JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
鐵道省 新宿駅発行 地図式券売機券
昭和11年6月に鉄道省時代の新宿駅で発行された、地図式の片道乗車券です。
紙が焼けてしまって見づらいですが、桃色GJRてつだうしゃう地紋のB型地図式大人専用券です。
地図に記載された着駅相当の駅のかなりの駅名が記載されており、国鉄末期のものとは趣が異なります。
新宿駅では昭和10年6月から自動券売機(当時は自働券売機)で発売する乗車券の発売範囲を広げるため、電車特定区間5銭および10銭区間用の乗車券について地図式の「特殊乗車券」として設備し、6台設備されていた硬券式の自動券売機で発売しています。
裏面です。
一番上の「(る)」は循環番号と推測され、2行目の「〇自6」は6番自働券売機で発行されたことを表しているものと思われます。
この券は鉄道省時代に考案された「元祖」地図式乗車券と言われるもので、地図式乗車券はB型で試作されたことになるわけですが、あまりにも窮屈であったためでしょうか、後にA型券に改められています。
JR東日本 精算機発行精算券
本年6月にJR東北本線(宇都宮線)小金井駅で発行された、170円分の精算券です。小山駅までの乗車券を精算機で精算した際に発行されたものです。
桃色JRE地紋のA型券売機券で、最新の様式ですが発行時刻の印字はありません。
本来はそのまま自動改札機を通って出場するものですが、有人改札口で頂くことができました。
原券は紙の乗車券ですが、精算についてはSuicaを使用して精算しておりますため、発行駅名の左側にはSuicaなどのICカードを使用したという意味で「口IC」の表記があります。
上田交通 (社)上田駅発行補充式片道乗車券
廃札券ですが、上田交通(現・上田電鉄)(社)上田駅で発行された、補充式の片道乗車券です。
青色TTDてつどう地紋のB型一般式大人・小児用券で、日本交通印刷で調製されたものと思われます。
(社)上田駅の「(社)」とは国鉄信越本線の上田駅と上田交通の上田駅を区別するための符号で、当時の上田交通上田駅は国鉄上田駅の構内にあり、跨線橋を渡って上田交通のホームに降りると、階段を降りたところに出札事務所があり、そこで発売されていた乗車券に記載されていました。しかし、晩年の乗車券には「〇社 上田駅」というものや符号の無いものが殆どだったような気がします。
よく見ますと、発駅名の(社)の社は「示」というしめすへんの旧字体の社で、発行箇所名の(社)の社は「ネ」というしめすへんの新字体の社で字体が違っています。
ここで敢えて「補充式」乗車券と申し上げたのは、上田交通時代にはかつては硬券そしてのちに大型軟券に様式変更された補充片道乗車券(補片)の設備が別に存在していた訳で、今回御紹介の券は純然たる「補片」というものではなさそうだからです。
本来の使用目的は解りませんが、常備券が欠札となった場合、非常用として着駅および運賃を記入のうえ発売するための非常時用の券ではないかと推測します。
JR北海道 函館駅発行北斗星1号特定特急券(立席)
昭和63年7月に函館駅で発行された、長万部までの北斗星1号立席特定特急券です。
桃色JR北地紋のD型大人・小児用券で、札幌印刷場で調製されたものと思われます。
寝台特急北斗星号が廃止されたのは記憶に新しいところですが、昭和63年3月に誕生したときは1日3往復の便があり、うち1往復は不定期列車として設定されていました。3往復すべてが定期列車となったのは平成元年からでしたが、平成11年にカシオペアが誕生すると再度1往復が臨時列車となり、平成20年に1往復となってしまっています。
この券は2往復の定期列車と1往復の臨時列車が設定されていた時代のもので、完全常備券を設備するほどの需要がなかったのでしょう、列車番号と発時刻は記入式となっています。
小名浜臨港鉄道 泉駅発行水産高校前ゆき片道乗車券
昭和47年9月に小名浜臨港鉄道(現・福島臨海鉄道)泉駅で発行されたとされる、片道乗車券です。
かなり紙焼けしていますが、青色JPRてつどう地紋のB型一般式大人・小児用券で、山口証券印刷で調製されたものと思われます。
小名浜臨港鉄道は常磐線泉駅から小名浜を結ぶ鉄道で、昭和42年に福島臨海鉄道と社名が変更され、この券が発行されたとされる昭和47年9月30日を以って旅客営業を廃止し、現在も貨物専業の鉄道として現存しています。
ところで、この券が発行されたのが昭和47年なので、券面記載の社名「(小名浜臨港鉄道)」は旧社名であることから残券が使用され続けたかのように見えますが、よく考えてみると事情が違います。
同鉄道は泉駅から小名浜駅までの路線で、泉 ⇒ 滝尻 ⇒ 東邦亜鉛前 ⇒ 宮下 ⇒ 水素前 ⇒ 小名浜の順の各駅しかなく、この券の着駅である水産高校前駅という駅はありません。
水産高校前駅というのは、小名浜駅から先に存在した江名鉄道という別路線の駅で、同鉄道は自社車両を一切持たず、運転業務そのものを小名浜臨港鉄道に委託しており、事実上小名浜臨港鉄道の延長線のような存在でした。しかし、昭和40年の台風で線路擁壁決壊のため、応急処置で運転を再開したものの、昭和41年に運転休止となり、翌42年に廃止されてしまっています。
以上のことから、御紹介の券は小名浜臨港鉄道時代の江名鉄道への連絡乗車券であり、昭和41年もしくは休止前の昭和40年に廃札となったものを、福島臨海鉄道が旅客営業廃止の際に日付を入れて放出したものと推測されます。
次ページ » |