
弾道ミサイル防衛計画(BMD)は、1998年8月の北朝鮮が発射したテポドンが日本を飛び越えたことを背景にして、2003年12月に政府は米国の開発したシステムを導入します。

2003年12月、政府は米国とのBMD共同開発の着手を決定し、2004年12月に開発に障害となる武器輸出3原則をBMDは例外扱いとし、日本の技術を米国へ提供します。

当初、BMDは研究開発だけで配備をしないと言っていましたが、2006年7月に北朝鮮が日本海に向け弾道ミサイルを発射したことを背景にして、2007年3月と11月に埼玉県の入間基地、千葉県の習志野分駐基地に陸上迎撃型のPAC3が配備されました。

2007年5月、安倍前首相は、集団的自衛権に抵触している、米国に向かうミサイルを迎撃することを可能にする有識者懇談会を立ち上げました。この解釈改憲の試み有識者懇談会は、安倍氏の自壊により現在宙に浮いたままですが、日本のイージス艦による海上配備型ミサイル迎撃システムのSM3の実験成功を受けて、米ミサイル局のオベリング局長は「日米の協力のうえでとても重要なできごとだ。日本は大きな一歩を踏み出した」と述べています。この意味は、日本がBMD推進する以上、日本が近い将来米国に向かうミサイルを迎撃することを法的にも可能にするだろうとの期待が込められている。瞬時に日本に飛んでくるのか、米国へ向かうなのかを区別するようなことが要求されることは技術的な困難さを伴います。迎撃システムの稼動体制を確実なものにするためにも避けられないことだと踏まえていると思っているのだと推察します。

BMDは、日本の国是である武器輸出3原則に穴を開け、更に集団的自衛権の一部に風穴を開けようとしています。憲法を守るために特段の注意が必要です。私たちは北東アジアから、日本にも米国にも弾道ミサイルが飛ばない環境を作ることが一番大切だということを国民に宣伝しなければならないと思います。現実に6者協議は「北東アジアの平和と安全のメカニズム」の作業部会を進めています。

BMD計画を進めるということは、北朝鮮や中国は信用できないから、膨大なお金がかかってもミサイルを発射したら叩き落すシステムを持つことを日本が表明していることです。

1977年当時の福田赳夫首相の外交方針、日本の東南アジア外交は、軍事大国にならず、心と心の触れ合う信頼関係構築を目指した。福田首相はこの父の考えを引き継ぎ中国との「共鳴外交」を唱えている。この外交方針と中国のミサイルが米国や日本に飛ぶことを想定した弾道ミサイル防衛計画の推進は明らかに論理的に矛盾しています。

防衛省幹部は「米国に言われるままにBMD整備を進めていたら、将来いくら費用がかかるか分からない」と懸念する(2007年12月19日の朝日新聞)。ちなみに12月17日のSM3の実験費用は総額60億円といわれます。多くの国民の生活が苦しくなっているのに、米国や日本に核弾頭つきのミサイルが飛んでくるような事態は、無数の核弾頭ミサイルが飛来する核戦争の始まりと見なさなければならないのに、その核戦争で生き残ろうとするような考えの弾道ミサイル防衛計画は壮大な無駄と言わなければなりません。

北東アジアの平和に寄与しないSM3/山崎孝

2007-12-18 | ご投稿
【ミサイル迎撃試験に成功 ハワイで海自イージス艦】(2007年12月18日)

【カウアイ島(米ハワイ州)17日共同】弾道ミサイルに対処する政府のミサイル防衛(MD)計画で、防衛省は17日正午(日本時間18日午前7時)すぎ、海上自衛隊のイージス艦「こんごう」に搭載した海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の発射試験を米ハワイ・カウアイ島沖で実施、標的の模擬ミサイル迎撃に成功した。

米国以外の国によるSM3の試射は初めて。弾道ミサイル対処能力を実証したことで、日本のMDは大きく前進した。

試験では、米海軍の協力でカウアイ島の米軍施設から標的用の中距離弾道ミサイルの模擬弾1発を発射した。数百キロ離れた海上で待機していた「こんごう」がイージスシステムの高性能レーダーで探知し、SM3を1発発射。高度100キロ以上の大気圏外で標的用ミサイルを撃ち落とした。(以上)

「平成17年度以降に関わる防衛計画大綱について」で次のように述べています。《北朝鮮は大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発、配備、拡散を行なうとともに、大規模な特殊部隊を保有している。北朝鮮のこのような軍事的動きは、地域の安全保障における重大な不安定要因である。》

この考え方「周辺事態対処」にそってSM3は進められています。しかし、2007年の現在は、6者協議の合意とその進展によって「平成17年度以降に関わる防衛計画大綱」は、書き換えなくてはならない状況です。

日米の他には迎撃ミサイル実験をしていません。ミサイル防衛計画は、日本の仮想敵国と想定された国から見れば、自国の防衛力を大きくそがれたと思い、ミサイルの開発に力をいれて、配備の増強を考えるでしょう。ミサイル防衛(MD)計画は、北東アジアの平和に寄与しません。それに1兆円以上の費用もかかります。財政再建の観点からも無視できない事柄です。