いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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中曽根康弘元総理大臣の憲法に対する意見/山崎孝

2008-04-29 | ご投稿
2008年4月27日付朝日新聞「耕論」というシリーズ記事は、中曽根康弘元総理大臣と若宮啓文朝日新聞コラムニストの憲法論議が掲載されています。この記事を抜粋して紹介し私の意見を述べます。

【9条と自衛隊】の論議より (前略)中曽根 ……占領下で憲法がつくられてから60年あまり、国民はいろんな経験をした。そのうえで解釈改憲はもう無理だ、憲法そのものを狙上に乗せて考え直そうという空気になってきたと思う。自衛艦のインド洋派遣でも、国民は、憲法上は断崖の上を歩いているような気持ちで支持したのではないか。

若宮 インド洋はともかくイラク派遣には反対の方が多かったですよ。自民党案のように改憲で自衛隊を名実ともに軍隊にしたら米軍とますます一体化し、こういう戦争にもかり出されると心配です。

中曽根 憲法を改正すれば国家安全保障法という付属法典を一緒につくらざるを得ない。戦前の軍隊をよく反省して、軍を動かす政治機構もよく見つめて、9条問題は総合的にとらえていかなければならない。憲法の本文もさることながら、付属法によって自衛隊の運用に法律的な縛りをかけておく。私はそういうことを考えています。(後略)

【私の意見】中曽根元首相は《付属法によって自衛隊の運用に法律的な縛りをかけておく》と述べています。この縛りは自民党政府に効かないと思います。端的な例は、国民の大きな反対を受けながらも自衛隊をイラクに派遣しました。イラク特措法の基本原則の3 対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする、との規定は守られず、名古屋高裁からイラク特措法違反、航空自衛隊の活動は憲法違反とされても、憲法審査権を持つ裁判所の判決を無視して政策を変えようとしません。変えないどころか海外で武力行使を行なうような恒久法を考え、今秋の国会で制定しようと政府は考えています。これを見れば法律での規制は有名無実になるでしょう。最高法規と国民世論でしっかりと海外での武力行使や自衛隊の活動が外国軍隊の武力行使と一体化しないように政府に縛りをかけていなくてはならないと思います。

【押しつけ論と米国】の論議より 若宮 改憲論者の多くはいまの憲法をアメリカの押しつけだと言いますが、カントに代表される欧米の平和思想の流れが結実しています。さらに最近、司馬遼太郎賞を受けた山室層一・京大教授の「憲法9条の思想水脈」が説き明かしたように、横井小楠や内村鑑三をはじめ近代日本に流れてきた非戦思想が、敗戦で開花したとも言える。アメリカによる押しつけ論は一面的すぎませんか。

中曽根 どの国にも反戦論はある。だが、それが国民世論として、国の思想の本流をなし得たか。憲法という正規の国家構造をどうつくり上げるかという場面になると、やはりいまの9条はマッカーサー司令部から与えられたものと考えざるを得ない。

 9条もさることながら、現敗戦で憲法の問題点は前文にある。きれいな日本語でないし、簡単明瞭な文章でもない。思いつきの羅列だ。前文は歴史や文化、伝統を含み、国家全体を表す内容でなければならない。憲法上の国民には過去の国民と未来の国民も含まれるが、いまの前文はまったく落第で、未来の国民に渡していくべきものとは思えない。(後略)

【私の意見】中曽根元首相は《どの国にも反戦論はある。だが、それが国民世論として、国の思想の本流をなし得たか》と述べました。たしかに戦争に対して国民の世論は変動しています。マスメディアが戦争に対する警戒心を強く持たずに政府の政策を報道した場合は、反戦論は少数派に止まっています。

日本においては1931年の満州事変以降、新聞は軍部への批判は、弾圧を恐れて新聞社という組織を守る意識が強く働き批判を控えるようになります。そして日中戦争の拡大に伴い国民に対して戦争熱を煽るようになります。政府は反戦論を掲げる共産主義者はもとより、自由主義的傾向を持つ人に対して治安維持法を適用して言論を封じ込めています。国民の多くは戦争の実相を知らないままに太平洋戦争に同調しています。そして、本土空襲など自らの体験で戦争の悲惨さを思い知らされて、日本人の多くは軍隊が解体されたことを歓迎しました。そして現在、憲法9条を守れの意見は根強くあります。それをひっくり返そうとするのが隣国の脅威を煽り、また財政的な国際貢献だけでは駄目だと称して戦争を放棄した憲法を変えようとしています。

米国ではベトナム戦争では共産主義の脅威を煽り米国民を戦争に駆り立てました。しかし、米兵の犠牲が増えるに従って戦争の実態も知られるようになり反戦運動が高まっています。イラク戦争でも当初はイラクの大量破壊兵器の脅威やイラクがテロリストと関係する宣伝で、米国の新聞や国民の多くは戦争に同調しますが、米兵の犠牲が増えるに従って戦争の実態も知られるようになり反戦運動が高まっています。そしてイラク戦争に批判的な民主党が選挙で勝利しています。

戦争に対する国民世論は政府の宣伝やマスメディアの報道の仕方で変動します。それゆえに後から戦争をしたことを後悔しないように政府に対して戦争をするなと憲法で歯止めをかけておく必要があります。国際紛争を戦争で解決しないとする理念の揺るがない規定としての憲法9条の堅持です。

中曽根元首相は、「前文は歴史や文化、伝統を含み、国家全体を表す内容でなければならない」とか、「いまの前文はまったく落第で、未来の国民に渡していくべきものとは思えない」と述べています。

憲法の前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と記しています。これは正に日本の明治以降の日本の歴史を反映した文章です。日清、日露、日中、太平洋戦争を引き起こした日本の歴史の教訓をくみ取り、天皇が主権者としたことで軍事独裁政権が生まれ、その教訓として、国民が政府をコントロールできることを可能にした国民主権に変革しています。

「未来の国民に渡していくべきものとは思えない」とも中曽根元首相は述べていますが、昨日のブログで述べた国際社会や国連の大きな課題に対応する憲法前文の決意の先駆性を見れば、未来の国民に渡していくに相応しい憲法前文です。

【戦争政策を進める上での常套手段】ナチス・ドイツの軍事参謀 ヘルマン・ゲーリングの言葉

もちろん普通の人々は戦争を望まない。しかし結局、政策を決めるのは国の指導者だ。そして人々をその政策に引きずりこむのは簡単なことだ。それは民主政治だろうが、ファシズム独裁政治だろうが、議会政治だろうが、共産主義独裁政治だろうが、変わりはない。反対の声があろうがなかろうが、人々が政治指導者の望むようになる簡単な方法は、ただ『国が攻撃される』と告げればいいだけだ。そして平和をとなえる者たちを『愛国心がない』『国を危険にさらすのか』と批判すればいい。これでどんな国でも、うまくいくものだ。

国際社会や国連が求める国際平和協力とは/山崎孝

2008-04-28 | ご投稿
はじめに 昨日「いせ九条の会」の平和憲法賛同署名に参加しました。その活動の中で、高齢の女性は、私は目が悪いので署名はできない。家の者は留守をしていていない。しかし、憲法9条は変えてはならない、ときっぱりと述べました。日本が戦争をした時代を生き抜いてきた方の明確な意思表示を語感から私は感じました。中年の男性は署名に来ることはチラシで知っていた、話しをほとんど説明しなくても署名しました。

30代の男性は自衛隊のイラク派遣は憲法違反とした名古屋高裁判決を、あれは裁判所の考えで自分は違反とは思わない。憲法を変えても戦争にはならない、と話しました」。このように三権分立を平面的に捉え、違憲審査権を持つ裁判所の重要な位置を理解しない人や自衛隊が海外に出かけて武力行使(戦争)を可能にする憲法の目的が理解できていない人もいます。このような人たちに改憲の目的を理解して貰う宣伝活動がとても必要だと感じました。

【アフリカの二つの顔 週のはじめに考える】(2008年4月27日付中日新聞社説)

アフリカには二つの顔があります。古くからの「貧困」と新たな「成長」です。成長への転換を目指す各国の努力へ日本独自の後押しができませんか。

アフリカ西海岸のコートジボワールは、チョコレートの原料、カカオ豆の世界最大の輸出国です。

同国の密林の村を訪れたカナダ人ジャーナリストが「チョコレートの真実」(キャロル・オフ著、英治出版)の中でカカオ農園で出会った子供たちの姿を描いています。彼らは自分たちが育てた豆から何が作られるのか知りません。チョコレートが何であるのかも。

チョコを知らない子供 「私の国には学校へ向かいながらチョコレートをかじる子供がいて、ここには学校も行けず、生きるために働かなければならない子供がいる」

コートジボワールのカカオ生産はマリなど近隣諸国からの移民労働に支えられてきました。ところが価格低迷で賃金さえ払えなくなり、復活したのが子供の人身売買と奴隷労働だったといいます。

カカオ産業を牛耳っているのは巨大食品企業と腐敗した政府、武装勢力、農園経営者であり、「今も子供たちは狙われ、酷使されている」と著者は告発します。

アフリカは、まだまだ「貧困の大陸」なのでしょうか。けさ(二十七日)の本紙サンデー版の大図解「変わるアフリカ」を見てください。世界で最も貧しく、重い借金を背負っていると世界銀行などが認定した重債務貧困国(二〇〇七年)は、五十三カ国のうち三十三カ国に及んでいます。

チョコレートを作る側と、食べる側との間の深い裂け目。日本との間にもある、よく似た溝の広がりを実感したことがあります。

飢えと内戦で荒廃したソマリアでの取材です。一九九二年暮れ、無政府状態の国に食料と秩序をもたらそうと、米軍など多国籍軍が希望回復作戦を展開しました。

日本の姿が見えぬ援助 痛感したのは、日本という国の「遠さ」「軽さ」です。日本はよく知っています。でもそれは、街を走る車やカメラやパソコンといった日本製品なのです。

よく「中国人」に間違えられました。「いや、日本人だ」と答えると、驚いた表情で言いました。

「立派な車や製品をつくる日本人はアメリカ人とそっくりだと思っていたよ」

日本人を実際に見たことがないのです。当時、ソマリアに対する日本の援助は世界トップ級と聞きました。国連機関などによる食料や医療援助を資金面で支えたのですが、日本の姿は隠れています。

自国の国旗を掲げて支援活動に汗を流す北欧などの非政府組織(NGO)とは対照的でした。カネやモノだけではなく、ヒトの貢献も重要なのです。

ソマリアは無政府状態が続き、イスラム過激派たちのテロの温床にもなっています。地域紛争、飢餓、難民、エイズ、水不足。「貧困」がかつての「暗黒大陸」をもたらしたかのようです。

グローバル化、市場主義経済の陰の部分がアフリカに集中したのです。最近のコメや小麦など穀物価格の急騰も、暴動の多発など深刻な打撃を与え始めています。

一方、時の経過とともにアフリカに明るい変化も生まれました。「成長」です。多くの国が年5%を超す経済成長を遂げました。石油・天然ガス、鉱物資源に恵まれた国が目立ちますが、地域の平和と安定こそが成長に不可欠の条件なのです。

来月、横浜市で開かれる第四回アフリカ開発会議(TICAD)と七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を世界は注目しています。議長国日本のアフリカ支援策に期待しているからです。

かつて十年連続世界一を誇った政府開発援助(ODA)は財政難を理由に毎年削減され、昨年は五位に転落しました。でも財政事情の厳しさは同じでも欧米諸国はアフリカ支援を拡大しています。

21世紀の外交の試金石 二〇〇一年一月に日本の首相として初めてアフリカを公式訪問した森喜朗氏は「アフリカは二十一世紀日本外交の試金石」であり、「アフリカの平和なくして世界の平和なし」と語りました。

政府としてその決意は今でも変わりないはずです。具体的な貢献策は、自給自足するための農業技術の指導、学校建設など教育、人材育成の手助け、民間投資を促進する道路や橋、水道の整備などたくさんあります。地球規模の気象変動対策と成長の両立という難題にも取り組まねばなりません。

アフリカの全人口のほぼ半数が十四歳未満の子供たちです。明日の地域づくりを担う彼らに、チョコレートの味はもちろんのこと、日本の国や日本人の顔も覚えてほしいものです。(以上)

2007年7月2日付中日新聞 国連は発展途上国の貧困や飢餓対策のための国際的数値目標、ミレニアム開発目標(MDGs)の進ちょく状況に関する二〇〇七年版の報告書を発表した。目標達成に重要な先進国の政府開発援助(ODA)が二〇〇六年に前年より減少するなど「資金不足が深刻だ」と指摘している。

潘基文事務総長は「先進国は過去の約束を果たしておらず、ODAの大幅増がみられない現状ではMDGsの達成は困難だ」としており、ODAの削減を続ける日本には耳の痛い内容となった。

報告書によると、ODA総額は〇五年が千六十八億ドルだったのに対し、〇六年は千三十九億ドルにとどまった。ODA総額の前年割れは一九九七年以来となる。

総額は先進国の国民総所得の0・3%で、国民総所得の0・7%を援助に向けるとの公約を果たしたのはデンマーク、ノルウェー、オランダなど五カ国だけだった。

報告書は「〇五年の主要国首脳会議(グレンイーグルズ・サミット)で一〇年までにアフリカ援助を倍増させることなどを誓った先進国は、その約束を果たしていない」と指摘。「MDGsの達成は先進国が援助の約束を果たすかどうかにかかっている」と援助の増額を訴えた。

これまでの達成状況では、世界人口のうち一日一ドル未満の収入で暮らす人の比率が一九九〇年の32%から〇四年に19%に低下するなど、貧困解消を中心に一定の効果があった。ただその一方で、サハラ砂漠以南のアフリカでの貧困人口が依然多く、子供の死亡率が高いなど「進ちょく状況にばらつきが大きい」といい、潘事務総長も「どれだけ多くの課題が残っているかも明らかになった」としている。

【ミレニアム開発目標(MDGs)】 発展途上国の貧困解消や持続可能な開発のため、国際社会が2015年までの実現を公約した目標。2000年の国連ミレニアムサミットで採択された宣言と1990年代の主要な国際会議で約束された国際開発目標をまとめた。極度の貧困と飢餓の廃絶、普遍的な初等教育の達成、乳幼児死亡率の削減など八つの主目標があり、「5歳未満の子供の死亡率を3分の1に減らす」「飢餓に苦しむ人口の比率を半減させる」など、18の具体的目標が盛り込まれている。(以上)

★コメント 中日新聞社の社説は「21世紀の外交の試金石」という問題を提起しています。また、2007年7月2日付中日新聞は、国連の報告書は「ODAの削減を続ける日本には耳の痛い内容となった」と述べています。

「21世紀の外交の試金石」には、日本が外国の軍隊を助けるために、海外での武力行使をしなければならないという観点や必要性は入っていません。私たちが必要性があると思うのは、憲法前文で謳われている精神です。「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏を免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」。

自民、公明、民主3党の超党派議員の結集組織「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」が、自衛隊などの「国際平和協力活動のあり方をめぐる包括的な議論を深める」として掲げた (1)日米(軍事)同盟をより効果的なものとする集団的自衛権の議論はじめ領域警備、秘密保護など防衛法制の見直し(2)自衛隊の海外派兵を迅速に展開する一般法(恒久法)の制定(3)国家安全保障会議(日本版NSC)の創設――の三つの柱は、新世紀の世界の課題に対応するものとは言えません。

国際平和協力活動のあり方とは、自衛隊が海外に武力行使に出かけることではなく、日本人が海外で地道な人道・復興支援を行なうことです。それを政府が奨励し援助をすることです。

憲法前文の精神の確実な実践こそ21世紀の世界が抱えている問題に対する最大の貢献です。

【参考】ミレニアム開発目標にある「1日1ドル未満で生活する人を半減させる」のに必要なお金は6兆2千億~7兆1千億と見積もられています。世界の軍事費は116兆円(2005年)です。栄養失調の子どもを半減させるのに必要なお金は3兆400億円と見積もられています。日本の軍事費の4兆8千億(2007年)です。(数字は「NHK地球データマップ」を参考)

九条の会事務局の記者発表の概要報告/山崎孝

2008-04-27 | ご投稿
「九条の会」メルマガ詳細版 2008年4月25日 第45号を転載

九条の会事務局は4月25日、参議院議員会館で記者会見を行いました。会見では司会を高田健事務局員が務め、事務局を代表して小森陽一事務局長が、要旨、以下の報告をしました。

全国の地域・職場・学園・分野・草の根の「九条の会」の結成状況は4月25日現在で、7,039カ所になりました。この中では広島市西区や新居浜市などで各中学校区に結成する運動をしていることに見られるように、九条の会を草の根にきめ細かく組織する動きが見られるのが特徴です。

「九条の会」は当初は各地で大規模な講演会を開催してきましたが、2年目以降、「憲法セミナー」という方式で、9条についての認識を理論的にも深めながら、各地に憲法の語り部を増やすようにしてきました。こういった運動方向に沿って、6月には岐阜市で憲法セミナーを開き、7月には宮崎市で開催します。

市民の自発的な努力により、九条の会の運動が大きく前進してくる中で、これに不当な規制・干渉する動きが目立ちます。神奈川県の箱根町教育委員会の箱根町九条の会の活動に関する不当な干渉や、先の映画「靖国」をめぐる動きの中で、助成の選定にあたった専門委員の1人が九条の会に属していることを理由にその「中立性」を問題にするような動きがありました。私たちはこれに以下の「事務局見解」をもって反論します。

つづいて小澤隆一事務局員が「事務局見解」について説明をしました。その後、参加した記者の皆さんとの間で、活発な質疑応答がありました。

この日発表されました「九条の会事務局見解/憲法9条を守る運動に対する不当な規制・干渉に抗議する」は以下の通りです。

【九条の会事務局見解/憲法9条を守る運動に対する不当な規制・干渉に抗議する】

 今年の3月4日に、「新憲法制定議員同盟」の総会が開催され、「われわれと正反対の勢力、『九条の会』と称する勢力」(同同盟幹事長の愛知和男衆院議員の表現)が全国に細かく組織作りができているとして、「九条の会」への対抗意識をあらわにし、「拠点となる地方組織」を作っていくことを方針に掲げました。

 私たち「九条の会」の運動は、憲法9条の「改正」に反対し、9条を守り実現しようと市民が進めているものであり、憲法9条の擁護は市民の自由闊達な議論を通じてこそ実現できると確信しています。それだけに憲法「改正」の是非をめぐる旺盛な議論の自由は絶対に守られなければなりません。

ところが、この間、こうした市民の言論や九条の会の活動を権力的に押さえ込むかのような、表現の自由や集会の自由に対する規制や干渉が目立っています。

 神奈川県の箱根町では、地域の九条の会が会合のために公民館を借りた際に「9条堅持に偏って主張することは避ける」などとの条件を町教育委員会からつけられたり、施設に掲示された「憲法9条が危ない情勢」という表現について「内容が中立的でない」として紙で覆い隠したりされました。これは、町教育委員会による検閲にほかならず、憲法が保障する表現の自由、集会の自由に対する明らかな侵害です。また、憲法の趣旨に沿って公の施設の平等な利用を定めた地方自治法や、公民館の目的を住民の教育・学術・文化に関する事業とし、その事業のなかに「討論会」も含めている社会教育法にも反する違法な規制です。

 また、映画「靖国」が日本芸術文化振興会から助成を受けたことを問題にした自民党の議員は、国会の質問で、助成対象の選定にあたった専門委員の一人が「映画人九条の会」のメンバーであることを取り上げて、「専門委員の中立性」を問題にしています。しかし、文化的な活動への助成の内容に党派的な国会議員が干渉することこそ、文化行政の公正さ・中立性を損なうといわねばなりません。

 こうした規制や干渉の口実として、憲法9条の擁護を訴えることは「政治的」で「偏った」言動だという主張がありますが、憲法をめぐる議論は決して一党一派の立場を主張する「政治」的言論ではなく、むしろ自由な社会では最も手厚く保障されるべき言論です。

 私たち「九条の会」の運動が地域や職場に広がる中で、憲法9条を守ろうという声は着実に大きく確固としたものになってきています。4月8日に読売新聞が発表した世論調査で、憲法「改正」に「反対」(43.1%)と答えた人が「賛成」(42.5%)と答える人を上回り、9条の明文改憲に否定的な回答が60.1%にのぼったことは、その一端を示すものです。

 そうした中で9条改憲をもくろむ勢力のあせりが、権力の側から国民運動の提起や言論・表現・集会の自由の侵害という形で現れているのです。私たちは、こうした規制や干渉に断固抗議するとともに、今後とも、憲法9条を守る運動を進めていく決意を表明するものです。

2008年4月25日

★コメント 「いせ九条の会」が平和憲法賛同署名を始めた2006年4月頃は、全国の「九条の会」は2500カ所でした。それが2008年4月現在で、7039カ所に発展しました。国民の各界各層が結集し、国民に9条の理念を広めていく運動は道理に適ったものの証明です。

この運動は憲法の自由、民主、平等、平和主義の理念を実現していく運動の一翼を担う運動だと思います。しかし、国民投票で勝利するには、まだまだ私たちの取り組みを強めなければならないと思います。

現在の日本の社会は死刑を含む刑事罰の適用を強化して犯罪を防げという声が強くなっています。この気分・雰囲気は力で物事を解決せよという方向に容易に結びつく可能性があり、脅威なるものが大量宣伝されると国民が軍事志向に向かう要素を持つものだと思います。

誰でも平和を願っています。この願いを憲法9条の堅持と不可分の関係があること広めていかなければならないと思います。

高遠莱穂子さんの憲法理念の実践/山崎孝

2008-04-26 | ご投稿
【武装勢力「なぜ軍隊を送る」/現地の矛先日本に】(2008年4月26日付朝日新聞のシリーズ記事「違憲 イラク派遣」より)

 陸上自衛隊がイラク南部のサマワに派遣された04年1月ごろ、高遠莱穂子さん(38)はイラク人たちから、何度もこう言われた。

 「お前は日本政府のスパイだろう」

 ストリートチルドレンの自立に向けた活動で、3度目のイラク滞在の時だった。イラクは伝統的に親日感情が強い。だが、そんな様子はもううかがえなくなっていた。

 武装勢力に拘束されたのは、それから間もない04年4月のことだ。

 命が奪われ続けるイラクを何とかしなければ-。それは、地球人の一人として、という気持ちだった。だが、拘束事件は高遠さんに、いや応なしに「日本人」である現実を突きつけた。

   ■

 拘束された場所は、ヨルダンからバグダッドに向かう途中のファルージヤ。米軍の徹底した「掃討作戦」で多くの住民が犠牲になっていた。反米感情は強烈だった。拉致した男は怒鳴り上げた。「日本人、よくない」

 武装勢力は、高速さんたちを解放する条件として「自衛隊の撤退」を要求した。「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、わかるわけない」(当時の小泉首相)と発言して実行した国策の、代償としての拘束だった。

 「なぜ軍隊を送るんだ」「なぜ米国の言いなりなんだ」「平和憲法があるのになぜ」。拘束されていた時に武装勢力の男たちに言われ、その後もしばしばイラク人から投げかけられる言葉だ。日本人として生きるとは、どういうことなんだろう。この3、4年、考え続けてきた。



 5月4日に千葉市の幕張メッセで開幕する「9条世界会議」の呼びかけ人に、昨年から名を連ねた。

 紛争を解決する手段としては、戦争をしない、武力行使をしない。そう定めた憲法9条の下で非暴力を貫く。そして「対話による紛争解決」を目指し、自分ができる支援を行う。それが「9条の実践」だと思う。

 今もファルージヤやラマデイで避難民の支援や学校再建などに取り組む。難民は400万人以上。ヒーターや毛布などを送っても焼け石に水であることはわかっている。でも何もやらなければ、どこまでいってもゼロはゼロだ。

 航空自衛隊のイラクでの活動を「違憲」とした名古屋高裁の判決。国民は空白が多国籍軍を運んでいる事実をどこまで知っていただろう。判決で知った人が多いのではないか。そんな気がする。

 しかしそのイラクでは、少し前まで支援を「日本から」と言えなかった。それだけ恨みの矛先が向けられている。その現実をまずは知るべきだ、と話す。(以上)

★コメント 高遠莱穂子さんは、ストリートチルドレンの自立に向けた活動で、3度目のイラク滞在の時、拉致に遭いました。日本政府は人を犠牲にするイラク戦争を支持しておきながら、人道支援と称して自衛隊をイラクに派遣し、この政策により伝統的に親日感情が強かったイラクの人たちから敵意をもたれてしまいました。その事件の責任はイラク人の親日感情から逆に敵意を持たれる政策を実行した日本政府に責任はなく、拉致された人の自己責任とされてしまいました。

現在、チベット人の人権を守れという声が日本人から出されています。他国の人の人権に注意を払うことは大切なことです。それと同時に、日本が関わって起きた歴史的な非人道的事件、そして何よりも現在の日本政府の政策が関与している非人道的な出来事にも関心を持つようにすることが大切だと思います。この政策には私たちにも日本人として責任があると思います。

名古屋高裁は航空自衛隊の活動は、武力と一体化した活動であると認定した判決の中で《米軍を中心とする多国籍軍はファルージャ、バクダット等の都市で多数の兵員を動員して武装勢力の掃討作戦等を繰り返している。その結果、双方に多数の死者が出るのみならず、子どもたちを含む民間人を多数死傷させ、重大かつ深刻を生じさせている》と述べています。イラクの都市で多数の兵員を動員するためには兵士の輸送は欠かせません。日本政府の政策はこの兵士の輸送を担っています。

二大政党+公明党の主導は、日本を戦争する国へ向かわせることとなる/山崎孝

2008-04-24 | ご投稿
【超党派安保議連110人参如し再開/恒久法独自案めざす】(2008年4月24日付朝日新聞)

 自民、公明、民主3党の超党派議員による「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」が23日、3年ぶりに活動再開した。約110人がメンバーに名を連ね、自衛隊を海外に随時派遣できるようにする一般法(恒久法)の独自案のとりまとめをめざす。

 会合では、自民党の中谷元・元防衛庁長官が「いずれの政党でいかなる政権ができようとも、ここで考えたことを実行していく共通の基盤を作りたい」とあいさつ。民主党の前原誠司前代表も「骨太の議論は党利党略を超えて、国会議員の責務として議論しなくてはいけない」と強調した。会合後、前原氏は一般法について「法案の骨子、中身まで意識を共有したい」と述べた。

 議連は01年にテロ対策特別措置法の審議過程で発足。03年には集団的自衛権の解釈見直しなどを政府に求める緊急声明をまとめた。(以上)

2008年4月21日付の「しんぶん赤旗」の情報には、

新活動方針案では、自衛隊などの「国際平和協力活動のあり方をめぐる包括的な議論を深める」として(1)日米(軍事)同盟をより効果的なものとする集団的自衛権の議論はじめ領域警備、秘密保護など防衛法制の見直し(2)自衛隊の海外派兵を迅速に展開する一般法(恒久法)の制定(3)国家安全保障会議(日本版NSC)の創設――の三つの柱を中心に活動をすすめるとしています。

さらに「本議連は、政党の垣根を越えて連携し、新しい時代の安全保障・危機管理体制を確立し」として、次の総選挙をにらむ政界再編の動きを視野に安保・防衛政策で一方の結集軸を用意する狙いも含んでいます。

 活動再開にあたって「若手議員の会」は体制を刷新し、新メンバーを募っています。世話人代表は中谷元(自民・元防衛庁長官)、前原誠司(民主党副代表)、上田勇(公明党政調副会長)の各氏。会の取りまとめは安倍晋三前首相の側近の西村康稔衆院議員(自民)が担当します。

 「若手議員の会」は二〇〇一年十一月に百一議員で発足。自衛隊と米軍との共同作戦態勢や自衛隊の海外派兵のための「安全保障基本法」制定などを掲げる一方、「新しい憲法の創造をも視野に入れ」(設立趣意書)、この間、メンバーの多くが政界で自衛隊海外派兵や憲法九条改悪の動きの旗振り役を担ってきました。(以上)

★コメント 朝日新聞の情報《会合では、自民党の中谷元・元防衛庁長官が「いずれの政党でいかなる政権ができようとも、ここで考えたことを実行していく共通の基盤を作りたい」とあいさつ。民主党の前原誠司前代表も「骨太の議論は党利党略を超えて、国会議員の責務として議論しなくてはいけない」と強調した》と述べています。これの意味するところは、二大政党+公明党の主導する政治は、日本が戦争の出来る国にしていくことになります。これに対する日本の進む方向として、憲法9条を守り活かす考え方を広めなくてはならないと思います。

自衛隊員が誇りが持てる海外活動は/山崎孝

2008-04-23 | ご投稿
 4月20日の朝日新聞の記事「現役自衛官板挟み」の中で、《ある幹部隊員は「これが国の機関(裁判所)のすることですか。こんな判断はしてほしくなかった。違憲と言われても、派遣は国が決めたこと。自衛隊員は国のために命をかけて命令を遂行している」と憤りを隠さない。》と書かれていました。

 この幹部隊員の、自らの任務の意義を否定されるような事態に直面した気持ちはわからないでもありません。しかし、自衛隊員にこのような気持ちを味わわせた責任は、むろん裁判所ではなく、国民の多数の反対を無視して、憲法に違反する政策を実行した自民党、公明党の連立政府にあります。

 日本の過去を見れば、兵士が命をかけて戦った日中・太平洋戦争は間違いだったとわかった歴史があります。この時の責任は軍部、政府、政治家、新聞などのマスメディア、そして戦争政策に同調した多くの国民にも責任がありました。

 自衛隊をイラクに派遣する政策に賛成したのは、新聞社では読売新聞、産経新聞などでした。改憲に賛成する立場の知識人やジャーナリストも賛成しました。国民はどうか、朝日新聞社が2007年3月に行なった世論調査の中でも、「イラク特措法」の延長については、賛成19%、反対は69%で、多くの国民は政府の政策に同調しませんでした。事実をしっかり見て付和雷同しないことが大切だと思います。

 多くの国民から支持され、自衛隊員が誇りを持って取り組める海外活動は、PKO協力法に基づく後方支援、人道支援、災害救援・復興活動などであると思います。自衛隊の海外活動はこのような活動に限定すべきだと思います。

軍事ではなく警察部門の事件/山崎孝

2008-04-22 | ご投稿
【日本のタンカーに海賊発砲 中東アデン湾】(2008年4月22日付中日新聞)

21日午前10時10分(日本時間)ごろ、中東イエメンのアデンの東約440キロの沖合で、日本郵船(東京都千代田区)の大型原油タンカー「高山」(150、053トン、乗組員23人)が海賊とみられる小型不審船から発砲を受け、被弾した。けが人はなく航行に支障もない。

高山からの連絡によると、発砲は被弾後も少なくとも4発あり、高山はジグザグ航行するなどして逃走。しばらくして不審船は離れ、見えなくなったという。

海上保安庁には当初、運航を管理しているティ・エム・エム(東京都港区)から「ロケットランチャーで撃たれた」と一報があったが、武器の種類は確認できていない。

船体後部で燃料が漏れており、左舷後部のバラストタンクと燃料タンクの間にある金属壁に指先程度の穴が見つかった。被弾した際に、弾が外壁を貫通してできた穴とみられる。

高山は西に向かっており、近くの安全な海域に入った後、停泊して詳しい被害状況を調べる。

国交省と海保は同日、同じ海域での海賊対策を徹底するよう、海運各社などに通達した。

イエメン国営サバ通信によると、高山はソマリアの海賊から攻撃を受けたとみられる。イエメン沿岸警備当局が高山の救援に当たった。海上保安庁は高山が日本に帰港し次第、当時の状況を乗組員から聴き、器物損壊などの容疑で捜査する。

日本郵船によると、現地時間の21日未明、高山は発砲の約25分前にレーダーで不審船を発見。サーチライトを照らすなどして警告したが、不審船は無視し攻撃してきたという。

高山の日本人乗組員は7人で、4日に韓国の蔚山(ウルサン)港を出港、原油を積むサウジアラビアに向け空荷で航行しているところだった。現場はイエメンと対岸のソマリアに囲まれた「アデン湾」の中央部の公海上で、海賊被害の報告が多い海域。(以上)

★コメント 2007年10月9日、福田康夫首相はインド洋での海上自衛隊による給油活動について「憲法違反にはあたらない」と指摘した上で、「わが国の安全を守る意味でも大事だ」と述べ、日本が輸入する原油などのシーレーン(海上交通路)確保のためにも活動継続が重要との認識を強調しました。改憲派はよく日本のシーレーンは米軍が守っているから、米国に対する集団的自衛権行使は必要と主張します。

中日新聞の記事を読めば、海賊によって日本のタンカーは安全を脅かされました。海上保安庁が事件を調査する予定です。日本周辺海域の不審船の取り締りも海上保安庁が主体となって取締りをしています。そのために新たにヘリコプターや高速巡視船が導入されています。軍事ではなく警察部門が対応する事件です。

日本は海上交通路の要衝 マラッカ海峡が、テロリストではなく海賊行為が頻発した時があったため、海賊を取り締まる国に対して装備の整った高速船を供与しています。

竹田いさみ独協大教授は次のように述べています。海賊対策のために海上保安庁がマラッカ海峡沿岸国と連携訓練を行ったり、インドネシアの治安能力を向上させるために警察庁は専門家を派遣したりしてきた。またインドネシアでは、宗教・地域対立で社会の混乱が続いたマルクやアチェに国際協力機構(JICA)が専門スタッフを派遣し、平和構築のあり方を最前線で模索してきた。フィリピンのミンダナオ島では、貧困対策、平和構築のための支援活動に着手している。

 しかし、問題はこれらの支援が質量ともにまだ十分とは言えないことだ。東南アジア向けでは一番多いインドネシアでも、日本が行ったこの分野の無償資金協力は合計14億円余り(05年度実績)。インド洋での給油活動にかかった費用(燃料費と海自の活動費)は、2007年6月末時点で累計560億円を超す。単純に比戟は出来ないにしてもけた違いである。

 テロリストが生まれてくる原因は国や地域によって多様だ。現場での十分な情報収集を踏まえたうえで、それを冷静に分析する必要がある。原因の特定を誤れば、テロ対策も誤ることになるからだ。

 インド洋上での自衛隊の給油活動は米国主導の有志連合各国から大いに感謝されている、と政府は強調する。数字を挙げて評価するのは無理だとしても、テロ組織の監視に貢献しているのは事実だろう。だが、それに劣らず関係国が日本に期待しているのは、もっと息の長い地道な支援ではないだろうか。

 その国の健康状態をよく見つめて、弱い部分を治療する。外科手術のような即効性はないが、着実に社会を改善し、テロ(海賊)活動の温床を断ち切っていく。漢方療法にも似たそういう後方支援こそ、日本のお家芸ともいえるテロ(海賊)対策のあり方であり、それこそが日本の矜持である。

註 テロ行為は何らかの政治的意図を持っていますが、海賊は単なる物品の略奪行為です。

戦争の隠れた傷 PTSDとTBI 貧者の空軍/山崎孝

2008-04-20 | ご投稿
【イラク・アフガン帰還米兵/30万人にPTSD/米研究所推計】(2008年4月19日付「しんぶん赤旗」)

 【ワシントン=鎌塚由美】米国防総省に近いシンクタンク、ランド研究所は十七日、イラク、アフガニスタン戦争の帰還兵約三十万人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていると推計する報告書を発表しました。

 「戦争の隠れた傷」と題する五百ページにわたる報告は、民間研究所が帰還兵の精神疾患を扱った「大規模で初めての調査」(同研究所)だといいます。これらの推計は国防総省などの報告をはるかに上回ります。

 報告はPTSDのほか、イラク、アフガンでの負傷の特徴ともなっている「トラウマ性脳障害」(TBI)を負っている可能性のある帰還兵の数も推定し、三十二万人と指摘しました。TBIは、自動車爆弾などの簡易爆発物によるものです。

 調査は、千九百六十五人の帰還兵を対象に実施されました。二〇〇一年十月以来、アフガニスタン、イラクに派兵された米兵は約百六十万人にのぼることから、これらの数字を推計したもの。

 調査に携わったテニリアン研究員は、帰還兵の精神疾患には適切な治療が必要であるにもかかわらず、「残念ながら彼らが必要とする高品質の治療を受けるには多くの障壁が存在する」と指摘。治療体制の不備やキャリアに影響するとの懸念から兵士が治療を求めない事例を指摘しました。

 報告は「治療のギャップ」として、PTSDやうつ病の症状を示す帰還兵が過去一年間に治療の助けを求めたのは53%にすぎないと紹介。治療を受けた半数近くが「かろうじて最小限の適切な処置を受けている」状態だと述べています。

 さらにTBIの可能性のある帰還兵では、57%が脳外科医や精神科医の診察を受けていない状態だといいます。テニリアン研究員は「これら病気の帰還兵たちの治療には、一時しのぎの対処ではなく制度的変化が求められる」と指摘しました。(以上)

★コメント ランド研究所は、TBI(トラウマ性脳障害)は、自動車爆弾などの簡易爆発物によるもので、イラク、アフガンでの負傷の特徴ともなっていると書かれています。自動車爆弾の類の使用はむろんイラクやアフガン戦争が初めてではありません。

自動車爆弾の歴史は、1920年代に反差別を訴える社会的な蜂起ために爆弾を積んだ荷車から始まったと言われます。やがて英国の諜報機関が植民地支配のために多用し、社会全体を恐怖に陥れる謀略兵器となります。このことに着目したCIAが南米各地の解放勢力に打撃を与えるために用います。しかし、現在は逆に反米闘争勢力により多く用いられています。「貧者の空軍」とも呼ばれています。

武器の使用で生み出されるのは、憎悪と復讐心だけで、報復の連鎖しかありません。

「目には目を」が世界を無分別にする マハトマ・ガンジー

読売新聞社が主張する日本の国際平和活動の中核とは/山崎孝

2008-04-19 | ご投稿
まず初めに4月18日付・読売社説を紹介します。見出し「イラク空自判決 兵輸送は武力行使ではない」

イラクでの自衛隊の活動などに対する事実誤認や、法解釈の誤りがある。極めて問題の多い判決文である。

航空自衛隊がクウェートとイラクの間で実施中の空輸活動の一部について、名古屋高裁は、国際紛争解決の手段としての武力行使を禁じた憲法9条に違反するとの判断を示した。

市民団体メンバーらが空自のイラク派遣の違憲確認と差し止め、損害賠償を国に求めていた。

判決は、原告の請求をいずれも退けた。違憲確認の請求についても「利益を欠き、不適法」と判断している。それなのに、わざわざ傍論で「違憲」との見解を加える必要があったのだろうか。

国は、訴訟上は勝訴したため、上告できない。原告側も上告しないため、この判決が確定する。こうした形の判例が残るのは、好ましいことではない。

イラク復興支援特別措置法は、自衛隊の活動について、人道復興支援などを「非戦闘地域」で行うよう定めている。

判決文は、イラクでの多国籍軍と国内の武装勢力との抗争を「国際的な戦闘」と“認定”した。それを前提として、空自による多国籍軍兵の空輸は「他国による武力行使と一体化した行動」で、武力行使に当たる、と結論づけた。

だが、多国籍軍による武装勢力の掃討活動は、イラクの安定と安全への貢献を求めた2003年5月の国連安全保障理事会決議1483などを根拠としている。イラク政府も支持しており、正当な治安維持活動にほかならない。

仮に掃討活動が武力行使だとしても、憲法上の問題はない。空自による多国籍軍兵の空輸は、武力行使と一体化しないからだ。

内閣法制局は、「一体化」の有無を判断する基準として、地理的関係、密接性など4項目を挙げている。空自の輸送機から降り立った兵士がすぐに戦闘活動を開始するなら、一体化する恐れもあるだろうが、実態は全く違う。

判決文は、バグダッドが「戦闘地域」に該当するとしている。

だが、イラク特措法に基づく基本計画は、空自の活動地域をバグダッド空港に限定している。空港は、治安が保たれ、民間機も発着しており、「戦闘地域」とはほど遠い。空港が「戦闘地域」になれば、空自は活動を中止する。

イラク空輸活動は、日本の国際平和活動の中核を担っている。空自隊員には、今回の判決に動じることなく、その重要な任務を着実に果たしてもらいたい。(以上)

★名古屋高裁判決が《現代戦において輸送等の補給活動もまた戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支遼を行っているものということができる。少なくとも多国籍軍の武装兵員を戦闘地域であるバグダッドに空輸するものについては他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない》と判断したことを、読売新聞の社説は、空自による多国籍軍兵の空輸は、武力行使と一体化しない。空自の輸送機から降り立った兵士がすぐに戦闘活動を開始するなら、一体化する恐れもあるだろうが、実態は全く違う、と主張しています。

戦争は戦場での戦いと後方からの戦場に対する兵力の補給、武器の補給、戦闘員を交代・休養させ再び戦場に送り込むことが一体となって戦争遂行能力が機能して戦争が継続できます。読売新聞の社説の《空自の輸送機から降り立った兵士がすぐに戦闘活動を開始するなら、一体化する恐れもあるだろうが》という主張は、この戦争の常識を踏まえない主張です。航空自衛隊は米軍を主体とする多国籍軍の兵員輸送の役割を担っていますから、武力行使=戦争と一体となった活動になります。

読売新聞の社説は、多国籍軍は正当な治安維持活動と主張しています。この多国籍軍は米英が国連安保理でイラクに対する武力行使容認決議の取り付けが出来なくて「有志連合」と呼ばれていたのが多国籍軍になったものです。大半は米国への義理立てで参加していて、多い時は39カ国の参加がありましたが、現在は21カ国になっています。ちなみに国連加盟国は190を超えています

義理立てというのはその証拠に、イラクの治安が全然回復せず、目的が果たせていないのに撤退する国が多く出ているからです。そして、有力な参加国の英国や豪州は兵力を削減する意向を示しています。もうひとつ国際的な正当性がないこととして、スペイン、イタリア、オーストラリアなどは、イラク撤退を主張した野党が勝利して政権交代が起きています。英国のブレア政権も選挙で負けています。

読売新聞の社説は、《イラク空輸活動は、日本の国際平和活動の中核を担っている》と主張しています。この主張は改憲の目的の本音が出ています。読売新聞社は自民党の改憲案に大きな影響を与えたといわれます。読売新聞社は泥沼に陥っているイラクの戦争に加担するようなことでも、日本の国際平和活動の中核と考えるのです。すなわち、如何なる事態でも米国に軍事協力をする、日米同盟において集団的自衛権行使することが、日本の国際平和活動の中核と考えているのです。

★町村官房長官は18日、記者会見で名古屋高裁判決について次のように語りました。《「国に準ずる組織」にどういう理解をしているのか。その辺の誤りが裁判所にあるのではないか》。政府はイラク特別措置法で、空自が行なう後方支援が武力行使と一体と受け取られないために、「国に準ずる組織」という概念を考え、テロ組織は「国に準ずる組織」ではないから武力行使と一体にならないと主張してきました。しかし、テロとの戦いの実態を見れば、米国が16万人の兵力を投入しても治安維持が出来ないということは、単なるテロリストとの戦いでないことは明らかです。米軍のイラク侵略・占領に抵抗する勢力との戦いが基本的な性格です。そこに破壊だけを目的にしたようなアルカイダをイラクに引き寄せた格好になっています。米国が引き起こした国際紛争です。

名古屋高裁は《行為主体が一定の政治的な主張を有し、国際的な紛争の主体者たり得る実力を有する相応の組織や軍事力を有する組織体で、主体の意思に基づいて破壊活動が行われていると判断される場合は、その行動が国に準ずる組織によるものに当たり得るとの見解が示されている》、そしてイラクの紛争を《武装勢力は海外の諸勢力からも援助を受け、米軍の駐留に反対する等の一定の政治的な目的を有していることが認められる》と述べています。政府こそがイラクでの紛争・戦争の実態をごまかしているのです。

政府は憲法違反の政策は止めなければなりません。多国籍軍の後方支援の活動は違憲とされるのに、政府が検討している自衛隊海外派遣恒久法では、アフガニスタンの国際治安支援部隊に参加して、治安維持活動も想定されています。国会は憲法違反となる法律を議決してはなりません。アフガニスタン戦争は米国の報復から始まっています。イラク同様に他国の政権を武力で打倒しましたが、その後始末が出来ないで泥沼に陥っています。そのために多くの人命が奪われました。イラクも同様の状態です。

米国、約84兆円のお金を使ってアラブの不信感を買う/山崎孝

2008-04-18 | ご投稿
【アラブ6カ国世論調査/「イラク撤退望む」61%/米軍駐留なくても混乱せず/「米国好きでない」8割に】(2008年4月16日付「しんぶん赤旗」)

 【ワシントン=鎌塚由美】先月実施のアラブ人を対象とした世論調査によると、イラクからの米軍撤退を望む人が61%になったことが十四日明らかになりました。「イラクから米軍が撤退すれば、イラクの人々は互いの違いを埋める道を見つけ出せると確信する」と答えた人の割合です。

米メリーランド大学とゾグビー・インターナショナルによる調査結果をロイター通信が伝えました。この回答は前年の44%から17ポイント増加しています。

 米軍が撤退すれば宗派対立などイラクが混乱するという米軍駐留合理化論が、アラブの人たちにはますます通用しないことが明白となりました。

 また、イラクでの米軍増派作戦がうまくいっていると見ている人は、6%しかいませんでした。

 調査は、サウジアラビア、エジプト、モロッコ、ヨルダン、レバノン、アラブ首長国連邦の六カ国の四千人が対象。このなかで、83%が米国について「好意的でない」とし、70%が「信頼していない」と回答しました。

 調査したメリーランド大学のシブリー・テルハミ教授は、ロイター通信に対し「米軍がイラクから撤退することがより好ましいと考える人々の数のなかに、米国に対する不信がある」と指摘しました。

 米軍による増派作戦で武力衝突が減少したという報道については、三人に一人が疑念を抱いています。59%が、イラクの不安定な状態が続き、それが周辺諸国に拡大することが最大の懸念だと表明。前年調査は42%でした。

 二〇〇三年のイラク侵攻前後を比べるイラクの暮らし向きについての設問では、侵攻前の方が良かったと回答したのは80%に上りました。(以上)

★コメント 2007年2月3日の朝日新聞の情報によりますと、2007年10月から2008年9月までの米国の予算教書のイラク戦費を中心とした「テロとの戦い」関連で2400億ドル(約29兆円)を加えると、今までのイラク関連の歳出総額は、7000億ドル(約84兆円)を超えます。

しかしながら、サウジアラビア、エジプト、モロッコ、ヨルダン、レバノン、アラブ首長国連邦の六カ国の四千人が対象にした。米メリーランド大学とゾグビー・インターナショナルによる調査は、83%が米国について「好意的でない」とし、70%が「信頼していない」回答となっています。

米国は4千人の兵士の命を失い、膨大な国費を使いながら、アラブの人たちの不信感を増やしています。

これはひとえに軍事力に頼って、イラクの自由と民主を図ろうとしたからです。そして、テロとの戦いと称して、侵略や占領に反対するイラク人をテロリストと考える。またごく一部のテロリストと住民を区別せず攻撃し、自由と民主の基本理念である、人間の尊厳を尊ぶことをしなかったからです。

軍事では平和構築は出来ません。国連憲章の規定である、内政不干渉と民族自決権を守り、この原則を踏まえて他国の支援をすれば、そのお金は生きてくると思います。

この方向を取った対北朝鮮政策は成功への方向に進みつつあると思います。北朝鮮の核の申告問題は8合目に辿りついたようです。

自民党政府は明文改憲や解釈改憲である自衛隊海外恒久法の制定を目指す道は、米国の有志連合に参加することです。この道は米国と同じ過ちを犯す道だと思います。
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