海賊対策―事前に明確なルールを(朝日新聞12月27日の社説)
アフリカのソマリア沖で頻発する海賊の問題で、政府は海上自衛隊の護衛艦の派遣を検討することになった。
国際社会に協力を呼びかけた国連安保理の決議を受けて、欧米や中国、イラン、インドなどが相次いで艦船の派遣を決めている。
海賊の被害が集中しているアデン湾は、欧州と中東・アジアをつなぐ要路で、タンカーや輸送船など年間2万隻が通過する。そのうち2100隻が日本に関係する船舶だ。実際に海賊に乗っ取られた事件も起きている。
日本政府としても、何らかの対策、協力を考えるのは当然のことだ。麻生首相はきのう、浜田防衛相に海上自衛隊の艦船を出せないか、具体的な検討を指示した。
政府は、新規立法で海賊対策に乗り出すための法的な枠組みをつくるべく研究しているが、国会で法律を通すとなるといつ実現できるか、まったくメドが立たない。
そこで、自衛隊法に定める「海上警備行動」を発動し、自衛艦の派遣を急ぐ案が浮上した。海賊行為は犯罪であり、本来は海上保安庁が扱う問題だが、その能力を超える事態には自衛隊が出動できる仕組みになっている。
具体的には、ソマリア沖を航行する日本の船舶に護衛艦が並走し、海賊の襲撃を防ぐことが検討されている。
だが、問題がないわけではない。
まず、武器使用基準。海上警備行動の場合、威嚇射撃は可能だが、相手を攻撃できるのは正当防衛か緊急避難に限られている。海賊はロケット砲などの重火器を備え、護衛艦を攻撃してくる可能性もある。隊員の安全をどう確保するか、具体的に定めておかないといけない。
また、守る対象はあくまで日本関係の船舶に限るのか。例えば、日本船が他国の船と船団を組み、それを護衛艦が守るケースも考えられる。現場の事情を踏まえて、現実的な方法を視野に入れる必要もあろう。
自衛艦の任務はどこまでなのか。海賊の取り締まりまで含めるとなると、捕まえた海賊をどう処罰するのかという問題も出てくる。すでに艦船を派遣した国々も同じ問題に直面し、対応に苦慮している。
そう考えると、防衛省内に慎重論が強いのも分からないではない。あいまいなまま派遣すれば、現場での混乱は避けられないからだ。大事なのは、事前にルールを詰めておくことだ。
日本ができる協力は他にもある。マラッカ海峡の海賊対策で国際協力の実績がある海上保安庁の経験を生かすことも考えるべきだろう。
問題の根本はソマリア情勢の混迷にある。そこに国際的な支援の手をどう差し伸べるか。それ抜きに海賊問題の解決はないことも忘れてはならない。
【コメント】社説が述べた、マラッカ海峡の海賊対策で国際協力の実績がある海上保安庁の経験を生かすことが一番大切だと思います。
自衛隊法による「海上警備行動」を発動し、ソマリア沖を航行する日本の船舶に護衛艦が並走し、海賊の襲撃を防ぐことだけなら、多くの国民が賛成する可能性があると思います。
肝心なことは、ソマリア沖に自衛隊を派遣することを好機と捉えて、海賊対策という警察的活動の範囲を超えて、軍事に関わった海外活動で武力行使への道が開かれないようにすることだと思います。
アフリカのソマリア沖で頻発する海賊の問題で、政府は海上自衛隊の護衛艦の派遣を検討することになった。
国際社会に協力を呼びかけた国連安保理の決議を受けて、欧米や中国、イラン、インドなどが相次いで艦船の派遣を決めている。
海賊の被害が集中しているアデン湾は、欧州と中東・アジアをつなぐ要路で、タンカーや輸送船など年間2万隻が通過する。そのうち2100隻が日本に関係する船舶だ。実際に海賊に乗っ取られた事件も起きている。
日本政府としても、何らかの対策、協力を考えるのは当然のことだ。麻生首相はきのう、浜田防衛相に海上自衛隊の艦船を出せないか、具体的な検討を指示した。
政府は、新規立法で海賊対策に乗り出すための法的な枠組みをつくるべく研究しているが、国会で法律を通すとなるといつ実現できるか、まったくメドが立たない。
そこで、自衛隊法に定める「海上警備行動」を発動し、自衛艦の派遣を急ぐ案が浮上した。海賊行為は犯罪であり、本来は海上保安庁が扱う問題だが、その能力を超える事態には自衛隊が出動できる仕組みになっている。
具体的には、ソマリア沖を航行する日本の船舶に護衛艦が並走し、海賊の襲撃を防ぐことが検討されている。
だが、問題がないわけではない。
まず、武器使用基準。海上警備行動の場合、威嚇射撃は可能だが、相手を攻撃できるのは正当防衛か緊急避難に限られている。海賊はロケット砲などの重火器を備え、護衛艦を攻撃してくる可能性もある。隊員の安全をどう確保するか、具体的に定めておかないといけない。
また、守る対象はあくまで日本関係の船舶に限るのか。例えば、日本船が他国の船と船団を組み、それを護衛艦が守るケースも考えられる。現場の事情を踏まえて、現実的な方法を視野に入れる必要もあろう。
自衛艦の任務はどこまでなのか。海賊の取り締まりまで含めるとなると、捕まえた海賊をどう処罰するのかという問題も出てくる。すでに艦船を派遣した国々も同じ問題に直面し、対応に苦慮している。
そう考えると、防衛省内に慎重論が強いのも分からないではない。あいまいなまま派遣すれば、現場での混乱は避けられないからだ。大事なのは、事前にルールを詰めておくことだ。
日本ができる協力は他にもある。マラッカ海峡の海賊対策で国際協力の実績がある海上保安庁の経験を生かすことも考えるべきだろう。
問題の根本はソマリア情勢の混迷にある。そこに国際的な支援の手をどう差し伸べるか。それ抜きに海賊問題の解決はないことも忘れてはならない。
【コメント】社説が述べた、マラッカ海峡の海賊対策で国際協力の実績がある海上保安庁の経験を生かすことが一番大切だと思います。
自衛隊法による「海上警備行動」を発動し、ソマリア沖を航行する日本の船舶に護衛艦が並走し、海賊の襲撃を防ぐことだけなら、多くの国民が賛成する可能性があると思います。
肝心なことは、ソマリア沖に自衛隊を派遣することを好機と捉えて、海賊対策という警察的活動の範囲を超えて、軍事に関わった海外活動で武力行使への道が開かれないようにすることだと思います。