いせ九条の会

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バグダッド飛行場周辺は非戦闘地域に当たると答弁/山崎孝

2006-06-23 | ご投稿
私が見ていた22日午後3時のNHKニュースは、額賀防衛庁長官が国会で、航空自衛隊による輸送活動の範囲を現在のイラク南部から首都バグダッドや北部のアルビルに拡大することについて「バグダッドの飛行場の周辺は治安が確保されており、非戦闘地域にあたると考えている。ただ、多国籍軍やイラク政府とも緊密に連携を取り、安全を十分確保したうえで活動させたい」と答弁している姿を放映していました。

この答弁は、地域ではなく極めて狭い場所を限定して非戦闘地域だと強弁しています。バグダッド近郊では英軍のC130輸送機が撃墜されたこともあります。輸送機は広い範囲の地域を飛んできて飛行場に着陸します。額賀防衛庁長官の国会答弁は「多国籍軍やイラク政府とも緊密に連携を取り、安全を十分確保」と述べています。この言葉が裏付けるものは、戦闘地域だから「多国籍軍やイラク政府とも緊密に連携を取り安全を十分確保」しなければならないのです。戦闘地域でなかったら、このような措置は必要がありません。

非戦闘地域の解釈は、結局は政府の都合の良いように解釈されています。これを見れば、自民党新憲法草案で述べてある、自衛軍の武力を伴う国際的協調活動の解釈は、政府に都合よく解釈されるようになるのが明白で、専守防衛といって自衛隊の存在を国民に認めさせてきた自衛隊は、既に戦地で米軍の手足となって動いています。

「しんぶん赤旗」6月22日電子版に次のような指摘があります。自衛隊先崎統合幕僚長は、バクダッド周辺は、現在でも一番脅威が高いと述べている。

空自はこれまで、イラク南部のタリルやバスラといった比較的平穏な地域に活動範囲を限定していて、バグダッドなどへの空輸は、安全確保の見通しがないことから見合わせてきたが、昨年12月のイラク派兵基本計画変更の際、実施要項で空自の活動対象となる空港を13から24に拡大。今年3月には、バグダッド西方の米海兵隊部隊の拠点アサド空軍基地に空自隊員7人が調査に入り、「もし命令が下れば、われわれはここに飛ぶ準備が整っている」などとのべた。(米海兵隊ニュース3月25日号)。

米軍は、膨大な予算を投じて航空基地の増強を進め、空からの攻撃力や空輸能力を高めようとしている。イラク駐留米軍高官は昨年5月、今後拠点となる航空基地として、バラド、アルビル、アサド、タリルを挙げている。空自の活動範囲の拡大は、このような米軍の戦略に沿ったもの。空自の活動範囲が拡大されれば、米軍の掃討作戦の中枢部で輸送活動を展開することになる。(記事以上)

先日、私は空自の活動範囲拡大の理由に挙げていた国連要請は刺身のツマに過ぎないと言いましたが、この経過からも言えます。自民党新憲法草案の「武力の伴う海外での自衛軍の国際的に協調して行う活動」は、所詮、直に色が剥がれ落ちる看板です。

同じ国会答弁で、麻生外務大臣は、今後のイラクヘの復興支援策について「イラクでは電力や道路などのインフラがめちゃめちゃに壊れたままになっている。インフラが整わなければ復興は進まないので、すでに表明している35億円の円借款を使って、こうした分野を重点的に支援していきたい」と述べました。

「イラクの電力や道路などのインフラがめちゃめちゃに壊れた」のは、フセイン政権下で壊れたのではありません。米英が戦争を起こしたから、激しく壊れたのです。イラク市民は停電で、自家発電をして見ようにも費用が高くて多くの人は大好きなサッカーワールドカップが見られない、フセイン政権下では国営テレビで誰でも見られた、と伝える新聞記事もあります。

と言っても、私はフセイン独裁政権を擁護するわけではありません。日本が米国の乱暴狼藉の尻拭いをさせられていることを言いたかったのです。故箕輪登さんの碑文「常に腰の坐った背筋のシャンとした人間になろう」という姿勢が、日本政府にほしいのです。

6月23日の朝日新聞にサマワに駐留して帰還した1佐の自衛官二人に取材した記事があります。一部を抜粋します。「砲声はやまず不安が渦巻く異郷で、文化の違う人々と交渉し、事業を完成させていく。国連の指示で活動するPKOとは違う経験だったという」、近寄ってくる不審な相手を「どのタイミングで撃つかは、文書や資料だけではわからなかった。全国から部隊が派遣され、訓練の過程でスタンダードが出来上がったのは財産だった」、「イラク派遣は自衛隊の新たな扉を開いた。この実績は組織にとっても自信になる」と語っています。

自衛官が語った「国連の指示で活動するPKOとは違う経験」と、小泉首相は20日の記者会見で「国際社会が開戦時の意見の違いを克服して、支援、協力活動を展開している」という言葉と照らし合わすと明らかに違いがわかります。

今日、23日は沖縄の「慰霊の日」です。沖縄戦は80日余りの戦いで20万人の犠牲者を出してしまいました。沖縄戦でも戦争は兵士よりも住民の犠牲者を多く出します。しかし、沖縄戦から61年後の日本は「砲声はやまず不安が渦巻く異郷」で、国からの命令で、命を奪い、奪われる可能性のある境遇に身においている日本人がいます。

自衛官は「イラク派遣は自衛隊の新たな扉を開いた。この実績は組織にとっても自信になる」と語っています。これは、イラクで4万人以上の民間人が犠牲になった戦争中のイラクの中に身を置いた認識としては、危険な方向の認識です。組織の外側から客観的に自分の立っている位置を見定めるのは難しいことですが、このままの認識であれば、日本の政治情勢は自衛隊員をより危険な立場に立たす運命が待ち構えています。

憲法を守らなければ、更なる新しいステップの扉、米軍の起こす戦争で、日本の武力行使の扉を開くことになります。私たちは沖縄戦の惨劇を改めて思い起こして、絶対に戦争への道を歩んではなりません。故箕輪登さんが述べたように、重装備の自衛隊を海外に派遣してはなりません。