JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
上田交通 車内補充券(第一種)
1981(昭和56)年9月に、上田交通(現・上田電鉄)別所線の車内で発行された、第一種車内補充券です。
橙色TTDてつどう地紋の、カーボン紙を挟んで記入するタイプの券で、日本交通印刷で調製されたものです。
前回エントリーで御紹介いたしました上田丸子電鉄時代のものから継承されたもののようで、社名および等級制からモノクラス制に変わった以外に基本的に様式の変更はありません。
前回エントリーでも申し上げましたように、同社では社線完結用の乗車券については専用の駅名式券が使用されており、御紹介の券は国鉄線への連絡乗車券を発券する際に使用されていました。
しかし、見ていますと、殆どの旅客が社線内の乗車券を購入しており、上田駅から先の連絡乗車券を購入する旅客は見かけない状態で、発券実績はあまり多くはなかったようです。なので、通常は車掌カバンの中にしまわれており、これを手にして車内を回ることはありませんでした。
再掲いたしますが、上田丸子電鉄時代の券です。
細かに比較しますと、事由欄が「乗越」「方変」「片道」「 急」から「別途片道」「分岐片道」「区変」「急」「片道」に変更され、国鉄が「通用発売日共◯日」の表記から「発売日共◯日間有効」の表記に改めたことによる変更、「収受または変更区間」欄の英語併記が廃止、発行年月日から発行日へ年号の省略および、発行か所名から社名の省略などの相違があります。
裏面のご案内文です。上田丸子電鉄時代には「(注意)」と記載されていましたが、「(ご案内)」に修正されています。
上田丸子電鉄 車内補充券
前回エントリーで、上田丸子電鉄で使用されていました出札用の特殊補充券を御紹介いたしましたが、車内補充券もございましたので、御紹介いたしましょう。
こちらも廃札券ですが、上田丸子電鉄時代に使用されていました車内補充券です。
橙色TTDてつどう地紋の券で、こちらも日本交通印刷で調製されたものと思われます。前回御紹介いたしました特殊補充券と一緒に、上田交通の本社で戴いたものです。
同社では、社線内完結用としては駅名式の車内補充券を使用しており、国鉄線への連絡乗車券を発売する時だけ、こちらの券を使用していたとのことでした。
この運用は、同社が上田交通になり、真田傍陽線廃線後の別所線でも車掌が乗務していた頃には行われています。
裏面です。出札用のものとは異なり、注意書きの他に概算額収受の精算欄があります。
やはり、こちらの券は片道営業キロ30km以内の記載がありますので、時代的には出札用のものより後の時代のもので、1966(昭和41)年3月から、同社が上田交通になるまでの1969(昭和44)年5月までの間に設備されたものと推測されます。
上田丸子電鉄 特殊補充券(出札用)
廃札券ですが、上田丸子電鉄(のちの上田交通。現在は分社化されて上田電鉄)で使用されていた特殊補充券です。
緑色TTDてつどう地紋の券で、日本交通印刷で調製されたものと思われます。
御紹介の券は駅の出札口で使用されていた駅用のもので、社名の変更によって使用されることが無くなって上田交通の本社で保管されていたものです。まだこのような廃札券類に価値が見いだせなかった頃でしたので、まだネットで情報が仕入れられなかった昭和50年代に上田駅前にあった本社へ情報収集に伺ったところ、「もう使用しないから」と戴いたものです。
裏面の注意書き部分です。まだ列車区間のキロ程が20km以内の区間の乗車券が通用当日限りで下車前途無効であった時期で、かつ税率が2割、特別2等車券の記載があることから、1958(昭和33)年10月から1960(昭和35)年6月の間に設備されたものと推測されます。(大森山谷様から御教示いただきました)
今から51年前の1972(昭和47)年2月20日、同社の真田傍陽線(電鉄上田~真田・傍陽間)が廃線になりました。
真田傍陽線 は、国鉄信越本線上田駅と真田町(現・上田市)の傍陽駅と真田駅を結んでいた路線で、起点の上田駅は別所線の上田駅とは信越本線を跨いだ反対側で、現在の上田ステーションホテルが建っているあたりにあり、電鉄上田駅という駅でした。
上田駅を起点として市街地を時計回りの方向に迂回し、上田城の掘割の中を通り、県道35号線に沿って傍陽駅までを、さらに国道144号線に沿って真田駅を結んでいました。
菅平高原や群馬県への交通手段として、さらには真田町で収穫された高原野菜やリンゴなどの農産物を輸送するための路線としても利用され、それなりの黒字路線であったようですが、上田駅から直接菅平高原へ行くバスが増発されたり、農産物の輸送がトラックに移行したため、1960年代後半から赤字路線に転落し、1972(昭和47)2月20日に廃止されてしまっています。
富士急行 鉄道乗務区乗務員発行 車内補充券(連絡線用)
前回エントリーで、富士急行の鉄道乗務区乗務員が発行した、自社線完結用の車内補充券を御紹介いたしましたので、今回は連絡線用の車内補充券を御紹介いたしましょう。
2008(平成20)年3月に富士急行の鉄道乗務区乗務員が発行した、連絡線用の車内補充券です。
青色PJRてつだう地紋の地図式補充券(図補)で、自社線完結用同様に概算鋏でせん孔して発券されるものです。
同社では、自社線完結の乗車券を発券する際には前回エントリーの自社線完結用の図補を使用しますが、連絡線用の乗車券を発券する際にはこちらの図補が使用されていました。
自社線からの連絡乗車券としての他、御紹介もののように、自社線の乗車券を所持している乗客にも対応出来るよう、JR東日本線との接続駅である大月駅発限定で、JR東日本線のみの乗車券として発行することが可能です。
自社線の地図は一番下に印刷され、上には同社からの普通旅客の連絡運輸区間がすべて網羅されています。
裏面です。ご案内文の他、概算額収受の精算に対応することが出来るよう、精算額の記入欄が設けられています。
富士急行 鉄道乗務区乗務員発行 車内補充券(自社線用)
前回エントリーで富士山麓電気鉄道(富士急行)の端末式の車内乗車券を御紹介いたしました。
今回は、端末式券が登場する前に使用されていました、車内補充券を御紹介いたしましょう。
2008(平成20)年3月に鉄道乗務員区乗務員によって発行された、地図式補充券(図補)で、自社線内完結の乗車券用として使用されていたものです。青色PJRてつだう地紋の図補で、概算鋏によってせん孔して発券されます。
御紹介の券は富士吉田駅が富士山駅に改称されてからのもので、一番末期の様式になります。
裏面です。ご案内文が印刷されています。
富士山麓電気鉄道 乗務員区発行 車内乗車券
2022(令和4)年4月に、富士山麓電気鉄道乗務員区乗務員によって発行された車内乗車券です。
桃色PJRてつだう地紋のレシート式券になっています。
様式は分社化前のままになっていて、親会社である「富士急行」の表記になっています。
同社では大月駅・都留文科大学前駅・下吉田駅・富士山駅・富士急ハイランド駅・河口湖駅の各駅に時間限定で駅員配置のうえで出改札業務が行われていますが、その他の駅については無人駅であったり、駅員配置駅であっても窓口営業を休止したりしています。
ただし、全列車に車掌が乗務しており、車内での運賃精算業務が行われています。
同社で発券される乗車券は、専用のタブレット端末を使用して発券されるもので、車掌はタブレット端末を携帯し、別途、ベルトに付けた携帯用プリンターで発券します。
発売できる範囲はJR東日本との連絡運輸区間まで網羅しており、発売額の下に、富士急行線の運賃とJR東日本線の運賃の明細が印字されます。御紹介の券のように、富士急行線完結の場合は、JR東日本線の運賃は「0円」と表示されます。
同社では以前は地図式の図補が使用されていましたが、現在は端末発券の様式に変更されているようです。当時、発行された車掌氏によりますと、従来の補充券も乗務区には残されているようですが、端末が出てからは補充券は持たなくなったということでした。
裏面です。自動改札機を通ることが出来ない旨の注意書きが記載されています。
横浜高速鉄道 元町・中華街駅から東横線渋谷駅ゆき 片道連絡乗車券
2013(平成25)年3月に、横浜高速鉄道みなとみらい線の元町・中華街駅で発行された、横浜駅接続の東急東横線渋谷駅ゆきの片道連絡乗車券です。
若草色PJRてつどう地紋のノンカーボン式第1種特別補充券で発行されています。
同駅では本来、東横線の渋谷駅までは券売機での発売になりますが、駅の改札口で同年3月15日で終了する東横線渋谷駅(地上駅)の無効印を蒐集したいことを申し上げましたところ、「それなら」と特別補充券で発売して頂けました。
同社の特別補充券は紙質が薄く、裏が透けて見えるような感じの券で、レイアウトは小田急電鉄のものによく似ています。
裏面です。ご案内文が印刷されています。
この時に東横線渋谷駅で捺して貰った無効印です。通常の「(東横)渋谷」駅の無効印と、ハチ公図柄の「さよなら東横渋谷駅」のイラストが一体型になったゴム印で、地上駅の営業終了前の数日間、改札口に置かれていたものです。
無効印が2つ並んでいるような体裁なので、大きさ的にかなりの大きさになりますので、通常の券売機券に捺すと、ちょっと目一杯な感じがします。
東京急行電鉄 雪が谷大塚乗務区乗務員発行 車内補充券
購入年は失念してしまいましたが、管理人が会社業務の近距離出張の時に購入したので、平成2年から3年くらいの間であったと思います。
東京急行電鉄(現・東急電鉄)池上線の車内で購入した、雪が谷大塚乗務区乗務員発行の車内補充券です。
桃色PJRてつどう地紋の図補で、概算鋏でせん孔して発券するタイプになります。
当時何回か業務で同区間を利用していたのですが、あるとき車掌さんが他のお客様の乗車券の車内精算をしているのを見て、「次の機会」に挑戦したものです。
まだ自分は社会人になったばかりのころで、上司に同行での乗車でしたので、上司の話を聞いている「フリ」をして精算しているのを見つめていたものです。通勤電車の車内で車掌さんが概算鋏を使って車内補充券にパチパチ鋏を入れている姿は、きっぷ蒐集家としてはたまらないものでした。そして、やっと一人で行動することになったとき、わざと本来は110円である区間なのに最短の90円の乗車券を購入し、車内で20円を精算して購入したものです。
いまでは首都圏の大手私鉄各線では、東武鉄道を除いて車内精算はしていないようです。おそらくIC乗車券の発達と省力化といったところが理由でしょう。
京王電鉄 吉祥寺駅発行 新宿経由 吉祥寺駅ゆき 片道乗車券
2012(平成24)年5月に、京王電鉄井の頭線の吉祥寺駅で発行された、新宿駅接続のJR吉祥寺駅ゆきの片道連絡乗車券です。
鼠色KEIO自社地紋のノンカーボン式特別補充券での発行になります。
乗車経路は京王吉祥寺~(京王井の頭線)~明大前~(京王本線)~新宿~(JR中央線)~JR吉祥寺という一周の経路になります。
同社では新宿駅・吉祥寺駅・分倍河原駅・渋谷駅の各駅(高尾駅は廃止)でJR線との連絡運輸が行われていますが、接続駅毎に連絡対象駅(社線側の運賃設定駅)が定められており、すべての同社駅でJRの4駅での連絡運輸が行われている訳ではありません。
例えば井の頭線の管内発では神泉駅~東松原間各駅に限られるため、吉祥寺駅では発売できません。ただし、JR線側からですと、例えば山手線の恵比寿駅で渋谷駅接続の東松原駅までの連絡乗車券を購入して乗り越してしまえば、吉祥寺駅までの乗車は可能かと思われますが、特段意味はありません。
御紹介の券は、吉祥寺駅から当時は連絡運輸が取り扱われていました新宿駅を経由してJR吉祥寺駅までの乗車券になりますが、吉祥寺駅の券売機にはJR連絡乗車券口座に渋谷駅はあるものの新宿駅の設定が無いため、窓口での購入ということになりました。
裏面のご案内文です。京王の特別補充券は、かなり以前のご案内文が使用されています。
現在では連絡乗車券そのものの発売範囲が小さくなっており、駅によっては乗継割引設定区間など、連絡乗車券を発売しなければならない区間に限られている場合が多く、実際に新宿駅接続の連絡乗車券についても京王本線の初台駅~笹塚駅間の各駅に限られてしまっていることから、このような連絡乗車券の発売はなくなっています。
西武鉄道 武蔵境駅発行 新小金井駅ゆき片道乗車券
JR東日本との改札分離後の2006(平成18)年に、西武鉄道多摩川線の武蔵境駅で発行された、新小金井駅ゆきの片道乗車券です。
若草色せいぶてつどう自社地紋の特別補充券で発行されています。
同社では現在は特別補充券の発行はかなり厳格になっているようですが、当時はまださほど厳しくは無く、窓口が混んでいなければ改札が分離した記念ムードで発券して頂くことが可能でした。
御紹介の様式は自社地紋券としては末期の様式で、事由欄に片道券・往復券・特急券の文字が予め印刷され、また、指定欄に特急列車名が印刷されているなど、独自の様式になっています。
裏面です。同社の特別補充券はJRの東京近郊区間に限定された内容のご案内文になっています。
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