いせ九条の会

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映画「おくりびと」 「人の生をいくつしむ心」の政治を/山崎孝

2009-02-24 | ご投稿
第81回米アカデミー賞外国語部門に「おくりびと」とアカデミー短編アニメ賞に「つみきのいえ」が受賞しました。

「おくりびと」は、遺体を清め、装束を着せ化粧を施し棺に納める「納棺師」という仕事を描いた映画だそうです。

納棺師との関連で、遺体を葬る方法の話をすると、日本では火葬し墓に納骨する、或いは遺体を墓に土葬にするのが一般的ですが、「千の風になって」という歌が流行ってからは、自然界に「散骨」する人も目立ってきました。

特異なものに沖縄県周辺で行なわれていた「風葬」は、マブイ(魂)というのは、煙のようなものと考えられ、遺体を土中に埋めない風葬は、魂を海の彼方の幸せの世界「ニライカナイ」に還す方法だとされました。

チベットの「鳥葬」は、死体をハゲワシなどの鳥類に食べさせます。鳥葬は魂の抜け出た遺体を「天へと送り届ける」ための方法として行われており、鳥に食べさせるのはその手段に過ぎないと言われています。また、多くの生命を奪うことによって生きてきた人間が、せめて死後の魂が抜け出た肉体を、他の生命のために布施しようという思想もあるともいわれています。

「風葬」や「鳥葬」も死者を敬うことでは共通しています。

「天声人語」の筆者は映画「おくりびと」を《いくつしむ所作を通して「人の尊厳」がにじみ出る》と書き、米国の映画紙が《死に対する畏敬の念を通して生をたたえる感動作》と評したことを紹介しています。

今日の日本は、人を人として扱わない企業経営、福祉の分野でのサービスが切り捨てられ「人の生をいくつしむ心」で、社会が営まれているとは言えません。日本国憲法で謳われる「人の尊厳を尊ぶ」心の政治が行われなければならない。庶民が日本に生まれ育ち生きてきて良かったと言える社会にならねばならないと思います。