いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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警察的な活動に止めることが大切/山崎孝

2008-12-27 | ご投稿
海賊対策―事前に明確なルールを(朝日新聞12月27日の社説)

 アフリカのソマリア沖で頻発する海賊の問題で、政府は海上自衛隊の護衛艦の派遣を検討することになった。

 国際社会に協力を呼びかけた国連安保理の決議を受けて、欧米や中国、イラン、インドなどが相次いで艦船の派遣を決めている。

 海賊の被害が集中しているアデン湾は、欧州と中東・アジアをつなぐ要路で、タンカーや輸送船など年間2万隻が通過する。そのうち2100隻が日本に関係する船舶だ。実際に海賊に乗っ取られた事件も起きている。

 日本政府としても、何らかの対策、協力を考えるのは当然のことだ。麻生首相はきのう、浜田防衛相に海上自衛隊の艦船を出せないか、具体的な検討を指示した。

 政府は、新規立法で海賊対策に乗り出すための法的な枠組みをつくるべく研究しているが、国会で法律を通すとなるといつ実現できるか、まったくメドが立たない。

 そこで、自衛隊法に定める「海上警備行動」を発動し、自衛艦の派遣を急ぐ案が浮上した。海賊行為は犯罪であり、本来は海上保安庁が扱う問題だが、その能力を超える事態には自衛隊が出動できる仕組みになっている。

 具体的には、ソマリア沖を航行する日本の船舶に護衛艦が並走し、海賊の襲撃を防ぐことが検討されている。

 だが、問題がないわけではない。

 まず、武器使用基準。海上警備行動の場合、威嚇射撃は可能だが、相手を攻撃できるのは正当防衛か緊急避難に限られている。海賊はロケット砲などの重火器を備え、護衛艦を攻撃してくる可能性もある。隊員の安全をどう確保するか、具体的に定めておかないといけない。

 また、守る対象はあくまで日本関係の船舶に限るのか。例えば、日本船が他国の船と船団を組み、それを護衛艦が守るケースも考えられる。現場の事情を踏まえて、現実的な方法を視野に入れる必要もあろう。

 自衛艦の任務はどこまでなのか。海賊の取り締まりまで含めるとなると、捕まえた海賊をどう処罰するのかという問題も出てくる。すでに艦船を派遣した国々も同じ問題に直面し、対応に苦慮している。

 そう考えると、防衛省内に慎重論が強いのも分からないではない。あいまいなまま派遣すれば、現場での混乱は避けられないからだ。大事なのは、事前にルールを詰めておくことだ。

 日本ができる協力は他にもある。マラッカ海峡の海賊対策で国際協力の実績がある海上保安庁の経験を生かすことも考えるべきだろう。

 問題の根本はソマリア情勢の混迷にある。そこに国際的な支援の手をどう差し伸べるか。それ抜きに海賊問題の解決はないことも忘れてはならない。

【コメント】社説が述べた、マラッカ海峡の海賊対策で国際協力の実績がある海上保安庁の経験を生かすことが一番大切だと思います。

自衛隊法による「海上警備行動」を発動し、ソマリア沖を航行する日本の船舶に護衛艦が並走し、海賊の襲撃を防ぐことだけなら、多くの国民が賛成する可能性があると思います。

肝心なことは、ソマリア沖に自衛隊を派遣することを好機と捉えて、海賊対策という警察的活動の範囲を超えて、軍事に関わった海外活動で武力行使への道が開かれないようにすることだと思います。

不名誉に生きる米国/山崎孝

2008-12-23 | ご投稿
【イラク:米軍が政府施設を誤襲撃…地位協定に不信感】(2008年12月22日の毎日新聞HPより)

 イラクの首都バグダッドで17日、イラク政府関連施設が米軍に襲撃され、警備員3人が死亡した。米軍は非公式に「別の標的と取り違えた」と謝罪したが、遺族は「米軍は殺人者だ」と怒りを募らせる。来年1月から発効する米国とイラクの地位協定では、米軍の軍事行動にはイラク側の承認が必要になる。協定が順守されれば、これまでも繰り返されてきた誤認に基づく攻撃や拘束はなくなるはずだ。だが米軍への不信感が強いイラク国民の間には、協定は軽視され今後も同様の事件が続くという危惧(きぐ)が強まっている。【カイロ高橋宗男】

 「米国は不公正な暴力を働き、ただ謝罪するだけだ」

 18日、バグダッド東部のサドルシティーで、米軍による攻撃で死亡した施設警備サービス(省庁警備のための準警察組織)警備員、アサド・カアビさん(29)の葬儀が始まった。会場で、兄のラヒームさん(42)は毎日新聞助手に、そう怒りをぶちまけた。

 攻撃があったのは17日未明。バグダッド中心部アタエフィア地区にある貿易省の小麦保管施設で起きた。遺族によると、いきなり入り口の門が爆破され、踏み込んだ米兵が寝ていた3人を射殺した。

 米軍は同日午前、施設関係者に「近くの別の家に踏み込むはずだった」と、誤認攻撃だったことを認め謝罪。遺族に対しても「葬儀に参列したい」と申し出たが、遺族側は「殺人犯は受け入れられない」と拒絶した。

◇国民「米軍が守る保証ない」 「イラクで殺された者からだ」と叫んで、イラク人記者がブッシュ米大統領に靴を投げつけてから3日後の事件。葬儀の参列者からは「攻撃は、靴投げへの報復ではないのか」とのささやきがもれた。

 ラヒームさんは「強者が弱者から許可を求めるものか」と吐き捨てるように言った。地位協定に定められたイラク側の承認を得たうえでの軍事攻撃という約束を、米軍が守る保証はないという意味だ。

 大部分のイラク国民が米軍早期撤退を望むなか、オバマ次期米政権は、対テロ戦の主戦場をアフガニスタンに移し、イラク撤退を進める方針を明確にした。だがイラク政府には、治安の空白を恐れ早期撤退を望まない声もある。

 政府報道官は11日、「さらに10年間の米軍駐留が必要になるかもしれない」と述べ、オディエルノ駐留米軍司令官も13日、「来年6月以降も市街地に残るかもしれない」と、地位協定の内容を否定するかのような発言が相次いだ。

 「協定は尊重されないのではないか」。国民に広がる不信感に、今回の事件は拍車をかけている。

◇米イラク地位協定 今年末に期限切れする国連安保理決議に代わり、米軍が合法的にイラクに駐留する法的根拠となる協定。来年1月1日に発効する。米軍は11年末までに完全撤収▽市街地からは来年6月までに撤収▽米軍の軍事行動はイラク側の了承が必要--などと定めた。イラクのマリキ首相は「国家主権の回復」と強調している。

【コメント】12月22日の朝日新聞「私の視点」欄に米マサチューセッツ工科大学教授のジョン・ダワー氏は《米の著名な歴史家アーサー・シュレンジャーは、「予防的自衛」のブッシュ・ドクトリンは「日本帝国の真珠湾攻撃と驚くほど似ている」とし、「今度は我々米国人が不名誉に生きることになる」と鋭く見抜いた(2003年3月)》と述べています。

毎日新聞記者にアサド・カアビさんの兄 ラヒームさんは「米国は不公正な暴力を働き」と述べました。全世界に報道されたように、アラブ世界では人に靴を投げたり、靴でたたいたりすることは最大の侮辱である行為をブッシュ大統領は受けました。正に米国は不名誉に生きることになっています。

ジョン・ダワー氏は《大半の米国人は愛国主義に目を曇らせれて、米国の安全への重大な挑戦とする政府側にくみした。戦争は早期に終結し、イラク戦後の体制変革も円滑に進むというブッシュ政権の保証を信じ込んでしまったのである》と述べています。このことが米国人は不名誉に生きることになってしまった大きな原因だと思います。戦前の日本軍部も多くの日本人も中国との戦争は早期に終わるだろうと思い、真珠湾攻撃は米国の太平洋艦隊に打撃を与え有利な状況で戦争を早期に終わらせようとしたと言われます。

ジョン・ダワー氏は《国を愛することが、人々の犠牲に思いいたすのではなく、なぜ、いつでも国家の行為を支持する側につくことを求められるのか》と述べています。この指摘は戦死者を美化し、子供たちに愛国心教育を行い、政府の行為に異議を唱えない日本人を作ろうとする今の日本にも当て嵌まります。

消費税率を引き上げないと社会保障費は生み出せないのか/山崎孝

2008-12-22 | ご投稿
消費税「10%に引き上げ必要」 段階的に実施と経財相(2008年12月22日の共同通信配信記事)

 与謝野馨経済財政担当相は21日、税制抜本改革の柱となる消費税率引き上げについて「(上げ幅が)5%(となる)まで段階的に実施する」と述べ、現在は5%の消費税率を10%に上げていく考えを示した。民放テレビの番組で語った。

 政府は社会保障と税制の中期プログラム取りまとめに向け、与党と調整中。政府案には2011年度から消費税を含む税制改革を行うことを明記している。

 経財相は「11年度に(一気に)5%上げると経済に大きなショックになる」と指摘。「(毎年)1%ずつ上げるとか、(11年に)2%で(その後に)3%(上げる)」などの案を示した。

 また消費税収は「介護、年金、医療で(国民に)お返しする」と話し、消費税の使途を社会保障などに限る方針をあらためて強調した。

 15年度までに5%引き上げても「(国の財政は)それでも苦しい」と指摘。25年度をめどに「社会保障をどうするか、もう一度考えないといけない」と述べ、増大する社会保障費を賄うため、もう一段の増税が必要との見方を示した。

【コメント】年収200万円以下の低所得所帯層が増大している中で、低所得者ほど負担が重くなる消費税の税率を与謝野馨経済財政担当相は10%に上げていく考えを示しました。更に、15年度までに5%引き上げても「(国の財政は)それでも苦しい」と指摘し、それ以上に引き上げる意図も漏らしました。

消費税率を引き上げないと社会保障費は生み出せないのでしょうか。

日本に駐留する米軍は日本を守ると宣伝されていますが、具体的な事象としては現われず掴み所がありませんが、在日米軍が他国を攻撃する際には幾度も具体的な事実として現われています。そのような米軍に日本は大きな国費を使っています。

12月21日の朝日新聞は、米軍再編経費は、沖縄の米海兵隊グァム移転費の日本側負担(346億円)が始まったことで、3・6倍の689億円に膨らんだ。在日米軍駐留経費(おもいやり予算)は1928億円となったと報道しています。

読売新聞は、米海兵隊のグアム移転費は、2014年までに総額103億ドル(約9100億円)のうち日本側が61億ドル(約5400億円)を負担する。移転先施設の土地造成や設計費に使用されるという。また、3500戸分の家族住宅を整備するための調査費などに7億円を計上した。

 沖縄の普天間飛行場移設関連費には96億円(今年度50億円)。初めて代替施設の本体工事分として護岸工事費3億円を計上したが、09年度中に沖縄県知事の許可が出る見通しは立っていない。14年までに約160ヘクタールの海面埋め立てや1600メートル滑走路2本の整備が予定されるが、総額は未定。基地周辺の自治体に渡す再編交付金は91億円(同62億円)、空母艦載機の岩国基地への移駐事業関連費として102億円(同58億円)を計上したと報道しています。

12月21日の中国新聞は《20日内示の2009年度予算の財務省原案は、米海兵隊岩国基地(岩国市)へ空母艦載機を移転させる関連経費に、ほぼ前年度並みの55億8400万円を計上した。このうち米軍の住宅用地は、防衛省が岩国市の愛宕山地域開発事業跡地を有力な候補地としながらも、前年度に続き用地を特定せず、適地調査費約2億円を盛り込んだ。(中略)艦載機移転で4000人分が必要とされる米軍住宅用地の調査費は前年度の1.7倍に増やし選定を急ぐ。このほか、艦載機の離着陸訓練の適地を探す調査費も前年度の1.8倍の3200万円を計上。誘導路の整備費や格納庫の設計費なども盛り込んでいる。一方で岩国市などが求めている同基地での民間空港再開に関する予算計上はなかった》と報道しています。

日本政府の米軍への思いやり予算は、在日米軍基地職員の労務費、基地内の光熱費・水道費、訓練移転費、施設建設費などである。 思いやり予算の開始当初から2006年までに日本が負担した駐留経費の総額は3兆円に及び、その額の多さから、日本は「世界一気前のいい同盟国」と揶揄されている状況(インターネット上の百科事典「ウィギペディア」)があります。

福祉は力の弱いものを国が手を差し伸べるためのものです。それなのに福祉の財源として生活弱者である低所得層に打撃を与える消費税率を上げるということは大きな矛盾をはらんでいます。この矛盾を生まないために、他国の軍隊の経費に税金を使うことを改善するなど、社会保障費を生み出す方策はいくつも考えられると思います。

事実に基づかない改憲派の読売新聞の社説/山崎孝

2008-12-20 | ご投稿
【空自イラク撤収 国のあり方が問われた任務】(12月18日付・読売社説)

 歴史的な自衛隊の任務が成功裏に完了した。

 クウェートとイラクとの間の輸送業務に従事していた航空自衛隊のC130輸送機3機が、帰国の途に就いた。

 空輸は5年間で821回に上り、多国籍軍兵や国連関係者ら約4万6500人と物資673トンを運んだ。イラク復興支援への協力を各国に求める国連安全保障理事会決議の期限が今年末に切れるのに合わせて、撤収を決めた。

 空自がこの間、隊員の安全確保に細心の注意を払い続け、1人の犠牲者も出さなかったことは、高く評価されていいだろう。

 空自と陸上自衛隊のイラク派遣は従来にない危険を伴うもので、日本の国のあり方が問われた。

 仮に復興活動が破綻(はたん)し、イラクがテロの巣窟(そうくつ)となれば、原油の高騰ばかりか、中東と世界の平和と安定が損なわれかねない。

 そんな局面でも、危険な任務はすべて他国に任せ、湾岸戦争と同様、自らは資金支援だけで済ませ続けるのか。それとも、一定の危険は覚悟し、人的支援の国際共同行動の一翼を担うのか。

 日本が後者を選択し、従来の国際活動から一歩踏み出したのは間違っていなかったと言えよう。

 空自は、災害救援などで海外で輸送活動を行ったことはあるが、海外に拠点を置く長期間の任務は初めてだった。他国軍との共同活動を通じて、効果的な部隊運用のノウハウを学べたはずだ。

 事前に得た脅威情報を実際の安全確保にどう反映させるか。どんな装備が本当に役立つのか。こうした様々な教訓を今後の国際活動に着実に生かすことが重要だ。

 自衛隊は今や、日本有事に備えて高価な装備を導入し、訓練だけしていればいい存在ではない。国内の災害派遣や国際平和協力活動などの「実任務」に部隊を積極的に活用せねばなるまい。

 自衛隊は撤収しても、政府開発援助(ODA)などによるイラク支援は継続する必要がある。

 イラクの治安は改善しているとはいえ、通常の経済活動ができる状態にはほど遠い。

 日本は2003年に50億ドルのODAを表明し、このうち15億ドルの無償支援は実施した。だが、35億ドルの有償支援は、電力、港湾整備など25億ドル分が実施段階に入っただけで、残りの10億ドル分はいまだに内容も決まっていない。

 残る有償支援の実施を急ぐとともに、民間企業のビジネスや投資を軌道に乗せなければ、イラク復興支援活動は完了しない。

【コメント】読売新聞の社説は事実を正確に表現していません。《多国籍軍兵や国連関係者ら》と述べていますが、空輸した多国籍軍兵の大多数が米兵だったことに触れていません。

読売新聞の社説は《仮に復興活動が破綻(はたん)し、イラクがテロの巣窟(そうくつ)となれば、原油の高騰ばかりか、中東と世界の平和と安定が損なわれかねない》と述べていますが、フセイン政権下では国際テロ組織アルカイダは存在せず、イラク戦争の混乱を機会にイラクに侵入しています。イラクでテロが頻発したのは米英のイラク侵略により武装抵抗組織が生まれてからです。なぜイラクに紛争と混乱が起こったのかの根本に触れず、米英のイラク侵略後の現象を述べるだけです。それに2008年の原油の高騰は金融資本の先物取引による操作が主たる原因です。イラクは自分の国の石油需要も充分に賄えなくなっています。

世界的な人権擁護組織アムネスティ・インターナショナルのHPには次のような記述があります。《イラクでの絶え間ない紛争で約150万人が国内避難民になり、さらに約200万人が難民となった。急増する人道的危機に対する懸念はイラクのみならずシリアやヨルダン国内においても広がっており、これらの近隣諸国はイラク難民の大量流入によって引き起こされる問題の対応に苦労している》。この大規模な難民はフセイン政権下で起こっていたのではなく、米英のイラク侵略が引き起こしたものです。難民の大半はまだイラクに戻ってはいません。イラクには宗派毎の居住区を分断する巨大な壁が作られています。

読売新聞の社説は《一定の危険は覚悟し、人的支援の国際共同行動の一翼を担うのか》と述べていますが、イラク戦争にかかわったのは、米国を中軸とした有志連合型でイラク攻撃を容認する国連決議はなく国際共同行動ではありませんでした。

2003年10月16日、イラクへ明確な主権移譲日程に関して、国連の役割強化などを要求してきたフランス・ロシア・ドイツも賛成して安全保障理事会決議1511号を採択しています。しかし、フランス・ロシア・ドイツはイラクに対して兵力や資金支援をしないと表明しました。

読売新聞の社説は正確な事実を踏まえて論説を書くべきです。

読売新聞社説は《1人の犠牲者も出さなかったことは、高く評価されていいだろう》と述べていますが、これは自衛隊をイラクに派遣する法的根拠のイラク特別措置法には、憲法規定の制約を受けて自衛隊の活動は「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」と定めていたからです。仮に読売新聞の主張のように、海外で武力行使が出来るようになっていれば、英国がイラクで140人を超える戦死者を出しているのを見れば容易にその結果は推察できます。

読売新聞と中日新聞の社説を比べる/山崎孝

2008-12-17 | ご投稿
【新テロ法成立 給油継続の「次」も考えたい】(12月16日付・読売社説)

 我が国が「テロとの戦い」から離脱する事態は避けられたが、これで十分とは言えない。

 今後、国際平和活動にどう関与していくかを考え、着実に行動に移すことが肝要だ。

 改正新テロ対策特別措置法が、参院で否決された後、衆院の3分の2以上の多数で再可決、成立した。海上自衛隊によるインド洋での給油活動の期限が来年1月15日から1年間延長された。

 インド洋では、米英仏パキスタンなどの艦船10隻前後が、テロリストらの海上移動や麻薬・武器輸送の監視、摘発を続けている。今年2~6月だけでも麻薬30トンを押収するなどの実績を上げた。

 アフガニスタンの治安回復に直結するものではないが、テロリストの行動を制約し、資金源を断つうえで重要な任務である。この海上阻止活動にとって、海自の給油活動は欠かせない存在だ。

 日本は最低限の責務として給油活動を継続せねばならない。

 改正特措法の審議では、民主党の政局優先の対応が目立った。

 当初は、衆院解散を促す思惑から「早期採決」を主張したが、解散が遠のくと、「慎重審議」に方針転換した。さらに第2次補正予算案が今国会に提出されないことを理由に「徹底抗戦」に入った。

 参院では11月中旬以降、約1か月間も改正特措法の審議を一切行わなかった。

 民主党は、給油活動に反対するだけで、現実的な対案の党内論議さえ回避してきた。次期衆院選前は、とにかく党内対立を“封印”したいのだろう。こうした姿勢では政権担当能力に疑問符がつく。

 給油活動の継続以外にも、今後、取り組むべき自衛隊の海外派遣に関する課題は多い。

 最も迅速な対応が求められるのは、ソマリア沖の海賊対策だ。

 政府は、現行の自衛隊法の活用と新法制定の両にらみで海自艦船の派遣を検討している。

 現地を航行する民間船舶の1割超を日本関連の船舶が占める。その船が重大な被害を受けるまで具体的行動を取らないようでは、政治の怠慢のそしりは免れまい。

 新テロ特措法を1年ごとに改正する手法も見直す必要がある。国際情勢に機敏に対応するため、自衛隊の海外派遣に関する恒久法整備に本格的に取り組むべきだ。

 オバマ米次期大統領がアフガンへの部隊増派を発表するなど、国際社会はアフガン重視の姿勢を強めている。日本も、自衛隊のアフガン派遣について、より真剣に議論する時期が来ている。(以上)

【空自イラク撤収 徹底検証が政治の責務】(2008年12月16日の中日新聞社説)

 空自がイラクでの活動を終え撤収を始めた。約五年に及ぶ自衛隊の「戦地派遣」の実態は経緯も含め不透明な点が多い。徹底的な検証が必要だ。ふがいなさが目立つ政治の責任放棄は許されない。

 米英による二〇〇三年のイラク攻撃を機に、当時の小泉政権は戦闘状態が終結していない「戦地」への初の自衛隊派遣を決断した。生命の危険にさらされる厳しい環境下で、一人の犠牲者も出さずに任務を終えることになる。

 陸自と空自は〇四年から活動を開始。給水や道路復旧などに従事した陸自の〇六年撤収後も、空自は多国籍軍の要員や支援物資の空輸に当たってきた。イラクの治安状況回復などを踏まえ、政府は人道復興支援の活動目的を達成したとしている。

 だが自衛隊活動をめぐっては、米軍支援の色彩が強かった印象がぬぐえない。特に空自は八百二十一回の飛行で四万六千五百人と物資六百七十三トンを空輸。詳細は不明だが、大半は米兵や米軍関連物資とみられる。空自機は米軍から「タクシー」とも呼ばれていたという。国際貢献の名に値する活動だったのかどうか。

 名古屋高裁は空自活動を違憲と判断した。政府は「国際社会が高く評価した」と自賛するのなら、国民に見えにくかった活動を明らかにし、憲法との整合性など国会のチェックを受けるべきだ。

 イラク攻撃を日本政府が支持したことの総括もできていない。ブッシュ米大統領ですら開戦理由とした大量破壊兵器が見つからなかったことを「最大の痛恨事」と言及した。それにもかかわらず支持判断は正しかったと、政府がかたくなな姿勢を取り続けるのは不可解だ。方針決定過程を精査し説明責任を果たすことが肝要だ。

 今後「テロとの戦い」の焦点は、イラクから治安悪化が著しいアフガニスタンへと移る。

 与党は先週末、インド洋での給油活動継続法を衆院再可決で成立させたが、アフガンシフトを鮮明にするオバマ米次期政権は、日本に本土派遣も含めたさらなる人的貢献や資金提供を強く迫ることが予想される。

 政府に求められるのは「次」の貢献をあたふたと決めることではない。軍事偏重でなく「平和国家・日本」にふさわしい骨太な外交指針を打ち出すことだ。本来は民意の支持を受けた本格政権が手掛けるべき課題である。衆参ねじれ国会と弱体化が進む麻生政権下での政治空白のツケは重い。(以上)

【コメント】中日新聞の社説は《イラク攻撃を日本政府が支持したことの総括もできていない。ブッシュ米大統領ですら開戦理由とした大量破壊兵器が見つからなかったことを「最大の痛恨事」と言及した。それにもかかわらず支持判断は正しかったと、政府がかたくなな姿勢を取り続けるのは不可解だ》と批判しています。この批判は政権与党と同じ立場を取った”読売新聞社”にも当てはまります。読売新聞は《給油継続の「次」も考えたい》と言う前に、自ら支持したことの検証をすべきなのです。

読売新聞の社説は《最も迅速な対応が求められるのは、ソマリア沖の海賊対策だ》と述べた後、《自衛隊の海外派遣に関する恒久法整備に本格的に取り組むべきだ》と述べています。これを見れば、ソマリア沖の海賊対策が単なる警察的な活動を意味しているだけではなく、海外での自衛隊の武力行使の流れを作りだすことを企図していることは明らかです。

中日新聞社説が述べるように《軍事偏重でなく「平和国家・日本」にふさわしい骨太な外交指針を打ち出すこと》が大切だと思います。政府は国のあり方を決めた憲法を守り活かさなければなりません。

私たちが目にしている米国の軍事による国際紛争を解決しようとした結果の現実は、《バグダッドを14日に訪問したブッシュ米大統領に対し、記者会見で靴を投げ付けたイラク人記者を称賛する声が、イラク国内で広がっている(中日新聞報道)》、《アフガニスタンとイラクへ侵攻したブッシュ大統領の任期終了間際に起きた事件は、アラブ社会の根深い反米、反ブッシュ意識を改めて浮き彫りにし、オバマ次期政権に「米国への信頼回復」という重い課題を突きつける(毎日新聞報道)》という状況です。米国にとっても大きなマイナスの結果を生み出しています。

新聞社は事実と真実をしっかりと見据える目を持ち、誤った場合は米国の新聞のように反省しなければならないと思います。

2004年に、自国政府の主張に重きを置いて編集したワシントン・ポスト紙は「戦争に向けて打ち鳴らされるドラの音に警戒や疑問がかき消されていった」と、報道検証で反省しています。ニューヨーク・タイムスも反省しています。

為政者に課せられ逃れられない義務/山崎孝

2008-12-16 | ご投稿
【彼らの罪】(2008年12月15日付朝日新聞夕刊「窓」より)

山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚」。江戸時代、貧しい庶民たちの医原を担った小石川養生所の医長、新出去定と若い医師との魂の交流を描いた作品だ。黒沢明が監督した映画でも有名だ。

 その中にこんな一節がある。幕府によって養生所の経費が3分の1削られることになった。理由は将軍家に姫君が生まれ、それを祝うため、費用が必要になった。その、とばっちりが養生所の予算に向けられたのだ。

 あまりに理不尽な話に怒った新出は、こう考える。「将軍家に慶事があったのなら、罪人を放ち(貧者に)金穀を施与するのが当然ではないか」。しかし、現実はまるで逆だ。貧者の命を奪うに等しい。この不条理はどこから生じるのか。

 こうした判断を下す支配者、権力者たちに、どうしてそんな権利があるのか。

 だが、こうも考える。

 「かれらの罪は真の能力がないのに権力の座についたことと、知らなければならないことを知らないところにある」「かれらはもっとも貧困であり、もっとも愚かな者より愚かで無知なのだ、かれらこそ憐れむべき人間どもなのだ」

 西洋にもノーブレス・オブリージという言葉がある。高い地位にある者には、おのずと課せられる道徳的、精神的な義務があるということだ。

いまの日本はどうか。新出が憤った為政者たちと、選挙で選ばれた政治家たちと違いがあるのか。新出の公憤は、時代を超えて生き続けている。(駒野剛)

【コメント】駒野剛さんは「高い地位にある者には、おのずと課せられる道徳的、精神的な義務」を求めています。お気持に同感します。

私は為政者に課せられて逃れることが出来ない義務に、憲法99条に定められた、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、「憲法を尊重し擁護する義務」があります。

為政者が高潔な道徳観を持つことは大切なことですが、この道徳観が弱くても、憲法が保障した戦争放棄と平和的生存権、憲法25条に規定された政策を実行する義務が課せられていることを認識する必要があります。

私たちは、社会を良くするには憲法を守らなければならないことを良く認識した政治家たちを選ぶ権利と、選らばならない義務を負っていると思います。

税金も人も米国に奉仕する 空自3万人を超える米兵を空輸/山崎孝

2008-12-15 | ご投稿
(しんぶん赤旗の2008年12月14日のHPより)防衛省は米軍再編を本格的に進めるために、二〇〇九年度の軍事予算案に約一千億円もの巨額の支出を要求する方針を決め、財務省との事前調整に入りました。

 米軍再編は、自衛隊基地への訓練の移転などが進んでいるとはいえ、核心ともいうべき沖縄の新基地計画や岩国基地(山口県)の再編計画は、地域の強い反対で立ち往生したままです。国民が認めてもいないのに、今年度(百九十一億円)の五倍もの予算を計上するのは重大です。社会保障費など国民生活予算を削減する一方で、巨額を米軍に投入する態度が国民の反発を買っているのは当然です。

異常な「別枠」方式 約一千億円のうち半分は在沖縄米海兵隊のグアム移転を理由にした、グアム基地建設関連予算です。米軍司令部や隊舎建設のための土地造成費です。今年度予算では調査費として約四億円がついていますが、建設費を計上するのはこれがはじめてです。

 司令部要員など八千人の海兵隊員を沖縄から移転させても、戦闘部隊と基地をそのまま残す再編計画では、沖縄県民の苦しみをなくすことはできません。しかもグアム移転と一体で政府が押し付けようとしている沖縄での新基地建設計画は、騒音被害の拡大など「基地の痛み」を激増させるだけです。

 七割もの県民が基地撤去を要求し、新基地計画に反対しています。基地の痛みをなくせという県民の強い願いに背を向けながら、日本の負担でグアム基地建設を進めるのは許されません。

 米軍再編に要する経費は三兆円というのが米政府高官・軍幹部の説明です。日米合意では、沖縄の新基地建設と厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機部隊の岩国基地移駐は二〇一四年に完了するとされ、その他もそれ以前に作業が進むことになっています。こんご六年間で合意どおりに再編を進めれば、年平均でも五千億円が必要になる計算です。来年度一千億円を計上するのは、そのための助走であり、その後は数千億円にもなるのは避けられません。

 巨額の米軍再編予算を確保する手法も見過ごせません。

 防衛省は来年度の概算要求で約四兆八千五百億円を計上していますが、これとは「別枠」で再編予算を要求しています。これは政府方針にもとづいています。二〇〇六年の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(「骨太方針」)が、軍事予算で対応できない場合は「必要な措置を講ずる」としているからです。

 「別枠」を許せば軍事予算を激増させ、国民生活予算の圧迫にさらに拍車をかけることになるのは必至です。

戦争の足場にさせない そもそもブッシュ政権がはじめた米軍再編は日本の防衛とは無縁です。日本の基地を足場にして、世界各地にいつでもどこにでも迅速に米軍部隊を送り、軍事介入できるようにするのが狙いです。米軍地位協定にも根拠のない「思いやり予算」と同類の米軍再編予算を増やすことに、何の道理もありません。

 米軍再編を許さないことはアメリカの戦争態勢づくりを阻止することにつながります。それこそが戦争を放棄し紛争を平和的に解決することを理念とする憲法九条をもつ日本の役割です。(以上)

【イラク空自が米軍要請で定期便】(2008年12月14日付中日新聞HPより)

 イラクで活動した航空自衛隊が、米軍など多国籍軍の要請で、首都バグダッドと南部アリ(旧タリル)とを結ぶC130輸送機の「定期便」を新たにつくり、今年に入って週1回運航していたことが分かった。

 両地点ともイラク駐留米軍の拠点で、隊員は「多くの武装米兵を運んだ」と証言。空自機は米軍の指揮下で、兵員輸送の一角を担っていた実態があらためて浮き彫りになった。

 陸上自衛隊がイラクから撤収した2006年7月末以降、空自はクウェートを起点に週4、5回、「アリ便」「バグダッド便」「バグダッド経由アルビル便」の3ルートで定期的な運航を実施。空自幹部は「バグダッドへの飛行を始めたころからも不定期でアリ-バグダッド間を運航したこともあったが、(07年からの)米軍増派で常態化した」と明かす。

 アルビル以外の便は「すべて多国籍軍向け」(自衛隊幹部)で、空自機は米軍から「タクシー」と呼ばれていた。隊員は「空自機は米軍のいいように使われ、コマにすぎなかった」と指摘している。

 空自は04年3月からイラクへの空輸を始めた。821回飛行し、延べ4万6500人と物資673トンを運んだ。輸送人員のうち国連職員は約2800人で、陸自隊員を差し引けば3万人を超える米兵を空輸したとみられる。

 名古屋高裁は4月、空自機が武装した米兵を戦闘中のバグダッドへ空輸することについて「違憲」との判断を示している。

日中韓首脳会議の共同声明と改憲の方向は大きく矛盾する/山崎孝

2008-12-13 | ご投稿
【日中韓首脳、金融危機への対応を協議】(2008年12月13日付朝日新聞夕刊)

 麻生首相、中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領による日中韓首脳会議が13日午後、福岡県太宰府市の九州国立博物館で開かれた。3首脳は金融危機への対応や北朝鮮問題などを協議。未来志向の協力をうたう共同声明に署名するほか、防災協力に関する共同発表を行う。

 3カ国の首脳会議は、99年から国際会議の際に計8回開かれてきたが、独立した形は初めてで、日本外務省は「第1回日中韓サミット」と名付けた。会場も古くから中韓両国との交流の窓口で、地理的に近い福岡県が選ばれた。

 共同声明は、日中韓の協力を「開放性、透明性、相互の信頼、共益及び多様な文化の尊重という原則の下に進める」と宣言。東アジア共同体構想も見据えながら、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、東アジアサミットなどの「地域的な協力の枠組みを補完し補強する」と位置づける。サミットは今後も定期的に続け、次回は中国開催で調整している。

 防災協力では、総合的な防災体制の整備などの協力を進めるため、防災担当の閣僚級と専門家レベルの会合を開くことで合意する。第1回閣僚級会合は、日本が来年主催する方向で調整する。(東岡徹)

【コメント】共同声明は、日中韓の協力を「開放性、透明性、相互の信頼、共益及び多様な文化の尊重という原則の下に進める」と宣言し、声明を東アジア共同体構想も見据えながら、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、東アジアサミットなどの「地域的な協力の枠組みを補完し補強する」と位置づけています。この声明と極東の有事も想定し日米軍事同盟を更に強化するために改憲し、集団的自衛権行使を可能にする方向とは全く整合性がありません。

6カ国協議、文書化合意できず 議長声明「次回早期に」/山崎孝

2008-12-12 | ご投稿
(2008年12月11日の共同通信)

北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議首席代表会合は4日目の11日、北京の釣魚台迎賓館で核検証方法の文書化に向け、ぎりぎりの調整を続けたが合意できず終了した。次回協議の日程も決まらなかったが、中国の武大偉外務次官は「早期に6カ国協議を開催することで合意した」との議長声明を発表した。

 核検証方法で争点となっているサンプル(試料)採取など科学的方法の採用をめぐり、文書盛り込みを拒否する北朝鮮と記載すべきだとする日米韓の溝は深く、着地点は見いだせなかった。

 ヒル米国務次官補は同日夜、北京国際空港で、次回日程について「設定しようと思えばできたと思うが、しなかった」とし、決裂ではないことを強調した。しかし、斎木昭隆外務省アジア大洋州局長は「いつ開く(ことができる)かは、なかなか難しい」と述べた。

 議長声明は「検証条件合意に向けた進展を評価し、検証における国際原子力機関(IAEA)の支援と助言を歓迎する」と表明。寧辺の核施設無能力化と経済・エネルギー支援を並行して進めることや支援への国際社会参加歓迎を盛り込んだ。

 さらに(1)「経済・エネルギー協力」作業部会の適切な時期の開催(2)「北東アジアの平和と安全のメカニズム」作業部会を来年2月にモスクワで開催-をうたい、米朝、日朝間の懸案解決と関係正常化に向けた努力を促す、とした。

 ヒル氏は「検証は国際的な基準を満たさなければならない」と従来の主張を繰り返し、他国と協調して進展に向け努力する姿勢を強調したが、具体的方策は示さなかった。また、無能力化と支援の非核化第2段階の完了日程について、検証文書化の完成と合わせてまとめたいと述べた。

 斎木氏は「実質的成果はほとんどなかった。核検証に関して北朝鮮とほかの国々の考え方でギャップを埋められなかった」と述べた。

 日程を1日延長した11日は各国首席代表が中国の楊潔☆外相を表敬訪問した後、全体会合を断続的に続けた。

 日朝協議は開かれず、日本人拉致問題も取り上げられなかった。

【コメント】議長声明が「次回を早期に」「検証条件合意に向けた進展を評価」したように枠組みが壊れたわけではありません。6カ国協議は、今年は北朝鮮の核施設の無能力化の進展も得て継続されます。かつてのように北朝鮮は、半分以上解体された核施設を復旧させて、核兵器を再び開発して米国と軍事的に対決していく道はとても不可能です。そして国際的な援助無しには生きていかれる国ではありません。

朝日新聞の12日の報道は《関係者の間では「北朝鮮は本当は必要なことを理解しており、試料採取もいつか認める」との見方もある。金氏も協議で「現時点では受け入れられない」とする一方、「永遠ではない」とも言及。「検証は核を廃棄する第3段階の問題」(関係者)との位置づけだ。》と伝えています。

米国は北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を10月11日に行いましたが、この措置では米朝国交回復がされない限り、北朝鮮には経済的な大きなメリットはないとも言われています。何れにしても6カ国協議を成功させる以外に東アジアの平和と安定はありえません。

北朝鮮の脅威なるものを口実にして、日米軍事同盟を強化するために改憲して集団的自衛権行使を可能にしても、東アジアの平和と安定は勝ち取れません。軍事的に睨み合った状況が続くだけです。

「人間の尊厳を守る」ために/山崎孝

2008-12-11 | ご投稿
12月8日にブログに投稿した文章と同じ趣旨の文章を朝日新聞に投稿していました。この投稿が10日の「声」欄に掲載して戴きましたのでブログにも投稿します。

最近の「声」欄には、非正規雇用者の首切りを行うことに対する怒りの意見が多く掲載されています。11日の掲載文は《有効雇用の中途解約について労働契約法は倒産の危機など「止むを得ない自由」以外は禁止している》と鋭く指摘している文章もあり、テレビでは首切りにあった労働者がユニオンを結成して企業と戦う映像が放映されるようになりました。

私たちが戦争に反対し憲法を守るのも、政府や企業の横暴に声を上げるのも、言うまでもなく憲法の理念「人間の尊厳を守る」ためです。

2008年12月10日付朝日新聞「声」欄掲載文【家計支援より失業対策望む】

5日の衆院予算委員会で、定額給付金を「どんな気持から実施することにしたのか?」と質問された麻生首相は「家計への緊急支援だ」と答えた。

 定額給付金の支給を考えた時点では、物価の上昇が目立っていたから緊急支援という理由は合っていたかも知れない。

しかし、今の緊急な課題は、景気の悪化を理由に非正規雇用者が解雇されて大量の失業者が生まれていることだ。

 私は、高額所得者にも支給されるという緊急支援の意味を持たない定額給付金はやめて、その財源を、困っている失業者の生活支援にあてるべきだと思う。

 景気の回復は早期に望めそうもないから、雇用保険の支給期間を延長する財源にも使ってほしい。

 また、社員寮に住んでいた労働者は、解雇と同時に寮を出なくてはならない。住むところがなくなる労働者には一定期間寮に住めるよう改善すべきだ。政府には、困った人を寒空の路頭に放り出さないような強力な指導を望みたい。