いせ九条の会

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『人権メタボリック症候群』の国に自殺者が3万人も出る不思議/山崎孝

2007-02-28 | ご投稿
【「日本は同質的な国」「人権メタボ症候群」文科相の感覚欠如】(2月27日付「しんぶん赤旗」ニュース)

 伊吹文明文部科学相の「(日本は)大和民族が統治した同質的な国」との発言が波紋を広げています。発言は二十五日、長崎県長与町で「教育再生の現状と展望」のテーマで、昨年改悪された教育基本法について語った際のものです。

 日本には、独自の民族的存在であるアイヌ系住民や、強制連行などによって少なくない在日韓国・朝鮮人が生活しています。伊吹氏の発言は、こうした人たちの存在を見ない暴言です。

 しかも、改悪教育基本法では、「教育の目標」として「国を愛する態度」など二十以上の徳目を盛り込みました。愛国心押し付けの先頭に立った閣僚に、少数民族に対する意識が欠如していることを示しました。

 ところが、安倍晋三首相は二十六日、「特に問題だとは思わない」と述べ、塩崎恭久官房長官も同日の記者会見で「発言の趣旨全体を見ると、特段問題視すべき性質のものではない」と述べるだけでした。

 かつて、一九八六年に中曽根康弘首相(当時)が「日本は単一民族国家なので比較的教育はおこなわれやすい」と失言し、世界中から批判を浴びました。伊吹発言は、その反省もないものです。

 伊吹氏はさらに、人権をバターに例え「栄養がある大切な食べ物だが、食べ過ぎれば日本社会は『人権メタボリック症候群』になる」(「朝日」二十六日付)と語ったとも報じられています。

 国民に対して、生活保護の老齢加算や母子加算の廃止、国保証の取り上げなどで憲法が保障する生存権さえ脅かしておきながら、“人権を食べすぎ”などとやゆする神経にはあぜんとするばかり。北九州市では、生活保護を二度申請するも市役所に拒否され、餓死する事件まで起きています。

 伊吹氏の発言は、人権感覚の欠如した自民党政治を象徴するものです。(以上)

人権をバターに例え「栄養がある大切な食べ物だが、食べ過ぎれば日本社会は『人権メタボリック症候群』になる」筈なのに、成果第一主義の企業風土の中で健康が破壊され過労死が発生する。人を大切にしない政治の中で人の心が荒廃する、自分の存在に疑問を持ち、生きていても仕方がないという疎外感や諦念が生まれる、経済的な行き詰まりの理由が多く含まれた年間3万人を超える自殺者がどうして発生するのでしょうか。まことに不思議な話です。人権とは人を一番に大切にすることなのに。

2005年10月、九州国立博物館の開館挨拶の中で「日本は一民族、一言語、一文化である」と述べた大臣の発言や「(日本は)大和民族が統治した同質的な国」という発言は、異質なものを排除し「日本民族は万国に比類なき優秀民族なりとの自負心」につながる考えです。この自負心を捨てないと「真に謙虚な国際社会の一員たる再出発をなし得ないと思うが、如何ですか」というハーバート・ノーマンの問いかけが、戦後62年を経た今日、再び問いかけられなければいけない必要を感じます。

自民党は現在の時点での再出発は、安倍首相の主張する戦後レジームの脱却ですから、脱却以前の、国家が個人の上に君臨した大日本帝国憲法への回帰です。だから、自民党新憲法草案は「公(国家)の秩序を保つために個人の自由を制限する」考え方を盛り込み、安倍首相は、戦前の「教育勅語」を素晴らしいなどと国会で述べ、人の命を軽視した考えの、日米同盟は「血の同盟」と述べるのです。「美しい国」という想念は、国民の一糸乱れぬ隊列行進の姿を思い描いているのでしょう。

追伸1 2月28日の朝日新聞のコラム欄に、政治家の失言が、こつこつと仕事で信用を築いてきたビジネスマンの信用を台無しにする場合がある、との言葉があります。

追伸2 同日の朝日新聞にかつての朝鮮軍司令官・宇都宮太郎大将の日記が発見されたことが報じられていました。宇都宮大将は統治政策の「武断政治」を批判的に捉えた軍人です。日本は「3・1朝鮮独立運動」後に、懐柔を目的にした朝鮮の人たちに文化の発露を許した「文化政策」に転換しました。この政策により映画「アリラン」が生まれ、朝鮮民謡のアリランが日本人にも知られるようになりました。

宇都宮太郎は英国公使館付武官の時は、ロシア革命の革命派を援助してロシア帝国を混乱させ、日露戦争に有利状況を作りだそうとした。また、辛亥革命の時は、海外情報・諜報担当の参謀本部第2部長で政府の方針に反して孫文を援助しています。吉良芳恵・日本女子大教授は次のように述べています。「宇都宮の活動の底流には独自のアジア認識がある。中国の革命派を援助し、武断政治的な朝鮮統治を批判したのもそのためだ。彼の思想は、形を変えて長男・徳馬氏のアジア平和外交に継承された。」(以下略)宇都宮徳馬氏は私の尊敬する方です。日中国交正常化に努力し、宇都宮軍縮研究所を設立して平和の問題に生涯を捧げています。

吉良芳恵氏の言葉で皆さんが想起するのは、中国東北部で傀儡国家満州国建設のために活動した岸信介元首相とその血統を受け継いだ安倍首相のことでしよう。血はあらそえません。

何という物言いだ/山崎孝

2007-02-27 | ご投稿
【中川政調会長:「中国の省になるかも」軍事費増大懸念示す】(2月26日付毎日新聞ニュース)

自民党の中川昭一政調会長は2月26日、名古屋市内で講演し、中国の軍事費増大に警鐘を鳴らし「台湾がおかしくなったら、20年ぐらいの間に、ここ(日本)は中国の何番目かの省になるかもしれない」と発言した。危機感をアピールする狙いとみられるが、安倍晋三首相が中国と戦略的互恵関係の構築を目指すなか、党三役の刺激的な中国脅威論は影を落としそうだ。

防衛白書によると、中国が公表している国防費は18年連続で2けたの伸びを示している。中川氏は「核の費用や研究開発、武器輸入の予算は入っていないから、合算すればどれだけの軍事力を増強しているか。とても大事な状況だ」と指摘。

その後、国会内で記者団に「10年の上海万博が終わると、中国は非平和的に台頭してくる可能性がある。台湾が完全に勢力下に置かれたら、次は日本ということになりかねない」と強調した。(以上)

この中川政調会長の発言は、NHKのラジオニュース、朝日新聞も伝えています。

中川政調会長は中国の脅威を煽るために、自分の政治的資質の脆弱性を露呈しました。「(日本)は中国の何番目かの省になるかもしれない」という発言は、政治家としての確固とした信念で平和的な外交を行う自信の喪失で矜持とか自尊心のない言葉です。脅威を煽ることは軍備を拡張せよということにつながり、軍拡には軍拡で対抗しようとする発想は素人でも考える政治手法です。しかし、軍備で対抗する政治は際限のない軍備拡張競争で国力を浪費・消耗します。

米国のヒル国務次官補が、粘り強く交渉し米朝の一定の合意点を見出した1月のベルリン会談の手腕。2月の6者協議の、一時は悲観論が出ていた中で、粘り強く対話してその中から東アジアの平和への方途を見出した6カ国代表の政治手腕を学ぶべきです。

中川政調会長の発言で重大なのは、今日の東アジアの動向を完全に無視していることです。

中川政調会長の発言は、国民にも評価された安倍首相の中韓訪問外交、そのことで関係改善が進み、日本国内の悪意に満ちた両国への中傷が減り、6者協議の中で、日本代表の一人が「日中韓3カ国の連携は格段にスムーズになった」(朝日新聞2月27日付「政態拝見」欄)と述べる状況への挑戦です。

中川政調会長の発言は、安倍晋三首相の中国と戦略的互恵関係の構築を目指す政治を否定する。「日中韓報道声明」の3カ国首脳は地域全体の安定のために行動し、相互の尊厳と理解に基づく政治的信頼を強化する外交方向に背を向ける。東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国の首脳会議、東アジア共同体の創設に向けた取り組みの強化が確認されたことにも背を向けます。

そして、中川政調会長の発言は、最近の6カ国協議の合意事項《6者は、相互の信頼を高めるために積極的な措置を取ることを再確認するとともに、北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力を行う》を客観的には否定する発言です。

安倍首相は、ご自身が本年1月に行った一連のアジアの国の首脳と確認した外交を否定するような(こけにする)政治家が自民党の政策責任を担っていることを許しておくのでしょうか。それとも安倍首相のアジア外交はアジアの動向の中で孤立しないための建前外交であり、中川政調会長の発言の方が本音の部分に当たるのかも知れません。

「ピースイン 志摩」/山崎孝

2007-02-26 | ご投稿
私は2月25日に地元で開かれた「ピースイン 志摩」という三重県教職員組合志摩支部が主催する催し物に参加しました。この催し物は、今年で3回目で私は一昨年にこの催し物に参加しており、その時見た、イラク戦争をテーマにした映画がイラク戦争の実相と在日米軍の関わりを描いていたことを記憶に残っています。製作したのは日本電波ニュース社でした。日本電波ニュース社は私が22歳の頃見て衝撃を受けたベトナム戦争の記録映画を製作した会社でした。私はこの記録映画の8ミリ版のトーキーフイルムを手に入れて映画会をたくさん開きました。

今年の「ピースイン 志摩」の映画は「MABUI」(沖縄の言葉で魂)という劇映画でした。沖縄の人たちは、こともあろうに日本兵にも殺され、米兵にも殺されてその悲しい魂を「ニライカナイ」という仏教で言う浄土に当たる所に行けるよう祈ります。沖縄では日本軍の組織的な抵抗が終わった後も、ある少年は一緒に行動していた妹が衰弱で死亡する。後に米軍の捕虜となり、米軍に開放されてから父親は亡くなっていますが母親と祖父と再会します。ある少女は病気で死にかけた弟をこの少年に発見されてその家族に救われますが、元気になった弟が米軍の軍需物資を横流しする日本人を追いかけてくる米兵のジープに轢き殺されてしまいます。少女は希望を失い断崖から海に飛び込もうとしますが、知り合いで米兵の愛人となっている女性に、生きたくても死んでいった人たちが大勢いると強く言われます。ドラマは、少年は家業の理髪店を継ぐ決意を、少女は看護婦の道を歩む決意をして青い海と空を眺めるシーンで終わります。

映画は、妹の亡くなった場所がいつのまにか米軍の基地になりフェンスで囲まれて入れなくなってしまう。その後その場所は整備された米軍の姿を実写を取り入れて描いています。しかし、ドラマなのでイラク戦争と沖縄の軍事基地の関係をリアリティには把握できない弱みがありました。

映画の上演終了後、参加者の感想を求めるコーナーで、一人の先生が自分の勤める学校が沖縄に修学旅行をするが、生徒たちに沖縄のことをどう伝えたらよいか考えているという意見を述べていました。平和教育を実践していく上での悩みだと思いました。平和教育は二度と戦争の惨禍を繰り返さないと決意した、日本国憲法に沿った教育です。偏向教育ではありません。偏向教育と捉える自民党は、平和的な国家及び社会の形成者を育成しようとした教育基本法を変えて、それに変わるものとして愛国心教育を行うことにしてしまいました。このような方向の中で先生たちは平和教育をしなければならなくなります。先生たちを支えるのは、憲法を守り生かそうとする世論だと思います。

「ピースイン 志摩」で、「三重県退職婦人教職員協議会」会長をしておられ、「いせ九条の会」の発起人の一人である山村ふささんが講師となり「私の戦争責任」と題して講演をなさいました。

山村ふささんは、戦時中は「ひたすら聖戦を信じて戦争に全面協力の優良教員で、二階級特進の昇給まで受けた」と話されました。この山村さんが変わるきっかけは、敗戦後、ある先生に誘われて見た映画「カサブランカ」でした。第二次世界大戦が反ファシズム戦争だったことを知ったと述べられました。山村さんは後に日本の戦争が侵略戦争であったことを知り、本当のことを知らないことがいかに恐ろしいことであるかを思い知ったと話されました。

「カサブランカ」は第二次大戦下で対独レジスタンス行う人たちを描いたことで評価を受けた作品です。後に「EUの父」と言われた汎ヨーロッパ主義の提唱者であるリヒャルト・グーデンホープ・カレルギーをモデルにした人物も登場しています。

敗戦のショックで何も信じられなくなっていた山村さんは、組合運動も初めは信じず、組合結成大会も傍観していたが映画を誘ってくれた温厚な先生が組合活動に熱心だったこともあり、やがて組合活動に参加するようになり、いつのまにか熱心な組合活動家になっていた。朝鮮戦争前後の米国の政策転換で民主勢力への弾圧が始り、先生たちがレッドパージを受けて困難に見舞われたが、組合は特に要望の強かった産休補助教員を獲得する運動に取り組み制度化させた。その後、三重県でレッドパージを受けた教員を復職させることが出来たと話されました。

米国の占領政策の政策転換は戦前の指導層の復活につながり、安倍首相の祖父が非民主の政治を行うことになってしまいます。

山村ふささんが戦争責任を取るということは、子どもたちに戦争の真実を伝えること、大変な迷惑をかけた中国の貧しい地域に学校建設をしたことなどでした。

山村さんは、高齢なのにとても元気に、演壇のマイクを握り、身振りを交えて話をされるので、時々マイクが声を拾えなくなるようなことも起こりました。山村さんは講演の終わりに組合の歌を歌われました。その歌や講演を聞いて私は、山村ふささんが行ってきた、人格の形成教育と平和教育を行う教員たちを支えた組合活動、自らの行為の反省から取り組んだ平和運動に対する熱い想いを改めて感じ取りました。

沖縄の人たちは「命ぬ宝」を合言葉に、軍事基地に反対して、平和憲法を守ることに新聞社も含めて熱心です。平常の時は政治家たちも命は大切だという立場を取りますが、国家の大義なるものと対立する局面には別だと考える傾向にあります。このことは国家の大義とされたテロとの戦いが人の命より優先されたイラク人質事件の時に如実に表れました。新聞社の大半はイラクで人質事件を引き起こした政府の政策を鋭く追及せずに政府の姿勢に同調しています。人の命は如何なるときも大切で優先して考えねばならないことです。そのために日本国憲法は、国際紛争を武力で解決してはならないとしています。

追伸 山村ふささんは、日韓の学者や教師たちが10年がかりで編んだ、両国の高校生のための「歴史共通教材」(読本)を、「ピースイン 志摩」を主催した組合に寄贈しました。読本のことは2月26日の朝日新聞が報道しています。

この読本の特徴は、韓国ではあまり知られていない吉野作造や石橋湛山が日本の朝鮮支配を批判したこと。朝鮮独立運動を行った主要な人物を取り上げて叙述したことです。

日本と朝鮮とでは伊藤博文を刺殺した安重根の評価は別れます。日本ではテロリストですが、朝鮮では朝鮮支配政策を取った伊藤博文に抵抗した義士と評価されます。これは今日、米国政府から見ればイラクで米国に刃向うものはすべてテロリストと見ますが、イラクの人たちには抵抗闘争を行う人と思っている人も大勢いるのです。狂信的な国際テロ組織を除いて、米国の占領政策との因果関係を考えなければならないと思います。

明確に言えることは、反米抵抗勢力も米軍も無差別的な攻撃をするなと言うことです。イラク政府はイラクを構成する人たちの正真正銘の宥和政策を取らなければならないと思います。

日本政府はなぜ条約の加盟を留保するのか/山崎孝

2007-02-25 | ご投稿
【クラスター爆弾:生産禁止条約作成うたう「オスロ宣言」】(毎日新聞 2月23日付け)

【オスロ斎藤義彦】市民を無差別に殺傷するクラスター爆弾の禁止を目指す国際会議「オスロ・クラスター爆弾会議」は2月23日、クラスター爆弾の使用や生産を禁じる条約を08年までに作ることをうたった「オスロ宣言」を採択し、閉幕した。日本とポーランド、ルーマニアは態度を留保した。条約には、備蓄された爆弾の廃棄や被害者支援のための新たな国際的枠組みの創設を盛り込み、詳しい内容は今後3回の会議で交渉する。既存の交渉枠組みをはずれた有志国・市民主導の条約作りは、対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)以来二つ目となる。

会議には49カ国が参加。日本は「安全保障や技術面などの議論から何が必要な措置か考えるべきだ。現状では判断を避けたい」として、宣言に対する態度を留保した。ポーランドは、既存の国連の枠組みを重視することを留保の理由に挙げた。

オスロ宣言は、08年までに条約の署名・加入などを終える方針を明記。一方で、従来の国連の枠組み内での議論継続や、国内措置を各国の判断に委ねることも盛り込むことで、新条約作りに慎重な国との妥協を図り、支持を広げた。今後、07年5月にリマ(ペルー)、07年11~12月にウィーン、08年の初めにダブリン(アイルランド)で会議を開き、条約の細部を協議する。

宣言は▽クラスター爆弾の使用・生産・移動・備蓄を禁止▽備蓄されている爆弾の廃棄・不発弾の除去・被害者支援の国際的な枠組みを創設--するための条約作りを08年までに行うと表明。一方、「国際法の枠組み内やすべての関係する議論の場」で、クラスター爆弾によって引き起こされる人道上の問題に「引き続き取り組む」とした。新条約によって、国連の枠組みで同爆弾を討議する「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議」の活動を損なうとの参加国の懸念から盛り込まれた。

宣言は全面禁止か部分禁止かの問題は先送りしており、今後の議論次第では運動が分裂する危機もはらんでいる。また会議にはクラスター爆弾の主要な生産・保有国である米国、ロシア、中国、イスラエルなどが参加しておらず、こうした国の取り込みも課題になる。(以上)

日本は「安全保障や技術面などの議論から何が必要な措置か考えるべきだ。現状では判断を避けたい」として、宣言に対する態度を留保しました。日本の安全保障が《クラスター爆弾の使用・生産・移動・備蓄を禁止▽備蓄されている爆弾の廃棄》を行うと、どう支障きたすのでしょうか。使用している米国に気兼ねでもしているのでしょうか。

クラスター爆弾の使用の例を見れば、自国の領土ではなく、外国の領土です。他国から攻撃を受けてもこのような無差別兵器は自国内では使えません。落とされたクラスター爆弾や不発弾で被害を受けているのは住民です。

日本は軍備をしていても、他国から日本の領域を攻撃されない限り武器の使用は出来ません。クラスター爆弾などというものは、他国で武力を行使する意図を持っていない限り必要など全くありません。

米国やイスラエルが他国の領土で使用して大きな被害を出しているためにこのような条約が必要になってきました。自民党政府は改憲して海外で武力を行使することを企図しています。米国やイスラエルのようなことを行う考えを持っているのか、疑われないのでしょうか。

6カ国協議の合意に沿った動向を見る/山崎孝

2007-02-24 | ご投稿
【エルバラダイ氏訪朝へ 3月、核問題協議で】(2月24日付け中日新聞ニュース)

【ウィーン23日共同】国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は23日、北朝鮮の核放棄に向けた協議のため、同国を近く訪問する意向を表明した。北朝鮮から招請状が届いた。IAEA報道官は、事務局長が3月の第2週に訪問する予定だと明らかにした。

事務局長は招請状の内容について、北朝鮮は「IAEAと関係を正常化し、IAEAに復帰したい」と書かれていたと語った。

今月北京で開かれた6カ国協議で採択された共同文書は、北朝鮮の核放棄に向けた初期段階の措置として、「すべての必要な監視および検証を行うためにIAEA要員の復帰を求める」と明記している。(以上)

6カ国協議の合意文書は《6者は、「行動対行動」の原則に従い、共同声明を段階的に実施していくために、調整された措置をとることで一致した》となっています。報道された事柄はこの合意に沿うものです。

毎日新聞が6カ国協議での日本の代表団はどのような活動をしたかを伝えています。以下は毎日新聞の論評記事です。

【記者の目:硬直した日本の北朝鮮政策=大貫智子】(2007年2月23日付け毎日新聞ニュース)

8日から6日間、北京で行われた北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議で、日本政府は「拉致問題の進展がなければ(核問題を進展させる手段である)北朝鮮へのエネルギー支援は行わない」との方針を貫いた。北朝鮮の核は差し迫った安全保障上の脅威であり、拉致は人権と国家の主権を踏みにじる行為だ。どちらも日本にとって極めて重い課題であるだけに、核問題解決に後ろ向きともとられかねない今回の対応は正しかったのだろうか。拉致の早期解決のためにも、政府は核問題との両立を図るべきだと思う。

「うちは拉致問題が進展すれば、核問題で進展がなくても支援するんだよ」。北京で取材していて最も印象に残った日本政府関係者の言葉だ。日本の「極端」な政策を自嘲気味に語る姿に、私は言葉を失った。

6カ国協議は毎回、全参加国による全体会合の後、米朝など2カ国や3カ国が立ち話を含めて具体的内容を詰め、合意内容が固まれば再び全体会合を開く。

日本首席代表の佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長は05年9月の第4回協議で、共同声明採択に当たり米朝間の調整役として奔走した。同年11月の協議では、今回合意した「テーマ別の作業部会」の設置を提案、協議をまとめる上での「知恵袋」と呼ばれ、関係国の信頼も厚い。

しかし今回、日本は「支援に参加せず」の方針で臨んだため、協議での発言力は低下した。北朝鮮は米国や韓国に対し「電力200万キロワット」などの要求を突きつけたが、日本は間接的に聞いただけ。米中韓による詰めの協議が続いた10日、韓国政府当局者は「今日は日本とは特に議論するイシュー(論点)がなかった」と記者団に語った。

合意文書には、北朝鮮が60日以内に核施設を停止することなどが盛り込まれた。朝鮮半島の非核化に向けた一歩と期待されている。だが、文書策定で日本が目指したのは、見返りにエネルギーを提供する主体を書き込ませないことだった。6カ国の合意という体裁を崩さず、「支援はしない」という日本の立場を両立させるには玉虫色の表現が必要だった。

最終日の13日、首席代表による記念撮影で、佐々江氏が指定された立ち位置は向かって左端。共同声明が採択された時も、昨年12月の前回協議でも、佐々江氏は中央に立つ議長国・中国の武大偉外務次官の隣にいた。

6カ国協議で日本は、常に拉致問題と核問題のバランスに頭を悩ませてきた。2度目の日朝首脳会談直後の04年6月の協議では、核問題の進展があればエネルギー支援を行うと表明。拉致問題は日朝2国間の協議での解決を模索した。

しかし、日朝関係は横田めぐみさんの「偽遺骨」問題で一層悪化し、昨年2月の日朝包括並行協議は成果なく終わった。そして7月の北朝鮮によるミサイル発射。日本は即日、万景峰(マンギョンボン)号の入港禁止などの制裁を実施し、対話の糸は切れた。拉致問題を最重要課題に掲げる安倍政権の発足で、対話路線への転換はさらに難しくなっている。

現時点で北朝鮮との対話の場は6カ国協議しかなく、北朝鮮と顔を合わせる貴重な機会である同協議で、日本が拉致問題を訴えるのは当然だ。一方、北朝鮮のミサイル発射や核実験で、最も安全保障上の脅威にさらされるのは、ほかでもない日本であり、状況は深刻度を増している。まずエネルギー支援を「安全保障上のコスト」(政府筋)と受け止め、日本が核問題解決に責任を持つべきではないか。それが協議の中で拉致問題を訴える力となり、拉致問題解決へのテコにもなりうると思う。物事が動かなければ何も解決しない。

さらに深刻だと感じるのは、オープンな政策論議ができない政府内の硬直した空気だ。今回の日本の対応について外務省幹部に問うと「(安倍晋三)首相に聞いて」と言葉を濁した。別の幹部は各国との首脳会談で「首相の指示がなくても萎縮して勝手に『拉致』を議題にしてしまう」と嘆く。

もちろん筋の通った政策は必要だが、複数の選択肢を持てる柔軟性も必要だ。今回の協議を、国益とは何かを改めて考え直すきっかけにできないか。

「歴史の検証に堪えられるよう努力したい」。北京での協議が始まる前、協議関係者が語った言葉を私は自分にも当てはめ、取材をしながら反芻していた。この言葉を安倍首相も真摯に受け止めてほしい。首相はまず、北朝鮮政策について自由な議論ができる雰囲気をつくることから始めるべきだと思う。(以上)

毎日新聞の伝えた日本政府関係者の《「うちは拉致問題が進展すれば、核問題で進展がなくても支援するんだよ」》言葉は、毎日新聞記者は政府関係者の自嘲と受け止めていますが、私は北朝鮮問題に対する安倍首相の本音の部分を表していると受け取ります。拉致問題で安倍晋三氏は政治的人気を獲得してきた経緯があり、拉致問題が進展できれば首相の得点になりますが、北朝鮮の核の問題の進展がしなければ、北朝鮮の脅威なるものは大いに宣伝できて、首相の望む憲法改定のためには都合の良い状況だからです。

しかし、国際情勢は核問題が進展し、拉致問題は進展しないという逆な展開になりつつあります。安倍首相は北朝鮮のミサイル発射と核実験を好機と捉えて国際的な北朝鮮包囲網を目論みました。安倍晋三氏は、北朝鮮ミサイル発射を受けた国連決議の時に、米国が国連憲章第7章適用を諦めても、外務省に最後の1分1秒まで国連憲章第7章を諦めるなと指示したように、力による問題の解決という体質を備えているからです。今日の状況は日本が北朝鮮の制裁をいくら強めても、以前に増してその効果が期待できない状況になっています。

本年1月18日、ペリー元米国防相は下院外交委員会公聴会で「北との交渉は核施設に対する爆撃の可能性を圧力として使いながら行うべき」と発言していましたが、最近、韓国と北朝鮮の合弁事業の開城工業団地を訪れて、韓国筋の話では好意的な評価を示したと報道されています。認識に変化があったのでしょうか。安倍首相も朝鮮半島の政治的状況の認識を変えて欲しいと思います。

2月23日、韓国が議長を務める「経済・エネルギー協力」作業部会が3月12日の週内で開く予定と発表されました。また、「北東アジアの平和・安全メカニズム」を含めた3つの作業部会が、3月19日に予定されている次回6者協議の直前に北京で開催する案が検討されていると、2月24日付朝日新聞電子版は報道しています。

安倍首相は情勢をよく見て、現実的な政策をしなければならないと思います。現実的な対応こそ日本国民が望む拉致問題解決の方向へ近づく道となると思うのです。ライス米国務長官が後ろ盾になり、ヒル国務次官補が北朝鮮の核の問題で、相手の意向を深く探り、1月の米朝二国間のベルリン会談で現実的な対応を取ったから、6カ国協議を軌道に乗せることが出来ました。もめていた金融制裁問題でも、違法ではなかった部分の制裁を調べて制裁を解く意向を明らかにしています。事実に沿った方法です。

いじめ問題の講演会を聞いて/山崎孝

2007-02-23 | ご投稿
私は22日に地域で行われた、更正保護事業講演会、「聞こえていますか? 子どもたちの声が…」というタイトルの講演会を聞きました。講師は伊藤芳朗弁護士で、綾瀬女子高生コンクリート事件など少年事件を多数手がけた弁護士ということでした。

伊藤芳朗弁護士は、要約すると、いじめが発生する大きな原因として少子化により親の期待というプレッシャーが子どもに多くかかるようになった。昔の家族は子どもがたくさんおり、親の期待は一人の子どもには過度にかからなかった。プレッシャーでストレスを心に抱えた子どもは、昔は兄弟にも発散させたが、今はそれが出来ない状態で、学校で他の子どもに発散させる結果、それがいじめにつながると話されました。

親の問題であり、競争社会で親にストレスを与える社会の問題としても捉える視点が必要という趣旨の話しをされました。大きく見れば過度な競争社会にいじめの要因が潜んでいると言えます。

最近のテレビ番組は、被害者の加害者への激しい憤りと重罰を求める姿がよく放映されるようになりました。私は被害者が憤りの気持ちや加害者に重罰を求めることは止むを得ない、と思います。しかし、事件とかかわりのない一般市民までが、被害者の気持ちに安易に同調してしまうと、事件を冷静に見つめ事件の原因を究明できないと思っています。重罰だけでは事件の発生は防げません。加害者が何故犯行に走ったのかを、加害者の持つ要素、加害者に家族や社会がどのような影響を与えていたのかを究明し、対策を取らない限り犯罪は減らないと思います。

刑事裁判は加害者を罰する場だけではないことは言うまでもありません。事件の持つ真実を明らかにして、今までに築き上げてきた法例に従って被告人に処罰し、刑務所で矯正を行うことだと思います。

しかし、日本は、裁判所は加害者を罰するところだというような雰囲気さえ出てきています。被害者の家族の席を検察側と並ぶ席に設けるような動きがあります。これは弁護側に心理的な圧迫を与えると思います。陪審員制度導入が決まっていますから、これがどのような影響を与えるか検討すべきです。

裁判は、昔は加害者に社会が報復する場である性格を強く持っていました。この性格は時代の進歩と共に変わってきています。

テレビ番組に、被害者の加害者への激しい憤りと重罰を求める姿がよく放映されることにより、社会が包容力を失うことを恐れます。社会に包容力が失えば、偏狭なナショナリズムを煽る政治勢力に利用される危険があると思います。偏狭なナショナリズムは物事を力で解決する方向に向かいます。

ブレア首相、イラク撤退を退陣に向けた「花道」に/山崎孝

2007-02-22 | ご投稿
【攻撃相次ぎ39人死亡 イラク、米軍など標的】(2月20日 付け中日新聞ニュース)

【カイロ19日共同】イラク駐留米軍は19日、首都バグダッド北方の米軍拠点に同日、車爆弾などによる組織的な攻撃があり、米兵2人が死亡、17人が負傷したと発表した。また、フランス公共ラジオによると、バグダッド南部のイスラム教シーア派地区に同日、複数の迫撃弾が着弾、女性や子どもを含む11人が死亡するなど各地でテロや攻撃が相次ぎ、計37人が死亡した。

イラク治安部隊と米軍が14日に集中的な首都掃討作戦を始めて以降、武装勢力などによる暴力は一時沈静化したが、18日には62人が死亡する爆弾テロが発生。武装勢力が攻撃を再び本格化させた可能性がある。

AP通信によると、攻撃を受けたのは首都北方タルミヤの米軍基地とみられる。基地前の防護壁近くで車爆弾が爆発した後、武装勢力と米軍との間で銃撃戦となった。複数のスンニ派武装勢力が樹立を宣言した「イラク・イスラム国」は同基地に対する攻撃を認める声明をウェブサイトに出した。信ぴょう性は不明。

★【デンマークが全面撤退へ イラク南部から】(2月22日付け 中日新聞ニュース)

【ロンドン21日共同】デンマークのラスムセン首相は21日、イラク南部に駐留するデンマーク軍の地上部隊約470人のすべてを8月までに撤退させると表明した。

代替措置としてヘリコプター部隊を送るが、派遣人員は55人にとどまるとしており、事実上の全面撤退となる。

デンマークは英軍の管轄地域であるイラク南部で活動。最近の世論調査では、駐留継続反対の意見が多数を占め、ラスムセン首相は昨年11月に部隊削減方針を示唆していた。

★【イラク英軍1600人削減 ブッシュ米政権に打撃】(2月21日 付中日新聞ニュース)

【ロンドン21日共同】ブレア英首相は21日、下院で、イラク南部に駐留する英軍の撤退計画に関する演説を行い、数カ月で現在7100人の英軍を約1600人削減し、5500人程度にすると表明した。首相は、駐留が2008年以降も続くと強調した。

ただ、英ガーディアン紙などは、08年末までに英軍全部隊が撤退する計画だと報じており、今回の削減が全面撤退につながる可能性がある。

ロイター通信によると、ブッシュ米大統領は今回の英軍撤退を歓迎。しかし、治安回復を目指した2万人以上の米軍増派をめぐり、議会などから強い反対を受けているブッシュ政権にとって、同盟国英国の本格的な撤退の動きは政治的に大きな打撃だ。

英メディアによると、英軍撤退は年末までに2段階で実施。残留する部隊はイラク治安部隊の後方支援に重心を移す方針という。撤退に伴い、英軍司令部のあるバスラの治安権限もイラク側に移譲する。

英国では、イラクからの早期撤退を求める声が高まり、ブレア政権と与党労働党の支持率は低迷。今年中の退陣を表明しているブレア首相は、今回の発表を退陣に向けた「花道」のひとつと位置付けているという。(以上)

ブレア首相は、イギリス軍のイラク撤退を退陣に向けた「花道」にするという観測が流れ、ブッシュ政権は任期中に、北朝鮮の軍事的核の廃棄や北朝鮮との国交正常化を花道にすると言う観測もあります。

ブレア首相・ブッシュ大統領の、共通の「花道」の持っている意味を論理的に突き詰めると、日本国憲法の規定「武力の威嚇や使用を国際紛争解決の手段にしない」の正しさを証明します。これが真理であり、今日の国際世論の主流です。日本人はこのことを認識して欲しいと思います。

このように米国に同調してきた国のイラク政策の大きな変化にもかかわらず、安倍首相は2月21日、来日中のチェイニー米副大統領と会談し、航空自衛隊の活動や政府の途上国援助であるODAを通じて米国のイラク政策を支えていく。アフガニスタンで武器使用を前提にした警護活動ORTにも「連携をいま調整中だ」述べる。また、米軍再編の着実な実施や北朝鮮のミサイル迎撃を想定したMD協力の加速化が重要だと述べています。まったく国際情勢の動向を無視した観念論に陥って日米軍事同盟をひた走ろうとしています。

チェイニー米副大統領は、6者協議での日米の連携を強調しましたが、ブッシュ大統領は6者協議の合意内容をチェイニー米副大統領に図らなかったと伝えられていて、2月20日付のワシントン・ポスト紙は「チェイニー米副大統領の影響力は落ちている」と報道しています。

安倍首相は6者協議合意後も北朝鮮強硬路線を主張しています。しかし、この強硬路線にほころびが生まれています。経済制裁効果も余り期待できない見通しが生まれてきています。2月20日、オーストラリアのハワード首相は、6者協議の合意を受けて、凍結状態にある北朝鮮との外交関係の修復について協議するための外交団を北朝鮮に派遣する考えを明らにしました。そして米大統領と電話会談後、「北朝鮮問題の先行きは楽観している」と述べています。ハワード首相は安倍首相がアジアにおける盟友と思っている人物です。ブッシュ大統領は「特に関心を持っているのは、北朝鮮の人々に食糧を送ることだ」と述べ、そして6者協議の合意事項に米朝国交正常化の作業部会設置を了承。ヒル国務次官補は「我々が約束した作業部会では、北朝鮮のテロ国家指定解除も含む」と述べています。安倍首相の北朝鮮政策は、ブッシュ政権内で北朝鮮政策を主導する人たちと考えの食い違いを見せはじめています。

「マガジン9条」のホームページ「みんなでディスカッション」のコーナーでは、6カ国協議の合意があっても北朝鮮問題で「護憲派の苦境は続く」という意見があります。

朝日新聞の世論調査で6者協議への評価は「評価する31%」、「評価しない56%」の状況、私の遊び友達が話す「北朝鮮を援助しても民衆には援助が回らない」などの意見の浸透、日本のテレビメディアの拉致問題で生まれた北朝鮮への反感を持つ庶民感情に迎合する後ろ向きな論評、拉致問題を解決するには、北朝鮮政権の崩壊しかないとか、6カ国協議の合意を前進として捉える人を「親北朝鮮的」と考える建設的な立場に立てない主張がある中で、6カ国協議の意義を理解して貰うには困難は伴いますが、私たちは「苦境」ではないと思います。何故なら6カ国協議の前進は、論理の上では憲法の規定の正しさを証明しています。

憲法理念に生きる人たちの言葉・哲学/山崎孝

2007-02-21 | ご投稿
2月20日の朝日新聞文化欄で、大江健三郎さんはシリーズ記事「定義集」の中で、次のように書いた箇所があります。1995年の国連大学で開かれた会議での出来事です。クストー艦長はフランスの海洋探検家です。

クストー艦長は、第二次世界大戦後、海底の生物の種が減っていることに気付き、海底のみならず地球上に生物の種類が少なくなると地球は壊れる、と警告しました。文明も同じ。「多様なものが共に生きる場合には生き残る可能性が高い」と主張して、未来世代に対する現代世代の責任「未来世代の権利宣言を国連憲章に入れる」運動を始めました。

艦長は会議のコーヒーブレイクで私に、君がしたシラク大統領への核実験批判を支持する、といわれました。脇から鶴見和子さんが、艦長の「多様なものが共に生きる」という視点は、「自分と異なるものが異なるままに共に生きる道を探求する」という曼荼羅の思想と一致する、と話しかけられ、三人は握手し合いました。

クストー艦長の運動が実ったのは、彼の死の年でした。鶴見さんはいまの話を最後の講演で伝えてから亡くなりました。その結びはこうです。

「私は、わが去りし後の世に残す言葉として、9条を守ってください、曼荼羅のもっている知恵をよく考えてください。この二つの知恵をよく考えてください。この二つのことを申し上げて、終わりたいと思います。」(引用以上)

伊藤真さんは次のように述べています。

《「憲法について語るとき、我々は、自分たちがどのような人間であろうとするかを語る。それは全人格を傾けて語るべき対象である」(『憲法学のフロンティア』岩波書店の「はしがき」から)とは長谷部氏の言葉である。私たちがいかなる人になろうとしているのであろうか。知り、考え、そして主張し、実践しなければならない。》

長谷部恭男・杉田敦さんの共著「これが憲法だ」の書評の中の言葉です。伊藤真さんは、現在「マガジン9条」のホームページに「伊藤真のけんぽう手習い塾」や雑誌「世界」で「中高生のための憲法教室」などの連載を執筆中です。

【曼荼羅について】梅原猛さんは、中学の子供たちに曼荼羅のことを次のように教えています。(「梅原猛の授業 仏教」より)

曼荼羅というのは仏さんが集まっているんですが、世界を調和的に考える。東洋の思想は、世界を闘争的に考えない。これは、これからの思想として大変重要な思想です。(中略)密教の思想は、闘争をあることは認めながら、世界を調和的に考える。調和が一番大切だという思想を、曼荼羅は持っているわけです。

曼荼羅の真ん中にいるのは大日如来です。これは宇宙の本質です。ところが密教では、人間もひとつの小宇宙で、大日如来が宇宙の真ん中にいるが、自分自身の中にも小宇宙がある。密というのがそうですが、密を人間はみな持っている。だから、自分が目覚めたならば大日如来と一体化できる。そういう考え方ですね。

皆さんの体の成分は地球の成分と同じですね。だから皆さんがすなわち地球なのです。皆さんばかりじゃなくて、虫にも草にも大日如来がいるのです。世界はすべて大日如来の表れ。そういう哲学を背景に持っている。(引用以上)

鶴見和子さんが示したように「自分と異なるものが異なるままに共に生きる道を探求する」これが日本国憲法の指標だと思います。そして6カ国協議は、東アジア地域において「自分と異なるものが異なるままに共に生きる道を探求する」政治的分野における探求だと思います。

北朝鮮は自由と民主主義の国ではありません。しかし、自分が気に食わない者の存在(独裁政権)を、外部の力で強制的に打倒してよいとする権利は国連憲章にはありません。内政不干渉が原則です。民主化は朝鮮半島の人々が主体的に行うべき事柄です。ここのところをしっかりとおさえて、日本のテレビメディアは報道して欲しいと思います。テレビメディアが人道上の見地に立って北朝鮮の事柄を報道していると言うのであれば、毎日のように起こっているイラクの惨状も取り上げるべきなのです。

6者協議で生かされた憲法9条の理念/山崎孝

2007-02-20 | ご投稿
 6者協議について書いた私の文章が朝日新聞「声」欄に掲載していただけましたのでブログにも載せてもらいます。

2007年2月19日付け朝日新聞「声」欄掲載文【名古屋本社編集部と東京本社編集部扱いで、一部を変更したもの】

【6者の合意を活用すべき】

北朝鮮の核問題をめぐる6者協議が、合意文書を採択しました。これで、北朝鮮の非核化の方向へ一歩前進したと思います。

合意文書にあるように、北東アジア地域の永続的な平和と安定のために共同の努力をすれば、平和への道は開かれると思います。

協議を前進させたのは、米朝のこれまでにない真剣な対話姿勢と関係国が協議を成功に導きたいという熱意だったと思います。

ボルトン前米国連大使の「核開発を止めさせるためには政権の崩壊しかない」とか、ペリー元米国防相の「北との交渉は核施設に対する爆撃の可能性を圧力として使いながら行うべき」という考え方ではありませんでした。北朝鮮に対し、厳しい姿勢を貫いてきた安倍政権に影響を期待したいと思います。

前進できた考え方は、憲法9条の「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争の解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という理念と合致していました。

合意文書で、日朝国交正常化作業部会設置が決まり、これまで会談を拒否されてきた拉致問題も話せる場が出来ました。この場を大局的見地に立ち、活用すべきだと思います。(以上)

大局的見地に立つとは、日本も北朝鮮も両国の国家権力が行った非人道的行為に正直に向き合うこと。拉致問題では日本側の疑問に北朝鮮は誠実に調査を行い、調べた結果を明らかにすること。日本人は歴史の事実を歪曲しないこと。その上で、未来指向で両国の共存を図る方策を探らなければならないと思います。

これが6カ国協議の合意文書に書かれた《北朝鮮と日本は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとるため、二国間の協議を開始する》に適うことだと思います。

2月20日の「朝日川柳」に「いずれまた百万トンが要る予感」(千葉県の人の作)という川柳がありました。これは視野を狭めて捉えるとこのように思うかも知れません。しかし、日本の軍備拡張政策には北朝鮮の脅威が相当な説得力を持ってきました。その典型的な例が日米共同でミサイル防衛網構築の研究開発があります。この研究開発はシステムの信頼性と膨大な費用の関係で、なかなか研究開発に着手できませんでした。しかし、政府は1998年8月の北朝鮮のテポドン型ミサイル発射実験を好機として捉え研究開発に着手し、初めは研究開発だけで配備はしないと言っていたのが、現在は配備するに至っています。更に日本の武器輸出三原則の特例を設けてまで、日米で次世代ミサイル防衛網の研究開発に取り組んでいます。これらの費用は何兆円にも上ります。これを考えれば仮に更なる百万トンが必要になったとしてもたいしたことはありません。それに日本だけで負担するのではありません。東アジアに平和と安定の道が切り開かれれば、日本政府の軍備拡張政策は大きく説得力を失います。この政策を必要がないとして止めさせれば良いのです。

★【従軍慰安婦についての報道】自民党の河野談話見直しの動きを、2月17日付毎日新聞が、米議会で決議案ニュースとの関連で伝えています。

国内では自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相)が月内にも河野談話見直しの提言をまとめ、首相に提出する。保守色の強い安倍首相支持グループには、首相が就任後「河野談話を継承する」との見解を示したことへの不満もあり、決議が採択されれば国内政治に跳ね返る可能性も否定できない。

政権内には、従軍慰安婦問題とは無関係の米議会で決議案が繰り返し提出されることへの懸念もある。こうした状況を踏まえ、世耕氏は日本に対する否定的な動きが米議会で起きる背景を調査し、対外広報戦略を練り直す。(以上)

対外広報戦略を練り直すのではなく、史実に合わない自民党内の「河野談話」見直しを封じることが先決です。

★2月19日付朝日新聞報道。衆院予算委員会で稲田明美氏(自民)が、従軍慰安婦問題の米議会の「決議案に書かれているような、日本帝国軍隊が若い女性を強制的に性奴隷にして殺したり自殺に追いやったという事実があったという認識か」と質問した。これに対し、麻生氏は「基本的に全くそのような事実を認めている立場にはない」などと強調した上で「こういった一部の議員の動きを受けて、引き続き日本政府としては我々の立場について理解を得るためにいろいろ努力したい」と語った。(報道の引用は以上)

稲田明美氏の質問は、巧妙な仕掛けをしています。《軍隊が若い女性を強制的に性奴隷にして殺したり、自殺に追いやったという事実》と述べて、米議会の決議案に書かれた事柄の極端な例を紹介することにより、麻生外相の「基本的に全くそのような事実を認めている立場にはない」という答弁を引き出し、総体として日本軍が関与した従軍慰婦問題はなかったかのような印象を与えようとしています。結局、稲田明美氏は「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」と同じ立場を取りたいのだと思います。

米議会の決議案の動きは「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の動きを、日本人に知らすことになりました。米議会の決議案の動きがなければ、日本のマスメディアは報道しなかったように思うのです。私はインターネット上にある米議会の決議案に関連する新聞報道を通して「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の動きを知りました。

6カ国協議の合意を後ろ向きで捉える番組/山崎孝

2007-02-19 | ご投稿
2月18日の「サンデープロジェクト」は、6カ国協議の合意が取り上げられていました。

メインは山崎拓氏(安全保障調査会長)と外交評論家の手嶋龍一氏の討論でした。手嶋龍一氏は、山崎拓氏を二重外交を行ったとして批判しました(外交権を持たない人が日朝政府の懸案問題を話し合うことは外交権の侵害という考え方。また日本の支援を欲しい北朝鮮の思惑に嵌った)。

手嶋龍一氏は、日本人の命に関わる拉致問題を核問題のために軽視したという趣旨の批判を述べました。これに対して山崎拓氏は、拉致問題も核兵器の問題も日本人の命に関わる問題と述べました。山崎拓氏は強硬路線ばかりでは問題は解決しないというニュアンスが伺えました。

司会者と手嶋龍一氏は、6カ国協議の合意は、北朝鮮が既に持っている核(核実験で試した核兵器の残りやウラン濃縮型の核開発。これについては他の民放番組でも批判していた)に触れていないと批判し、米国はともかく日本にとってはこれらの核は脅威だと述べました。(北朝鮮の日本に対する核兵器による攻撃方法がわかりません。爆撃機の保有は? ミサイル搭載できる小型化された核兵器の保有に至っていません)

ウラン濃縮型の核開発をめぐる経緯が中日新聞は次のように報道しています。

【「ウラン型放棄」を削除 6カ国協議の合意文書】

北朝鮮の核問題をめぐる先の6カ国協議の合意文書案に当初「高濃縮ウランによる核開発の放棄」が明記されていたが、ウラン濃縮型の開発を否定する北朝鮮が反発、米国も了承の上で削除されていたことが18日、分かった。協議筋が明らかにした。

同筋によると、協議4日目の11日に、北朝鮮が寧辺の核施設の活動停止などを行えば重油30万トンを提供し、すべての核放棄が終了すればさらに70万トンを提供するとの案で米国、韓国、ロシアなどが合意。しかし北朝鮮は核放棄前に重油100万トンを提供するよう要求して、受け入れを拒否した。

そこで米国が中心となり第2次案を作成したが、放棄対象として「高濃縮ウランによる核開発」が明記されていたことなどから、北朝鮮が「平和利用も含めウラン濃縮は一切行っていない」と主張し再び拒否したという。

これを受けて米国は各国と再調整に入り、ライス国務長官が12日夜、宋旻淳・韓国外交通商相と電話会談。「高濃縮ウラン」に関する文言を削除した上で、北朝鮮が寧辺などプルトニウム関連の既存の核施設を無能力化することに応じれば、重油計100万トン相当の経済、エネルギー、人道支援を行う-とすることで合意。中国、ロシア、日本の同意を得た上で北朝鮮に提示し、13日の共同文書採択に至ったという。(共同通信の配信 以上)

山崎拓安全保障調査会長は2月18日の記者会見で《「6者協議の作業部会で対話することには限界がある。安倍首相でも誰でも責任がある者が(北朝鮮に)乗り込んで腹を据えた交渉をやらないと」と述べ、首相ら政府要人の訪朝も含めた直接対話の必要性を訴えた》と朝日新聞は報道しています。

番組を見て感じることは、番組は全体として6カ国協議の合意を後ろ向きに捉えている印象を受けました。拉致問題が解決しない限り北朝鮮を支援しないという政府を応援する立場です。合意文書には《6者は「行動対行動」の原則に従い》となっています。日本政府の方針は「行動対行動」の原則に沿うとは必ずしもいえません。この方針で拉致問題が解決出来ることを祈るばかりです。

北朝鮮の非核化について、合意文書は「2005年9月19日の共同声明を実施するために」と書かれています。この共同声明は、北朝鮮は米国が安全を保証するのであれば、軍事的核を放棄する、でした。そして、今回の合意文書には「6者は平和的な方法によって朝鮮半島の早期の非核化を実現するという共通の目標及び意思を再確認するとともに、共同声明における約束を真剣に実施する旨改めて述べた」となっています。

合意文書では、朝鮮半島の非核化の作業部会、米朝と日朝の国交正常化の各作業部会、経済及びエネルギー協力の作業部会が設置されます。これらの作業部会が進展すれば、北東アジアの平和及び安全の方向に大きく前進します。

6カ国協議の合意に各作業部会の進展状況は、他の作業部会に影響は与えないと規定されています。日朝の作業部会が拉致問題で進展しなくても、他の作業部会は進みます。他の作業部会が進展すれば、拉致問題で北朝鮮の脅威を宣伝しても説得力はありません。なぜなら拉致問題は1970年代後半から1980年代に行った北朝鮮の不法行為です。

米朝の国交正常化も線路はひかれました。歴史的な文化のつながりがある隣国なのに、日中国交回復が米中国交回復に遅れを取ったような事態さえ生まれかねません。日本と朝鮮半島の歴史も中国と同じです。

各作業部会はストレートに進まない局面があるかもしれませんが、目的を達成するという不退転の決意と関係国が誠実さを失わなければ、合意点は見つかると思います。このことは今回の協議で見られました。

日本人が6カ国協議の成功を望むことは、東アジアの平和を望むことと一致し、私は人間として自然な気持ちだと思います。